« 死神天使☆ミャナ!!【1】 | メイン | 聖なる力伝説【1】 »

ダブルチャイルド【1】


天界と魔界の同時期に新たな命が生み出された。
複雑な運命を辿る事になる二人の幼児はただ眠っていた。
何も知らず安らかに眠る二人の幼児に向けられた視線は生まれたことに対する喜びではなかった。
二人の幼児に付けられた名前は「黒羽」と「白羽」。

俺は羽を広げると飛翔した。
天界の空に俺の黒い羽が映ると皆が騒ぐ。
「堕天使」
悪魔と同じ羽を持つからそう呼ばれる。
俺は生まれた時から穢れていたんだって。
その穢れに触れたからお母さんは死んだらしい。
俺は眩しい空を見上げる。
「なんで俺は生まれたんだろ…」
生まれる場所を間違えたのかな?
俺は皆の声を気にせず空を飛んだ。
「後で怒られるかもなぁ~」
人事の様に俺は微笑を浮かべる。

「お前本当に悪魔か~?」
少年は私の背についている白い羽を指差す。
私はいつもの如く何か言ってくる愚か者達を睨みつける。
「当然でしょ!悪魔の親から生まれてきたのよ」
でもその親は死んだらしいけど。
お母さんは天使と交わったんじゃないかって疑いで殺された。
お父さんは後追い自殺。
「お前のせいで死んだのによくそんな風にいえるな」
本当勝手に死ぬなんて困る。
見たことも無い親のことでとやかく言われる筋合いないってのに。
「そんなのあなたに関係ないでしょ!いい加減ここから失せなさい!」
勝手に私の家の庭に踏み入った少年は私の幼馴染らしい。
昔から私に色々言ってきては撃退されてるってのにめげずに来る根性と無知さは認めている。
だからって無知なら何しても良いってわけじゃない。
だからいつも無知ゆえの愚かさが分かるぐらいに。
そして周りの人に思い知らせるぐらいにこいつを叩きのめしている。
いつもと変わらない日々。
退屈でたまらない。
「あ~あ…何かこう根本的な所から世界が変わってくれたらいいのにな~」
ため息をつく時には少年は居なくなっていた。
「逃げた・・」

白羽は魔界に生まれた。
白い羽を持つからこの名が付いたらしい。
それは黒羽を同様。
白羽をミルクのような真珠のような淡い色をした水色の髪を腰まで伸ばしている。
エメラルド色に光る瞳に白い肌は美少女と言えた。
黒羽を漆黒のような黒い髪をしている。
紫色の切れ長の眼に白い肌は美少年といえた。
二人は両方の世界でも飛び抜けた程に端整な顔立ちだったが、言い寄る相手がいないのは羽のせいだった。
迫害され続けた二人は逞しく育つと同時に自分の美貌を理解していなかった。
そんな二人はある日の晩に出会った。

「なんで僕がそんなのに出なきゃいけないの!?」
黒羽は立ち上がって今自分を育てている父親を睨んだ。
「…お前も出るようにと通達があったんだ…」
唯一黒羽を大事にしてくれる父親。
でもその後ろに居る姉と祖母は良い顔していない。
「3年に一回ある天界と魔界の交流会があるのは知ってるけど…僕が出れる歳になるのに後一年はかかるじゃないか!」
3年に一回の交流会。
親睦を深めようという形だけのパーティ。
しかしそのパーティーには18歳から出て良いことになっているが黒羽はまだ17歳だった。
「命令だから仕方ない…明日お前も連れて行くからな」
黒羽は仕方ないといった顔をしたあと部屋に入った。
「交流会か…」
部屋に入ると同時に黒羽はベットに突っ伏した。

白羽は家の前に立っていた。
「交流会ぃ~?」
白羽は見事な程整った顔を歪めた。
突然来訪した魔王の使いという使者を前にして。
「はい、魔王様直々の命です」
白羽を表情を気にしてないのか使者は淡々と言った。
「な~んでそんなのに私がでなきゃいけないのよ…それに私まだ16よ?」
「私はその様なことを知らされてはいません、知りたければ魔王様にお聞きください」
ー性格悪いなこいつ・・ー
白羽は心の中で悪態ついた。
魔王に会えるはずがない。
位の高いものでも1年に一回会えれば良いほうなほどにご多忙な人らしい。しかも気まぐれで愉快な事が好きな人。
話だけ聞けば悪い人ではないようだが、殺戮をものともしない残酷性を持ち合わせてるらしい。
「…とにかく!私は行く気ないから!」
家の中に戻ろうとした瞬間使者は口を開いた。
「では…魔王様に逆らう、つまり反逆罪とみていいのですね?」
問いかけてるように見える言葉の中には絶対逆らうなという強い思いが込められていた。
「…くっ…分かったわよ!行けばいいんでしょう!!」
「えぇ、それで良いのです」
使者は愉快とばかりに口を歪めた。
そして白羽は使者に連れられて向かった。
今日行われる交流会の場に。

「ここが狭間…かぁ」
黒羽は交流会が行われる場を見た。
天界と魔界の狭間にある地上。
黒羽がいるのは性格には狭間に行くための通路の手前
それが毎年の交流会の場所。
しかしいつも行われる場所は変わる。
以前は城だったらしい。その前は料亭。
今回は城という噂だった。
「…礼儀の無いようにな」
「黒羽は礼儀知らずだもんね~♪」
明るい口調で言うが黒羽を睨む姉は放っておき、分かったと言わんばかりに父に向かって会釈した。
「えぇ…と…あれ?そこの方はまだ達してないようですが」
狭間に行くための門に立つ衛兵が訝しげに黒羽を見た。
白い羽を背に持つもの。つまり天使。
「あぁ…彼は私が特別に認めたのよ」
高い声が後ろでして黒羽は振り向いた。
風になびくような金色の髪に淡いブルーの瞳に白い肌。
美しいことには美しいがどこにでも居そうな美少女だった。
年のころは多分黒羽と同じかそれ以下。
「なるほど…それではどうぞお通り下さい」
疑った様子もなく衛兵はすんなりと黒羽を通した。
「あんた誰だ?」
「私…?そうね~…リフィって呼んでいいわよ。もちろん偽名だけど」
「…偽名ってはっきり言うなよ突っ込めなくなるだろ」
「いいじゃない、物事ははっきりしてなきゃ気がすまないのよ」
父と姉は先に行ってしまった。姉はしぶしぶといった感じで父に連れられて。
「あなたの名前は黒羽よね…単純な名前…」
「悪かったな単純な名前で…こんな羽してるんだから仕方ねぇだろ」
「あなた今日からヨルって名乗りなさい!」
無邪気に言う少女、リフィに黒羽は頭を叩きたい衝動に駆られた。
「…なんで名前変えなきゃいけねぇんだよ!」
「いいじゃないの!地上の夜から取ったのよ!夜は暗闇らしいからピッタリだわ」
「俺が言ってるのはそんな事じゃない!名前の意味なんかどうでもいいんだよ!」
リフィは黒羽の言葉など耳に入ってないようで自分が決めた名前にうっとりしてるようにも見えた。
ームカツクガキめ…-
「ねぇヨル~…なんであなた黒い羽なの~?」
「さも当然のようにヨルって呼ぶな!しかもんなの俺が知るはずないだろ!」
「…無知め…それにあなたはヨルなのよ!そしてこれから私に仕えるの!光栄に思いなさい」
気づいたら黒羽はリフィの頭を軽く叩いていた。
「我侭いってんじゃねぇ!!」
「…痛いじゃないの~…レディの頭叩くなんて残虐非道だわ」
黒羽は呆れたようにリフィを見た。
そして通路は終わり地上が見えると黒羽は一瞬リフィから眼を離した。
その一瞬の間にリフィの姿は掻き消えていた

コメントする