蒼海【1】
出会いと別れ。始まりと終わり。生と、死。
全てには始まりがあり、終わりがある。
今年も、そんな季節がやってきた。
オレの手に握られている花束が、今までの全ての思い出のよこに添えられたように、
凛々しく咲いていた。
桜の花びらが、海面を泳ぐように漂っていた。
山から吹き込んでくる桜の花びらの風が、オレの顔の横を通りそしてまた何処かへと向かっていく。
船の甲板の上から見下ろすと、花びらの浮いた海はまるで次にオレが引っ越す場所への水先案内をしているようだった。
港に横たわる人々の群れ。
その中に、みんながいた。
大袈裟に横断幕のようなでっかい紙には「いつまでも、元気でね!」という文字が書かれていた。
横断幕をはっていることもあり、まるで港はオレの友達が占領しているかのようだった。
キャーキャーと騒ぐ我が親友たち。
目元を拭いて、こちらに手を振ってくれる親友たち。
今まで一番長くこの学校にいたんだ。
別れるのが悲しい。それでも、そんな単純な感情から生じる涙は、なかった。
また会えるさ。きっと。
何の根拠もない。何の理由も論理もない。
ただ、自分がそう言っている。思っている。
理由を言えというなら、これで十分さ。