??????

■TALES OF THE NIGHT■

「第三章～創造主の残した4つの光」

時を同じくして―――――。

リース率いるグランディア軍第一師団は
レウスの塔にて調査を行っていた。
あいかわらず周囲の魔物は多いのだが、彼の部隊の強者達に
よって、次々となぎ倒されていく。
(シオンはこの世界に起こることを見ていろと言った…。
待ってれば何が起こるっていうんだ？)
正直、いずれ起こることをわざわざ待つのは性格に合わない。
リース自身はそう思っていた。
「師団長、これを見てください！」
兵士達が叫ぶ声がすると、リースはその方向へと駆け寄る。
「…これは…石碑？」
それは、塔の近くに幾つも建てられており、
数メートルほどの高さがあった。
前に来たときは気づかなかったが、こんなものが
あったとは。
「なんだ…？文字が書かれているが…」
石碑に書かれている文字はどうやらリセアラ言語のようだ。
だが、かなり昔の文法を用いて書かれている。
リースはそれらを少しづつ読んでいく。
「R.A0000年レウスの月38日ルナ…。世界の創造主はここに
我が名をもつこの塔をこの地に建てん」
リセアラでは一年を十ヶ月、一ヶ月を四十日、一週間を五日と
定めており、ルナとは一週間の最初の日を指す。
それぞれルナ・イフリート・アレフ・ノーム・アスカと示す。
文によると、レウスの塔はその名の通り、世界の創造主という者―――。
つまりレウスが建てたということになる。
兵士達もその内容に驚いており、文面を目で追っている。
目の前の石碑はR.A暦0000年のレウスの月―――、つまり年の初めに
建てられたのだろう。
そして、この塔も――――――。

＊　＊　＊

「創造主レウスは自らの力を塔としてリセアラに封印した…」
シオンはその様子を"世界"から見ていた。
フィルドに住む人間は、リセアラのことをどこまで知っているかあ
わからないが、今そのことがわかるのは彼だけだ。
「まだ異変は見られない…。残る二本の剣も、まだ出番は
ないということか…」
"残る二本の剣"？
それはどういうことなのだろうか。
シオンはそれっきり口を閉ざし、黙ってしまった。

＊　＊　＊

"キーンコーンカーンコーン…"
昨日と同じように終業の鐘が鳴り響く。
帰り始める生徒達がいる教室で、マグナスは一人
本を広げて何事か調べていた。
「R.A暦3127年…ゼロの月20日アレフ…三国戦役開戦…」
三国戦役とは14年前にグランディア・リーメル・フェンリルの三国が
戦った世界最大の戦争といわれるもので、およそ800万人の死者を出した。
そして、その日は―――――。

「あなたの七歳の誕生日ではないのですか？」

マグナスが突然後ろから話しかけられて驚いた。
いつからそこにいたのだろう―――、ウェンが壁に寄りかかる
ようにして立っていた。
「不運ですよね…開戦日が誕生日だなんて」
マグナスがそう言って暗い笑みを浮かべる。
ウェンは、それ以外にその日にあった出来事を知っている。
「マグナス…思い出したくないこともあるのでしょう？」

そう、まさにその日は―――――――。

マグナスの両親が戦争で命を落とした日なのだから………。

＊　＊　＊

その頃――――。
リース率いるグランディア軍第一師団は、既にレウスの塔近辺から
離れ、都市へと戻りつつあった。
もしもあの石碑が何かを示しているのなら、王に知らせておく必要がある。
「あいつが言った"世界に起こること"って何のことなんだ…」
彼はそのことを考えていて、さっきからため息ばかりついていた。
大方、災害などの類ではないはず。なら戦乱？

恐らくそれもないはずだ。
平和締結に向かい初めて、既に数年が経過している。
(三国戦役みたいな大規模戦乱が起こるのだけは避けたい限りだな…)
あの戦争は三国間にとって全く意味をなさなかった。
そもそも何故、戦争が起こってしまったのだろう。
(ま、そんなわけねぇよな)
現に平和締結は進みつつあるのだから、戦争再発などはありえないだろう。
そのまま第一師団は都へと戻っていった。

「…あなたの言うとおり、魔石に封じられている空間は非常に不安定な
マナの反応をしていますね」
あの後、マグナスは再びウェンの元を訪れていた。
数年間の間特に気にしていなかった光の魔石を調べてもらうためだ。
「これはあくまで憶測ですが…シオンが所持している魔石のマナも不安定な
マナによって構成されているのではないでしょうか？」
彼は、リセアラとフィルドは光と影のような世界と言った。
つまり――二つの世界は同じ"場所"に存在しているわけだから――――。
「向こうの世界の造りもこの世界と同じだと？」
「えぇ…そうです」
そう考えれば説明はつくが、どうもひっかかる。
「なら、もし魔石―――、世界のマナが安定していた場合は……」
マグナスの問いにほとんどかぶさるようにウェンが答える。

「あなたと彼は、常にこの世界に一人の人間として存在することができる。
と、いうことになるでしょうね。まぁ…ただの夢語りに過ぎませんが」
だが、それはそれで幸運だったかもしれない。
二人ともこの世界に存在していたら、色々いざこざが起こりかねない。
マグナスは内心ほっとしていた。

「…できる限り行こうとは思ってるんだけどなぁー」
街の中心部に建つ家でそんな声がする。リースだ。
「毎日忙しいのは分かってるわ……私だって人のことは
言えないのだから」
彼の向かいに座っている――――、腰まである輝かしい金髪に
蒼い瞳を持つ女性はどこか寂しげに言う。
「フィアナ…そんな顔するなって。来週は必ず行くさっ。
もちろんルインも連れて、な？」
リースの妻である彼女――、フィアナはグランディア随一の歌姫と称されており、
月に一度、都市の中心にあるホールでコンサートが開かれている。
丁度昨日がその日だったのだ。
「お母さん、とても綺麗だもんっ。行ってあげないと損だよ～」
いつの間にいたのだろう――、ルインが突然横から言う。
「そ、それは関係ないだろうっ！」
彼が慌てて言うのを見て、フィアナはくすっと笑う。そして、
「ありがとう、ルイン」
と、微笑んで言った。

そして、リースは立ち上がると
「よし！そろそろ行くかな」
と言うと準備を始めた。
結局、一番忙しいのは彼なのだろう。
「気を付けてね」「いってらっしゃーい！」
二人の声を背に受けて、リースは仕事へと向かった。

一方、グランディア近辺の湖―――。
今日も一人の少年がここを訪れていた。
その見覚えのある銀髪は――、アレンだ。
彼はいつもこの近くで魔術の修練をしている。
周囲を森林に囲まれており、人目は少ない。
アレンは元々、密かに努力をする性格なのだ。

「炎よ…我に連なり敵を討てっ！」
右手を前にかざし、詠唱を始める。
そして――――。

「フレイムアロー！」

正面に展開した魔法陣からいくつもの炎の矢が放たれる。
"バシャッ！バシャッ！"
それらは湖に命中し、水面を波立たせて波紋を作る。
アレンはかざした手をおろすと、息をついた。
(まだ威力が足りないか……)
彼は決して自分が強いとは思わない。
言わせてみれば、"他人(ひと)に強いと言われた時、初めて人は強くなれる"

これもマグナスから教えられたのだろう。
気を取り直して、もう一度詠唱に入ろうとしたその時―――。

「また魔術の修練？」

森林から突然声が聞こえ、アレンは驚いてその方向を見た。
そこには、幼馴染の少女―――、セフィラがいた。
腰の後ろには鞘と一緒に取り付けられた木刀。

「……何だ、セフィラか…」

アレンはほっとしたように肩を落とす。
「魔物だと思ったの？」
「もしそうなら、魔術の詠唱が間に合わなかっただろうな」
実際、彼は剣や格闘などの心得はない。

「……何故ここが？」
それは一番気になっていたことだ。
学校を出た後、セフィラはアレンの姿を見ていない。
彼女はそれを予想していたのだろう。
「アレン、いつもここで練習してたから…もしかしたら、と思ってね」
「…そうか」

その後しばらく、セフィラはアレンの修行に付き合うことになった。
"友達"だからなのか"幼馴染"だからなのか―――。

「フレイムアロー！」

彼女はそんなアレンをずっと見ていた。
そして――――。

「セフィラ、そろそろ帰ろう」
ふいにアレンが修行をやめて、帰る準備を始める。
「うん、そうだね。もう日も低いし……」
セフィラが剣を直そうと、柄に手をかけたその時―！

"ガサッ"
目の前の草むらが突然音を立てて揺れた。
「！！」
二人は同時に驚き、その方向を見据える。いや、見据える必要もないだろう。
そう――、その揺れの正体は……

「…魔物かっ！」
普段はあまりこんな声を出さないアレンが取り乱したような雰囲気を見せる。
素早く魔道書に手をかける。そして、
「セフィラ、魔物を足止めしてくれっ！僕が魔術で片をつける」
と、彼女に言う。
「で、でも私…魔物と戦ったことなんて…」
「君はマグナス先生の教え子だろう？」
突如心配そうな表情を見せたセフィラにアレンが言葉をかける。
そうだ。自分はマグナスに強さというものを教えてもらっている。
ここでそれを見せなくてどこで見せる？
迷いを吹っ切るように、セフィラは木刀を抜いて――、そして構える。

「昇竜斬っ！」

こちらに向かって駆けてきた獣型の魔物に特技を浴びせる。
「グオォォッ！！！」
最初の一撃で魔物は大きく吹き飛び、草むらに半分身を沈めた。
だが、まだ生きている。
セフィラはアレンの方を振り返った―――。

「……ライトニングッ！」

同時に詠唱が終わり、雷の魔術が魔物めがけて放たれた。
"ビシャァァンッ！"
辺りが一瞬強い輝きにつつまれ、その中に電撃に打たれる魔物の姿を見る
ことができた。
魔物は声もあげず、その場に倒れる。
「……や、やったの？」
セフィラが先に口を開いた。
「あぁ、どうやら」
彼の言葉を聞くと、ほっとしたように剣を降ろした。
だが、生物の命を奪うというのはいつだっていいことではない。
それも自分がそうしなければならないときは特に――――。
「…行こう。ここにいると新たな魔物が現れるかもしれない」
「う、うん…」
アレンは魔物が横たわっているのを見ても、目を閉じただけで
それっきり何もしなかった。
森林の出口に向かって歩き出すアレンを、セフィラは急いで追っていった……

To be continued...

「作者メッセージ」

随筆追いつきましたぁ～；
と、いう訳で第3章！！！
今回は回想が多くなった影響でいまいち迫力が…＞＜；
戦闘シーンも最後の方だけになっちゃったので、
次回の宿題とさせてもらいます！

実を言うと、第1章から数えて文章量がどんどん減ってるんですorz
焦ったらだめですよね、やっぱり＾＾；
まぁ、なんやかんやで……

第4章お楽しみにっ！