約束のピクニック【8】
約束のピクニック 8
作 神条
クレス達がトーティス村に戻り クラースとアーチェと別れて2ヶ月
マルス・ウルドールによって壊滅させられたトーティス村は
モリスンやトリスタンの協力もあって その姿を取り戻しつつあった
宿が建ち 店が建ち 現在も集まった行商人達によって
復興作業が行われている
チェスター「なんだかやっと村らしくなってきたな
クレス「これもモリスンさんが呼んで来てくれた行商人の人達のおかげだよ
僕やチェスターの家もほとんどそのまま復元してくれたし
チェスター「ああ でも さすがに命だけは復元できないけどな・・・
クレス「チェスター・・・
モリスン「よぉ クレス!
クレス「あ モリスンさん こんにちは
モリスン「どうやら 作業は順調みたいだな
クレス「ええ その節はどうも
モリスン「私の知り合いの行商人の中にもトーティス出身者がいて良かったよ
故郷を復活させたいという気持ちが君達と同じだったわけさ
クレス「そうだったんですか ここの復興作業をしている人たちが
トーティスのことを良く知っている理由がわかりました
モリスン「そうか ・・・では私は用があるのでな また会おうクレス
・・・おっと 忘れるところだった
クレス「?
モリスン「ここへ来る途中ある人から君達へ手紙を預かっている ほら
クレス「誰から ですか?
モリスン「それは手紙を見れば分かると思うぞ じゃあな!
クレス「あぁ! モリスンさん!
チェスター「誰からだ? 見てみろよ
クレス「ああ えっと
手紙 『クレス ミント チェスターへ
ローンヴァレイで待ってるから早く来てね!
クレス「これって!?
チェスター「アーチェ!?
ミント「名前は書いてありませんけど これは間違いなくアーチェさんの・・・
クレス「わざわざ手紙を渡しに来るなんて・・・ なんでここまで来なかったんだ?
チェスター「ま アイツにしてみれば100年振りだからな 恥ずかしかったんだろうな
クレス「そっか 僕達は2ヶ月しか経ってないけど アーチェには100年も待たせてるんだよな
ミント「会いに行きますか?
クレス「もちろんだよ
チェスター「んじゃ すぐ出発しようぜ
クレス「ちょっと待っててくれ トリスタン師匠に少し村を空けるって伝えてくるよ
無断で出て行くのは 復興作業をしている人たちに失礼だからね
ミント「それでは 私とチェスターさんで準備をしておきますね
クレス「ああ 頼むよ
行商人「それでは この柱はここに立ててもよろしいですか?
トリスタン「いや この上に鐘が乗るでな その柱はもう少し向こうに立てて・・・
クレス「トリスタン師匠 お疲れ様です
トリスタン「ほ? クレスか どうしたんじゃ?
クレス「急で申し訳ないんですが 実は仲間から手紙が来て・・・
チェスター「よーし これで準備完了だな!
ミント「アーチェさんは 元気にしているでしょうか?
チェスター「ま 大丈夫だって それだけが取り柄みたいな奴だからな
ミント「もうチェスターさん 本当は心配しているのでは?
チェスター「あ? そ そりゃまぁ アイツは100年も生きてるわけだし・・・
ミント「その気持ちは分かりますよ
クレス「おーい 遅くなってごめん 準備はできたかい?
チェスター「おう バッチリだぜ
ミント「許可はもらえましたか?
クレス「うん でもみんな働いているんだから 出来るだけ早く戻って来ないとね
ミント「そうですね もしできることならアーチェさんにもトーティスを見てもらいましょう
チェスター「んじゃ そろそろ行こうぜ
― ユークリッドへの山道 ―
クレス「アーチェは昔と変わらず あの小屋に住んでいるのかな?
アーチェ バートさんやクラースさんも亡くなられて きっと寂しかっただろうな
チェスター「アーチェ・・・
ミント「もし落ち込んでいましたら 私達で元気付けてあげましょう
クレス「チェスター 頼むぞ
チェスター「なななんで俺なんだよ!?
クレス「だってアーチェは特別チェスターのことを・・・
チェスター「だぁっ もう分かったよ! 分かったから言うな!
クレス「はいはい
クレス「はぁ それにしても相変わらず道が悪いなこの山道 大丈夫かい?
チェスター「俺は大丈夫だ
ミント「私も大丈夫です
クレス「よっと ふぅ やっと抜け出せた
チェスター「ん?
クレス「どうした?
チェスター「なんか 誰かに呼ばれたような・・・
クレス「・・・ なにも聞こえないぞ
チェスター「いや確かに聞こえたんだけどなぁ
― おーい! ―
クレス「あ 本当だ でもこの声どこかで聞いたような・・・
ミント「あ あれを見てください!
クレス「え?
アーチェ「おーい! みんな~!
チェスター「アーチェ!
ミント「アーチェさん!
クレス「アーチェ!
アーチェ「う~! みんな遅いから探しに来ちゃった!
クレス「アーチェこそ 近くまで来たならトーティスまで来ればよかったのに
アーチェ「だってなんか恥ずかしいじゃん? あたしは100年振りなんだし
チェスター「はぁ? なに似合わない言葉使ってんだよ
アーチェ「なによ! あたしだって恥らいくらいありますよ~だ!
チェスター「・・・
アーチェ「・・・な なによ 急に黙って
チェスター「な なんでもねぇよ ・・・ったく
アーチェ「・・・
ミント「と ところでアーチェさん 気になっていたんですけど・・・
アーチェ「?
ミント「その頭にかぶってるのは もしかして・・・
アーチェ「うん クラースのだよ 形見にもらったの
クレス「クラースさんの帽子か・・・
ミント「やっぱりそうでしたか・・・
アーチェ「まぁ 積もる話があるだろうけど まずは移動しない?
見せたい物 見せなくちゃいけない物もあるし
クレス「見せたい物?
― ローンヴァレイ アーチェの家 ―
アーチェ「はい クレス
クレス「何これ?
アーチェ「クラースからの手紙
クレス「クラースさんから!? ん 重い 何か入っているのか?
・・・これって 契約の指輪!?
アーチェ「手紙はあたしも読んでないんだ クラースがみんなで読んでくれって言うからさ
クレス「そっか じゃあ読むよ
手紙 『クレス ミント チェスターへ
これをアーチェから受け取ったということは 私の存在しない時代になったということだろう
いや 私達の時代がお前達の時代に追いついた という表現が正しいのかもしれないな
約束通り 私は私の時代に戻ったあと 時間の剣を封印するため再び旅に出た
ユミルの森の石盤で時間の剣の分解と共に精霊の契約も解いてきた
召喚術はもう必要ない 時間転移という貴重な体験も出来たとこだし 悔いは無いさ
それでその12の契約の指輪を 私の旅の想い出として手紙と共にアーチェにたくすことにする
研究を役に立たせてくれてありがとう お前達との旅はあの世でも決して忘れないだろう
それじゃみんな いつまでも元気でな 悔いの残る人生は送るなよ
クラース・F・レスター
ついでにアーチェへ
私を100年も生かしてくれてありがとう 帽子は大事にしてくれよ 』
ミント「クラースさん・・・
アーチェ「クラース はげ隠し大事にするよ 無くさない 汚さない・・・
チェスター「契約の指輪 100年経っても輝きはそのままだな
クレス「この指輪は僕らの旅の想い出でもあるんだ 大切にしないとね
ミント「そうですね
クレス「アーチェ これは手紙と一緒に大切に保管しておいてくれ 今僕らではこれを管理することはできない
アーチェ「んじゃ 閉まっとくね
クレス「それにしてもクラースさんの帽子かぁ なんだかハゲって言ってたときのことを思い出すよ
チェスター「忍者の里の温泉に入った後のことな
アーチェ「ねぇ みんな
クレス「ん?
チェスター「なんだよ
アーチェ「お腹空かない?
クレス「そうだな~ ここまでパンしか食べてなかったし お腹空いたよ
ミント「私も少し・・・
アーチェ「そう? みんな運がいいよ~ うしゃしゃしゃっ
チェスター「な なんだよ その不気味な笑いは?
アーチェ「じゃーん! 実はこのアーチェさんが 再会記念にと思いまして!
なんと今回 特製料理を用意しちゃいましたぁー!
クレス「・・・
チェスター「・・・
ミント「・・・
アーチェ「なによこの沈黙は 100年も経ってるんだから上手くなってるに決まってるでしょうが!
クレス「そ そうだよね!
チェスター「だ 黙ったりして悪かった
ミント「それで 何を作ったんですか?
アーチェ「それは見てからの お・た・の・し・み!
クレス「いつかは食べると思ってたけど 再会していきなりとはなぁ・・・
ミント「クレスさん!
チェスター「な なぁ アイツ 俺達に一体何食わす気だ?
クレス「もしかして決戦前夜に食べた あれ?
ミント「でも本人は100年経って上手くなったって言ってますから大丈夫ですよ
チェスター「そんなこと100%信じられるかよ 今までアイツの料理が成功した確率は1割下回ってたぞ
クレス「でもまずいっていったら怒るだろうなぁ・・・ こうなったら チェスター ミント・・・ いいかい?
アーチェ「おまたせー! スパイシーペスカトーレ・アーチェスペシャルで~す!
クレス「おぉ! なんか美味しそうだ!
ミント「すごいじゃないですか アーチェさん!
チェスター「・・・
アーチェ「まぁあたしにかかればこんなもんね とにかく召し上がれ
クレス「いただきまーす
ミント「いただきます
チェスター「い いただきまーす
アーチェ「・・・
クレス「はぐっ!
ドサッ
チェスター「うぎゅっ!
ドサッ
ミント「クレスさん! チェスターさん! どうしたのですか!?
クレス「あ あれ? まずく ない・・・ むしろ美味しい!???
チェスター「まさか味覚がおかしくなったんじゃないだろうな?
アーチェ「おのれら・・・
クレス「ごごごめん アーチェ!
チェスター「つい 条件反射でさ・・・!
ミント「お二人とも席に着いて気を取り直していただきましょう ね?
クレス「そ そうだね それじゃいただきます
チェスター「まさか・・・こんなことが・・・
アーチェ「あぁ? なんか言った?
チェスター「いえ なんでもありません・・・
アーチェ「・・・ったく
クレス「ふぅ 美味しかったよアーチェ
ミント「ご馳走様でした
チェスター「信じらんねぇ
アーチェ「まぁ ね いろいろ あったから・・・
みんなとまた会うのに100年経っても何にも変わってないっていうのは
バカみたいじゃん? 作れる料理はまだ少ないけど 一生懸命努力したんだ
努力なんて暑苦しくて あたしらしくないけどね・・・
チェスター「な~に言ってんだ そんなことねぇよ
アーチェ「え?
チェスター「俺だって同じさ 俺だけじゃない クレスだってミントだってそのはずだ
人は最初から上手く出来ることなんて何もないんだ
まぁ 向き不向きっていう個人差はあるかもしれないけどな
でも実際お前はちゃんと作れるようになってんじゃん それだけで十分立派だよお前は
クレス「チェスターの言う通りだよ 努力したんだからこうやって結果に表れてるじゃないか
だからもっと自分の努力に自信を持ちなよ
アーチェ「うん ありがとね クレス チェスター・・・
クレス「さぁ 僕達はもう帰らないと
チェスター「そうだな
アーチェ「え~! もう帰っちゃうの!? まだいいじゃん!
ミント「私達はトーティスの復興作業をしなくてはいけませんから
チェスター「なら お前も一緒に来ないか?
アーチェ「え?
チェスター「どうせ暇なんだろ?
ミント「歓迎しますよ アーチェさん
アーチェ「うん それじゃお言葉に甘えてついて行こうかな まぁ暇なのは正解だからね
ちょっと外で待っててすぐに準備するからさ
チェスター「ふぃ~ なんて美味しい空気なんだ~!
クレス「はぁ 顔青かったけど 迫真の演技だったな チェスター
チェスター「お前も命賭けて良くやるよ あの平然さは誰も真似できねぇよ クレス
ミント「もう 二人ともアーチェさんに聞こえたら怒られますよ!
チェスター「そういうミントだって 本当は我慢してただろ?
ミント「そ そんなことないですよ 多分・・・
クレス「チェスター いつかバレないか?
チェスター「う~ん それじゃあ 俺達のなかではアイツの料理の腕は一流ってことで
クレス「おいおい これからずっとか? ダオスとの戦いよりも厳しいかもしれないな
チェスター「そりゃ言えてる
ミント「もう・・・
アーチェ「お待たせ~!
チェスター「へへへ 来た来た
アーチェ「なによ
チェスター「別に
アーチェ「あっそ ・・・ほい クレス
クレス「ん? 契約の指輪のネックレスか
アーチェ「こうしとけば落ちないでしょ
チェスター「へぇ きれいじゃん!
ミント「本当 輝いてます
アーチェ「んじゃ 行こうよ ピクニック!
クレス「ピクニック? ああ そうだね ・・・よ~し出発だ!
時間によって失われていくものは数え切れないほどあります
ですが人の想いや魂は失われません
クレスの胸に光り輝く契約の指輪がそのことを物語っています
皆で過ごした最後の時間 ピクニック
誰も忘れることの無い 想い出を作ることが出来たようです
見えなくなった人を心の中で見られるように・・・
約束のピクニック ~ 完 ~
----------------
あとがき
ひとまず お疲れ様自分w
読んでくれた人 ありがとうございます
待ちくたびれた人 申し訳ございません
次も頑張りますんでどうかよろしく
作 神条
クレス達がトーティス村に戻り クラースとアーチェと別れて2ヶ月
マルス・ウルドールによって壊滅させられたトーティス村は
モリスンやトリスタンの協力もあって その姿を取り戻しつつあった
宿が建ち 店が建ち 現在も集まった行商人達によって
復興作業が行われている
チェスター「なんだかやっと村らしくなってきたな
クレス「これもモリスンさんが呼んで来てくれた行商人の人達のおかげだよ
僕やチェスターの家もほとんどそのまま復元してくれたし
チェスター「ああ でも さすがに命だけは復元できないけどな・・・
クレス「チェスター・・・
モリスン「よぉ クレス!
クレス「あ モリスンさん こんにちは
モリスン「どうやら 作業は順調みたいだな
クレス「ええ その節はどうも
モリスン「私の知り合いの行商人の中にもトーティス出身者がいて良かったよ
故郷を復活させたいという気持ちが君達と同じだったわけさ
クレス「そうだったんですか ここの復興作業をしている人たちが
トーティスのことを良く知っている理由がわかりました
モリスン「そうか ・・・では私は用があるのでな また会おうクレス
・・・おっと 忘れるところだった
クレス「?
モリスン「ここへ来る途中ある人から君達へ手紙を預かっている ほら
クレス「誰から ですか?
モリスン「それは手紙を見れば分かると思うぞ じゃあな!
クレス「あぁ! モリスンさん!
チェスター「誰からだ? 見てみろよ
クレス「ああ えっと
手紙 『クレス ミント チェスターへ
ローンヴァレイで待ってるから早く来てね!
クレス「これって!?
チェスター「アーチェ!?
ミント「名前は書いてありませんけど これは間違いなくアーチェさんの・・・
クレス「わざわざ手紙を渡しに来るなんて・・・ なんでここまで来なかったんだ?
チェスター「ま アイツにしてみれば100年振りだからな 恥ずかしかったんだろうな
クレス「そっか 僕達は2ヶ月しか経ってないけど アーチェには100年も待たせてるんだよな
ミント「会いに行きますか?
クレス「もちろんだよ
チェスター「んじゃ すぐ出発しようぜ
クレス「ちょっと待っててくれ トリスタン師匠に少し村を空けるって伝えてくるよ
無断で出て行くのは 復興作業をしている人たちに失礼だからね
ミント「それでは 私とチェスターさんで準備をしておきますね
クレス「ああ 頼むよ
行商人「それでは この柱はここに立ててもよろしいですか?
トリスタン「いや この上に鐘が乗るでな その柱はもう少し向こうに立てて・・・
クレス「トリスタン師匠 お疲れ様です
トリスタン「ほ? クレスか どうしたんじゃ?
クレス「急で申し訳ないんですが 実は仲間から手紙が来て・・・
チェスター「よーし これで準備完了だな!
ミント「アーチェさんは 元気にしているでしょうか?
チェスター「ま 大丈夫だって それだけが取り柄みたいな奴だからな
ミント「もうチェスターさん 本当は心配しているのでは?
チェスター「あ? そ そりゃまぁ アイツは100年も生きてるわけだし・・・
ミント「その気持ちは分かりますよ
クレス「おーい 遅くなってごめん 準備はできたかい?
チェスター「おう バッチリだぜ
ミント「許可はもらえましたか?
クレス「うん でもみんな働いているんだから 出来るだけ早く戻って来ないとね
ミント「そうですね もしできることならアーチェさんにもトーティスを見てもらいましょう
チェスター「んじゃ そろそろ行こうぜ
― ユークリッドへの山道 ―
クレス「アーチェは昔と変わらず あの小屋に住んでいるのかな?
アーチェ バートさんやクラースさんも亡くなられて きっと寂しかっただろうな
チェスター「アーチェ・・・
ミント「もし落ち込んでいましたら 私達で元気付けてあげましょう
クレス「チェスター 頼むぞ
チェスター「なななんで俺なんだよ!?
クレス「だってアーチェは特別チェスターのことを・・・
チェスター「だぁっ もう分かったよ! 分かったから言うな!
クレス「はいはい
クレス「はぁ それにしても相変わらず道が悪いなこの山道 大丈夫かい?
チェスター「俺は大丈夫だ
ミント「私も大丈夫です
クレス「よっと ふぅ やっと抜け出せた
チェスター「ん?
クレス「どうした?
チェスター「なんか 誰かに呼ばれたような・・・
クレス「・・・ なにも聞こえないぞ
チェスター「いや確かに聞こえたんだけどなぁ
― おーい! ―
クレス「あ 本当だ でもこの声どこかで聞いたような・・・
ミント「あ あれを見てください!
クレス「え?
アーチェ「おーい! みんな~!
チェスター「アーチェ!
ミント「アーチェさん!
クレス「アーチェ!
アーチェ「う~! みんな遅いから探しに来ちゃった!
クレス「アーチェこそ 近くまで来たならトーティスまで来ればよかったのに
アーチェ「だってなんか恥ずかしいじゃん? あたしは100年振りなんだし
チェスター「はぁ? なに似合わない言葉使ってんだよ
アーチェ「なによ! あたしだって恥らいくらいありますよ~だ!
チェスター「・・・
アーチェ「・・・な なによ 急に黙って
チェスター「な なんでもねぇよ ・・・ったく
アーチェ「・・・
ミント「と ところでアーチェさん 気になっていたんですけど・・・
アーチェ「?
ミント「その頭にかぶってるのは もしかして・・・
アーチェ「うん クラースのだよ 形見にもらったの
クレス「クラースさんの帽子か・・・
ミント「やっぱりそうでしたか・・・
アーチェ「まぁ 積もる話があるだろうけど まずは移動しない?
見せたい物 見せなくちゃいけない物もあるし
クレス「見せたい物?
― ローンヴァレイ アーチェの家 ―
アーチェ「はい クレス
クレス「何これ?
アーチェ「クラースからの手紙
クレス「クラースさんから!? ん 重い 何か入っているのか?
・・・これって 契約の指輪!?
アーチェ「手紙はあたしも読んでないんだ クラースがみんなで読んでくれって言うからさ
クレス「そっか じゃあ読むよ
手紙 『クレス ミント チェスターへ
これをアーチェから受け取ったということは 私の存在しない時代になったということだろう
いや 私達の時代がお前達の時代に追いついた という表現が正しいのかもしれないな
約束通り 私は私の時代に戻ったあと 時間の剣を封印するため再び旅に出た
ユミルの森の石盤で時間の剣の分解と共に精霊の契約も解いてきた
召喚術はもう必要ない 時間転移という貴重な体験も出来たとこだし 悔いは無いさ
それでその12の契約の指輪を 私の旅の想い出として手紙と共にアーチェにたくすことにする
研究を役に立たせてくれてありがとう お前達との旅はあの世でも決して忘れないだろう
それじゃみんな いつまでも元気でな 悔いの残る人生は送るなよ
クラース・F・レスター
ついでにアーチェへ
私を100年も生かしてくれてありがとう 帽子は大事にしてくれよ 』
ミント「クラースさん・・・
アーチェ「クラース はげ隠し大事にするよ 無くさない 汚さない・・・
チェスター「契約の指輪 100年経っても輝きはそのままだな
クレス「この指輪は僕らの旅の想い出でもあるんだ 大切にしないとね
ミント「そうですね
クレス「アーチェ これは手紙と一緒に大切に保管しておいてくれ 今僕らではこれを管理することはできない
アーチェ「んじゃ 閉まっとくね
クレス「それにしてもクラースさんの帽子かぁ なんだかハゲって言ってたときのことを思い出すよ
チェスター「忍者の里の温泉に入った後のことな
アーチェ「ねぇ みんな
クレス「ん?
チェスター「なんだよ
アーチェ「お腹空かない?
クレス「そうだな~ ここまでパンしか食べてなかったし お腹空いたよ
ミント「私も少し・・・
アーチェ「そう? みんな運がいいよ~ うしゃしゃしゃっ
チェスター「な なんだよ その不気味な笑いは?
アーチェ「じゃーん! 実はこのアーチェさんが 再会記念にと思いまして!
なんと今回 特製料理を用意しちゃいましたぁー!
クレス「・・・
チェスター「・・・
ミント「・・・
アーチェ「なによこの沈黙は 100年も経ってるんだから上手くなってるに決まってるでしょうが!
クレス「そ そうだよね!
チェスター「だ 黙ったりして悪かった
ミント「それで 何を作ったんですか?
アーチェ「それは見てからの お・た・の・し・み!
クレス「いつかは食べると思ってたけど 再会していきなりとはなぁ・・・
ミント「クレスさん!
チェスター「な なぁ アイツ 俺達に一体何食わす気だ?
クレス「もしかして決戦前夜に食べた あれ?
ミント「でも本人は100年経って上手くなったって言ってますから大丈夫ですよ
チェスター「そんなこと100%信じられるかよ 今までアイツの料理が成功した確率は1割下回ってたぞ
クレス「でもまずいっていったら怒るだろうなぁ・・・ こうなったら チェスター ミント・・・ いいかい?
アーチェ「おまたせー! スパイシーペスカトーレ・アーチェスペシャルで~す!
クレス「おぉ! なんか美味しそうだ!
ミント「すごいじゃないですか アーチェさん!
チェスター「・・・
アーチェ「まぁあたしにかかればこんなもんね とにかく召し上がれ
クレス「いただきまーす
ミント「いただきます
チェスター「い いただきまーす
アーチェ「・・・
クレス「はぐっ!
ドサッ
チェスター「うぎゅっ!
ドサッ
ミント「クレスさん! チェスターさん! どうしたのですか!?
クレス「あ あれ? まずく ない・・・ むしろ美味しい!???
チェスター「まさか味覚がおかしくなったんじゃないだろうな?
アーチェ「おのれら・・・
クレス「ごごごめん アーチェ!
チェスター「つい 条件反射でさ・・・!
ミント「お二人とも席に着いて気を取り直していただきましょう ね?
クレス「そ そうだね それじゃいただきます
チェスター「まさか・・・こんなことが・・・
アーチェ「あぁ? なんか言った?
チェスター「いえ なんでもありません・・・
アーチェ「・・・ったく
クレス「ふぅ 美味しかったよアーチェ
ミント「ご馳走様でした
チェスター「信じらんねぇ
アーチェ「まぁ ね いろいろ あったから・・・
みんなとまた会うのに100年経っても何にも変わってないっていうのは
バカみたいじゃん? 作れる料理はまだ少ないけど 一生懸命努力したんだ
努力なんて暑苦しくて あたしらしくないけどね・・・
チェスター「な~に言ってんだ そんなことねぇよ
アーチェ「え?
チェスター「俺だって同じさ 俺だけじゃない クレスだってミントだってそのはずだ
人は最初から上手く出来ることなんて何もないんだ
まぁ 向き不向きっていう個人差はあるかもしれないけどな
でも実際お前はちゃんと作れるようになってんじゃん それだけで十分立派だよお前は
クレス「チェスターの言う通りだよ 努力したんだからこうやって結果に表れてるじゃないか
だからもっと自分の努力に自信を持ちなよ
アーチェ「うん ありがとね クレス チェスター・・・
クレス「さぁ 僕達はもう帰らないと
チェスター「そうだな
アーチェ「え~! もう帰っちゃうの!? まだいいじゃん!
ミント「私達はトーティスの復興作業をしなくてはいけませんから
チェスター「なら お前も一緒に来ないか?
アーチェ「え?
チェスター「どうせ暇なんだろ?
ミント「歓迎しますよ アーチェさん
アーチェ「うん それじゃお言葉に甘えてついて行こうかな まぁ暇なのは正解だからね
ちょっと外で待っててすぐに準備するからさ
チェスター「ふぃ~ なんて美味しい空気なんだ~!
クレス「はぁ 顔青かったけど 迫真の演技だったな チェスター
チェスター「お前も命賭けて良くやるよ あの平然さは誰も真似できねぇよ クレス
ミント「もう 二人ともアーチェさんに聞こえたら怒られますよ!
チェスター「そういうミントだって 本当は我慢してただろ?
ミント「そ そんなことないですよ 多分・・・
クレス「チェスター いつかバレないか?
チェスター「う~ん それじゃあ 俺達のなかではアイツの料理の腕は一流ってことで
クレス「おいおい これからずっとか? ダオスとの戦いよりも厳しいかもしれないな
チェスター「そりゃ言えてる
ミント「もう・・・
アーチェ「お待たせ~!
チェスター「へへへ 来た来た
アーチェ「なによ
チェスター「別に
アーチェ「あっそ ・・・ほい クレス
クレス「ん? 契約の指輪のネックレスか
アーチェ「こうしとけば落ちないでしょ
チェスター「へぇ きれいじゃん!
ミント「本当 輝いてます
アーチェ「んじゃ 行こうよ ピクニック!
クレス「ピクニック? ああ そうだね ・・・よ~し出発だ!
時間によって失われていくものは数え切れないほどあります
ですが人の想いや魂は失われません
クレスの胸に光り輝く契約の指輪がそのことを物語っています
皆で過ごした最後の時間 ピクニック
誰も忘れることの無い 想い出を作ることが出来たようです
見えなくなった人を心の中で見られるように・・・
約束のピクニック ~ 完 ~
----------------
あとがき
ひとまず お疲れ様自分w
読んでくれた人 ありがとうございます
待ちくたびれた人 申し訳ございません
次も頑張りますんでどうかよろしく