紅の記憶【3】
ただ、側にいたかっただけ。
一緒にいたかっただけだったんだよ
リア・・・
“ 紅の記憶 ”
―たった一度きりの再会を。―
「…リア」
泣き崩れた彼女をみて、立ち尽くしていた。
もう、会うことなんてないと
思っていた彼女が、
まるで息をふきかえしたように
まるで死んでなんていなかったみたいに
泣いている
あたしは
混乱していた
あの時流した涙はなんだったんだろ。
あんなに悲しかったのに、
彼女は今、ここにいる。
あんなに何も出来なかったことを
何度も悔やんだのに
あたしかわりに死んでやればよかったと、
何度も後悔したのに
・・・。
あたしは
少しだけ彼女に振り回された気になった
少しだけ彼女を嫌な目で見た
彼女はようやく泣き止むと、
まだ涙で潤んだ目であたしのほうを見た。
はじめは全然冷静になんてなれなかったのに、
リアに会えただけで、
嬉しかったのに。
なんで
なんで
あたし今…
リアを別人みたいにおもってるんだろ。
(・・・あ、アーチェ・・?)
「・・なに」
いやだ。
口調が冷たくなる。
あたしはリアが好きなのに
ずっと好きなはずなのに
(・・どうしたの?)
心がおかしい。
いや…
体がおかしいのかもしれない
「なんでもない」
(・・・うそ)
心の奥底で
あたしはどうおもってたんだろう
ずっと
おもってたのかな
本当に
おもってたのかな・・・
「リア・・」
(うん。)
「・・あたし、リアが・」
話そうとした、その時
脳裏を
見たことのないなにかが
瞬間的に通っていった
雷みたいなものが走り、
ただ暗いだけじゃなくて、
赤くて
うるさい感じで
なにか嫌に叫ぶ声だった。
それは予言だった
「いたっ!」
あまりにもそれが一瞬だったせいか
頭がズキンと痛んだ
ふとリアのほうを見る。
ついさっき見た何かが、視界に飛び込んできた。
彼女の背後に、真っ黒な影が・・
何かを振り上げる。
一瞬キラっと光る。
あれは・・―
赤くなった
「りあ!!」
(!!)
見覚えがある。
予言と言うよりは、むしろ過去のことだった
全部、
彼女が死んだ時のものだった
この剣も 彼女の体に突き立てられていたものと同じ
なんで?
ここは夢じゃないの?
リアはもう死んだんだよ?
どうして彼女の体から
血が 流れているの・・・?
(・・ぅ・・・くっ・・)
「・・リア、リア!」
ああ。
わかった。
あたしは彼女が偽者だと
どこかで思っていたんだ。
もう、会えるわけないと
彼女を目の前にして
おもっていたんだ。
(・・っはぁ・・・はあ・・)
リアを失った日、
あたしはリアの側にいたら助けられたと後悔していた。
でも結局
目の前に彼女は いたのに
あたしは
救えなかった。
彼女が
まだ助かるかもなんて思えなかった。
現実でもこの世界でも
もう彼女は生き返らない
どこにもいないんだってことも 知ってる
でも
目の前にいるのはリアだ。
夢じゃない
だったら何か・・なんて、わからないけど
でも
夢じゃないんだ。
助かったとしても
助からなくても
あたしは
リアを救いたいんだ。
ずっとそれを後悔していたんだ
「りあ!・・リア、」
壊れたレコードみたいに
何度も
同じ言葉が 音になる。
(・・あ、・・ち・・ぇ)
リアはまだ生きてる。
あたしも 生きてるんだ。
リアがいなくなって、
ダオスを討つことになって
あたしは
生きてるのか、わからなかった
自分がやってることが
間違ってるような気がして
誰かに操られているような錯覚を見た。
今ならわかる。
間違いなんかじゃない
ちゃんと生きてるんだ
「うん。ココにいるよ」
(・・はぁ・・・・あ・・・・っう)
リアを抱きとめていた腕に力が入る。
一度目を閉じてしまったら、
彼女はいなくなってしまうんじゃないかと思う。
まばたきしても
彼女は ここにいた
・・苦しい。
リアを失う時間が迫っていると思うと
あたしの体にも何かがつきささったみたいだった。
でも
リアはもっとずっと苦しいはずなのに
あたしに笑顔をみせた。
(あー・・ちぇ・・)
あたしは無力だ。
だから、
その笑顔を うなづいて、
うなづいて
精一杯の笑顔を返すことしかできない
リアはこんなあたしを許してくれるだろうか。
見殺しにしようとしてる、あたしを許してくれるだろうか。
「ごめん・・ね・・リア・・」
魔術なんかじゃなくて、
ミントみたいな癒しのちからがつかえたら
真っ先に助けてあげるのに。
(う・・ん)
ねぇ
もう少しだけ リアを生かしてよ
あたしにはリアがいないと
彼女の目が 虚ろになる
瞳に涙がうかんでいた。
この涙は痛みのせいじゃない、と
あたしに訴えるように
リアは あたしを見る
お願い。
彼女の傷 治してよ。
助けて、
あたしはどうなってもいいから
(あた・・し、)
おねがい。
おねがい。
助けてあげて・・。
(・・・だい・・す )
声が
きえた
すべてが
おわった。
リアはなにかを伝える途中で、
そっと目を閉じた
苦しかったと思う
つらかったと思う
あたしが計りきれないほどに。
感情のままに一喜一憂するリアは
あたしよりずっと繊細で
ガラス細工みたいな何かできてるように思ってた。
でも実際は
苦しくても耐えていたし
思っていたよりも強かったんだ。
あたしは不器用だったから
明るく振舞うことぐらいしかできなくて。
まして人前で泣いたことなんてなくて。
うらやましく思ってたのはリアだけじゃなかったのに。
ごめんね。
・・・
と、“リア”が消えた。
そこには血が流れていたとは思えないほど
白い空間ができあがった。
あたしも
きえるんだ。
いつの間にか、ここが現実であったような気になっていたけど
結局ここは異空間でしかなくて
無にかえるんだ
リアも
・・あたしも―
自身の手が
うっすらと白くなる
リアがここにいたこと、
忘れないよね・・?
きっと忘れないよね
そう おもえた
目が覚めると薄暗いなかに赤いものをみた。
暖炉の炎だった。
帰ってきたんだ
・・静かにしていると、暖炉の火の音と仲間たちの寝息が聞こえてきた。
ベッドから抜けだして、窓際まで来る。
外は雪が降り積もっていた。
窓は白く曇っている。
アーチェはそこに指で何かをかいた。
布団を鼻の位置までかぶる。
目を伏せると、まだ彼女が思い出される気がしていた。
・・・でも大丈夫。
今度はわたしがリアの仇をとってくるよ
アーチェはそう思うとすっと夢の中に入っていった。
仲間の寝息に混じり彼女もまた、
なにかを思い、決戦前の夜をすごしているのだ。
だが、もうすぐ夜は明ける。
彼女は今どんな夢を見ているのだろう。
そのアーチェ自身も知らないことがある。
彼女が眠っている間に
彼女の
閉じられた瞳からこぼれた一つの雫を
人はなんと呼ぶのか…を―
*あとがき。
こんにちは、
お初サマな方もそうでない方もイサトです^^
更新遅れてすみませんでした。。
完結することが出来てとても嬉しく思っています。
では作品の方に触れされていただきます。
原作ゲームの方ではリアとアーチェは親友ということになっていますが、
別れがあっさりしているし、アーチェは絶対未練を持っていたと
勝手に思っていたもので、いつか書いてみたいと思っていたのです。
正直感動系に挑戦したのですが、やはり難しいですね。
大げさな言葉は人を感動させないといいますしw
最後の一文は余韻のようなものを
感じていただけるようにと考えたものです。
余談ですが、前編と中編はインフルエンザで
出席停止になっているとき、高熱の中で書き上げたものですので、
今読み直してみるとだいぶ文脈に疑問を感じますね。。
最後に、後編まで読んでいただいた貴方に感謝を申し上げます。
では~
一緒にいたかっただけだったんだよ
リア・・・
“ 紅の記憶 ”
―たった一度きりの再会を。―
「…リア」
泣き崩れた彼女をみて、立ち尽くしていた。
もう、会うことなんてないと
思っていた彼女が、
まるで息をふきかえしたように
まるで死んでなんていなかったみたいに
泣いている
あたしは
混乱していた
あの時流した涙はなんだったんだろ。
あんなに悲しかったのに、
彼女は今、ここにいる。
あんなに何も出来なかったことを
何度も悔やんだのに
あたしかわりに死んでやればよかったと、
何度も後悔したのに
・・・。
あたしは
少しだけ彼女に振り回された気になった
少しだけ彼女を嫌な目で見た
彼女はようやく泣き止むと、
まだ涙で潤んだ目であたしのほうを見た。
はじめは全然冷静になんてなれなかったのに、
リアに会えただけで、
嬉しかったのに。
なんで
なんで
あたし今…
リアを別人みたいにおもってるんだろ。
(・・・あ、アーチェ・・?)
「・・なに」
いやだ。
口調が冷たくなる。
あたしはリアが好きなのに
ずっと好きなはずなのに
(・・どうしたの?)
心がおかしい。
いや…
体がおかしいのかもしれない
「なんでもない」
(・・・うそ)
心の奥底で
あたしはどうおもってたんだろう
ずっと
おもってたのかな
本当に
おもってたのかな・・・
「リア・・」
(うん。)
「・・あたし、リアが・」
話そうとした、その時
脳裏を
見たことのないなにかが
瞬間的に通っていった
雷みたいなものが走り、
ただ暗いだけじゃなくて、
赤くて
うるさい感じで
なにか嫌に叫ぶ声だった。
それは予言だった
「いたっ!」
あまりにもそれが一瞬だったせいか
頭がズキンと痛んだ
ふとリアのほうを見る。
ついさっき見た何かが、視界に飛び込んできた。
彼女の背後に、真っ黒な影が・・
何かを振り上げる。
一瞬キラっと光る。
あれは・・―
赤くなった
「りあ!!」
(!!)
見覚えがある。
予言と言うよりは、むしろ過去のことだった
全部、
彼女が死んだ時のものだった
この剣も 彼女の体に突き立てられていたものと同じ
なんで?
ここは夢じゃないの?
リアはもう死んだんだよ?
どうして彼女の体から
血が 流れているの・・・?
(・・ぅ・・・くっ・・)
「・・リア、リア!」
ああ。
わかった。
あたしは彼女が偽者だと
どこかで思っていたんだ。
もう、会えるわけないと
彼女を目の前にして
おもっていたんだ。
(・・っはぁ・・・はあ・・)
リアを失った日、
あたしはリアの側にいたら助けられたと後悔していた。
でも結局
目の前に彼女は いたのに
あたしは
救えなかった。
彼女が
まだ助かるかもなんて思えなかった。
現実でもこの世界でも
もう彼女は生き返らない
どこにもいないんだってことも 知ってる
でも
目の前にいるのはリアだ。
夢じゃない
だったら何か・・なんて、わからないけど
でも
夢じゃないんだ。
助かったとしても
助からなくても
あたしは
リアを救いたいんだ。
ずっとそれを後悔していたんだ
「りあ!・・リア、」
壊れたレコードみたいに
何度も
同じ言葉が 音になる。
(・・あ、・・ち・・ぇ)
リアはまだ生きてる。
あたしも 生きてるんだ。
リアがいなくなって、
ダオスを討つことになって
あたしは
生きてるのか、わからなかった
自分がやってることが
間違ってるような気がして
誰かに操られているような錯覚を見た。
今ならわかる。
間違いなんかじゃない
ちゃんと生きてるんだ
「うん。ココにいるよ」
(・・はぁ・・・・あ・・・・っう)
リアを抱きとめていた腕に力が入る。
一度目を閉じてしまったら、
彼女はいなくなってしまうんじゃないかと思う。
まばたきしても
彼女は ここにいた
・・苦しい。
リアを失う時間が迫っていると思うと
あたしの体にも何かがつきささったみたいだった。
でも
リアはもっとずっと苦しいはずなのに
あたしに笑顔をみせた。
(あー・・ちぇ・・)
あたしは無力だ。
だから、
その笑顔を うなづいて、
うなづいて
精一杯の笑顔を返すことしかできない
リアはこんなあたしを許してくれるだろうか。
見殺しにしようとしてる、あたしを許してくれるだろうか。
「ごめん・・ね・・リア・・」
魔術なんかじゃなくて、
ミントみたいな癒しのちからがつかえたら
真っ先に助けてあげるのに。
(う・・ん)
ねぇ
もう少しだけ リアを生かしてよ
あたしにはリアがいないと
彼女の目が 虚ろになる
瞳に涙がうかんでいた。
この涙は痛みのせいじゃない、と
あたしに訴えるように
リアは あたしを見る
お願い。
彼女の傷 治してよ。
助けて、
あたしはどうなってもいいから
(あた・・し、)
おねがい。
おねがい。
助けてあげて・・。
(・・・だい・・す )
声が
きえた
すべてが
おわった。
リアはなにかを伝える途中で、
そっと目を閉じた
苦しかったと思う
つらかったと思う
あたしが計りきれないほどに。
感情のままに一喜一憂するリアは
あたしよりずっと繊細で
ガラス細工みたいな何かできてるように思ってた。
でも実際は
苦しくても耐えていたし
思っていたよりも強かったんだ。
あたしは不器用だったから
明るく振舞うことぐらいしかできなくて。
まして人前で泣いたことなんてなくて。
うらやましく思ってたのはリアだけじゃなかったのに。
ごめんね。
・・・
と、“リア”が消えた。
そこには血が流れていたとは思えないほど
白い空間ができあがった。
あたしも
きえるんだ。
いつの間にか、ここが現実であったような気になっていたけど
結局ここは異空間でしかなくて
無にかえるんだ
リアも
・・あたしも―
自身の手が
うっすらと白くなる
リアがここにいたこと、
忘れないよね・・?
きっと忘れないよね
そう おもえた
目が覚めると薄暗いなかに赤いものをみた。
暖炉の炎だった。
帰ってきたんだ
・・静かにしていると、暖炉の火の音と仲間たちの寝息が聞こえてきた。
ベッドから抜けだして、窓際まで来る。
外は雪が降り積もっていた。
窓は白く曇っている。
アーチェはそこに指で何かをかいた。
布団を鼻の位置までかぶる。
目を伏せると、まだ彼女が思い出される気がしていた。
・・・でも大丈夫。
今度はわたしがリアの仇をとってくるよ
アーチェはそう思うとすっと夢の中に入っていった。
仲間の寝息に混じり彼女もまた、
なにかを思い、決戦前の夜をすごしているのだ。
だが、もうすぐ夜は明ける。
彼女は今どんな夢を見ているのだろう。
そのアーチェ自身も知らないことがある。
彼女が眠っている間に
彼女の
閉じられた瞳からこぼれた一つの雫を
人はなんと呼ぶのか…を―
*あとがき。
こんにちは、
お初サマな方もそうでない方もイサトです^^
更新遅れてすみませんでした。。
完結することが出来てとても嬉しく思っています。
では作品の方に触れされていただきます。
原作ゲームの方ではリアとアーチェは親友ということになっていますが、
別れがあっさりしているし、アーチェは絶対未練を持っていたと
勝手に思っていたもので、いつか書いてみたいと思っていたのです。
正直感動系に挑戦したのですが、やはり難しいですね。
大げさな言葉は人を感動させないといいますしw
最後の一文は余韻のようなものを
感じていただけるようにと考えたものです。
余談ですが、前編と中編はインフルエンザで
出席停止になっているとき、高熱の中で書き上げたものですので、
今読み直してみるとだいぶ文脈に疑問を感じますね。。
最後に、後編まで読んでいただいた貴方に感謝を申し上げます。
では~
コメント
文章と文章の間が、とても良い雰囲気を出していました。文章にひきこまれます。これからもがんばってください。
Posted by: REI | 2007年05月02日 19:48
アーチェとリアの話が大好きなので、とても感動しました。
何度も繰り返し読ませていただいていますが、いつ読んでもいい物語だと思います^^
私も文章書きの端くれなので尊敬します。お互い頑張りましょう♪
Posted by: フェレーナ | 2008年10月10日 20:30