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デミテルは今日もダメだった【48】

あんみつ。漢字で書けば餡蜜と書く。

『餡』と『蜜』を足して、合わせて『餡蜜』。なんと甘味の響く名であろうか。

今、私の舌を這う餡。ああ甘い。甘いとは素晴らしい。神様ありがとう。世界に『甘い』という味覚をもたらしてくれて。ありがとう世界。ありがとう言葉。

ああ。しかし美味しいなぁこのクリームあんみつ。素晴らしいよクリームあんみつ。ありがとうクリームあんみつ。何度でもお礼を言うよクリームあんみつ。

ありがとう!世界中の甘味に、ありがとう!!

ありが

「デミテルさんしっかりしろなんだな。」
「あだぁっ!」

一人、甘味の世界の真髄に触れて感動していたデミテルの頭を、フトソンが思い切りひっぱたいた。

第四十八復讐教訓「ご使用前には取扱説明書を必ずお読みください」

砂漠の小さい村、オリーブヴィレッジは、珍しく人が多く外に出ていた。何故か?

今日が、季節感ゼロのこの街唯一の祭だからだ。


『第四百十八回 オリーブヴィレッジ納涼祭り』


村の至る所には、アルヴァニスタから配給されてきた巨大な氷柱が何本も立ち並び、村の空気を冷やしていた。

あちこちに立つ出店、屋台は、皆ひたすら冷たさを追求したものばかりだ。

キンキンに冷えたビールやジュース(グラスは氷製)、冷し中華、流し素麺、果物、

そして餡蜜や、かき氷、水羊羹、シャーベットアイス、パフェ、プリン、ゼリー

そして今デミテルが食べているのが

「…ふふふ。」

「美味いぃ!美味いぞォ主人っ!そして甘いぞぉこのアイス三段乗せっ!!」

デミテルはコーンに乗った、今にも溶けてこぼれ落ちそうな、チョコ、ソーダ、オレンジの三味のアイスの玉をハムハムと満喫し、食していた。

なんともまぁ、見てて呆れてくる程幸せそうな表情だ。目は少年のようにキラキラとしている。

その横で、リリスはムッとしていた。

「さっきから冷たい甘いものばかり…お腹壊しますよ?虫歯になりますよ?」
「ハーフエルフだから大丈夫だ!」
「何の根拠にもなんないわよ。」

アイスに噛り付く甘党の肩の上で、ジャミルは冷静に言った。

「なんだ?妙に不機嫌だな貴様?」
「別に…最近ちょっと変な夢見たから……」
「ほうそうか…」
「アンタねぇ…さっきから手当たり次第に買って食べてるけど、もうちょっと金銭感覚を…。」

ジャミルの口が止まった。

彼女の顔を、デミテルは、

鼻先にアイスを付けて、目をパチクリさせながら見つめていた。


か…か……

かわいい………


…って何考えてんのよアタシはああっ!!死ねえアタシぃぃぃっ!!


「…どーした?」

頭を抱えて悶えるジャミルを、デミテルは再びアイスにしゃぶりながら眺めていた。

「なんだ?お前も食いたいのか?言っておくがこれはやらんぞ。これは私だけのアイスクリームだ。」
「違うわ!いらないわよんなもん!!いやちょっと欲しいかも!」
「デミテル様ぁ!これ買ってぇ!!」

とっとこと、デミテルの足元にリミィが走り寄った。右手には、かき氷のカップが握られている。

「買って、というか、既に食っとるだろうが。ま、別にかまわんが。」
「うわぁい!今日のデミテル様優しいねぇ!!」
「何を言う。私は常に優しいだろうが。」
「ねぇデミテル、だったらアタシにもなんか…」
「ピーナッツか?今日は特別にカキピーにしてやろうか?」
「冷たいモノ買いなさいよ!!」
「デミテルさーん。これ買ってなんだなー。」

とっとこと、デミテルの元にフトソンが走り寄った。右手には、かき氷のカップが

左手にはバナナ、リンゴ、メロン、スイカ、きゅうり、パフェ、フライドチキン、ハンバーガー…

「よしフトソン。回れ右して戻してこい。」
「何で僕だけなんだな!?リミィは買って貰えるのになんでなんだな!?」
「論外だからだ。」
「論は論して初めて意味を成すんだな!!」
「哲学的なんだか馬鹿なんだかわからんこと言ってないで戻してこいバカ。」

「いいか?我らは遊びで来てるんじゃないんだ。」
「思いっ切り食べ歩いて遊んでんじゃないのアンタ。」
「我々の第一目的は…」


そう。我らの目的はクレスどもを追うことだ。聞き込みのおかげで、奴らがこちら方面に行っていることはわかっている。

この方向にあるのは、軍事大国ミッドガルズ。そしてその先は、我らがダオス様の城。一度だけ行ったことはあるが…

奴らのことでわかっているのは、奴らが月の精霊ルナとの契約を目指していて、なおかつそのルナの力を借り、ダオス様を討伐しようとしていることだ。

ふん。奴らがダオス様の元にたどり着く前に、奴らをこの私が廃除すれば、我が復讐は完遂でき……


デミテルの思考が停止した。彼はおもむろに自分の、茶色い折りたたみ式の、革製の財布を覗いていたのだが、

ふと気がついた。

残り残高、全財産、現在

6ガルド。

デミテルの頭の中で水素爆発が起きた。全ての思考を超越していく。

横から見ていたジャミルも、ヒスイ色の毛並みを青白くして、動きを止めた。死んだんじゃないかと思えるぐらい、ピッタリと止まった。

「ねぇちょっとデミテルコレ…」
「誰だあああっ!?私の財布を勝手に漁ったのはああっ!?」
「どう考えてもアンタ自身だろうが漁ったのはあっ!?」
「違う。断じて違うぞ。私の買い食いのせいで金が無くなるなんてことは絶対に…」


絶対に…

…絶対そうだよなぁ。


デミテルは本当に買っては食うを繰り返していた。自分のお菓子がリリスに管理され、存分に糖分を摂取出来ない中で

ここに訪れた時に香った甘味達は、彼には宝石のように映っていた。故に、買って食いまくった。

その代償が、今来ていた。

「…これじゃ宿にも止まれないわね。」
「ふむ。落ち着けお前ら。一日ニガルドで生活したとして…」
「一日ニガルドでも三日しか過ごせないんだな。」
「つーか一日ニガルドで暮らせると思ってんの?」

デミテルは頭をボリボリとかいた。すると、ジャミルの方を見た。

「ついに非常食の出番が…」
「うわぁい!今日は焼鳥だぁ!!」
「なんの根本的解決にもなってないでしょうが!今日一日しのいだところで意味無いでしょ!?つーか食うなぁ!!」

一番問題がある部分を最後につっこみながら、ジャミルは怒った。

――――――――――――――――――――――。


祭りで作られた人の波をかやの外にして、デミテル達は雑貨屋『テンダロイン』の入り口の階段に座り込んでいた。

「おい。食料は何が残ってる?」
「えーと…」

「カレールーがあるんだな。」
「カレーか。カレーならニ、三日は…」
「でも具が無いんだな。」
「何も無いのか?人参も?タマネギも?」
「ええと…」

フトソンは、食料がいれてある茶色い、巾着状の袋を漁った。

やがて、緑色の玉を玉のようなものを取り出した。

「…………。」

「…マリモがあったんだな。」
「…なんでそんなものが入っとるんだ。」
「リミィがおもしろがって買ったんだな。さっき。」
「………。」

デミテルはしばらく悩むと、やがてこう呟いた。

「…マリモカレー。」
「デミテル落ち着きなさい。マリモは食べれないから。これ藻だから。」
「…マリモって海草に入るのか?ならば、海鮮カレーという名目で…」
「藻しか入ってないカレーなんて見たこと無いわ!!つーか藻なんて入れねーよ!!」

段々自暴自棄じみになってきたデミテルにイライラしながら、ジャミルは怒鳴った。

「食料っていうか、金が無いんじゃ何も出来ないでしょうが!道具も買えないし宿も…」
「とうとう私の真の悪の姿を見せる時がきたか。」

デミテルはスッと立ち上がり、自信ありげに言った。

「いいか貴様ら?世の中には『万引き』という名のアイテム取得方法があってだな、かつて私は『赤い流星』という異名を取る程の……」
「何か売ればいいんじゃないですか?」

リリスが、RPGゲームにおいてひどく常識的な金銭取得方法を述べた。デミテルの自慢げな口はピタリと止まった。

「…あー。そういうのもあるな。」
「というかそれが一番賢いんだな。」
「そうしよぉ~!」
「…おい。誰か私の万引き裁きを拝見したいという者は…」
「万引きは犯罪ですよ。やめましょうねデミテルさん。」
「…はい。」

デミテルは笑顔で指摘するリリスに、素直に従った。

「しかしなぁ、売ると言ってもそんな大層なものは…」

デミテルはメニュー画面を開きながら言った。

「いやいやいやいやいや?デミテルさん?何至極当たり前のように『メニュー画面』なるものを出現させてるんだな?今この瞬間に世界のバランス崩壊したんだな。」
「ついでにカスタムで人物表示をから『フェイス』に…」
「しかもなんでそんな操作詳しいんだな!?」
「取り扱い説明書をちゃんと読んだからな。」
「何に対しての説明書!?」

デミテルは手際よくメニュー画面を操作し、アイテム画面を開いた。

「なんかもう…何もかもが支離滅裂なんだな………」
「ほれ見てみろお前ら。何か売ろうにもたいしたものが無い…」

アイテムの一覧を見ながら、デミテルは淡々と言った。

武器・防具
〇デミテル用
・ウィップ
・ショルダー
・マント

〇リリス用
・オタマ
・フライパン
・エプロン


食料
・カレールー
・マリモ
・ジャミル


「いやいやいやいやちょっと待ちなさいよ。」

アイテム欄に自分の名前が記載されているという恐ろしい事実に、ジャミルは憤慨した。

「なんでアタシの名前がマリモと一緒に並んでんのよ?!バグってるわよこれ絶対!!」
「いやしかし、カーソル合わせるとちゃんと説明出るぞ?」


ジャミル 食料

鳥肉。屋外で育てられた健康な鳥の肉で品質安心。


「ってこれ完全に『チキン』の説明文そのままでしょうが!!屋外で育てられた覚えなんてないわよ!!」
「まぁ、とりあえず品質は安心出来んな。」
「品質とか言うなっ!!」

貴重品

デミテルの写真
デミテル様の靴下
デミテル様のシャツ
デミテル様のタオル
デミテル様の…

デミテル様


「おい何処に行くクソガキ。」

どこかにスコスコと立ち去ろうとするリミィの首を、デミテルは思い切り引っつかんだ。

「何で私の日用品が貴重品に入っとるんだ。何で私そのものが貴重品扱いなんだ。何で様付けなんだ?」
「だってデミテル様はぁ、リミィのきちょーひんだもぉん。」
「………。」

デミテルは無言で、貴重品欄から、名称に『デミテル様』が付属されたアイテムを消した。

「うわぁんっ!!」
「…どーやったら『貴重品』の項目をいじれるんだな。」
「ええいっ!!結局売れるものなど何一つとして無いだろうが!!どうすればいいというのだ!!万引きだな!?やはり万引きしか選択肢は無…」

「貴方たち、お金欲しいの?」

暴走しかけたデミテルの後ろから、女性の声がした。

黒いフードのローブを着た女性だった。片手には一枚の紙が握られている。

「なんだ貴様は?何でこんなクソ暑い中フード被っとるんだ。」
「私この店で薬売ってるんだけど。というかそんなとこに座り込まれたら客が入ってこれないじゃないの。どいてくださる?」
「客など来やせんだろう。どうせ。」

デミテルの言う通り、人々は皆、出店の方に立ち寄っていて、こちらを見向きもしない。祭の日に雑貨屋に立ち寄る人間は、この村にはいないらしかった。

「まぁ確かにね…こんな日にバジリスク対策のリキュールボトル、5%OFFにしても誰も買いに来ないか。」

「ところでさっきお金欲しいみたいなこと言ってたけど、」

「これに出たら?」

女性はピラピラと、手に持った紙を広げた。何かのチラシらしい。

「なんだそれは?」
「毎年この祭じゃ、ある大会をやるの。」

「優勝賞金は、なんと十万ガルド!」
「十万ガルド!?」

デミテルの脳裏を

沢山のお菓子達が過ぎっていった。


十万…十万あったらお前…シュークリームがいくつ買える?

ケーキもホール型が買えるな……いや和菓子系も捨て難い…

「違うだろバカ。」
「デミテルさん。生活費にあてるんですよ。」
「お菓子もいいけど、その前に白飯なんだな。」
「デミテル様ぁ、虫歯になるよぉ。」
「………お前ら、何で全員私の頭の中を覗くことができるんだ。」

自分の思考回路が読まれ切っている事実に、デミテルは恐怖しながら言った。

「まぁいい。五割は生活費にあてるとして…」
「半分はお菓子にあてる気かい。」
「で、一体何の大会だ?」

「納涼ダジャレ大会。」


世界が止まった。

「………やはり、万引きしかあるまいな。」
「どうしてぇ?デミテル様すっごくダジャレ得意なのにぃ。」
「…………。」

デミテルの脳裏を、かつて灼熱の洞窟で炎の精霊相手に繰り広げたダジャレによる死闘が駆け巡っていった。


『・・・『イカが怒(いか)ったぁぁぁぁぁぁぁぁっ』!!』


…そんなこと………叫んでたなぁ…自分…

デミテルは眉をピクピクさせた。

「…今考えれば、あの時の私といったらホント………恥ずかしかった………」
「そんなことないよぉ!!デミテル様すっごくかっこよくて、すっごく寒かったよぉ!!」
「…お前、私を奮い立たせる気がホントにあるのか。」

誉められてるんだか馬鹿にされてるんだかわからないリミィの言葉に、彼は唸った。

「とりあえず、デミテルさんが出るのは確定的なんだな。」
「待て。ちょっと待て。なんで私なんだ?お前が出ればいいだろうが。」
「必要なのは、優勝を狙える実力者なんだな。そうなればデミテルさん以外ありえないんだな。」
「ダジャレなんぞに実力もへったくれもあるかぁ!!大体そんなのやって納涼出来るわけがないだろう!!この村の奴はバカしかいないのか!?やらん!絶対そんな恥ずかしい大会出るかっ!!新テイルズシリーズの主人公になれたとしても出…」
「デミテル様ぁ。副賞は『菓子パン詰め合わせセット』だってぇ。」

「何をモタモタしている貴様らあっ!!早くエントリーに行くぞぉぉぉぉぉぉ!!」

新テイルズシリーズの主人公の座でも意志を曲げない男は、『菓子パン詰め合わせセット』で全てを曲げた。


――――――――――――――――――――――――。


納涼ダジャレ大会。この大会には数百年の歴史がある。

その昔、この村の創設者オリーブは、仲間達と共にこの村を作った。

しかし、ある時、ここに村を作った理由であるオアシスの水が突然枯れてしまった。

まだ、アルヴァニスタともミッドガルズとも交易をしていない時代。彼らは徐々に弱っていく。水無しで砂漠から出ていく為に歩くこともできない。

村人全員が、ここで枯れ果てる事を覚悟した時。

創設者オリーブは、なんでもいいからみんなに少しでも元気になってもらおうと、カスカスの声で、こう叫んだ。


『砂漠でサバ食う!?』


するとどうだろう。その声に呼応するかの如く空が暗転し、雷が唸り、大雨が降り出したのだ!

さらには、枯れていたはずのオアシスから龍の如く清水が噴き上がり…

「…絶対。嘘だろ。」
「いや、ホントなんですよ。村に伝わる伝説です。」

オリーブヴィレッジのオアシス周辺は、結構な人だかりであった。みな、この納涼駄洒落大会を楽しみに…

…いや、正確に言えば嘲笑しに来たのである。

この大会に出場するのはほとんどが地元の人間であり、その出場者の近所の人がその恥ずかしい醜態を見て笑い、あとで酒の肴にする。そういう楽しみ方をする為のイベントであった。出場者の平均年齢はほぼ中年ばかりだ。

デミテルは、エントリー受け付けが設置されたオアシスの桟橋に立っていた。他にも数十人の男達が、ウロウロといた。

何故、こんなアホな大会をやるのか。気になったデミテルは、近場にいた、なんか娘が大学受験で大変だから、少しでもその費用に当てようと思って出場を決めたらしいお父さんに尋ねた。

その解答が、冒頭のものであった。

「なんでよりによって『サバ』をチョイスしたんだ創設者オリーブは。なんでそれで大雨が降り、オアシスから水が…」
「それ以後、毎年この日にダジャレ大会をすることになったそうです。オアシスがまた突然枯れない事を願ってね。」
「オアシスより、アンタの髪が枯れそうだがな。」
「…私の職場の部下みたいなこと言わないでくれ。」

「カゲタさーん。カゲタさんいらしてください。」
「お。呼ばれました。では私はころで。」

受け付けの娘に呼ばれて、影田さんは去っていった。

「………なんで自称・世紀の大悪人がこんなアホなことに参加してんのかしらね。」

デミテルの肩の上で、ジャミルは疲れたように言った。

「まぁ、ダオス様が出場するよりマシだろう。」
「それは………そうだけど。」

一瞬、灼熱の洞窟の時のデミテルのようなテンションのダオス様を妄想して、ジャミルはまた疲れたように言った。

『天光満つるところに我はあり。黄泉の門開くところに汝あり。いでよ神の雷。』
『なに!それは!?』
『これで最後だ!!』

『ふっとんが吹っ飛んだ!!』
『そんな、そんなバカなぁ!?』


………絶対売れないわね。こんな冒頭から始まるゲーム。PSPでリメイクなんて絶対されない。


「お金がいるのは確かにしかたないわよ。」

「でもねぇ、こんなことしてる間に、クレス=アルベインどもとの距離が…」
「クレスさーん。クレス=アルベインさーん。」
「あ。はい。僕です。」

「……………………。」

彼らのクレス=アルベインとの距離は


五メートルであった。

「うぇぼぉあああ!?」

デミテルは今まで無い奇声を上げ、その場に倒れ込んだ。

姿は、他の出場者が壁となりクレスの視界から完全に遮られた。

デミテルは小声で大声をあげた。

「なんでだあああ!?なんで奴がこんなところにおるんだあああっ!!」
「知らないわよ!!アタシに聞くなあ!?」
「どーするんだ!?これは私はどーすればいいんだ!?襲うのか!?奴を寝てる間に襲えばいいのか!?布団に潜り込めばいいのか!?」
「落ち着けええっ!!自分が何言ってるかわけわかんなくなってるでしょアンタぁ!?なんか相当気持ち悪いこと言ってるわよっ!!読者減ったらどうすんの!?ただでさえ少ないのに!!」
「デミテル様ぁ。ジャミンコぉ。何してるのぉ?」

デミテル達が顔をあげた。リミィの顔が自分達を見下ろしている。なかなか無い光景だ。

「わかったぁ!かくれんぼだぁ!!」
「…まぁ、間違っちゃ無いわよ小娘。」
「リミィ達ねぇ、場所取りしてきたよぉ。観客席のぉ。」

「みんなフトソンと離れようとするからねぇ、スッゴク広く場所取れたぁ!!」
「…まぁ、あんな着ぐるみの横に立ちたいとはなかなか思わんだろう。」
「それでリミィね、デミテル様が戦う前に直接応援しようと…」
「…悪いがリミィ。」

デミテルはチラリと後ろを見た。赤いマントを翻す剣士が、簡素な机の前に座った受け付けの娘から説明を受けている。

「…私は棄権した方が良さそうだ。」


こんな人だらけのところで奴らと顔を会わして戦闘になれば、明らかに私達が不利だ。仮に勝ったとしても逃げ道がなくなる。

おのれ…前々回でリリス=エルロンをはぐらかしたばかりだと言うのに……

『「復讐」ってなんですか?デミテルさん?』
『いや違う。フックシュン!!ってくしゃみしただけだ。』
『…そんなくしゃみする人見たことないです。』
『当たり前だ。ハーフエルフの独特のくしゃみだからな…』
『…………。』

完全に疑いの目を向けてたがな……なんとかなるものだ…


「…というわけで、クレスどもに私の顔を見られないうちにエスケープするぞ…」

「くそう…私の菓子パンが……」
「菓子パンかよ。」
「ねぇねぇデミテル様ぁ。じゃあこれつけていこうよぉ。」

リミィがゴソゴソと、自分の服の襟元に手を突っ込んだ。

やがて、よいしょよいしょと、何かを取り出した。

「…なんだそれは。」
「お面ッ!さっき出店でねぇ、リリスお姉ちゃんに買ってもらったぁ!これ被ったらきっとばれないよぉ。」
「………。」

太陽をイメージしたのだろうか。炎をかたどった赤く渦巻いた装飾が、卵型の面を囲むように纏わり付いている。

肝心の顔の部分は、真ん中から十字に線が走り、顔の面積を四等分に分けている。分けられた面積ごとに赤、緑、黄色、青に色が塗られ、目の部分に穴が空いていた。

ピカソの絵にでも出てきそうなその太陽の面は、ぶっちゃけ、

かなりのダサさだった。

「…それを私につけろというのか。」
「ダメぇ?」
「フトソンの着ぐるみを着るのと同じぐらい。」
「それって、死ぬ程嫌ってことよね。」

「でもぉ、お金無いと生きていけないよぉ。」
「む………」
「リミィ、体売りたくないよぉ。」
「…お前、意味わかって言ってるか?」
「わかんなぁい。でもリミィが前住んでたとこだとねぇ、お金が無いお姉ちゃんとかがよく言って…」
「わかったもういい!やってやる!その面貸せ。」

詳しく聞くと色々問題がある気がしたので、デミテルはリミィの話を遮った。そして、その仮面を手に取った。


…見れば見る程ださいな。こんなの買う奴、うちの馬鹿以外いるのか?完全に家の壁とかに飾って置くものだろう。アンティークだろアンティーク。

四の五の言ってる場合でも無いか………


「…………すまないが。」
「あ、は…………い?」

受け付けの女性は、話しかけて来た、黒いマントに銀色のショルダー、そして

センスゼロの変な仮面を装着した男に、首を傾げた。次に、笑えてきた。

受け付け嬢が人の顔を見て笑ってはマズイ。少し頬を膨らませながら、彼女は耐えた。

「な…なんでしょうか?」
「今、心の中で笑ってるだろ。だろうな。私もこんな仮面つけた奴が話しかけて来たら、鼻先に指をさして笑い飛ばすだろうよ。」
「そ、そんなことはござりません。あの、それで」
「ああ。あのな、私の登録名を変更したいんだが。私はエントリーナンバー8の『デミテル』だ。」
「構いませんが…では、どのように?」
「………。」


偽名…偽名か………

偽名といえば………


「…じゃあ。」

デミテルは、くぐもった声で言った。


「デミーで。」

「職業は大道芸人で…」
「ぶふっ!!」
「今思いきり笑っただろおお貴様あああっ!!」


つづく


思うがままにあとがき

一か月ぶりです。ごめんなさいです。

前話の次回予告とタイトルが変わっています。すいません。ホントはこの話一話で終わるつもりだったのに、デミテルにメニュー画面いじらせてたら一話に入りきらなくなりました。それで変わりました。ダジャレ大会なんてわけのわからん事の為に二話消費です。

いつの間にかもうすぐ五十話行きそうです。なかなか無いよね?五十話行く二次創作小説。これじゃもう、最終回まで根気よく書いてったら百話行ってしまうよ俺?

ゲーム本編のシナリオに沿った話だけ書けば話数減るでしょうか?いやでも、どうでもいいサイドストーリーばっかり思いつくんですよね。バジリスクやら、サーヴェンの盗賊やら、ガーゴイルのジャニズやら………

バジリスクの話が自分で結構好きだったりします。え?別におもしろくなかった?ごめんなさい・・・

…あとがきをかいてていつも思うんですが、「自分、余計なこと書いてないかな?」っていつも思います。いらっとくること書いてないのだろうか?とか心配します。今までにあとがきに不快感を持った方がいましたらごめんなさい。

次回予定  第四十九復讐教訓「人の特技は本人の自覚無しにできたら真の特技」

コメント

お初です
第1復習教訓からここまで読ましていただきました
テスト前だっていうのにハマってしまいました
次回を楽しみにしてます

2度目となります、灰色です。
前回はタイミングが悪い時期に体調にお気をつけてを言ってしまい…いや、やっぱ気をつけてください。冬場の脅威ですよ体調不良。この時期必ず風邪ひくんです。
と、関係ないことを言ってしまいましたが。『デミダメ』今回も楽しく拝見させていただきました。餡蜜にお礼を言った時点ですでに笑ってました俺。あとメニュー画面のくだりで爆笑(心の中で)。大声で笑って家族に変な目で見られること多いんです。

あとがき、俺は好きです。
作者の思いとかがわかって、楽しくなります。自分ももっと頑張らないとな、って気分になれたり、あとがきで笑わしてもらったり。
自分は、あとがきを書く派なので。

それと、バジリスクの話、俺は大好きです。

長文・乱文失礼しました。

どーも、いまだにパソコンが届かないtauyukiseでーす。

このごろ、東方と、PSPのパンドラ化にはまっています。
気づけばもうそろそろ50話行っちゃうんですか。
なかばリアルタイムで、一話目からずっと次の話が楽しみで仕方がなかった時期が懐かしい今日この頃ですね。

ストーリーからそれた話がとても大好きです。
それでもってたまに、ストーリーに沿って話が進むと、ちょっと悲しくなってしまいますね。
まぁ、この分だと本当に第100復習教訓にいってしますかもしれませんけど。

何か前もいった気がしますけどそろそろ小説の続きを書こうかなと思っています。パソコン復活しそうですし。

それと、誰も読んでいないと思っているなら、自分の自己満足のために小説を書けばいいと思っています。まぁ、実際に読んでる人がここにいるわけ何で、私は毎週楽しみにこの小説を楽しみにしています。

上から目線、あと、長文乱文失礼します。

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