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suggestion【1】


その日、小さなクニで起きた事。
それは3人だけが知るものとなった。
ただ
何も気付かず生きていた。そんな自分を知る事が
何よりも怖いのに
それなのに
今、自分という存在に気付いた。

   ***


小さい頃から言われていたこと。
“外の世界には出てはいけないよ”
その事はよく分からなかった。
親にも、兄弟にも、祖父たちにもずっずっと言われていたから
いつの間にか当たり前になってた。
そんな自分の、それなりな毎日。
 
幸せって言うモノなんだ。たぶん、これが。



風が吹く
綺麗な白い風。
柔らかく吹くその風はヒトを助けてヒトを傷つける。
それは
優しいから。

そして俺はここに居る。
若葉が茂るこの場所で、本を読むのが好きだ。
ここが、俺の知っている中で1番綺麗だ。
この小さな国で、自分の好きな場所を見つけるのは困難だ。
そのワリに俺は、結構幸せだ。
こんな大切な場所があるから。

勉強して分かったことだが、このクニ“己生(きき)”は、大萩利(おおはぎとし)の中にあるらしい。
昔、大萩利の政治に反発した己生のヒトたちが、独立してこの己生を作ったらしい。
しかし、己生は外のクニにでてはいけないという決まりがある
みんな、外の世界は汚いから、行ってはいけないと言う。

そして“暗示”にかかっているから。と

国民は全て、政府の暗示にかかっていると。そんなことはよく分からない。自分は自由に生きているから。
毎日をただ自由に。

朝、学校に行って、友達と遊んで、家族と話して、
十分自由に生きている

それも大萩利のヒトには叶わないのなら可哀相だ。

ベンチに座って、読みかけの本を開いて。
大萩利の知識も全て、文献で得た。これからもそうやって、知識を着けていくのだろう。

    あ。風が吹いた。

この大切な時間を"大切だ″なんて、口に出す事は出来ない。それは大切だから。だ。

時は静かに流れていくから
       そんな春の日。



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