七色の鳥の伝説【11】
この町に住まいし竜・・・・・いったい、どんな姿をしているのか町の人でも見たものは、ごく数人。
そして、最近の出来事でこの町の竜が人を傷つけ始めたらしい。 突然に起きた出来事・・・・いったい、どうしたのだろうか?
七色の鳥の伝説~10~
「竜がこのごろ、人を傷つけるようになった?」
「あぁ。 そうらしいぜ。 おかしな話だがな・・・・・」
私と仁は今、宿屋の食堂にいる。
さすがに宿屋には、たくさんの旅人たちがくつろいでいたり、夜近くと言うこともあってお酒を飲んでいる人も居る。
まぁ。 宿屋は旅人が安らぐ場所だから、騒ぎたい気持ちも分かるが・・・・もう少し、静かにしてもらいたいものだ。
「その竜ってのは、仁と同じ七色の鳥に関係しているのか?」
私と仁は、二人でお昼に情報収集を行った。
そして、私の情報は、それほど役に立つものではなかったが、仁が手に入れた情報の中に「竜が人を傷つける」
と言う気になる物があったのだ。
「まぁな。 ここに居る竜の名前は、水玉って言う水の力を持つ竜なんだ」
仁が机の上に並べられている料理を、食べながら言う。
「・・そうか・・。 でも、突然となると妙だな」
「普通は、人を襲わない・・・・俺たちの役目は、神子の手助けをし、人々を守ることだからな」
仁がコップを持って言う。
「へ~。 そんな役目もあるのか」
「当たり前だろ? じゃなかったら、五月についてくるはずないって! すみませ~ん! おかわりください!!」
「・・・・・仁・・・・・」
「ん? なんだ??」
「さっきから、食べながらとか・・そして、どれだけの料理を食べる気だ!?」
そう。 仁は、さっきからず~~~~~っと料理を食べ続けている。
これで、料理の追加といか・・おかわりというか・・とにかく、三回目なのだ。
一方私はというと・・これが、一皿でおなかがいっぱいになったのだ。
やはり、この世界と私の世界は、料理も違うようだ。 変わった野菜とかを使っているし・・・・・
「これからも、旅を続けるんだぞ? 分かっているのか!? 仁!!」
私が机を、ダンッ!!と叩くと「これが最後だって」と笑いながら言う・・そして、辺りはと言うと・・いったい何事か?!
という感じでこちらを見ていた旅人さんたち・・・・。
「いえ。 なんでもないです! 気にしないでください!!」
私が大きな声でそう言うと、し~んと静まり返っていた食堂は、一気にさっきのように騒がしくなった。
「はぁ・・・先が思いやられる・・・」
すごく心配になるな・・こいつといると・・
『・・・・・・助けて・・・・・・誰か・・・・』
すごく悲しい声が、あたりに響きわたる。
『お願いよ・・・・・誰でも良い・・・・助けて!』
いくら少女が助けを求めでも、誰も気づきはしない。
『私は・・・・傷つけたくない・・・・誰も・・・約束したもの・・・あの人と・・・』
でも、その約束は今、壊されようとしていた。
『私の意志じゃない。 誰かが私を・・・・大切な約束を壊そうとしている・・・・・・だから・・・・誰でも良い! 気がついて!!!!』
いくら大きな声で叫んでも、誰にも聞こえない。
だって・・当たり前なのだ。 彼女は竜・・・・そして助けを求めても、声が聞こえない・・・・普通の人間には、声は聞こえないのだから。
『お願い・・・・このままだと・・・・せっかくの世界が壊されてしまう・・・・誰でも良い・・・私の呼びかけに答えて・・・・・』
泣きながら少女は、そう言うと・・・・水の中に消えたのだった。
つづく 作 クロス