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フロートの門【3】



フロートの門~始まりの書2~ 作 クロス







魔法学園【イングリーディ】・・・今日は、新学期で沢山の生徒が集まっている。 
その中に、さっき列車の中で一人で座っていた少女、栞。 そして、栞と一緒に途中まで同じ場所に座っていた少年、襷。
列車の中から何百人と言う生徒が降りて、魔法学校を目指す。
魔法学校までは、トンネルを通って、そして生徒の許可書を見せて学校の中に入る。

「・・・・栞・・・・」

突然に北斗に名を呼ばれて、栞は少しだけ驚くが、すぐに前を向いて歩き出した。 
烏は空を飛ぶもの、だからすごく通行人の邪魔になっていることに気がついた栞は、自分の腕に北斗を乗せる。

「分かっているな? 変な騒動は起こすなよ」

「言われなくても、分かっている」

そう短く返事をすると、北斗は空高く舞い上がった。 そして、どこかに羽ばたいていった・・・

「・・・・襷・・・・」

「ん? なんだい?」

こっちも、梟の飛鳥が襷に話しかける。
飛鳥は、襷の腕に止まっていて話しかけているので人の邪魔にはならない。

「ちゃんと導いてあげて・・・そして、変な騒動は起こさないように」

「分かってるって」

ニッコリと笑って返事をする襷。 その言葉を聴いて飛鳥は安心したらしく、腕から離れて空に羽ばたいていった。 
それを見届けると、自分の赤い瞳を栞に向ける。

「さてと・・・あんまり刺激しないようにしなくちゃね」

そういって、栞に近づく襷。

「やぁ」

「!?」

後ろから肩をポンッと叩かれて、さらに話しかけられた事に驚いて、栞はバッ!と勢いよく振り返る。 
すると、知らない少年が居た。

「あの・・・・なんか、僕・・・悪い事した?」

おずおずとなんだか、人の顔色をうかがう少年に、「おどおどするな!」と言う少年・・・。
たぶん、双子の兄弟だろうと思う。 すごく顔が似ているから・・・・でも、顔だけで性格は似ていないみたいだ。 
二人とも、紫色の髪と瞳をしている。

「驚かせて悪かったな。 俺の名前は、宮城だ。 こっちが弟の艘・・・お前は?」

突然、勝手に自己紹介をされて、どうして良いのかわからない栞。 
だが・・・こんな場所で、何かをすれば怪しまれるのは当たり前。 と言うことで、栞はニッコリと笑って少年を見る。

「初めまして、私の名前は栞よ。 よろしくね」

すごく明るい声に変えて、二人と話す栞・・・この変わりように別に違和感を覚えるものでもなく、怪しむ事もなく
二人は「よろしく」と声をそろえていった。

「栞」

今度は、聞き覚えのある声に振り返ってみると、襷が居た。

「・・・・襷か・・・・」

「ん? 栞と友達なのか?」

「え? あっ・・・・うん」

「俺は、宮城。 こっちが弟の艘だ。 お前は?」

二人の存在に気がついたのか、ニッコリと笑って話しかける。

「僕の名前は、襷だよ。 よろしくね」

襷にも二人は「よろしく」と声をそろえていった。

「もうすぐで着くぞ!」

誰かが、そう言った。 すると、目の前には大きな学校があった。 学校と言うより、お城のような感じもするが・・・
そして、入り口に立っている一人の先生らしき人物に許可書を一人一人チェックする。 そして、栞もまた許可書を見せる。

「あの少女が・・・・・な・・・・」

栞が通ってから、そう小さく呟いた男。 それから、また生徒たちの許可書を見る。





「・・・ついに、この時が来たな」

一人の老人と、一人の女性・・・その女性の髪も金色で、黒色の瞳をしている。

「はい。 そうですね・・・」

すごく悲しそうに返事をする女性。

「あの過去が・・・二度も起こらなければ良いのじゃが・・・」

長い白いひげをいじる老人・・・そして、女性は、やっぱり悲しい瞳で老人を見る。

「きっと、止めてくれるでしょう。 そして、あの少女は・・・・」

そこで言葉を止める女性。 これは禁句だからだ。 
本人は知らない・・・誰も知らないのだから・・・この学校の先生の、ある特別な人しか・・

「まぁ。 少女と少年に任せるよ」

優しい瞳で老人は、女性に言った。 その言葉を聞いて、女性は姿を消した。

「さぁ。 新学期の始まりじゃ」

そう言って、部屋から出て行った。








つづく

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