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フロートの門【7】




フロートの門~一時の書3~ 作 クロス







栞は、北斗を連れて大広間にやってきた。 そして、空いている席に座る。

「遅かったね。 何をしに行っていたの?」

向かいの席には、襷が居た。 机の上でご飯を食べている飛鳥・・・
栞も、北斗を机の上において、ご飯を食べさせる。大広間で、まだ食事をしている人たちは多い。
 これから食べる人も居れば、もう食べ終わって友達とおしゃべりしている人も居る。

「もしかして、北斗を忘れてたのかな?」

襷の言葉を無視して、ご飯を食べる栞・・・

「ふむ・・・図星だね」

「・・・・・・・」

やはり、黙って食べている栞・・・襷も嫌われたものだ。 そこまで黙らなくても良いと思うのだが・・・

「隣、良いかな?」

一人の少年が栞に話しかけてきた。 ニッコリと笑っている・・・その少年とは、和馬だ。 
栞は「良い」と短く返事をしてから、また黙って食事をする。

「おはよう。 和馬」

襷があいさつをする。

「おはよう。 襷・・・えっと、君は、栞だったよね?」

「・・・あぁ。 お前は?」

栞がようやく手を止めて、和馬の瞳を見る。

「僕は、和馬・・・よろしくね」

「よろしく」

そう短く言うと、また食事を始めた。 なんとも、無愛想な栞である・・・
そして、そんな栞を見て苦笑いをした和馬と襷・・・そして、ため息をつたのは、北斗だった。
飛鳥は、食事が終わったらしく・・・和馬を、じっと見ている。

「ん? ねぇ・・・この梟って、名前は?」

和馬が襷に聞く。

「飛鳥だよ」

襷が和馬にそう言う。

「だったら、栞の・・・梟じゃないよね?」

和馬は、白色の烏・・・とは、思っていないらしい。 
まぁ。 白色のからすなんてのは、珍しすぎて、烏なんて思わないだけだろうけど

「烏だ。 そして名前は、北斗」

コップを持って水を一口飲む栞・・・北斗は、食べるのを止めて和馬を見る。 
和馬は「よろしく」とニッコリと笑って北斗に言うが、北斗は、すぐに食事を再開した。 その北斗の行動に苦笑いする和馬。

「そう言う、和馬・・・君の蛇の名前は?」

「僕の蛇の名前?」

「うん。 そうだよ」

和馬は、水を一口飲んでそれから「う~ん」とうなる。 普通は、すぐに名前を言うだろう。
なのに、なぜ考える必要があるんだろうか?

「そうだね・・・まだ正式には決まってないんだよ」

「え?」

「名前が決まってないのか? 制約は、どうした?」

「まだ、不完全なんだ」

制約・・・魔法使いが動物に行う魔法だ。 
どれか自分の気に入った動物を、自分のパートナーにするには、制約が必要になる。
制約は、その動物に名前を与えたことによって、成り立つものなのだ。
誰もが、もう学校に来る前から制約を終了しているのに、なぜ和馬は決めていないのだろうか?

「なんで?」

栞が和馬に聞く。

「良い名前が思いつかないんだよ。 エルロンドとかエルとか、スキンドールとか・・・いろいろ考えたんだけど、なかなか・・・・」

「「・・・・おい・・・・・」」

栞と襷が突っ込みをする。 どれも良い名前が無いから・・・で、制約を不完全にするのは、ダメだ。 
この学校に居るのならば、授業を受ける前に制約を終了していないと、授業は受けられない。

「今日から、もう授業だよ・・・やばいよ。 和馬」

「う~ん・・・だったら・・・【ディスカル】とでも名前を付けようかな」

何気なく出てきた言葉・・・その名前に、ピクリと反応を示す、北斗、飛鳥、襷だった。 栞は「それで良いんじゃないか」と言う。

「だったら、もう僕は自分の部屋に行くよ。 制約をしなくちゃいけないしね」

「でも、朝ごはんを食べていないよ?」

「・・・・パンだけでも、食べるか」

そして、襷と和馬は・・・食事を始める。 
そして、栞だけは先に食べ終わっていたので自分の部屋に戻っていった。 当然、北斗も一緒だ。







「・・・栞・・・」

自分の部屋についた時だった。 北斗が栞の名前を呼んだ。

「なんだ?」

「・・・あの、和馬って奴には・・あまり近づくなよ」

「どうしてだ?」

「・・・嫌な感じがする・・・胸騒ぎがするんだ」

心配だから・・・北斗は・・・栞のことが・・・

「・・・分かった」

そう返事をして、栞は自分の部屋から出て行った。 
次は授業が始まるから・・・北斗は、そんな栞の後姿を、黙ってみているのだった。

「お前は・・・どうして・・・」

誰かに言うが、その言葉は届きはしない・・・そして、届いたとしても理解しないだろう。
北斗が思っている人物は・・・きっと、最後まで栞を手放さないだろう。
だから、自分が栞を守らなくては・・・例え、それが・・・命を懸けることになっても・・・












つづく

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