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幻【4】


前回のあらすじ

気がついたリエルはお約束ともいえる展開(?)のなか、恋愛についてさりげなく話した後

龍聖との出会いを聞かれ、話し始めた

幻第四話 

二章「二人の出会いは」

『五年前のあの日、私は鉱石を探していて、ある洞窟にいたの』

時は今から五年前、草木も眠り、闇に生きる魔物達が活発に活動する、丑三つ時

私の探していた鉱石―グラム鉱石を採取できるという噂の洞窟、グロヴ洞窟に藍嘩はいた

元々凶悪な魔物が住み着いており、探索が困難であった事が、噂により信憑性を持たせていた為

ここを訪れる冒険者は後を絶たなかった、無論藍嘩もその一人だった

「・・・・疲れた、本当に、ここにあるのかしら?」

藍嘩は洞窟に湧き出ている泉から水筒へと水を汲むと、鎌に付着した魔物の血を洗い流し始めた

「噂を信じて来た私が馬鹿だったかなぁ・・・・・?」

疲れきった表情を浮かべていた藍嘩だが、無理もないだろう、魔物だらけの洞窟を、地下十六階まで一人で降りる、なんてことは常人には真似できまい、藍嘩は武器の血が綺麗に落ちたのを確認すると、再び奥へと進み始めた

「どこまで来たんだろうなぁ・・・・・」

あれから五時間、更に十回ほど洞窟の奥へと進んでいるが、最深部へたどり着く気配はない

下手をすれば、二度と地上へは戻れないのではないのかと言う不安さえあった

「いつになればつく・・・・・・?」

不意に藍嘩の足が、言葉と共に止まった、目的の場所についたのだ

「うわぁっ!!」

藍嘩は無意識に喜びの声をあげていた、なぜならそこには、金や銀などの貴金属の他に、宝石の類までもが、山のように広がっていたからだった

「♪♪うわぁぁぁっ♪凄い・・・・これがここの洞窟の宝・・・?見た所、グラム鉱石は無いみたいだけど・・・・収穫としては上出来でしょぉう♪ミスリルに金塊・・・・エメラルドまである~///♪♪」

藍嘩は宝を目前にして、すっかり舞い上がってうかれていた、しかし世の中はそう上手くはいかない物

その証拠に、今藍嘩の背後には黒い影が迫りつつあった・・・・・・・・

「あれ?なんか急に暗く・・・・?」

不意に一段と暗くなったことに疑問をもった藍嘩は、ゆっくりと後ろを振り向く、すると背後には・・・・

「ブ・・・ブルードラゴン?!嘘でしょ?!?!なんで、なんだってこんな場所に???!!!」

ブルードラゴンはその名が示す通り、水の精霊の加護を受けたドラゴンの一種で、高い知能を持っている

生息地は人の立ち入らないような辺境の水辺や水中であり、こんな場所にいるのは珍しい事だった

「ふ~ん・・・・番人って訳、ね・・・・・・」

『グウゥオォォォォォォォォォン!!!!!!』

ブルードラゴンが吼えると、それに合わせたかのように洞窟が震え出した

「!・・・・洞窟が?ちがう、大気が震動してる・・・・・」

藍嘩の体には、痺れに似た感覚が伝わってきていた

上を見上げると、土が落ちてきていた

「このままじゃ生き埋めになっちゃう!でも・・・・そんなのはごめんだからね!」

鎌に氣を溜めると、そのまま突っ込んでいく

「真空刃(しんくうじん)!!」

藍嘩が放った鎌鼬(かまいたち)は、ブルードラゴンに直撃した、鎌鼬の余波の影響で、あたりに土煙が立ち込める

氣をこめた鎌を両手でしっかりと握り、素早く振り回す、すると氣は空気を吸収し、鎌鼬を発生させる

離れていても充分な威力を持つそれを、藍嘩は接近して放った、並の魔物ならばまず間違いなくあの世逝

きであろう、だがしかし相手は精霊の加護を受けたドラゴン、油断はできない

土煙を破り、青白いブレスが藍嘩へ向かってきた

「・・・・・・!、うぁっ・・・・・!」

それを藍嘩は間一髪で避けた、後ろを見ると、岩の一部が凄まじい水圧により、削られていた

そしてその土煙の中からは、ブルードラゴンが姿を表した

「流石(さすが)に、そう容易く殺られる訳にはいかない、か・・・・・・」

言葉と共に鎌を持ち直し、独特の構えをとる藍嘩

はぁぁぁぁぁ!と、掛け声と共に私は真上に飛び、ブルードラゴン目掛けて、鎌を大きく振りおろした

ガキィンッ!と金属と金属がぶつかりあう音がしたが、手ごたえは全く感じられなかった

それどころか、手が痺(しび)れていた、鱗に弾かれたのだろう

ドラゴンの攻撃は意外と散漫だったので、避けるのには大して苦労はしなかったが、その後が問題だった

何しろ、鱗が硬く、こちらの攻撃が全く聞いていないのだ

二度、三度と試してみたが、まるで効いていない、逆にこっちが消耗してきた

私の鎌は、刃こぼれしてきていた、一体どれほどの硬さなのか、いや、単に私の鎌の方が柔らかい

そう考えてもいいだろう、まるで歯が立たない・・・・・

それどころか、どうやってここから逃げ出せばいい?それ以前に逃げ切れるのか?

いや、もう逃げ切れないだろう、殺らねば、こちらが殺られる―私はそう考えていた

絶体絶命―今の私が置かれた立場が、まさにそれだった

もう後はない、いつの間にか四隅の方へと追いやられていたのだ

その時、ブルードラゴンがその逞(たくま)しい腕を咆哮と共に振り上げた

開いた口からは、肉が良く切れそうな、鋭利な牙が顔を覗かせていた

そして今目の前に、私を簡単に引き裂いてしまうような爪が、迫っている―!

途端に今まで感じたことの無い恐怖に襲(おそ)われ、体が動かなくなった

逃げられないと言う恐怖と、諦めに支配され、完全に私の体は動かなくなっていた

『私は引き裂かれ、あの口で姿が消え、奴の腹へと収まるのだろうか、こんな事になるのなら

 こない方が、よかった・・・・・・』

と後悔し、覚悟を決めた時だった



続く



遅れて申し訳ありません第四話!展開見え見えですけどね

では次回!

光闇刹月華

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