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冬の日の思い出【1】


―――冷えてきたな。



白いかさの下で、少女は肩を竦めた。



伸ばした掌に、白くて冷たいものが舞い降りる。それはすぐに水となって、少女の掌から滑り落ちた。



水の通ったラインが残る手を軽く握って、少女は降ってやまない雪の空を見上げた。



―――あの時も、雪が降っていた。



少女はやっと雨宿りが出来そうな小さな屋根の下にもぐりこむと、かさから雪をはらい落とした。



―――――冬の日の思い出――――――

                      作者 春乃



「雪也くん!」



 二つに分けて束ねたおさげを揺らしながら、沙月は待ちくたびれた様子の雪也に駆け寄った。



「遅いぞ、沙月。オレかなり待ったんだぞ」



「ゴメンね。これでも走ってきたんだよ。雪がたくさん降ってて歩きにくかったの」



「・・・・まぁいいや。それで何か用があったんだろ?」



「あ、そうそう」



 まるで忘れてたというような表情を浮かべる。それから足元の雪を掬うと、雪也の目の前でサラサラとこぼしていく。



「・・・・・雪だるまをね、作ってみようかなあって思って」



「雪だるま?」



「うん。ほら、せっかく雪が降ったでしょ? 何もしないなんてもったいないじゃない」



 沙月はしゃがんで、まるでおにぎりを作るような動作で雪球を作った。



 もし沙月が女の子じゃなかったらきっと雪合戦をやろうと言い出すだろうな、と雪也は思う。



せっかく誘ってくれたのだからそれにのるとしよう。



「そうだな。どうせオレも暇だったし、別にいいよ」



「本当? せっかくのお休みなのにいいの?」



「さっきも言っただろ、暇だって。それに誘ったのはおまえだろ?」



「あ、そうだっけ」



 沙月は小さく笑った。少し天然なところがあるが、それも彼女の良いところのうちかもしれない。まあそれ以前に、雪也はそんなこと考えもし
なかったが。



「じゃあ雪也くんは頭のほう作ってくれる?頭は頑丈に作らないと崩れちゃうから気をつけてね」



「大丈夫だよ。任せとけって」



「本当かなぁ」



 まるで雪也の反応を面白がるように、沙月は疑うような目を向けた。本気でないことは分かっていても、雪也は反論せずにはいられない主義
だったから、からかい甲斐があったのだ。沙月の予想通り、しばらく雪也に文句を言われたあと、やっと雪だるま作りに入った。沙月は手先が器
用で、雪也よりも早く丈夫に作る自信があった。たった数分たらずで直径50cmほどの雪球を作り上げてしまったときは、雪也を圧倒させた。

 

 そして。



「―――よいしょっ!」



 ドスン、と鈍い音がして、雪だるまが完成した。顔には、家から持ってきたらしい人参と囲碁の駒に海苔、頭にはバケツを被せ(結構乗せるの
に苦労した)、首にはきちんとマフラーまでかけてある(ただし雪也のもの。「女の子に寒い思いさせるなんて最低だよ!」by沙月)。



   ☆あとがき☆



  こんばんは、春乃です~♪ いかがだったでしょうか?

 

 『冬の日の思い出』は三つに分かれています:: これは第一部ということです。

 

 よければ第二部も見てやってください^^  それでは失礼します☆

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