冬の日の思い出【2】
第二部
自分の背丈ほどもある愛らしい顔の雪だるまを見上げて、沙月は満足そうに額に滲む汗を拭った。雪也はといえば、コートの襟を首に引っ付け
て、先程から「さみー」と呟いている。
「ふふ。冬なのに汗かいちゃった」
「オレも。雪だるまを作るのにこんなに苦労するとは思わなかった・・・・」
「あ、でも」
沙月はニコッと笑う。
「楽しかったでしょ?」
「・・・まあな。雪だるま作ったりなんか、沙月に誘われたりしない限り作らないし」
「そっか。じゃあ、良い思い出になったね」
静かに、そして意味ありげに、沙月は微笑んだ。確かに笑っているのに、どこか寂しげな顔。初めて見るその表情に、雪也は最初どうすればい
いのか戸惑った。反応を示さない雪也を不審に思ったのか、沙月は首をかしげて顔を覗き込んでくる。やっといつもの自分を取り戻して、雪也は
笑みを返した。それを見て、沙月も嬉しそうにまた笑う。
「ねえねえ、雪也くん」
「なんだよ」
「来年の冬も、また一緒に・・・・・」
途中まで言いかけて、ハッと沙月は口を閉じた。
「・・・・・沙月?」
「・・・・・来年の冬も、また・・・・・雪だるま、一緒に作れるといいね」
「雪だるま・・・か。そうだな。また作るか」
「うん。作れるといいね」
雪だるまを見上げながら笑う沙月。辺りが暗くなってきたせいか、その横顔の表情が読めなかった。
その後、二人は雪だるまをあとにして家へと帰った。雪也は布団を被りながら、明日、学校の友達に、作った雪だるまのことを楽しそうに話す
沙月を思い浮かべた。「昨日は楽しかったね」と微笑んでくる沙月が、目に見えるようだった。
明日も、また笑ってくれると思っていた。
その翌日。雪也は沙月が引っ越したことを知った。沙月の父の会社が倒産したのだ。その借金を返すため、新しい職を探すために移住したのだと
いう。
――――そんな大事なことを、沙月は何も言ってくれなかった。
雪也が沙月の事情を知ったところで、何も変わりはしない。子供の雪也に出来ることなんてない。
でも。それでも、相談に乗るぐらいは出来たはずだ。沙月を慰めてやることぐらいは、出来たはずなのに。
――――結局自分は、沙月に頼りにされてなかったのかもしれない。信頼されてなかったのかもしれない。
親友だと思っていたのは、自分だけだったのだろうか――――。
☆あとがき☆
今日わ~♪ 春乃です。
ここまで読んで下さってありがとうございます^^
第二部はこんな感じです。残すはあと第三部のみとなりました。
短編にするつもりがこんなに長くなってしまい、スミマセン。
あと少しなので、読める方は読んでください。(ぇ
あとがきまで長くなるとイケナイのでこれで終わりにしますね:: それでは、また~☆