時の封印【1】
―助けて―
そんな声が聞こえたような気がした。
目を開けたくても開けられずその悲しげな声を聞いているしかなかった。
夢・・・そう思い深い眠りについた。
この声が少女の運命を変えることになるとはしらず。
朝目覚めるとそこは見たことの無い風景。
小さな窓から光が差し込む。
少女は目をこすり周りを見た。
自分の家とは違う。ここはどこか・・・。
「お目覚めになりましたか?」
少女の前に同じ年くらいの少年が立っていた。
そしてなぜか着物・・・。
少女はゆっくり口を開いた。
「・・・・・ここは?」
「覚えていないんですか?海岸で倒れていたんですよ」
「えっと・・・あなたは?」
「私ですか?私の名は春日篤鳴(かすがのあつなり)」
周りを見てふと気がついた。
「ここは車が通ってないの?音が聞こえないけど」
「くるま?何のことですか?」
「・・・・・・・・・は?」
「それよりあなたのお名前は何なのですか?」
「私?私は伊藤彩華(いとうあやか)」
少女―彩華はそういって外に出た。
周りには人が大勢いたが車や電車はない。
人々は着物を着ている。
夢かと思い顔を引っ張るが痛い。
少年―篤鳴に恐る恐る聞いてみた。
「ここどこ?」
「ここ?江戸ですが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・江戸!?」
「はい・・・江戸を知らないんですか?」
「知ってはいるけど・・・」
(いったい何年前の話になるのよ!!)
そう思って自分の姿を見た。
昨日宿題を終えてそのままベッドに入ったので制服のまま寝た。
今、制服だ。
つまり・・・・・・眠ってからこうなってしまったのだ。
(あの助けてって言う声が何かあるのかな・・・)
そんなことを考えていると篤鳴が肩をつかんだ。
「あの・・・・・不思議な着物ですね・・・。どこで買ったのですか?」
丁寧に聞いているがなんと説明すればよいのかわからない。
そのときだった。なんと村の近くで爆発が起こった。
「アメリカ軍の怨霊があばれているぞぉ!!!」
村人が急いで走ってきた。
周りの人々も顔を青ざめて逃げていった。
「しまった。師匠は今出かけているのに・・・しかたない私が行くしかない」
篤鳴は剣を持って森に走っていった。
彩華は取り残されてしまった。
「ちょ・・・・ちょっと待ってよ!!」
急いで篤鳴の後を追いかけていった。