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蒼海【4】

・・・気づけば、8時半だった。
船に揺られながら寝たせいか、目覚めは決してよいものではなかった。
頭痛さえする。船の揺れに身を任せ、ただベッドに座っているのが精一杯だった。

気分が悪くなってくる。何か食べて、胃を動かさないと吐きそうだ。
だが生憎、この時間帯は食堂も開いていない。
少しばかり眠りすぎたか。

机に目をやると、弁当が置かれていた。
売店で買っておいてくれたらしい。
そして、ペットボトルのお茶。


さすが母上!
気が利くな~!


オレは元気よく立ち上がり、机の上に置いてある弁当とペットボトルを乱暴にとり、
ベッドにどかっと座った。

ほぅ、トンカツ弁当か。
すぐに蓋を開け、カツを一口かじる。
甘くコクのあるソースが舌いっぱいに広がる。
うん、肉も悪くない。なかなか美味いな。

オレは全て食べ、お茶を二口ほど口の中に含み、ごくんっと飲んだ。


・・・さて、両親を探しに行かなければ。
オレたちがわざわざ船旅を選ぶのも、実はカメラマンの両親の希望だ。
船の上からしか撮れない海の景色を撮りたい、という。
稀に美しい夕焼けの写真を収めていたりしている。

・・・本当は、飛行機で行ったほうが何倍も早い。
まぁ、それで生計を立てられているんだから、文句は言えないが。

部屋を出る。
むわっと暑苦しい空気が漂っていた。
多くの人が作り出す雑音は、ガヤガヤという効果音がピッタリだった。

恐らく、両親は甲板だろう。
すでに外も暗いというのに写真を撮っているのか。
船内マップを見て、一番広い甲板に向かう。

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