蒼海【5】
船内とは違い、寒い風がずっと吹いている。
温かかった頬が、こわばってしまい、寒さで乾いていく。
案の定、両親はいた。
収穫0、って感じだな。
「・・・写真は撮れてないんだな。」
両親に近づきながら言う。
母親が一番早く気づいた。
「あら、もう起きたのね。ご飯、食べた?」
当たり前よ!と言わんばかりに親指を立てる。
特に意味はないんだが。
「おぉ、龍二。そうなんだよなぁ・・生憎、写真は撮れていないんだよ。」
オヤジが苦笑いを浮かべる。こんな真夜中に写真を撮る方が・・・。
「・・・待ってても期待できないんじゃね?
それにこんなにさみぃ~のに頑張りすぎだって!」
今が春というのを忘れさせる寒さ。
背筋が凍ってしまっていた。
おまけに唇まで震わせていた。我ながら恥ずかしい。
「ハハハ!お父さんたちはなんともない!
それに、その気の緩みが大敵なんだぞー!?」
家宝は寝て待て、ってか。
両親に限っては眠ってしまっては意味がないが。
「・・・私は少し休憩してくるわね。温かい飲み物でも持ってくるわね。」
オヤジはあぁ、とだけ相槌をうち、再び闇に沈んだ海に視線を移した。
母親はオレと一緒に船内に戻った。