蒼海【6】
船内に戻ると、温かい殺風景な景色が広がっていた。
船の中とはいえ、何もない。
白い壁がところどころ少し汚れているのが目に付いた。
母親はサイフをとるために一旦部屋に戻った。
もちろん、オレも後をついて部屋に入る。
サイフを手に取ったが、すぐには部屋を出ないようだ。
そうだ、今聞いてみるか。
「なぁ、母さん。オレらの移住先ってどんなところだっけ?」
サイフの中身をチェックしながら答えた。
「だいぶ南にある島よね。多分、今までの中で一番田舎じゃないかしら?」
「えぇっと・・・島の名前も忘れちゃってなぁ。ちょっと教えてくれよ、その島のこと。」
次に移住する場所では、一年間過ごす。
だが、できればもうちょっと詳しい詳細を聞きたかった。
・・・飢えた好奇心がそう言っているのかもな。
「いいわよ。」といい、母親はサイフをポケットに突っ込んだ。
「まず、私たちの移住先はね、
竜郷(たつごう)諸島の馨聲(かおりごえ)大島、よ。
何十かある島のうち、一番大きな島が馨聲大島で、そこが移住先よ。」
「ほっほぉ~・・・・聞いたことないねぇ。」
「あら?そうかしら?
確かに何もない島だけど、それを求めて旅行者も多い、っていう話よ。
8月には竜郷諸島では一番大きなお祭りがあるらしいんだけど、特に行事もなかったんじゃないかしら?」