蒼海【7】
・・・つまんなさそうな島だな。
恐らく、携帯を持っている中学生なんてほとんどいないだろう。
というか・・・買える場所があるのか?
「その島はとにかく自然に富んでいるの!
島も沢山あるようだし、この一年間きっと良い仕事になるわよ~!」
良い仕事・・・ね。
恐らく両親は家にあまり居ないのかもな。
実は、珍しいことではない。よく二日、三日家をあけておくことも多い。
だから、オレは一人で留守番。
正直、少し心細いときもある。
だが、慣れた。
それに、オレが愛されているという実感がある。
どんなときでも、味方でどんなときでも愛してくれている。
だよな、母さん。オヤジ。
「へへ・・・だったら儲かるよなぁ?
息子は四の五の言わずに待っていますぜ。」
母親はニッコリと笑みを浮かべた。
口の両端にできるえくぼが、いつもより少し深かった。
「あ、いけないわ!お父さんを待たせていたわ・・。
龍二、また行ってくるわね。」
あいよ、と言う前に母親は部屋を出て行った。
馨聲大島・・・か。
竜郷諸島では、島国では一番大きく、また人口密度もその諸島では高いようだ。
一年通して温暖。が、夏と冬の季節の変化はやはりそれなりに大きいらしい。
雪は降らない。それはそうか、南の島なんだもんな。
また、漢字で書くとえらい難しい。
馨聲というのは、死語なのだろうか?
多分、昔使われていた文字だ。
島の名前に使われている字からも、この島の歴史が深いことが伺えた。
どちらにしても、あまり見られない漢字だ。
そして、オレが次に転校先の学校は・・・「馨聲小中学校」
小学校と中学校が同じ校舎で勉学に励んでいるようだ。
話によると、全校生徒は小中学生あわしても約50人。
その人数=馨聲大島に住む若い人、らしい。
この島には、高等学校がない。
なので、高校に上がるときは皆島を出るようだ。
そして、戻ってくる。
オレが知っているのは、ここまでだった。