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デミテルは今日もダメだった【4】

第四復讐教訓
「思いつきでものを言うと大抵後で後悔するよ」


「ダ~メ。」

ここは出会いの町、ベネツィア。人と物が交流しあう港町。そこの港には巨大
な定期船が一隻、停泊している。アルヴァニスタへ向かう船だ。

カモメが空を飛び交い、日が少し傾く中、その船の上でハーフエルフの男と、
ヒゲを蓄えた船長が言い争いをしていた。ハーフエルフはひたすら頼み込んでい
た。

「おい船長!頼むからアルヴァニスタまで連れてってくれ!」
「ダメッたらダ~メ。」

船長はパイプ煙草をふかしながら、「ダメ」の一点張りだった。デミテルはイ
ライラした。

「なぜだ!?ちょっと前に出港した船は、四人組の旅人を乗せていったらしい
ではないか!?さっきそこの船乗りから聞いたぞ!!」
「俺はあそこの船長みたいに甘くない。この戦争勃発寸前のきわどい時期に、
船なんてだせねえよ。危ないったらありゃしない。」

パイプで煙のわっかを作りながら、船長はヒョウヒョウと答えた。

「ならば私が護衛をしてやる!私はハーフエルフだ!魔術だって使える!」
「あんたが・・・?なんか頼りないなあ・・・。」
「・・・・・・!」

デミテルは軽くショックを受けた。

「な、何を根拠に・・・」
「なんかこう・・・・・・物語の最初あたりにでてきて、あっさり負けるボス
みたい。」
「・・・・・・!!」

当たっているので何も言い返せない。デミテルは口をパクパクさせた。

「とにかく帰りな。」

そう言うと、船長は船首の方へ歩いて行ってしまった。デミテルはトボトボと
船を出ていった。

「デミテルさん、ダメだったんだな?」

船を出ると、船のすぐ横でフトソン達が待っていた。

「ああ・・・。」
「デミテルさん、意外と役立たずなんだな~♪」
「・・・・・・!!!」

ズバリと言われて、デミテルはうなだれた。

「まったく・・・謎のカレー大爆発からなんとか生還したというのに・・・」

 デミテルはうっすら茜色になった空を見上げながら言った。

「でも、よく生きてたんだな。鍋から謎の閃光が上がったときは、どうなるこ
とかと思ったんだな。」
「軽傷で済んだのはまさに奇跡だったな。まあ、服の方は仕立て直すはめに・
・・ってあれ?」

デミテルは気付いた。さっきまでフトソンの横に立っていた、リミィの姿が無
い。フトソンとデミテルは周りを見渡した。すると・・・

「あっ!いたんだな!船長のところに向かってるんだな!」

フトソンが指差したところを見ると、知らぬ間に船に乗りこんでいたリミィが
、船長の元にトコトコ歩いていた。

「あのバカ・・・。」

デミテルは船に再び乗り込み、リミィの元へ向かった。
リミイは船長に何かを話していた。

「ねえねえ船長さぁん!リミィとさっきの青い髪の人を乗せてってよぉ!あと
、あの白いのもぉ!」
「悪いねえお嬢ちゃん。今、海はすっごく危険なんだ。ごめんね。」
「・・・もし乗せてってくれたらぁ・・・」
「?乗せてってくれたら?」
「リミィがあとでいいこと、し・て・あ・げ・るぅ♪」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」

リミィの後ろで内容を聞いていたデミテルも、船長同様沈黙した。

「・・・おいリミィ。お前は・・・」
「おい!あんたこの子のお父さんだろ!?自分の娘になんて教育してるんだ!?」
「ええっ!?」

デミテルはいきなり怒られてビックリした。船長はパイプ煙草を甲板に叩きつ
けた。

「あんたみたいなダメな親がいるから、最近の若者は乱れちまうんだよぉ!!
クソッタレがぁ!!」
「ち、違います!私はこいつの親などでは・・・」
「パパァ~♪」
「うおーい!?ちょっと待てぇ!?」

デミテルは軽く泣きそうになった。船長は今度は帽子を甲板に叩きつけた。

「てめえ!今度は育児拒否ってか!?ふざけんなぁ!今から俺が子育てとは何
たるかを教えてやるぅ!!俺にはなぁ、「リド=キャスパール」っつうよくでき
た息子がいてなあ・・・」

デミテルはそれから丸々二時間、船長の子育ての極意(とゆうか、息子の自慢
話)を延々と聞かされたのであった。

「・・・ひどい目にあった・・・。」

デミテル達は、建物と建物の隙間、いわゆる路地裏を歩いていた。ゴミ箱が何
個か置かれ、少しジメジメしていた。
日はもうほとんど沈みかけていた。ただでさえ日差しが入らない路地裏は、よ
りいっそう暗かった。

「でも、教育問題は大切なんだな!」

フトソンが拳を振り上げながら言った。ちなみに彼の背中のリュックには食料
及び調理器具がきちんと入っている。港に来る前に買い物を済ましておいたのだ
。デミテルはトボトボ歩きながら、リミィにどうしても聞きたいことを尋ねた。

「・・・おいリミィ。お前、さっき船長に言ってた「いいこと」って・・・?

「わかんなぁい!でもぉ、リミィが前住んでたところだとねぇ、女の人が男の人
に頼み事するときは必ず言ってたよぉ。」

こいつどんなところに住んでたんだろう?と、デミテルとフトソンは疑問に思
ったが、あえて聞かないことにした。

「デミテルさん、リミィに『うっふん娘』の称号を・・・」
 「いらんわ!」

 デミテルは一喝した。フトソンは残念そうだった。

「・・・あとなんでお前はあの時、私を「パパ」って呼んだんだ?」
「え~とぉ・・・思い付きぃ♪」

リミィは地面を跳びはねながら言った。地面を歩くリミィはなかなか新鮮であ
った。モンスターとばれないよう、空を飛ばない約束をしていた。

「(このクソガキ・・・絶対、話を面白くしようと思って言ったに違いない)
。」
「ところでデミテルさん?宿にはいつ向かうんだな?」

デミテルの心情を感じとったフトソンが、話を切り換えた。それに対し、デミ
テルはきっぱりと言った。

「宿には泊まらん!」
「ええええぇえっ!?」

リミィとフトソンは驚愕した。

「・・・お前ら、モンスターなんだから野宿ぐらいどうってことないだろう?
ここに来る途中で一回しているし・・・」

デミテルは平然と言った。

「でもでも!せっかく泊まれるところがあるのになんでなんだな!」
「リミィ、デミテル様とおんなじベットで寝たぁい!」

怒涛の如く飛んでくるブーイングの嵐を、デミテルは一掃した。

「やかましい!この町の奴らの何人かは私の顔を知っているんだ!一年前まで
ここにいたからな!町一つ破壊した犯人がこの町にいることがわかったら、色々
面倒だろうが!特に宿屋!あそこの従業員共とはよく、麻雀(マージャン)やって
たんだよ!花札とかもやってたんだよぉ!」
「フトソォン。「まーじゃん」てなにぃ?「はなふだ」ってなにぃ?」
「・・・子供はまだ知らなくていいんだな。」

フトソンは意味ありげにリミィの頭を撫でながら言った。

「・・・あとリミィ。例え泊まる宿があったとしても、私は死んでもお前と同
じベットでは寝ない。」

デミテルは冷たく言い放った。リミィは頬を膨らませた。

「でも、そうなるとどこで野宿するんだな?」

フトソンは不安になりながら尋ねた。

「なに、探せば案外どうにかなるものだ。さあ、寝床を探すぞ!」
「リミィ、歩くの疲れたぁ!おんぶしてぇ!」
「フトソンにしてもらえ。」
「やだぁ!デミテル様がいい!」
「じゃあ歩け。」
「ケチィ~!」

午後十一時。彼らが最終的にたどり着いたのは・・・・・・町外れの海岸だっ
た。

「寒いんだな・・・。」

三人はならんで砂浜に座り、海を眺めていた。満天の星空が、どこか哀愁漂う
三人を見下ろしていた。

「耐えろフトソン。これぐらいの寒さで・・・ヘックション!」

フトソンとリミィの間に座るデミテルがくしゃみをした。五月とはいえ、夜の海岸は寒かった。そのうえ、この男のファッションは元々半袖だ。

「・・・そんな格好じゃ、絶対寒いんだな。」
「やかましい!このファッションは私のポリシーなん・・・へックション!」
「・・・寒いよぉ、デミテル様ぁ・・・・・・そうだぁ!デミテル様のマントの
中に、リミィ入れてぇ♪」
「フトソンの着ぐるみの中に入れ。」
「ええ~!?やだぁ!あんなのと一緒なんてやだぁ!」
「・・・・・・!」

フトソンはうなだれた。ちなみに「あんなの」とは、フトソンの真実の姿のこ
とである。決して、フトソンそのものが嫌いというわけではない。

デミテルは空を見上げた。星々がこちらを見下ろしている。寒さを紛らわすた
め、何か別事を考えることにした。

・・・それにしてもリド=キャスパールめ。まさかまたこの名前を聞くことに
なるとは・・・しかもあいつの親から・・・私はキャスパール家に呪われている
のか?

・・・終了。っていかんいかん!他に何か考える事は・・・あ。

デミテルは内ポケットから、一枚の紙を取り出した。旅立つ前、ローンヴァレ
イのハーピィ達に頼んで、標的達の情報を集めてもらっていた。それをまとめた
メモだ。

奴らは本当に役に立つ。私が雇っているわけではないが、なぜか協力してくれ
る。とても使える。だが・・・


※旅立つ直前のデミテルの部屋にて

『体調が戻ってよかったですわ。デミテル様。これ、頼まれた資料です。』
『ああ、ありがとうハーピィ族の代表。これで奴らを倒すのが楽に・・・』
『ハーピィだなんて・・・名前で呼んでもらっていいんですよ・・・ユーナっ
て・・・キャッ!言っちゃった♪』
『・・・さ、さて、報酬はなにがいいんだ?金か?それとも・・・』
『・・・わ、私が欲しいのは・・・』
『欲しいのは・・・?』
『・・・デ・ミ・テ・ル・さ・ま♪』
『リミイイイイイイイイィ!!フトソオオオオオオォン!!いますぐ出発だあ
あああああああ!!』

こうしてデミテルは、予定より一時間ほど早く、逃げるように旅立ったのであ
った。

あの時は本当に危ないところだったなあ。と、デミテルは回想しながらメモに
目を通した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

         標的情報資料(編集者:ハーピィ族代表 ユーナ)


クレス=アルベイン

出身地 不明

年齢 十七歳

特徴 剣使い。性格は真面目かつ鈍感。ダジャレが趣味。ローンヴァレイでも一
発かましていた。が、仲間に完全に無視されていた。(たまたま近くにいて聞い
ていたハーピィが一匹凍りついてました。)けっこうイケメン♪あ、デミテル様ほどではないですよ♪


 ミント=アドネード

出身地 不明

年齢 十八歳

特徴 法術という謎の癒しの術を使う。性格は温厚。かなりの美人。一見欠点は
なさそうだ。でも、こういう完璧を装ってる女は大低腹黒い!そうに決まってる
わ!


クラース=F=レスター

出身地 ユークリッド村

年齢 二十九歳

特徴 精霊と契約し、召喚術が使える。性格は冷静。帽子がトレードマーク。恋
人に尻に敷かれている。よくローンヴァレイまでこの人と恋人の悲鳴と怒鳴り声が聞
こえる。なかなか男前だけど、体のペイントがちょっとなあ・・・。


アーチェ=クライン

出身地 ローンヴァレイ

年齢 十七歳

特徴 魔術を使うピンクの髪をしたハーフエルフ。性格は元気はつらつ。殺人的
料理を作ることで地元のモンスター達に恐れられている。何匹のモンスターが犠
牲になったことやら・・・
                 
以上

こいつだ。
 デミテルは、「アーチェ=クライン」という名前を睨みつけた。

 リアのフリをしていたピンクの髪の女。ふざけたことを。私を馬鹿にしたこい
つの罪は重い・・・。


「デミテルさん・・・あれ、なんなんだな?」

突然、フトソンがデミテルの左手の方を指差した。デミテルはメモを懐にし
まうと、フトソンが指差した先を見た。そこには・・・


最初、それはただの、陸から海に突き出た巨大な岩に見えた。少なくとも、こ
こに来た当初は暗かったためそう思っていた。しかし、目が暗闇に慣れてくると
、それが実は小型の船であることに気付いた。

「こんな人気のない海岸になぜ船が・・・?」
「行ってみようよぉ!」

デミテル達は船に歩み寄って行った。

船は無人のようだ。暗くひっそりとしている。だいたい十人程度が乗れる大き
さだろうか。デミテル達は船を下から見上げていた。

「なんでこんなところに船があるんだな?」
「おそらく、どっかの金持ちが所有している自家用船だろう。港に置くと駐船
代を取られるからな。」

デミテルは船を見上げながら言った。
船には傷一つついていなかった。まだ買ったばかりなのだろう。

この時、デミテルの脳裏にある考えが浮かんだ。それは、悪人なら誰だって考
えつくはずのこと・・・。

「おい、フトソン?」
「はい?」
「我々は・・・いわゆる・・・悪人だよな?」
「えっ!?ま、まあ・・・復讐の旅をしているくらいだから、他人から見たら
・・・」
「・・・ということは、船の盗難など朝飯前だな?」
「ええっ!?」

フトソン達は船からデミテルに視線を変えた。デミテルは薄ら笑いを浮かべ、
いかにも悪人っぽい顔をした。

そう!私は悪人!“悪い人”と書いて、“悪人”!船を盗むなど、やって当た
り前のことだ。この小説が始まってからというもの、私は完全にただのダメな男
扱いだ。今こそ!この小説が恐怖の復讐物語であることを、読者に知らしめてや
る!

デミテルはリアルな決意をすると、懐からロープを探した。リミィに持たせ、
甲板まで飛んでいってもらい、どこかにくくりつけさせ、そのロープを登って甲
板の上に出るのだ。

やがて、あるものが内ポケットから出てきた。それは・・・・・・


 クリームサンドクッキー。デミテルはとりあえず口に頬張った。

「デミテル様ぁ!リミィにもぉ!」

デミテルはムシャムシャ食べながら、さらにもう一枚取り出し、足元のリミィ
に落とした。リミィは見事にキャッチした。

「うわぁい♪」
「夜中に食べるお菓子は体によくないんだな・・・。」

フトソンは静かに言った。が、聞いているものは誰もいない。

「(クリームサンドクッキーって、色んな食べ方ができるんだよなぁ。一枚め
くって、クリームだけ食べたり。めくったやつで、クリームをディップして食べ
たり。でもやっぱ、そのまま食べるのが一番だなあ・・・)」

そんなことを考えながら、デミテルは内ポケットのロープを探していた。

「そこにいるのは誰だ!」

突如、後ろから声がして、デミテル達は一斉に振り返った。

ランタンを片手に掲げた男が、こちらを疑惑の目で睨んでいる。その男の後ろ
には、女性が一人、へばり付くように寄り添っている。男とは対象的にかなり怯
えた目をしていた。

男はとても育ちのいい顔立ちをしていた。聡明な二枚目とはこいつのような者
を指すのだろうと、デミテルは思った。髪の色は、赤い部分を除いてデミテルと
ほぼ同じだった。

きっとこいつが、船の持ち主の金持ちに違いない。デミテルは直感した。

一方女の方は、どこか田舎臭い感じがした。髪は赤みのあるピンク色で、赤い
帽子を被っていた。服は緑色だった。

「あんた達、こんな夜中になにしてるんだ?まさか船泥棒?・・・それとも父
さんの・・・?」

デミテルは返答に困った。夜中の十一時に、海岸で、ハーフエルフと、幼女と
、着ぐるみを着た変なオッサンが(オッサンに見えるかどうかは別としても)、
なにをしていると聞かれたら、何とも答えようがない。

「わ、我々は・・・ええと・・・その・・・」

 どうすればごまかせる?

すると、突然フトソンがとんでもないデタラメを言い放った。

「ぼ、僕達は・・・・・・だ、大道芸人なんだな!!」
「(ハァっ!?)」

デミテルは驚嘆した。よりによって大道芸人である。もっとマシな嘘はなかっ
たのかと、フトソンをチラリと見ると、フトソン自身も自分の言ったことにビッ
クリしていた。体中から汗が噴き出ている。なぜ、被り物をしているのに汗がで
るのかは謎である。

男はまだ疑惑の目を向け続けている。

「大道芸人ねえ・・・。確かに、着ぐるみ男と小さい女の子と・・・あんたは
アレか?ピエロか?」

ピエロ。私がピエロ。そりゃまあ、それっぽく見えるかもしれないが・・・

デミテルはちょっと傷ついた。

 「やめましょうよ、エルウィン。子連れの船泥棒なんて聞いたことがないわ。

 男にくっついていた女が口を開いた。

 「でもナンシー。船泥棒じゃないとしても、父さんの追っ手だったら・・・。

「お父様が知っているはずがないわ。この船だって今日の夕方に頼んだんだし
。私達が・・・その・・・こんなことしようとしてるなんて・・・。」
「ああ、ナンシー。僕たちはなんて不幸なカップルなんだ・・・!」
「ああ、愛しのエルウィン。私はどんなことがあっても、あなたについていく
わ・・・!」
「ナンシー・・・!」
「エルウィン・・・!」

すいませーん。二人だけの世界に旅立たないでくださーい。デミテルは心からそう思った。

目の前のカップルは互いに見つめ合いながら、二人だけの愛の世界に旅立っている。それを目の前で見せつけられるこっちはどうしろというのだ。

おまけにこの二人の会話を聞く限り(「不幸なカップル」、「お父様が知ってるはずがない」、「こんなことしようとしてる」、などの言葉から)、どうやら「駆け落ち」なるものをしようとしている。我々の後ろにある船で。

「・・・リミィ、お前はあんまり見るんじゃない・・・」

そう言って、デミテルはリミィの視界を後ろから両手で遮った。

「え~!もっと見たぁい!」

リミィの声で、目の前のカップルは正気に戻った。二人は軽く赤面したあと、
話を戻した。

「さ、さて!あんた達が船泥棒ではないことは、とりあえず信じよう。ナンシ
ーに免じてな!」
「ど、どうも・・・。」

そんなんでいいのか?と、デミテルは正直思ったが、そんなことは言ってられ
ない状況である。おまけにエルウィンは、かなりめんどくさい事を要求してきた

「しかし、あんた達は本当に大道芸人なのか?もし本当にそうなら・・・何か
芸をやってみせてくれよ。」

マズイ。芸など出来るはずがない。しかしこのままでは・・・。

「・・・で、では、打ち合わせをしてくるので少々お待ちを・・・」

デミテルはフトソン達を引っ張り、エルウィン達から距離を置いた。

「・・・フトソン、何でよりによって大道芸人なんだ?」

打ち合わせの第一声はこれであった。

「いや、その、なんか思い付きで・・・」
「思い付きでものを言うとな、大低後で後悔するんだ。」

デミテルは冷たく言った。フトソンはうなだれた。

「ねえねえ。「だいどうげいにん」って何ぃ?」
「路上や広場で、通行人相手に芸をする人なんだな。」

フトソンが簡単に説明した。リミィは目を輝かせた。

「デミテル様は魔術だけがとりえじゃなくて、芸もできるんだねぇ!」
「「魔術だけがとりえ」ってお前・・・ん?そうか。魔術という手があるな・
・・。」

デミテルは考えた。魔術を上手く芸にできないだろうか?

「デミテルさんって、魔術が使えたんだな!

フトソンは素で驚いていた。

「失礼な。私とてハーフエルフのはしくれだぞ?中級呪文程度までなら使える
。」

デミテルは少し自慢気に言った。フトソンは首をかしげた。

「中級呪文まで使えるのに、なんで侵入者達に負けたんだな?」

確かにそうである。デミテルはちょっと赤くなった。

「しょ、しょうがないだろ!あの日はその、ええと・・・・・・と、糖分を取
り損ねたんだ!」
「ええ!?糖分ないと魔術って使えないんだな!?」
「えっ!?・・・そ、その通りだ!魔術に使う「TP」とは、「糖分・ポイン
ト」の略だ!」

我ながらかなり適当な嘘である。が、フトソンはなんの疑いもなく信じた。


本当は。本当はただ集中できてなかっただけ。目の前に自分がもっとも愛し、
そして殺したはずの女性を名乗る奴が現れたから。あの時、私の心が動揺さえし
なければ、あんな奴ら・・・


「おーい!まだですかぁ?」

後ろからエルウィンが催促した。デミテルは気分を切り替えた。

「よく聞けお前ら。今から私が言うようにやるんだ・・・」

デミテルは、フトソン達にこれからやることを説明し始めた。


  デミテル達は知らない。今この瞬間に、クラース=F=レスターが定期船の食堂で、メイアーとともに「飲ま飲まウェイ♪」していることなど。

つづく

あとがき
まず最初に言いたいことは前回同様アレです。第三復讐教訓でコメント書いてくれた方々、本当にありがとうございます。本当に力になります。例え、同じ内容が二回続いても気にしません。むしろ、力が倍になった感じです。
さて。この小説を読んでくれた方。これであなた様の人生はデラックスです。今すぐ、「ドリー○ジャン○宝くじ」をダッシュで買いに行きましょう。確実に一等の三億円が・・・・・・・
ごめんなさい。ほんとごめんなさい。嘘です。私は最低の人間です。・・・・・でも、もしも当たったらコメントお願いします。(当たらなくてもよろしくお願いします。)あ、三等でも・・・・・いえ、なんでもないです。ごめんなさい。それでは。


次回   第五復讐教訓「お酒の一気飲みは絶対にしてはいけません」

コメント

今作も笑わせて頂きました。
くじで当たらなくとも、もう十分幸せです。

ところで、「リド=キャスパール」とは一体…
オリキャラですか?

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