蒼海【9】
また、寝てしまった。
寝る子は育つというが、寝すぎてしまった場合、起こして欲しい。
おかげで妙に気だるかった。
気がつけば、朝だった。
窓から望める地平線の向こうで顔を出している太陽があまりにも眩しくて目を細める。
昨日がおわり、今日がはじまった。
両親がオレが起きたことに気づいた。
「おぉ、龍二。お前はよー寝るなぁ。」
「本当ね。きっと疲れていたのね。」
ふと時計に視線をうつす。
・・・9時半。昨日は午後10時頃に寝たと考えると・・・。
寝すぎだー!
・・・今は春休みだし、まぁいいんだっけ。
船旅も楽ではない。
常に体が揺らされているのだ。
特に荒波の日なんて違う意味でトイレに駆け込む人も少なくない。
そういえば、馨聲大島にはいつ着くのだろうか?
「なぁ、母さん。馨聲大島にはいつ着くんだよ?」
オレはベッドからゆっくり立ち上がり、太陽が顔を出している窓に背凭れた。
「思ったより早く着くようね。明日の朝には着くみたいよ。」
・・・あと一泊は海の上か。
それを考えただけでも憂鬱になる。
「ハハハハ!龍二は若いのにダメだなー。
お父さんより年じゃないか?」
「体力馬鹿のオヤジに言われる筋合いはないっ!」
アハハと笑い声が狭い部屋の中を木霊する。
当たり前で、幸せな光景。
これを当たり前だという過剰意識が、危険だったりする。
人生、何が起こるか分からないのさ。
気を緩くした瞬間に突然崩壊するもんだ。
時は魔法がかけられたかのように過ぎていった。
相変わらず両親は甲板。イルカが出ないかな、なんていう子供のようなことを呟いていたっけ。
現在午後8時。
空は暗い闇に閉ざされ、太陽の光はすでに眠っていた。