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蒼海【11】

歩いているオレを阻むように狭い廊下に形成される人の群れ。
何故か、昨日の夜の出来事が脳裏をよぎる。

あの時、確かに何かに邪魔されたのだ。
手を振っている会うべき友たちがまるで霧に飲まれたように消えて、何も見えなくなって―――

そして、部屋に居た。
ひと時の夢だったのかもしれない。
幻想なのか空想なのか妄想なのか、はたまた夢だったのか。

それこそ、夢だった。分かるはずもない。

人ごみを越え、甲板に出る。

まるで落ちてきそうな闇と光。
星があまり見えない。それだけ闇というのは暗く、深いのだろう。
月明かりに照られている船の澪が、昨日見た桜の花びらに見えた。
白い波と潮が、そう見させていたのか。

白い吐息が漏れる。
ここは本当に南の海で、春なのか?
まるで日本ではない違う場所に来てしまった。そんな孤独感があった。
その孤独感を埋められるのは、自分だけ。

夜空を見上げ、片手で星を掴もうとする。
届きそうで、届かない。
今度は両手で包み込むように掴んでみる。
ポン、という空洞音だけが寂しく繰り返しなり続けた。

遂に明日は到着だ。
本当に頑張らないといけないのは明日からだ。
会って確かめてやる。
あの夢で見た果てまで続くような道の上にいた出会う人たち。

明日から頑張ろう!
一人で意気込み、その勢いのままオレは部屋に戻った。

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