蒼海【12】
・・・食べては寝ての生活、三日目。
今日でやっと船を降りられる。それを考えただけでも何故か安心するものがある。
オレと両親は荷物をまとめている。
・・・現在9時。到着予定は10時だ。
オレは荷物をまとめ終えたのだが、両親はまだ整理整頓に追われている。
・・・案外要領が悪いな。
オレはベッドに座り、ゆりかごよりも強く、厳しい北風より優しい船の揺れに合わせながら、一緒に揺れていた。
脳がぐらりと動く。視点が一点に定まらない。どうやら、荒波のようだ。
それが、オレには乱暴な歓迎に思えた。船と波がぶつかって作られる水音に聞き耳を立てながら時間がすぎるのを待っていた。
ふと、窓の外に目をやる。
白い鳥が、まるで導かれるようにある場所に向かっていく。
気になって立ち上がり、これでもかというぐらい窓にぐっと顔を近づける。
・・・見えた。
馨聲大島だ・・!
「目的地はっけーん!これより、到着します!
全員配置についてー!」
急に叫んでしまったせいか、両親がビクっと反応する。
「・・・こら、静かにしなさい。」
ボソッと怒られた。
・・・恥ずかしい。
それでも、窓から離れずに島を見続けた。
あれが馨聲大島かー・・・。
はやくこの目でどんな島か確かめてみたいものだ。
とにかく・・・緑、山が多そうだな・・・。
徐々に島に近づいていく。
そのとき、船内アナウンスが鳴り響く。
この部屋ともお別れか。
重たい荷物を持ち、廊下に出る。
そのとき、オレは驚いてしまった。
船を降りる人は・・・オレたちだけ!?
大抵、船を降りるときは人並みに揉まれないといけないのだが、何というか、とても過疎ってる感じ・・・。
歩調を速め、オレら一家は船を降りた。