蒼海【14】
歩き出してただいま五分経過。
ものの二分で「離れてちょうだい。」と言われ、これまた渋々離れたのだ。
歩きながら、オレは呆然としていた。
本当に、何も無い。
歩くたびに感じるじゃりっとした土の感触。うっとうしいくらい照りつける太陽の日差し。
コンクリートの地面は港だけだった。
・・・あれだけでも、港として評価すべきだった。
「本っ当に何もねぇー・・・。」
「おや?お父さんは楽しみで仕方ないぞ。
島々の美しい自然!透明感のある美しい海!
晴れ渡る青い空!美味しい空気・・・!」
はぁー・・・オヤジ止まらねぇ・・・。
母親も苦笑いしている。
ふと、周りを見渡す。
今歩いている道の両側には、
田、田、田。それがまたこの道と一緒にどこまでも真っ直ぐ続いている。ついでに、横にも。
すべて水田やら畑。
大きく目立つような建造物は何ひとつない。ただ、空が広がっている。
この道と並行するようにもう一つ道があった。
オレが歩いている道とその道の間には畑がある。そんな感じ。
その道に、人が歩いていた。
目を細めてみないと分からないぐらい遠い距離だった。
白いブラウス。青と紺の白の線が交互に交差し、とても涼しい雰囲気を醸し出すチェックのスカート。
スカート丈は膝より少し上ぐらいだろうか?
髪の長さはセミロング。どうやら女の子のようだ。
手を後ろに組んでのんびり歩いている。
その子が、オレにはあまりにも眩しく見えた。
夏。その単語を感じずにはいられなかった。
「龍二?さっさと歩きなさい。」
あ、いけね。オレものんびりしちまった。
「あらぁ?あの女の子、島の子かしらねぇ?
けっこう可愛い子じゃなーい・・・・。」
さすが、カメラマン。数秒で容姿を見抜いたようだ。
・・・ずっと見ていたのだから、言い返せなかった。