蒼海【16】
太陽の日差しが若干柔らかくなった。
というのは勘違い。日差しに慣れてきた。
そろそろキツいぞ・・・バスケしていたことは、もっと体力あったんだが。
春休みに引越しという事もあり、一週間近く激しく動いていない。
革で包まれた綺麗なバスケットボール。
バスケットシューズを履き、体育館を走り回ったっけ。
止まるたびにキュッという床との摩擦音が、頭の中に響き渡る。
誰もいなければ静寂。その言葉がピッタリな体育館に木霊する気合の声、ボールをつく音。
そして、フリーの状態で打つ全神経を指先、足、膝に集中させて放つスリーポイントシュート―――
そのとき、ドンとオヤジの背中にぶつかった。
鼻を打った。痛い。
「っつー・・・急に止まるなぁ!」
右手の人差し指と親指で鼻を揉み解しながら怒った。
「あぁ、悪い悪い」
ハハハと笑いながらオレの頭をポンポンと軽く叩いた。
どこまで能天気な人間なんだか。
目線を両親の先にくぐらす。
よく見ると、オレたちの荷物を積んだ大型トラックがあった。
その周りに集まっている、少人数の人々。
遂に到着か・・・!さっきまでの疲れは嘘のようにまで吹き飛ばないが、
若干安心感がある。これで少しは休めるだろう。
見た限り、家は歩いていたときに見てきた家とは違い、それなりに新しいようだ。
悪く言えば、歴史が浅い、か。
木造なのは間違いない。
わざわざ塀まである。・・・なんかぶっそうな感じ。
現段階では、細部まで見れないかな。
「やっと到着よ。少し休憩してから、すぐに作業にとりかかるわよ!」
そういえば・・・それがあった。
「・・・だったぁ」
歓喜の声を上げようとしたが、溜め息に変わってしまった。
オレはバスケットボールより重いものは持ったことねぇ!
もちろん、両親の耳には届かなかった。