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復讐の英雄


『復讐の英雄』



ブシャァ! ブシュゥ!

悲鳴と共に血飛沫が飛び散る。


桃太郎が鬼を退治して十数年・・・。

桃太郎を発見して以来、自分を大事に育ててくれた老夫妻は、たった今死んだ。

桃太郎の手に掛かって・・・。

 桃太郎『俺に、よくも平気であんな物を食べさせてくれたな。

自宅の外に3つの墓。

それはかつて桃太郎と共に鬼退治をした、犬と猿と雉の墓でした。

 桃太郎『まさか利用されていたとは・・・。

     おかげで犬も猿も雉も死んだ。



老夫妻の家は、豪邸と言える程立派な屋敷だった。

かつて鬼退治から戻った桃太郎が持ち帰った金銀の財宝によって

老夫妻は莫大な富を手に入れたのだった。

家だけではない、やがて専属の侍までも従えて軍事力もつけた。


だがこうなることは、あの日・・・

桃太郎の桃を切った日から仕組まれていた陰謀があったからだ。

 爺『この子を育てて、鬼退治をさせよう。

   そして鬼達が隠し持っている金銀の財宝を頂くのだ。

 婆『それは名案だ。

   しかし、大きくなったとしても鬼達に敵うのかい?

 爺『ふん、そこは婆さんの作ったアレを使えば良かろう。

 婆『なるほどね。だけどアレには副作用があるよ。

 爺『それならなお良い。全ては儂らの未来の為だ。


それからというもの、桃太郎の驚異的な成長力に老夫妻は驚いた。

 桃太郎『お爺さん、お婆さん、ボクは鬼退治に行きます。

それを聞いた老夫妻は内心で違う意味で驚いた。

まさか、自分から鬼退治に行くと言い出すとは、と。


 婆『桃太郎や、これをお持ち。私が作ったキビダンゴだよ。

計画通り、桃太郎は旅に出た。

老婆秘蔵のアレを持って。


 桃太郎『鬼め、思ったより手強い。お婆さんからもらったキビダンゴを・・・。

桃太郎はキビダンゴを食べた。

 桃太郎(なんだ、この込み上げて来る力は・・・!?

     頭の中がすっきりする!!

キビダンゴを食べた桃太郎は超人的な力で鬼達を圧倒した。

あまりに常識を超えた力による戦い方だったので、

鬼達は恐怖し逃げ出そうとしたが桃太郎は追い詰め、ついには皆殺しにした。


まんまと財宝を持ち帰った桃太郎に最初に訪れた不幸は、

従えていた犬、猿、雉の反乱だった。

3匹は凶暴化したのだ。

凶暴化し、村の人間を食い殺すという事件まで起こした。

その兆候は鬼ヶ島の鬼との戦いから現れていたのだ。

人を襲う動物達を見兼ねて、桃太郎は自分の太刀で3匹を鎮めたのだった。


 婆『まさか凶暴化するとはねぇ、へっへっへ・・・。

 爺『まぁ儂は元々動物は嫌いじゃ、ヒック。

老夫妻は酔っ払いながら言う。

 桃太郎『お爺さん、お婆さん・・・どうして・・・


その夜のことだった、

 爺『それにしても、そろそろじゃないか?

 婆『そろそろって、なんのことだい?

 爺『桃太郎さ。症状が見えても良いと思ったが・・・。

 婆『あの毒は強いと言っても、急激に効くような毒じゃないからねぇ。

   時間をかけてじわじわ効いて来るのさ。

 爺『まぁ病死に仕立てるには適しているな。ふっふっふ。

 婆『キビダンゴに、悪魔の大麻と呼ばれる草が使われていたなんて気付かないだろうねぇ。

なんと桃太郎は起きてこの全てを聞いていた。

 桃太郎『・・・。


3年後、周辺の領主に任命される就任式の前日。

 桃太郎『ごほっ、ごほっ。

桃太郎に盛られた毒の症状が目立ち始めた。

 爺『桃太郎や、大丈夫か?

 桃太郎『はい、ごほっ、ごほっ。

 爺(ふふふ、貴様は良くやった、大変良くやったぞ。

就任式に備え、早く眠りにつくことにした。

 爺『明日になれば儂も一国の城主。

   その暁に、まずは隣国を押し潰してくれよう。ふははははは!

 婆『おほほほほほ!

喜びに打ち震え、笑う。

だが、老夫婦にも年貢の納め時が来た。

二人の寝室の襖がザッと開いた。

 桃太郎『お爺さん、お婆さん・・・。

 爺『も、桃太郎!!

 婆『ああああぁ!!

 爺『な、なんじゃ? 刀なぞ持って。

 桃太郎『なぁに、鬼退治に来たところですよ。

     お爺さんと、お婆さんという鬼をね。

 爺『くぬぅぅ!

爺は寝室に飾ってあった薙刀を取ろうとするが、

 桃太郎『させるか!!

 爺『ぎゃげぇ!!

一撃に倒れる爺、そして。

 桃太郎『よくも、俺にあんなものを・・・。

     最初から騙されていたなんて!

 婆『ひ、ひぃ!!

 桃太郎『死ね!悪魔め!

 婆『ふぎゅ!



翌日。

 桃太郎『どこかに、良くない噂を持った代官を知りませんか?

 村人『あぁ?良くない噂を持った代官なんていくらでもいるよ。

    特に隣の街の代官は他の土地でも有名な悪代官だとか。

 桃太郎『そうですか。分かりました、ありがとう。

桃太郎は歩き出す。

 桃太郎(悪魔の毒で、今に滅ぶこの身体・・・。

     ならば死ぬ前に、1人でも多く悪人を斬ってやる。

     俺のような死人を増やさないように。



その後、彼の姿を見たものは、いない。

だが彼がいなくなって以来、各地の代官が次々に斬られる事件が相次いだと言う。


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