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テイルズオブアドベンチャー【1】


それぞれの世界で全てが終わり、それぞれの物語も閉幕したはずだった。
男はぼんやりと空を見上げ、再びその本へと視線を戻す。
魔晶爪書――《ドリームフォーチュン》を片手に、男はブツブツと呪文を呟き始める。
それを見ているのは別の女性。プラチナブロンドに輝くその髪は、月光に照らされて輝いていた。
 「これで、全てが上手くいくのね…」
 「ああ。すべては我々の思うがままだ」
二人は微笑むと、己の勝利を確信しているかのごとく、お互いの杯を合わせ乾杯した。
ガラスがこすれあう、かすかな響きが生まれる。それが響いたと思った瞬間、本がすさまじい光を放ち始めた。



      テイルズ オブ アドベンチャー

            序章  笑えない出会い




 「ん…?」
うたた寝していた事に気がつき、思わず体を起こす。
彼――セネルの左右隣には、シャーリィとクロエが同じようにうたた寝していた。
先程まで「どっちにするの!?」なんて大喧嘩に巻き込まれかけていた事を思い出し、脱出しようと立ち上がる。
瞬間、コンマ0.02秒で二人も立ち上がり、
 「さぁ、いい加減白黒はっきりつけてもらいましょうか? “お兄ちゃん”。私より、クロエなんかがいいというわけなの?」
 「さぁ、どちらか白黒決めてくれないか? “クーリッジ”。私とシャーリィ、どちらと婚約するつもりだ!?」
いきなり人生最大の分かれ道に立たされたセネルは、もう何が何だか全く理解できていなかった。

  ――なんなんだ、このやり取りは!? しかもなんだ!? どっちをとっても俺が殺されそうなこの空気は!?――

少なくとも、彼の不安は大当たりだった。
シャーリィとクロエは、セネルが自分を取らなかったらボコボコにするつもりでいるのだから。
助けを求めようと隣を見る。
そこには、ぐっすりと眠る仲間の面々――ノーマ、ウィル、ジェイ、モーゼス、グリューネがいた。
…グリューネ?
 「なんでグリューネさん生きてるの――――――ッッ!?」
 「きゃぁぁぁああああ!! グー姉さ―――ん!!」
ノーマが目を輝かせ、グリューネに駆け寄った。それと同時に、赤い閃光と銀色の閃光がこちらに飛来する。
 「「ちょっとそこのお姉さん! 俺(さま)とデートしませんごばふぅぅ!!」」
 「「なにやってんだいこのスケベロニ(アホ神子)!」」
だが、それを追ってきた赤い閃光と黒い閃光にギッタギタにされていた。困った奴である。
セネルは自分も後々にこうなってしまうかもしれないと考えると、本当に笑えないのであった。
赤髪ロングヘアーは黒髪で忍者に似た服に身を包む女性に殴り飛ばされ、銀髪で肌黒の男性は赤髪ツインテールに関節技を喰らっている。
 「一体全体なんだって言うんですか? 騒ぐんだったら別な所でやってくださいよ…」
“耳栓もってくればよかった”とでも言いた気な表情でジェイがため息をついた。
それと同時に、数人の影がこちらに走り寄ってくる。彼等はこの4人の仲間なのだろう。
 「おい、ゼロス! しいな! いきなり走り出すから焦ったじゃないか!」
 「ロニ! ナナリー! 二人とも、置いてかないでよ――っ!」
それに答えるかのように、黒髪の女性と赤髪ツインテールの女性が、男性二人を踏み潰す。
下のほうから悲鳴が聞こえたが、全く気にする様子は無いようだ。
 「仕方ないだろ、ロイド! このアホ神子が悪いんだから!」
 「ええ!? またかよ!? …あ、ごめんな~! 俺の仲間がちょっと…」
 「仕方ないだろ、カイル! このスケベロニがまたこりずにナンパを…」
 「またなの!? ロニってば、相変わらずだよね~!」
二人の視線の先にいたのは、金髪の少年――カイルと鳶色の髪の少年――ロイドだった。


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あとがき 初めまして! 浅葱 麗 と名乗る者です。
     初投稿です。どうか、よろしくお願いします。

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