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テイルズ学園 ~テイルズ オブ スクール~【6】

クラトスの袖を軽く引っ張る力。
「・・・・で」
袖を引っ張る少女が呟く。

「・・・・すぐ戻る。だから、待っていろ。・・・な?」
クラトスは、自分の制服の袖を引っ張る、か細い指を離す。
しかし。
「いや・・・・・」
さっきよりも強い力で、そしてどこか震えた声で服を引っ張ってきた。
何かトラウマでもあるのだろうか・・・?

「予備の鍵なんて無いわよ・・・あったら、誰か持ち出すに決まってるじゃない・・・だから・・・・その・・・・い、行か・・で・・・」
「では、誰かが鍵を開けるまで、ずっと此処で待っているというのか?光わずかで食糧も飲み物も無い。そんな空間で」
リフィルは黙りこんだ。袖をずっと握ったままで。
そして、
「別に・・・・それでも・・・・・」
袖を握る力を一層強めて、小さく呟いた。


* * * * * * * * * 


全く関係無いB組。
ノーマが大きく手を挙げる。
「はーい、代議員はキルキルがいいと思いまぁ~っす!」
キルキルとはキールの事らしい。

各クラスでは、委員選挙の真っ只中だった。立候補もあれば、推薦もある。
B組では代議員候補がいなかった為、推薦へと移っていた。
この様子だと、他の委員は全て決まっているようだ。


しかし推薦をされたキールは、怒りの表情で椅子から立ち上がった。
「絶対に嫌だ!何で僕があんな面倒臭い仕事をしなければならないんだ!代議員なら他をあたれ」
「キール、落ち着いて。せっかく推薦されてるのに・・・・」
キールの右隣の席に座っているリアラが、怒りを静めるようにキールを促す。しかしキールは座ろうとしない。
「ふん、僕がそう気安く推薦を引き受けると思うなよ!僕はあんな面倒な仕事は向いてないんだ。それに、僕は図書委員になりたかったんだよ!代わりの仕事は代議員~で全て片付くと」
「キールそれ以上言ったらあの世逝きだから」
「思う・・・・・・・・・・・・・・な・・・よ・・・」


一瞬、誰も聞いたことのないような言葉が聞こえた。キールの右隣の席から。
(・・・・・・・・・)
誰も、こんな恐ろしいことをリアラが言ったなんて思いたくなかった。誰も・・・・
カイルが心配になってくる。


そして。
「・・・・わ、分かったよ、やればいいんだろう?やれば」
もう何を言っても聞かないから、と懲りたのか、それともリアラの発言に怯えたのか。キールは代議員になってやる、と言った。ノーマが歓声をあげる。
「いよっしゃぁぁ~!男子代議員決定~っ!キルキルよろしくぅ♪」
「好きでやってやるんじゃないんだからな。・・・というか、キルキルって言うな」
「まぁまぁwんじゃ、あたしは女子代議員ってことで~」
ノーマがぴしっと手を挙げる。
「はっ、はぁ!?ふざけるな!何でこんなシャボン女なんかと・・・・」
キールがまた愚痴り始めた。

「だれがシャボン女だっつーの!!」
キールの愚痴に一喝。
「とにかく、あたしとキルキルは代議員なの!もう決まり!いいわね!!?」
「だからキルキルって言うな!!」
ノーマは、隣の教室にまで聞こえそうなぐらいの大きな声で力説するように叫んだ。

* * * * * * * * * *

袖を引っ張る力。それは一瞬とても強くなり、服に皺を残して弱くなった。
暗くて、お互いの顔すら見え辛い空間。
クラトスはリフィルの顔を確認したかったが、この空間だ。確認したくても、暗くて何も見えなくて出来なかった。


「・・・・・・・・・・・」
クラトスはそのままくるりと後ろを向いて、カウンターの方へと行こうとした。
「・・・ちょっと、何処行くの・・・っ!」

リフィルが小さく、しかし大きな思いを込めて叫んだ。
今度は袖ではなくクラトスごとを勢いよく引っ張る。
「お、おい・・・」
クラトスが、少女の突然の行動に激しく動揺する。

そして。

ガッ。
クラトスの足元で、何かを踏んで滑ったような感覚がした。
そして彼はそのままバランスを崩し・・・
「ぐ、ぐわっ!?」
後ろに建っていた、本棚へとぶつかった。

それだけなら良かったのだが、そういう訳にはいかないようであった。
クラトスが本棚にぶつかった衝撃で、2人の目の前にあった大きな本棚が2人の方向へと倒れてきたのだ。
運が悪い事に、その本棚はこの図書館で一番大きく、一番不安定な本棚だったのだ。


丁度本棚はリフィルの真後ろに倒れてきた。しかし、何がどうなっているのか全く分からないリフィルは、その場に立ち尽くしている。
「逃げろ、早く!!」
クラトスが叫ぶ。
「・・・・・・・えっ?」


時はもう遅かった。


* * * * * * * * * * *


(ふむ、結局リフィルさんは帰ってきませんでしたね・・・・・・・)
教室では、2時間目の終わりのチャイムが鳴ったようだ。


「では、プレセアさん。マオさん。代議員頼みますよ」
教卓の前で、A組新代議員がジェイドの元へ集まっていた。
ジェイドの手には、小さくて綺麗な銀と銅のバッジが乗っている。それには「代議員」と美しく彫刻されていた。

担任は、生徒の小さな手にそれを受け渡す。
「う、うん!」
「ありがとうございます・・・」

「う~ん・・・・・・」
その様子を横目で見ていたアーチェが、唸り声を漏らした。
「どうしたの?貴女が考え事?あらあら今日は雪が降りそうね」
リアが痛い言葉を率直に言う。
「リア・・・・あんたねぇ・・・」
周りに聞こえないのが何ともアレだが。
「・・・まぁいいや。えとね、ウッドロウが代議員やらないなんて、珍しいなーって」
アーチェは、教室の後ろでスタンと話しているウッドロウを見つめた。
「あぁ・・・・確かにそうかも。ウッドロウさん、代議員以外やったこと無いっていう位だものね」
「マオの奴・・・・何かやったのかしら?ボクに一票をー!!とか」
「・・・それは無いと思うわ」
「・・・・・やっぱり?」


「?何か呼んだかね?」
「ひえぇぇぇっ!!!?」
後ろから急に聞こえた声に、アーチェとリア―2人が同時に叫ぶ。
リアの声は聞こえなかったが。
「あ、あーいや、何でも無いわよ、何でもっ!」
後ろに立っていたのは他の誰でもなく、ウッドロウだった。
噂をすると・・・とは正にこの事なのだろうか。

彼の名札には「1年A組」と彫られたバッジしか付いていない。
「私がどうかしたのか?」
「・・あ、えぇっとねー、ウッドロウ。何で代議員しなかったの?」
この際だから聞いとこう、とでも思ったのか。アーチェは失礼承知で質問した。

「ふむ、やはりその事か。他でも聞かれたよ」
「あ、もしかして気にしてた?ゴメンっ」
「いや、構わん。この際だから話すのも良いかもしれないな」

* * * * * * * * * * *


「っつ・・・・・」
背中に激しい痛みを感じた彼は、自分の身体を起こそうとした。
しかし、背中の上に何か途轍もなく重い物が乗っている。
その所為で身体が全く起き上がらないのだ。


「くっ・・・本棚が背に落ちてきたか・・・・どうりで重い訳だな」
クラトスの背中には、あの本棚が覆いかぶさるようにして倒れていた。本は見事に雪崩落ち、ただでさえ暗かった視界は、さらに暗さを増していた。

「そういえば・・・・・リフィルは・・・・」
リフィルの姿が見当たらない。
クラトスは限られた自由を精一杯利用して、辺りを見回す。左右、自分の見れる限り見回しても、彼女は何処にも居なかった。

「ということは・・・・・逃げたのか。良かった」
クラトスがふぅ・・・と安堵の息を漏らす。

「きゃ・・っ、何?」
息をついた瞬間だった。自分の真正面からリフィルの声がしたのだ。
「り・・・リフィル?お前・・・何処にいる・・・?」
「そ、そっちこそ・・・何処にいるのよ?」
真っ暗な世界で、2人はお互いの居場所を探る。

しかし暗闇では全く分からない。どこ、どこ?と探りあっても無限ループ―時間の無駄だ。
それにいち早く気付いたリフィルは、丁度クラトスに貸してもらっていたペンライトが自分の横に転がっているのを見つけた。さっきのことで、紐が切れたのだろう。
彼女は、クラトスと同じく限られた自由の手を精一杯伸ばし、ペンライトを拾った。
「ちょっとペンライト点けるわよ・・・?」
「あぁ」

リフィルは手探りでスイッチを探り当て、ONにする。
その瞬間、ぱぁっと淡い光が辺りに散らばっていった。


「え・・・・・ちょっと・・・どうなってるの?」
「・・・・・・・・・・」
リフィルが真正面を向く。目の前には、クラトスの顔があった。
クラトスの目の前には、リフィルの顔があった。

つまり、うつ伏せ状態のクラトスの下には、仰向け状態のリフィルがいるのだ。
それも真正面。
本棚が無かったら、クラトスがリフィルを押し倒しているように見えてしまう。
「く、クラトス・・・何で私の上にいる訳・・?」
「こっちが聞きたい・・・ただ一つ分かるのは、本棚に挟まれた、ということだな・・・」

「そんなの私にだって分かります」
クラトスは自分的に今の状況を述べた。しかしそんな事は分かりきっているリフィルにあっけない言葉を返されてしまった。

「とにかく、ここから出なければ・・・・」
「で、でも、どうやって出るのよ」
「ペンライトの明かりがあるだけ助かったと思え。光が無ければこの図書館では何も出来んからな。しかし・・・・」

クラトスが心配そうな顔をして、リフィルの横に転がっているペンライトを見つめる。
「もうそろそろ中の電池も寿命だな・・・」
「そ、そんな・・・・。だったらペンライトの明かりが消える前に、ここから出ろってことじゃないの」
「そういうことだな」

と、その時。
ふっ、と明かりが消えた。まさか話した傍で寿命がくるとは思っていなかった。
これも噂をすれば・・・の効果なのだろうか。
「・・・・明かりが消えたようね」
「そのようだな」
「あ、あなたねぇっ、そんな冷静に言わないでよ。真っ暗じゃないの・・・」
辺りを見回しても、見えるのはお互いの顔と暗闇だけだった。
とても近くにあるはずのお互いの顔でさえ、霞んで見える。
「誰かがここの戸を開けるまでの辛抱だな」


* * * * * * * * *


「はいっ、ジーニアス君、クロエちゃん。代議員頑張ってね」
C組。2人の生徒に、ミラルドの手から小さな代議員バッジが渡された。
ジーニアスは馴れた手つきで、バッジを制服の胸元に付ける。かれこれ代議員7年目だ。

「なぁ、セイジ・・・このバッジはどうやって付けるのだ?」
隣でクロエがバッジを持ったまま、困り顔でこっちを見てくる。
「バッジの付け方が分からないんだ・・・教えてくれ」
バッジの付け方が分からないなんて。
ジーニアスも一瞬困り顔になったが、放って置く訳にはいかない。
「えっと、まずこの円盤みたいなやつを回して取ってから・・・」


(微笑ましいわね。こうやって生徒達が助け合っていくことで、いじめや差別が無くなるのかしら)
その様子を、ミラルドが笑顔で見守っていた。
(じゃあ・・・あの人も・・・科学者達から、からかわれる事が無くなるのかしらね?)
ミラルドの頭の中を、一瞬何かが過ぎる。

「・・・・・・・あんまり考えないほうが良いわね。さて、職員室行こうっと」


パリン。


ミラルドが教室を出た瞬間。彼女の服のポケットから何かが割れ落ちた。
彼女は気がついていない。
薄くて小さなガラスの破片が飛び散っている。

丁度廊下を歩いていたティアが、割れた何かを拾い上げた。
「・・・・・?何かしら、コレ・・・」
どうやらロケットペンダントのようだ。
ロケットペンダントとは、写真を入れることが出来るペンダントの事。

写真に写っていたのは・・・・
「これ・・・・ミラルド先生?で、隣に居るのは・・・・誰かしら?」
若い頃の(今も若いが)ミラルドのようだった。少々幼いようにも見える。
そして、隣に写っている少年が誰だか分からない。
銀色の特徴のある髪。そして顔と腕には灰色のペイント。
「分からない・・・クラース先生にも見えるけど・・・後から届けに行こうかしら」

ティアは、壊れたペンダントを制服のポケットに入れる。
ガラスの破片は気になる程ではなかったと言い、足で廊下の端へと避けた。


* * * * * * * * * * 


――コトッ。
何かが落ちる音がした。
「痛っ・・・・」
「・・・?どうした?」
自由を奪われて、もう5分経つ頃だろうか。
2人は何もする事が出来ず、じっとしていた。
「あ、いえ・・・・足に何か落ちてきたと思って」
「そうか・・・・」

会話が途絶えた。
「あ、えっと、クラト・・・」
リフィルが咄嗟に話題を出そうとすると。
「―――ファーストエイド」
一瞬だけ、柔らかな光が放たれた。
その光は暖かく、明るく、彼女の足の痛みを取り去っていった。
「これで大丈夫だろう・・」
「あ、ありが・・・」
「・・・・礼はいらん」
とことんクールな人・・・・と思いながら小さな笑みを零す。

「な、何がおかしい・・」
「ううん、別に・・・・v」

(ずっとこのままでもいい・・・かな・・)
リフィルは、少しだけそう思った。


あとがきという名の反省

こんばんは、雛姫です。

最近すっかり寒くなってしまいましたね。体調管理をしっかりと。
風邪を引いた際には暖かいもの(鍋料理・煮込みうどん等)を食べるのが宜しいそうです。
医者に掛かり、専用の薬をもらって安静にするのも一種の手です。

妹が心の病気に罹ってしまったようです。パソコンは冬休みに入るまであまり出来ないようなので、何だか心配なような・・・でも小説が書けて嬉しいような。

今回は・・・いろいろな視点のお話を書いてみました・・・が。
ごちゃごちゃしてしまいましたね。すみません。
読みにくさ100%でお送りします(←オイ
そして特定のキャラだけ出てるような気がします。中でもクラトスとリフィル。
好きなんだからしょうがない!と言う事で見逃してください(←無理
次回は多分・・・全部クラリフィの図書館脱出劇になると思います。
お見苦しいとは思いますが、どうか楽しみにしておいてください。

それでは。

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