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『Tales of Grandia』【5】


第三章  『Holy Night』  前編



『邪魔は始末するだけだ、殺せ』
暗い教会の中に二人の人陰が浮かんでいる。
『我々の邪魔は消すのみだが、あのカイパーハーツが出てくると何かと厄介になる.................』
杖を持った男は何も心配いらないと言う表情でこう言った。
『こっちも兵が集まり次第人間を排除する、今試作段階だが、新しい生物兵器を投入する予定だ』
そう言って、彼は暗闇の中に無造作に置かれた鉄檻の中を覗いた、何かがいる、そいつは低い唸り声を闇の中から見上げ、見つめていた。
すると杖を持った男はどこかえと立ち去ろうとした、その前に彼はこう言った。
『これが成功すれば、君はこの一生を’神’として生きられるんだ』
もう一人の男は忠誠を誓いながらこう言った。
『必ず消して見せましょう................』
最後に杖を持った男はこう言った。
『頼むぞ、ガルディス.................』



彼らは森をぬけて港町まで来ていた。
『ここが港か...............』
そこはちっぽけな港だった、店や建物があっても船が見当たらない。
”ほんとに港か?”
ケンリーは顔をにごらせた。
『シェイドの港か、もう人が集まらない所で有名だがな』
クリストはその病んだ港町を見ながら言った。
シェイドの港は、大昔にシェイドと言う化け物が海から現れて、そのシェイドを『七武女神』の一人、『シルス』が退治したことで有名だ。
『って、知ってた?』
ケンリーはネックスに問いかけた。
『へ~、そうだったんだ~』
ケンリーは愕然とした。
カイパーがケンリーにこう聞いた。
『お前は何で戦うんだ?』
すると彼はポケットから何やら取り出した、それは『ファルマー』だった。

ファルマー、自然に溢れるファルスを集めて魔術に変える能力を持ったのがファルマーだ。
ファルマーは基本素体である光と闇に大きく関わる、光のファルマー『ホーリーサイド ファルマー』は光のファルスと他の闇以外のファルスを集めて魔法が使える、詠唱には『護法話』を用いる。
逆に闇のファルマーである『ダークサイド ファルマー』は光以外のファルスを集めて魔法が使える、詠唱には『呪法話』が用いる。
このように闇には闇の魔術しか使えず、光には光の魔術しか使えないのだ。
また、闇は攻撃的だが、光は守護型となっている。
さらに魔術を使えるのは魔族のみである。

ケンリーの持ってるファルマーは『ダークサイド ファルマー』のようだ。
『って、知ってた?」
彼は密かにネックスに向かって喋りかけていた、だがネックスはこう言った。
『あ............うん、七武女神ぐらいならわかるよ』
ケンリーは愕然とした。
”こいつ全然わかってね~”
歩いて行くうちに、一つだけ船があった、それも古いが大型の物だった。
カイパーは何も言わずにその船に乗り込んだ、しかし本当の目的はその中に積んである荷物だった、黒く長いラックの様なカバンだ、中からは重々しい金属音が聞こえる。
そして背中には一本の大剣を持って来た。
美しい輝きを放つ大剣だ、ただ鉄では出来てなさそうだ。
『それは?』
クリストは見た事もない不思議な剣を眺めながら聞いた。
『精霊の魂刀、セイレーンだ』
水晶で造られた大剣、セイレーン、その刃その物が宝石の様だ、精のファルスが詰まれた魔剣なんだそうだ。
『さあ行こう』
カイパーは落ち着いた口調で言った、彼らは黙って付いて行く。
寂れた町を去り、彼らは歩きだした。
野原に出たそのときだった。
五匹のヘルバウンドが牙を見せてこっちに向かって来た。
『モンスターか』
クリストは剣を抜いた、戦士らしい構えで敵を迎え撃つ。
ネックスとカイパーも剣を引き抜き、敵襲に備える、その横でケンリーはファルマーを手に持ち詠唱し始めた。
さっそく一匹がクリストに飛びかかった。
『小賢しい、貫刀衝!!』  (カントウショウ)
顔面めがけて襲い来るヘルバウンドに気を込めた突きを喰らわす、口を貫通して背中まで剣が貫いた。
『闇の刃よ、汝の身を切り裂け!』
ケンリーはファルマーに手を当て、呪法話を唱えはじめた。
『今だ! シャドーエッジ!!』
鋭い闇の刃がヘルバウンドの群れを蹴散らした。
カイパーは三匹まとめてしとめようとしていた、両手でその大剣を担ぎ攻撃に出た。
『邪魔だ! 魔神爪円斬!』  (マジンソウエンザン)
地面めがけてけたたましい力と共に剣を地に突き刺し、真空波が円を描きながら広がっていく、二匹のヘルバウンドが真空波に引き裂かれ、赤い真紅の血を流血しながら倒れた。
だが残った一匹がカイパーに襲い来る。
『千裂、虚光閃!!』
上空えと斬り上げ、その身を宙に浮かせた、そして千なる神速突きによってヘルバウンドはあたかも消えてった。
そのスキを見たか、最後のヘルバウンドがカイパーの首めがけて牙を大きく見せながら襲い来る。
『空翔斬!!』
空中から素早くネックスが斬りの一撃を浴びせた、ヘルバウンドは斬り付けられ、腹に斬り跡を残した、血がうっすらにじみ出ている。
『ネックス、助かったぞ』
カイパーは冷静に喋りかけた、突然の奇襲に少し戸惑っているケンリー、精々したとクリフトは言いたそうだった。
ネックスは短剣をしまい込み、その場に座り込んだ。
もういない、誰もがそう思ったときだ。
草むらからたった一匹だけネックスに向かって飛びかかるヘルバウンドがいた。
ネックスの身動きが止まった、誰もが彼を助けようとしたときだ、カイパーは漆黒のコートの中からその時代には無い武器を持ち出した。
それはクロームステンレスの鮮麗なシルバーが輝く拳銃だ、フィンガーグリップでカスタムされた『ベレッタM92F』だ。
そのベレッタを片手で持ち、ヘルバウンドに狙いを定めながら、ネックスの前に飛び出し地面に横倒れになる寸前に、金属の冷気が伝わる引金を引いた。
一筋の鋭い銃声音が聞き慣れない彼らの耳に鳴り響いた。
銃口から唸る一発の弾丸は空気を切り裂き、そしてヘルバウンドの頭部を撃ちぬいた、ヘルバウンドは重力に引かれるまま地面に倒れ昇天して逝った。
間一髪、ネックスは救われた。
地面に倒れたカイパーはそれから起き上がり、こう言った。
『こいつは使えるな.....』
彼は銃を見てからそう言って、またコートの中に隠し入れた。
その異形の武器を見てクリフトはこう言った。
『それは未来の武器か?』
すぐさまカイパーは答えた。
『ああそうだが』
冷静な眼差しが彼を見つめた、あんな物が未来の武器かとクリフトは唖然としていた。
『すぐに行くぞ、もうそろそろ夜だ.....』
そうして彼らはまた歩き出した。

そこは夜の草原だ、夜の一味違う空が魅了できる。
星は輝かしく、世界の滅亡なんて気にもして無い様子だった、綺麗だ、がしかし、何か寂しい気がネックスの中にはあった。
草原なら敵の攻撃でもすぐわかるので、カイパーはここを選んだ様だ。
周囲は夜の深い闇が覆っている、テントも無いが、彼らは今晩この草原で休む事にした。
もう皆が寝静まった頃だった。
夜霧がうっそうと流れはじめた、何かを感じ取ったか、カイパーは起き辺りを見回したが深い霧は全てをさえぎっていた。
何もいない様だと思った、そのときだった。
闇の中から見えぬ何かが襲って来た、それも目に見えぬ速さだ。
カイパーはその影の様な者に当たり倒れた、気が動転しながらもすぐさま三人を起こし敵襲が来た事を知らせた。
『ともかく逃げるんだ!!』
周りが霧で覆われていて、敵がどこにいるかさえわからなかったが、とにかく逃げた、走って走ってどこまでも走った、死に物狂いだった。
息が苦しくもう倒れそうなぐらいネックスは走った、無心になって走っている内に霧を抜けた様だった。
だがカイパーやクリフト、ケンリーの姿はどこにも見当たらない。
目に前は森だった、木々が生い茂る森だ。
とにかく安全な場所を探すため、彼は森の中へと吸い込まれて行った。
あの三人とはぐれて大分歩いただろうか、向こうに明かりが見える。
人が住んでるのだろうか、家の様なような物が見える。
ネックスは走った、ようやく休養が取れると思ったからだ、へとへとになった体を無理矢理走らせていたとき、疾風のごとく一本の矢が目の前を道り過ぎた。
ネックスは声を上げて驚き、その場に倒れた。
『んん?人間か?』
すると暗闇の木陰から老人が姿を現した。
老人はゆっくりのそのそと現れた、すると家々の中から人々がドアを開けて見つめていた。
『やれやれ化け物かと思ったよ、皆安心しろ』
すると老人は彼の手を取って起こした、ネックスは安心して目の前が段々暗くなっていくのを感じた。
彼は気絶していた。

『あ、気がついた』
ネックスはどこかの家のベッドの中に居た、そこには一人の少女がぼやけて見えた、長めのロングヘアーに愛くるしい眼をして黒ずんだ瞳がこっちを見つめていた。
『他の人が嫌だって言うから、あたしが連れて来てやったのよ』
ネックスはその少女が首から下げてる物を見た、ファルマーだ、ケンリーの持つ『ダークサイド』とは違う、あれは『ホーリーサイド ファルマー』だ。
『君は、魔族?』
彼女の言う事を無視して彼は言った。
『うん、それがどうかした?』
そんな事はどうでも良かったが、今頃あの三人はどうなっているか気になってしょうがない、どうしようかと考えていたそのときだった。
『ちょっと、あたしの話し聞いてる?』
少し怒った様子で彼女は聞いてきた。
『ああ、うん...........』
彼は驚いたが、とにかくごまかしといた。
彼女は鼻を高くしてこっちを観察した、ずかずかとこっちにやって来てこう言った。
『そういや自己紹介まだね、あたしはアンネルフォークリー、アンネルって呼んでね』
また驚かされたかの様に見えたがそうではないみたいだ、と彼は安心した。
『僕はネックスキリアだ、ネックスって呼んで』
彼女はくすっと笑ってまたこっちを見た。
『な、何かおかしいか?』
ネックスは彼女の笑い方が幼く見えた、可愛いと言っても変ではない。
アンネルは少し後ろに下がってから答えた。
『だって顔になんか赤いものが付いてんだもん』
”赤いもの........”
彼ははと思い付いた。
『あ、これ、多分血だ』
”え?血??”
それはヘルバウンドの返り血だ、すると彼女はこう言った。
『なんかあったの?』
ネックスは話した、空間の歪み、町が消えた事、カイパー達とはぐれてしまった事を。
『ふ~ん.....こんな事話しても意味無いけれどさ、あたしの親はもう死んじゃったんだ、墓もどこにあるか知らないし、いつ死んだかも知らないんだ』
ネックスはそれを聞いて自分なんかよりも苦しい出来事がある人を前に何も言えなくなっていた。
数秒の沈黙が空いた。
彼女はネックスに思いもしない事を言った。
『ねえ、あたしも一緒に旅してもいい?』
”え!?何言ってるんだこいつ!?”
ネックスは気が気じゃないと思い、慌ててこう言った。
『ほ、本気か!?モンスターの襲撃に遭ったりするんだぞ!』
彼女は首を振って答えてやった。
『ここにいても何もできないし、あたしも何か役に立ちたいから』
アンネルはその気になっていた。
『まあ、とりあえず、先にカイパー達を捜さないと』
ネックスが言うと彼女は了解した。
その夜は終わろうとしていた頃だった。



あとがき~
どうも小説を読んでくれてありがとうございざいまーす。
今回はカイパーの銃に関してマニアックに書いてみました~、どうですか?
わからない方は http://www.tokyo-marui.co.jp/inde×2.htm のエアガンサイトに
行けばわかると思います、以外と実銃に関して詳しくのってます。
では、またこんど

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