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テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3~消失した光~ 【2】

 第二話「姉弟」
 「くっ…、本当にこの天候はいかんのう、腰に響くわい」
 トキは降り狂う豪雨の中を必死になって、進みながらも倒れている少女の元へとつく。
 「今、助けてやるからの…、大丈夫じゃ―なっ!?」
 トキはその少女の姿を見て驚愕する。
 その少女のあどけなくも年端もいってないことを示す幼い顔立ちやその身長の高さからして、トキはすぐに孫であるリオを思い出す。
 そのリオと同年代であろうこの少女を捨てたであろう親に対して憤りを感じ、怒りで拳を強く握りしめる。
 ―そう、このサイレントフォレストには魔物が住んでおり、小さい子供が一人でこの村まで来るのは不可能であり来るときには誰か力を持った大人やガルハンゾ国の騎士団で無ければ来ることは出来ない。
 だが、怒りを感じている暇はない…とトキは頭を振りながら、少女を助けることに専念する。
 「いかんいかん、早くこの少女をライルに見せねば…。―にしても、衣服もビショビショだの…泥もついてるし、やはり後でリオの服を着せねば―っ…」
 トキはその少女のずぶ濡れになった服を見ながら、考えていると少女が両手で抱いていたある物が視界に入り、目を見張った。
 それは小さな命だった。
 そして、少女はそれを何かから守るかのように抱いていたのか、'それ'を包んでいた布のあらゆる所に皺ができていた。
 それだけでは無かった。
 「武器じゃと…!?」
 トキは次に目に入った少女の左腰に携えられた刀に困惑する。
 ―何何じゃ、この子は―
 トキは頭の中で混乱しながら、思考をなんとか働かせようとしていた。
 ―だが、
 「おぎゃ――! おぎゃ――!」
 'それ'はトキの気も知れずに突然泣き出した。
 「た…大変じゃ、早くライルに見せねば」
 トキはその泣き声にハッと我に帰る。
 ―なにを考えておるんじゃ、私はまず目の前にある生命を助けなければ、武器のことはその後でいい―
 そして、その小さな生命を左手に抱きかかえ、衰弱している少女を背中に負ぶって、このクワイト村での唯一の医師であるライルの元へと豪雨の中走っていった。
 そして、走っている途中でちらりと桃色のロングヘアーをしたその少女と赤子を一瞥する。
 「待ってろ、今助けてやるからのう、お前ら姉弟全員な」
トキは豪雨に視界を遮られる前に、何とか家が見える所まで来ていた。
 すると、彼のぼやけた視界に家の窓かに映る一つの光が見え始めた。
 「そうか、リオの奴もう…」
 トキは独り言のように言いながら、リオがドクターを家に連れてきたことを理解すると早く家に着くために歩幅を伸ばし、走っていった。
 ―後、ほんのもう少しじゃ、それまでは―
 
 クワイト村―トキの家―
 ―あれから何時間たったのだろうか…。
 夜空に浮かんでいた冷たい半月が消え、今空に太陽が昇ろうとしていた。
 そして、二人はライルに「すみませんが…、邪魔になるので」と言われたので、二階の部屋で二人の回復を待っていた。
 「―くしゅん…ぐすっ、風邪ひいちゃったかな?」
 その太陽の日光を浴びていたリオが小さく嚔をしながら、トキに問い掛ける。
 「まったく、だから風呂にあれ程はいれと言ったのじゃ、ほれ…これを羽織ってなさい」
 「グスッ…有難う」 
 トキから毛布を受け取ったリオが鼻を啜りながらも、お礼をのべる。
 その時、階段を昇ってくる足音が聞こえてきたために、二人はドアの方に視線を移す。
 それと同時にガチャッとドアが開く音がなると、一人の鳥のガジュマが入ってくる。
 「ドクタァー、あの子と赤ちゃんは…」
 リオがライルに上目使いに尋ねる。
 その表情には翳りがかかっていた。
 「あぁー、リオ…心配しなくても大丈夫だよ。今はぐっすり眠っているから、後もう少しすれば目を覚ますだろう…」
 ライルは嘴を動かしながら、冷静な口調でリオに説明し、頭を撫でる。リオは笑顔を浮かべながら、「うん」と頷いた。
 「本当に助かったわい、有難うのう…ライル」
 横から聞こえてきた声にライルが頭を撫でる動作をやめ、村の村長であり―行き場の無かった自身を受け入れてくれた恩人でもあるトキに敬意や躊躇する部分を含んだ目を向け、丁寧な口調で対応する。
 「止めてください、そんなこと…行くあての無かった私を貴方が迎えてくれたんですから。それは兎も角早く下へ」
 「そうじゃな」
 「じゃあ、私―最初に行くね」
 そして、ライルに一階に行くように促されて、トキが頷くとリオが我先にと少女が眠る居間へと駆けていく。
 ―リオの奴、初めて話せる同年代の女の子だからとはしゃぎおって―
 トキはその孫のはしゃぎっぷりに苦笑する。
 そう、このクワイト村にはリオ以外にいる子供は男の子ばかりであり、女の子は全く居なかった。そのために彼女は何時も一人でいる時が多く、寂しい思いをしていた。
 ―だが、その彼女の前に現れた突然の同じ年頃の女の子に心を弾ませていたのだ。
 
 そして、彼女が目を覚ました時、リオはあどけない笑顔を浮かべながら、自己紹介を始める。
 「初めまして、私は…リオ・ハーフって言うんだ。貴女とその赤ちゃんの名前は……」
 少女は自分の置かれた状況を理解出来ずにぱちぱちとコバルトブルーの瞳を瞬かせ、
 「――蒼那…、この子は空…」
 小さな声で答える。
 「よろしくね、蒼那」
 「う、うん…よろし…、く」
 そんな驚いた表情をしながら、覚束ない声で言ってくる蒼那に満面の笑みを浮かべる。
 ―この出会いが彼女たち…嫌、この村の全ての人たちの人生を大きく変えていくことになるとは、この時誰も知る余地もなかった。

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