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テイルズ・オブ・ディステニー~夕焼け色の思いで~【2】


―――…クレスタの町…―――
すがすがしい朝の風景。多数の子供たちが、おいかけっこをして遊んでいる。
「つっかまえた~!」
「うわ!やられた~!」
 と、そこに一人の少女が、通りかかる。今まで、無邪気に遊んでいた子供たちは、いっせいに静まり返った。そして、小声でひそひそと、しゃべりだす。
「おい!あれ。ルーティだぜ。」
「ホントだ。なんだよ、あいつ。おれ達のこと、無視しやがって!」
「ほっときましょうよ。あんな子、どうせ友達もできやしないわ。」
「そうだ、そうだ!ほっといて、続き、しようぜ!」
その一言で、また子供たちが、遊びだす。
ルーティと呼ばれた女の子は、ふいっと、そっぽを向いて、歩き出した。
―――友達なんか、いなくったて…―――
ちょうどその頃、クレスタの町の郊外に、騒ぎが起きていた。かの有名な、ヒュ―ゴ・ジル・グリストの一行が、オべロン社をクレスタの町に建てに来たのだった。その一行の中には、もう6歳になる、ヒュ―ゴの子供、リオン・マグナスがいた。
――リオン・マグナス…―――
それは、彼の本当の名ではない。彼の父である、ヒュ―ゴは、彼の名前を奪った。今、彼の本当の名を呼ぶ者は、この世から他界した母と、もう一人、メイドのマリアンしかいなかった……。
「エミリオ、もう!何処にいったかと思えば…。いけません!仕事の邪魔ですよ。」
 マリアンは、工事現場で遊んでいる、リオン…エミリオを見つけ、叱りつけた。
「だって、マリアン。つまらないんだもん。」
 彼は、大きな瞳で、マリアンを見上げる。
マリアンは、ため息をついて、こう言った。
「困ったわね。私も忙しいし……。」
「……!」
 マリアンは、とあることを思い出した。そして、リオンにこう言った。
「エミリオ、いい?ここの町には、『孤児院』と言うものがあるのよ。そこには、あなたくらいの年の子が、たくさんいるわ。そこにいって、遊んできなさい。」
 マリアンのこの言葉に、リオンは喜んだ。そして、元気よく、うなずいた。
「じゃあ、エミリオ。5時には、戻るんですよ?いい?」
「うん!わかった、マリアン!いってきま~す!」
 マリアンの、話が、終わる前に、もう、エミリオは、駆け出していた。
「ふふ、元気な子だこと。」
 マリアンは、エミリオの後ろ姿をみて、そうつぶやいた。
その頃、ルーティは、一人、川のほとりで、遊んでいた。しかし、少しも面白そうではなかった。―…やっぱり、みんなと遊べば良かったな…―ルーティは、心の中でそう思っていた。ふと、顔をあげて、川の反対側をみると、人影があった。ルーティは、驚いて、その人影をたどった。ルーティの目に映ったのは、ルーティより、少し小さな知らない男の子だった。そう、エミリオである。
「お前、名前は?」
 その男の子は、ルーティに、こう言った。ルーティは、いきなり言われたので、びっくりしたが、つい答えてしまった。
「…ルーティ…。」
 ――…ルーティ?…どこかで、聞いたことがあったな…――
エミリオは、そう思ったが、あまり気にしないで、
「お前、暇か?」
 と、次の質問を切り出した。ルーティは、この、偉そうな態度にむっときた。
「暇…じゃないわよ!第一、あんたの名前は?なんで、そんなこと聞くのよ?」
 と、答えるついでに、反撃をした。
「僕は、エミリオだ。かの有名なヒュ―ゴさまの、子供だぞ!今は、暇だから、僕と遊ぶやつを探している!」
 と、いかにも偉そうに振舞った。この答えにルーティは、さらにむっとして、
「あたしは、今、とっても忙しいの!あんたに、かまってる暇なんかないわ!他をあたってよ!」
 と、怒って言った。
「ふん!いいさ、お前のようなガサツな女となんか、遊びたくもない!」
 エミリオは、そう言うと、くるりと、後ろを向いて、行ってしまった。
ルーティは、その後ろ姿を見て、ふいっと、そっぽを向いた。…が、しばらくして、その男の子、エミリオを追いかけた。
エミリオは、ずんずんと歩いていった。すると、先ほど、ルーティが通った道に出た。そう、おいかけっこをしている子供たちがいる、あの道である。
「おい!お前達!」
 エミリオは、そう子供たちに叫んだ。
子供たちは、動きを止めて、エミリオの方を見る。エミリオは、続けた。
「お前達、僕と遊べ!」
 エミリオは、また、偉そうに言い放った。
子供たちは、当然、この知らない、偉そうな男の子を気にいらなかった。それどころか、返事は、こうである。
「はっ!誰が、お前みたいなぼっちゃんと遊ぶか!なあ、みんな!」
子供たちは、いっせいに、エミリオに向かって、非難の声を浴びせた。
「ば~か!ば~ゥ!この、ぼっちゃんが!」
「誰がお前なんかと遊ぶかよ!」
「帰れ、帰れ!」
 中の一人が、石をエミリオに向かって、投げた。幸い、エミリオには、当たらなかったが、次の瞬間、子供たち、全員が、石を投げ出した。エミリオは、どうすることもできなかった。自分に向かって、投げられてくる石の中の一つが、本当に当たる位置に入った!危ない、そう思ったが、足がすくんで、目をつぶることしかできなかった。当たる!そう思ったが、痛くなかった。そのかわり、何かが、自分の前に、立っているのを感じた。うっすらと目を開けると、そこに立っていたのは、ルーティ…!まさしく、ルーティだった。
ルーティは、エミリオが受けるはずだった、石を、自分の右ひじに受け、次の瞬間、子供たちをにらみつけた。そして、
「いこっ!」
 と言って、後ろを振り返り、エミリオを見て、エミリオの腕を持ち、ぐいぐいと、引っ張っていった。子供たちは、ただただ、その様子をたちすくして、見ていた。……もう、石を投げる子供は、いなかった。

「いったぁ~…。」
 ルーティと、エミリオは、さっきの川原に来ていた。
「ちょっと、あんた、ケガない?大丈夫?」
 と、ルーティは、エミリオに問いかけた。すると、エミリオは、ふいと、そっぽを向いて、何も言わなかった。
「ちょっと!助けてもらったのに、お礼も言えないわけ?!」
 ルーティは、その態度が、気に入らなかった。
「僕は、お前に助けて欲しいなどと、言った覚えはない!」
 エミリオは、はき捨てるように言う。ルーティは、ついに、怒りだした。
「あんたねぇ!お坊ちゃんもいいかげんにしなさいよ!だいたい、そんな偉そうにしてるから、友達もできないんじゃない!?」
「お前も、いないだろ?友達。」
 エミリオは、ルーティの言葉をさえぎって言った。
「!――……」
 ルーティは、何も言えなかった。
「……お前、僕と遊べ。今日、本当は、暇なんだろ?」
 エミリオは、何も言わないルーティを見て、そう言った。ルーティは、それを聞いて、
「――……いいわよ!しょうがないわね!で、何するのよ?言っとくけど、鬼ごっこみたいに、子供っぽいのは、イヤよ!」
 と、ぶっきらぼうに答えた。
「お前、ケガは、大丈夫なのか…?」
 エミリオは、しゃがんで、ルーティを見る。
いきなり、真剣な目をした少年に、ケガのことをきりだされて、ルーティは、驚いた。
「だ、大丈夫よ!これくらい!」
 そう強がることで、自分の動揺を隠していた。
 ――ホントは、ちょっと痛いけど…―――
「…、ほら!」
 ルーティは、その言葉で、隣にしゃがんでいる少年を見た。…彼の手には、オベロン社
製品、オベロナミンCが、握られていた。
「ほら!はやく。くれてやる、と言ってるんだ。」
 そう言って、エミリオは、ルーティの方に、オベロナミンCを、突き出した。
「…ん。…サンキュ。」
 ルーティは、そう言って、エミリオの手から、オベロナミンCを受けとった。
「…それから、―――」
 エミリオは、なにかを言いかけたが、そこで、立ち上がって、ルーティに背を向けた。
「なによぅ!」
 ルーティは、空き瓶を、ぽいっと投げて、立ちあがった。
「…、助けてくれて、ありがとう…。」
 エミリオは、小声で、こう言った。しかし、ルーティには、川の流れる音と同化して、よく、聞き取れなかった。
「え?なに?聞こえない!」
「なんでもない!」
 エミリオが、再び、お礼をいうことはなかった。
「お前、子供みたいな遊びは嫌だ、と言ったな。」
 エミリオは、振り返って、ルーティを見る。
「ええ!言ったわよ。なに?そういう遊びがしたいの?」
 ルーティは、にやりとして、
「まだまだ、おこちゃまな、エミリオ坊ちゃん~。」
 と付け加えた。
「なんだとっ!違う!僕は…」
「なによ?」
「僕は、この間父に、剣術を教えてもらった。…それの練習につきあえ!」
 エミリオは、腰から、剣を抜いた。
「い・や・よ!」
 ルーティは、その剣を見ながら、そう言った。そして、
「練習より、実戦の方が良くてよ。」
 こうつけたした。
「なに!?」
 ルーティの口から出た、意外な言葉に、エミリオは、驚いた。
 ――…実戦だと!?なんだ、この女は!!!…―――
「ほら!見なさいよ!」
 ルーティは、そう言うと、腰から、こちらもまた、剣を抜いた。
「この剣…、生まれた時から一緒なのよ。そこの孤児院に、雪の日に、私と一緒にすてられてたの。」
 ルーティの目は、快晴の空を仰いでいた。
「僕だって、生まれた時から、一緒の剣だ…。」
 エミリオは、剣をしまいながら言った。
「…、それで?何処の場所で、実戦をするんだ?」
 エミリオの言葉で、ルーティは、快晴の空に見えた、孤児院に捨てられた日の情景から、我にかえった。
「こっちよ。」
 そういうと、ずんずんと、ルーティは、歩き出した。
*あとがき*
今回も長くなってしまった…。ここまで、読んでくれた、根気強い方、ありがとです☆今回は、話が過去にタイムスリップしました。子供らは、石を投げるし、ルーティは、ぽい捨てするし、エミリオとルーティは、剣持ってるし…。危険だ…。つ、つぎは、もう少し、まともに書けるよう、がんばります(汗)。
こんな話に、感想などあれば、↓まで。
tkurabay@bay.wind.ne.jp

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