テイルズ・オブ・ディステニー~夕焼け色の思いで~【3】
「へえ…。剣って、アトワイトのことか?」
スタンが、ルーティを見て、聞いた。
「ま、ね。あたしと、アトワイトは、昔から、一緒なわけよ!」
ルーティが、スタンと、ディムロスをかわりばんこに見ながら言う。
「飛行竜の中から、盗んでくるようなやつと、一緒にしないでよね!」
「なんだよ。しょうがないじゃないか!…自己防衛だよ!自己防衛!」
スタンは、弁解に必死だ。
「あの、ヒュ―ゴさんには、お子様がいらっしゃったのでしょうか?」
フィリアは、案外鋭いところをついた。
「ああ…!どうせ、あいつ、適当に言ったのよ。なんとなく、『オベロン社』って言えば、お坊ちゃんに見えるじゃない。」
むろん、ルーティは、自分が孤児院で、育ったことをふせて、話していた。
リオンは…。リオンは、みんなには、聞こえないような小さな声で、シャルティエに話しかけていた。
「シャル…。僕の…、僕の姉さんは…。」
シャルティエも、リオンにしか聞こえない程度の声で、話した。
「坊ちゃん…。…、今、なんです。今が、チャンスです。その、エミリオというのは、自分だ、と。今が言えるチャンスなんです。言ってください。そうすれば…、そうすれば、今の状況からなにかが…、なにかが変わるはずです!さあ!坊ちゃん!」
「…、シャル…。確かにそうかもしれない。でも、…、僕は、本当にそうしてしまっていいのだろうか?…、十六年…、十六年という長い間、はなればなれだった、…そんな兄弟を見た時、姉さんは、どう思う?…僕は、…言う勇気が…ない。」
リオンは、下を向いた。むろん、みんなは、きずいていない。
「坊ちゃん…。」
シャルティエは、そう言ったきり、話さなくなった。
―――…姉さん…。その時の、エミリオというのは、僕なんだ!…―――
リオンは、必死にその言葉をおさえた。
「で?それから、どうしたんだ?」
スタンは、ランプの夕焼け色の光に、目を細めながら聞いた。
「まだ、聞きたいわけ?」
ルーティは、不満そうに言う。
「あたりまえじゃないですか!話は、おわってません!!!」
チェルシーが、身をのりだした。
「…もう、しょうがないわね!」
ルーティはしぶしぶ、話を続けようと、前をむいた。
リオンは、もう、顔をあげていた。
そして…、
「…明かりがついたら、昔話は、終わりだ。…フン!くだらん話を、しおって。」
と、ルーティに向かって言った。
「わ~るかったわね!くだらなくって!」
ルーティは、ふん、とそっぽをむいた。そして、真剣な顔になって、
「でね?それから~…。」
と続けた。
「坊ちゃん、やはり、言うべきなのでは…?」
シャルティエが、小さな声で、リオンに話しかけた。
…が、リオンに、その声は、とどかなかった。
―――…姉さん…―――
*あとがき*
今回は、過去ではなくしてみました。オベロン社のごまかしかたは、雑すぎる、と自分で思いました(オイオイ)次回は、また、エミリオ、ルーティのおさなコンビをかこうかと、思ってます。