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テイルズ・オブ・ディステニー~夕焼け色の思いで~【4】


「おい!お前!何処までいくんだ?!もう、かなりの距離を歩いたぞ!」
 エミリオは、歩くのにうんざりしながら、前をいくルーティに文句を言った。
「あら?もう、疲れたの?」
 ルーティは、後ろからついてくる、自分より年下の少年を見て、少し意地悪そうに言ってみた。
「つ、疲れてなどいない!ただ、迷っているんじゃないかと心配になっただけだ!」
 と言うと、黙ってしまった。
ルーティは、心のなかで、意地っ張りな子だわ、と思った。
 エミリオが、ルーティを心配するのも、無理はなかった。なにせ、空の青色が見えないほどの、深い森のなかを、進んでいくのだから。
 と、今まで静かだった森に、かすかな物音がたった。ルーティ、そしてエミリオは、この音を聞き逃さなかった。
「おぼっちゃん!覚悟しなさい!来るわよ!」
 ルーティは、そう言って、剣をぬいた。エミリオも、ルーティの『おぼっちゃん』という言葉に顔をしかめたが、すぐに剣をぬく。
二人の目の前に、敵が現れた!オークロット、ニ体。
「こんなの、軽いわ!序の口よ!」
 そう言うと、ルーティは、剣――アトワイトを、振り上げ、地を蹴った。
「スナイプエア!」
 彼女の剣は、見事に敵――オークロットに命中した。と、なれば、エミリオも負けてはいられない。ルーティが、倒したオークロットを、軽々と飛び越えて、後方にいた、もう一匹のオークロットをねらう。
「飛燕連脚!」
 瞬間、彼の剣がうなり、敵は全滅した。
「あんた、なかなかやるじゃない!」
 剣をストックにおさめ、ルーティは、しゃがんで何かを探しながら、言った。
「これくらい、当たり前だ…。お前、なにをしているんだ?」
 エミリオは、彼女が、見つけては、袋に入れているものを、細目で見た。
「レンズよ。あんたのお父さんが、集めてるでしょ?あんたと違って、あそこの孤児
院は、貧乏だからね。こうやって、すこしずつお金を…っていうかレンズを貯めて、後で、他の街に行けるようになったら、お金にかえて、孤児院に寄付するの!」
 ルーティは、すくっと立ちあがると、こんなもんかな、とつぶやいて、手をぱんぱんと、払った。
「さ~て、そろそろよ!」
 ルーティはそう言うと、にんっと笑った。
「なにがだ?」
 エミリオは、訳がわからず、ルーティにたずねた。しかし、ルーティは、返事をせず、前に前に進んでいった。
「ほら!見なさいよ!」
 ルーティの後ろについてきた、エミリオは、この言葉で、ルーティの指差す方向を見た。そこには、洞窟があった。
「ここ、前見つけたんだけど、時間がなくって、中が見れなかったのよ。今日は、この中のお宝を、いただくわよ~。」
「ふん!ばかばかしい!」
 エミリオは、そう言うと、きびすをかえした。
「僕は、帰る!」
「やっだ~。怖いわけ?大丈夫、お姉さんがついてるわよ!」
「なんだとっ…!」
 そう言って、振り返ったエミリオは、先ほどのルーティの言葉に違和感を覚えた。
―――お姉さん…?…ルーティ…。あ!―――
 エミリオは、はっとなった。前、父さん…ヒュ―ゴ様の書斎に入ろうとした時、レンブラント爺と、ヒュ―ゴ様の会話が聞こえてきたのである。そっと耳を傾けると、会話が、途切れ途切れ聞こえてきた。
「ヒュ―ゴ様…、あの、アト…トは……しましょうか。」
「知らぬ!あの時、殺せ、と命じた…なのに、クリスは、ルーティと剣を持ち出したんだからな。まあ、いい。いずれ、リオンに探させるさ。」
―――クリス…母さんの名前だ! じゃあ、ルーティというのは…―――
「ど、どうしたのよ?」
 ルーティは、エミリオが、何も言い返さないので、心配して顔をのぞきこんだ。
「…。なんでもない。」
 エミリオは、そう言って、口をつぐんだ。
「…、あんた、具合が悪いんなら、言いなさいよ。いい?私達は今から、パートナーよ!何か心配事があったら、相手に言う!いい?」
 ルーティは、エミリオを見た。相変わらず、表情が硬い。
「…さっさといくぞ!」
 エミリオは、そう言うと、ルーティをすり抜けて、前に出た。
「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!」
 そう言って、ルーティは、エミリオの後を追った。
―――可愛くないやつ。…私に、似てるところがあるわね。―――
 ルーティは、そう密かに思った。


――ぴしゃん…ぴしゃん…――
「ひゃあ!さむっ!なに!?この洞窟は!」
 ルーティは、あまりの寒さに身震いした。もっとも、ルーティの格好が、薄着なのにも問題はあったが、確かに、外の温度とは雲泥の差があった。
「うるさいぞ!だったら、帰るのか?」
「こ、このくらい平気よ!」
 エミリオは、なにか言「かけたが、なにも言わなかった。
「ねえ。あんた…!」
 ルーティは、そう言いかけて、いきなりエミリオを、突き飛ばした。
「おまえ、なにをすっ…!」
 突き飛ばされたエミリオは、自分が先程までいた場所を見て、驚いた。なんと、瓦礫が落ちてきていたのである。
「もう!気をつけなくちゃだめじゃない!」
 ルーティは、そう言って、まだ、転がっているエミリオに手を差し出した。
「…フンッ!」
 エミリオは、そういうと、ルーティの手をよけて、自力で立ちあがった。そして、もと来た道をもどっていった。
「ちょっと!帰るの?」
 ルーティがそう聞くと、
「ばかばかしい!付き合いきれん!」
 と言う声がした。
――自分で、遊べって言ったくせに…――
 ルーティは、そう思った。そして、
――今日は、ココの探索をやめよう…――
 そう思って、エミリオを追いかけようとすると、首筋を何かに捕まれた。
「ひ、ひゃあああああああああああ!!!」
 ルーティが、黄色い声をあげる。その声は、先をいくエミリオのところまで、聞こえていた。
「ルーティ?」
 エミリオは、そうつぶやいて、引き返した。
ルーティは、その、首筋をつかんだ者を体をひねって、見た。それは、かつてみたことのない、巨大なモンスターだった。
―――うわ!やっば~…―――
 しかし、ルーティはどうすることも出来ない。まさに彼女は、中ずり状態になっていた。自分の死を覚悟した…、その時。
「ルーティ!?」
 聞き覚えのある声が、下の方から聞こえてきた。
「くそう!こいつっ…!」
 エミリオだった。剣をぬいて、今にも、自分よりはるかに大きなモンスターに飛びかかろうとしていた。
「ばっ!あたしは、いいから!逃げなさいよ!あんたまで、食われるわよ!」
 ルーティは、エミリオを止めた。しかし、エミリオは、
「おまえ、さっき、パートナーだって、言ったろ?」
 と、ルーティにむかって言い、今度は、モンスターにむかって、
「僕が相手だ!ルーティをはなせ!」
 と言った。するとモンスターは、ルーティを地面にたたきつけた。
「きゃ!」
「ルーティ!」
 ルーティは、その衝撃で、気絶した。
「このう…。飛燕連脚!!!」
 エミリオの自慢の剣、シャルティエがうなる。しかし、剣の刺さった感じで、エミリオはわかった。これは今の自分が、倒せる相手ではないことを――。
「魔人剣!」
 エミリオは、敵がひるんでいるうちに、ルーティを背負って出口まで走った。外にでたとき、エミリオは、ルーティを安全そうな草陰に寝かせた。そして、自分は入り口まで戻って、追って来るモンスターを何とかしようと、再び剣を抜いた。その時だった。
「坊ちゃん。」
 シャルティエが、エミリオに話しかけてきた。
「入り口をふさげばいいんですよ。」
 エミリオは、そうか、とつぶやくと、次の瞬間、剣を振り上げ、
「ストーンブラスト!」
 と叫んだ。あっと言うまに、入り口はふさがれた。
「…ふぅ。」
 と、エミリオは、ため息をついた。
―――カサッ―――
 背後からのこの音に、再び剣を構えなおしたエミリオは、相手をみて手の力を抜いた。
「ごめん。あたし、あんたを巻き込んで…。」
 ルーティが、暗い面持ちで言った。
どうやら、さっきの晶術の場面は、見られなかったようだ。
「いや。…僕とおまえは、パートナーなんじゃなかったのか?」
 エミリオは、ふっと笑った。そして、パートナーなら、助けるのは当然だ、と付け加えた。それを聞いて、ルーティは、にっこり笑った。
「ありがとう、助けてくれて。…って、洞窟の入り口は?」
 と目を丸くした。エミリオは、平然と言った。
「ちょうど、外に出たとき、岩がくずれたんだ。」

*あとがき*
だんだんと、エミリオのキャラが変わってきちゃった…(汗)。あと2、3話で終わらせるつもりです。ここまで読んでくれた人、ありがとうございます!!!

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