テイルズ・オブ・ディステニー~夕焼け色の思いで~【5】
「わあ!」
一同は、嬉しそうにそう言った。電気がついたのだ。
「はあ、やっと、昔話から、開放されるわ!」
ルーティはそう言って、伸びをした。
「なんか、ロマンチックな、話でしたよねぇ…。」
チェルシーは、まだ聞きたりない、という表情でルーティをみた。
「だっめ~。電気がついたので、もう、おっしま~い!」
ルーティはそう言うと、ちょろっと舌をだしてみせた。
「あ!でも、まてよ。」
スタンが、腕組みをして言う。
「結局、『僕はお前の弟だ』って言ったってとこまで話てないぞ?」
「あんたもしつこいわね!そのあと、別れる時に言ったのよ、そいつが。」
「へえ!じゃあ、ルーティには、弟がいるのか!」
スタンは感心した。
「ばっかねぇ。あんた。」
ルーティはあきれた表情で、スタンを見た。
「そんなのいるわけないじゃない!そいつが、からかったのよ。」
「からかうわけないだろ?普通。」
スタンは深刻な表情で、ルーティに言った。
「田舎者なら、からかわないかもね~。」
ルーティはそう言うと、今度はリオンに向かって言った。
「作戦会議するんじゃないの?」
「フン!言われなくとも分かっている!」
そう言うと、リオンは立ちあがって、地図をとりに廊下に出ていった。
リオンが戻ってきて、それからはまるで何事もなかったかのように、作戦会議が終わり、明日にむけて各自休息をとる、という形で解散になった。
「坊ちゃん。」
誰もいなくなった食堂で、シャルティエが自分のマスターの名を呼んだ。
「いいんですか?坊ちゃん。今日のうちになら、ルーティはわかってくれるかもしれないですよ。」
「いいんだ、シャル。」
リオンは、少し寂しそうに答えた。
「ルーティ…、姉さん、そしてアトワイトが僕の晶術の聞こえないところにいて、良かった。あの時、シャルはよくしゃべらなかったな。」
リオンは、シャルティエを抜いて、磨きはじめた。
「だって、坊ちゃん、おこりますからね。」
シャルティエはそう言うと、くすくすと笑った。
「なんだ?」
シャルティエの笑いに、リオンが不満そうな顔をする。
「だって、坊ちゃん、あのときいきなり、『僕はお前の弟だ』な~んて。」
シャルティエは、まだ笑っていた。
「うるさいぞ、シャル。」
リオンはシャルティエにはそう言ったが、遠い過去のことを思い出していた。
「じゃあ、ね。」
ルーティ・カトレットは、エミリオにそう言った。
「あんた、結構、剣の腕あるし、あたしがレンズハンターになったら、またパートナーになってあげようか?」
ルーティとエミリオは、今日はじめて会ったときの、川原に来ていた。
「…。ふんっ!お前に世話になるほど、落ちぶれてはいないさ。」
エミリオはそう言うと、ルーティより少し前に出た。
「かっわいくな~い!そんなんだから、友達ができやしないのよ!」
ルーティが、にやにやして言った。
「ふん!お前だって、いないくせに!」
エミリオは言い返した。
「…あたしは、いるわよ。」
ルーティは、そう言うと、にっこり笑った。
「え?」
エミリオが振り向くと、そこには、ルーティの人差し指があった。
「あ・ん・た!あんたが、あたしの友達よ!」
ルーティは、はっきりとそう言った。
沈みかける夕日が、二人の影のシルエットを川にうつしていた。
エミリオはこの瞬間、さっきまで押さえていた言葉が、出てきてしまった。
「違う…。僕は、…僕は、お前の弟だ。」
エミリオは、まっすぐルーティを見て言った。その瞳はすい込まれそうな、黒く、大きい瞳だった。
「え…?あ、あんた、なにいってんの?」
突然の言葉に、ルーティの目が丸くなった。
―――しまった!―――
エミリオは、正気に戻った。
「いや、なんでもない。…じゃあな。」
そう言って、くるりと百八十度方向転換し、歩き出した。
「ねえ!あんた!」
ルーティの声が、後ろから聞こえてくる。
ルーティは、前をいく、エミリオの背中に向かって、叫んだ。
「今日!いろいろあったけど、楽しかった!…また、一緒に冒険しようね!」
エミリオは、振り返らずに、歩いていった。
「約束だからね!」
ルーティは、そう叫ぶと自分もエミリオがいく方とは逆にある、孤児院に向かって、歩いた。
エミリオが、小声で言った。
「ああ。また、一緒にな…。」
夕日が沈む。
…漆黒の夜の前におとずれる、夕焼け色の一番きれいな瞬間…。そして、その日の夕焼け色は、どこか悲しく、切ない色をしていた。
*あとがき*
前回、あと2~3回で終わらせる、というようなことを書いたのにもかかわらず、1回ナ終わらせてしまいました(汗)。
最終回まで読んでくれた方、ありがとうございます。
次回は、検討中ですが、もっとにぎやかなものにしたいです。