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過去の幻影【3】


  過去の幻影 ~紫闇の章~    作.玲
 
 彼は夢の中を漂っていた。いつも彼は、この夢の中ではそこにいながら存在しな
い。夢の中の自分を通して全ての感覚は伝わってくるが、彼は何もできない。その場
所でかつて行われたことを、ただ見つめる事しかできないのだ・・・

「何の真似だ?リオン!?」
洞窟の中にスタンの声が響き渡る。そう、ここは洞窟の中・・・ある海底洞窟の中
で、今、ひとつの死闘が始まろうとしているのだ。
「見ての通りだ。ここから先に進みたければ、僕を倒してからにするがいい」
リオンの紫水晶のような瞳がスタンを冷ややかに見つめ、彼らの行く手を阻む。
「何言ってんのよあんた!?今が非常時だってことくらい分かってんでしょ!?」
ルーティは今にも飛びかかりそうな勢いだ。既に、アトワイトの柄に手をかけてい
る。
「そんなことは関係ない。僕は与えられた役割を果たすだけだ。お前達を殺す、とい
うな・・・」
「目を覚ますんだリオン君!君はヒューゴに利用されているだけだ!」
普段は冷静沈着なウッドロウでさえ、その表情には焦りがうかがえる。
「その通りだ。僕はヒューゴにとって使い捨ての駒の一つにすぎない」
そこまでわかっていながらリオンはヒューゴに手を貸していた―その事実にスタン達
は打ちのめされる。
「そんな・・・そこまで分かっていてどうして?」
それまで沈黙していたフィリアが疑問を漏らす。
「僕は守るべき者がいる・・・ただそれだけだ」
「・・・」
その時、不意に訪れた沈黙を破ったのはルーティだった。
「守るべき者ですって!?あんた、こんな時まできどってんじゃないわよ!」
「フン・・・ルーティ、お前には分かるまい。どうせ、捨てられ、拾われた先でろく
な愛情も知らずに育ったんだろう」
「なんですって!?何であんたがそれを・・・」
驚きのあまりにルーティは構えかけていたアトワイトを取り落としそうになる。
「お前はヒューゴに捨てられたんだ。アトワイトと共にな・・・」
「うそ・・・でしょ?ねぇ、ちょっとアトワイトも何か言ってよ!」
『・・・』
ルーティの問いにも、アトワイトは答えない。いや、答えられないのだ。
「母クリス=カトレットとヒューゴとの間に最初に生まれたのがお前だ。そして次に
僕が・・・」
「リオン、もうやめろ!それ以上言うな!」
耐えかねたスタンがリオンを遮る。しかし、リオンは言い続ける。
「おやおや・・・お優しいことで・・さぁ、優しい姉さん。僕を殺せるかい?」 
口元に笑みを浮かべながら、しかし口調は冷徹なままリオンは言う。
「そんな・・・あの人が私のお父さん?あんたが弟?そんなの・・・そんなの嘘に決
まってるじゃない!」
ルーティは思わずその場に立ち崩れそうになったが、スタンがとっさに支えた。
「僕は殺せる。大切な人のためなら、たとえ、親でも兄弟でも、な」
平然と言い放つリオン。その言葉にルーティが斬り刻まれていく様に、スタンはもう
耐えられなかった。
「リオン・・・お前は・・・!!」
「覚悟はいいか?行くぞ、スタン!」
そう言うと同時にリオンはスタンに斬りかかった―

「リオン・・何で・・・?」
―何でこんな事になったんだ?
―何で戦わなくちゃいけなかったんだ?
スタンは自分の足下に力無く横たわっているリオンに向かって、それと同時に自らに
も問いかける。
「スタン・・・」
リオンのその華奢な顎から血が滴り、地面へと落ちて血溜まりを広げてゆく。
「僕、は・・・」
その時、突如として響いてきた地響きがリオンの言葉を遮った。
「!?な、何だ!?」
「・・・・・終末の時計は、動き、出した・・・もう、誰にも、止められ、ない・
・」
リオンは荒い息の中でそう言ったが、その声は轟音にかき消され、スタン達に届きは
しなかった。
「この音は・・・? まさか水が流れ込んできているのか!?まずいぞ、早く逃げな
いと!」
「でも!リオンさんが!」
「ダメ!間に合わない!!」
濁流は今やスタン達の目前に―
「リオーーーン!!」
スタンの叫びも、スタン達と共に濁流に呑み込まれてゆく。

 そして、その洞窟の中には濁流に呑み込まれなかったリオンがただ独り、誰に言う
でもなく呟いた。
「・・・ふふ・・さよなら・・・マリアン・・・・・」
そしてリオンは静かに、そしてゆっくりと目をつぶった―


『―ちゃん、坊ちゃん!?』
凍てつくような水の中で、シャルティエの叫び声だけが響き渡る・・・しかし、リオ
ンにはもう返事をすることもできない。傷から溢れ出す鮮血と共に意識も遠のいてゆ
く―
いや、違う。意識が遠のいていくのではない。シャルティエの声に呼び寄せられ
る―?
「・・・」
ジューダスはゆっくりと目を開いた。
(僕は・・一体・・・?)
『坊ちゃん、やっと起きてくれたんですね!』
シャルティエの安堵の声が聞こえる。しかし、周りに人の気配は全くない。何故なら
シャルティエは物言う剣―ソーディアン―なのだから。
『坊ちゃん、僕は本当に心配し―』
「シャル」
ジューダスは起き上がりながら、シャルティエを短く制した。
「・・・久しぶりにあの夢を見た」
『・・あの夢・・・近頃は見なくなった、と言っていましたよね?』
「そうだ。なのに何故今になって・・・?」
『・・・また、何かが起こるんでしょうか?』
何か―世界の命運さえ変えてしまうことが。
「そうかもしれん。しかし・・・」
『しかし?』
「いつまでもここにとどまっていては何も始まらないだろう」
周りは見渡す限りの雪原・・・次から次へと粉雪が舞い降り、そうして話している
ジューダスの上にもうっすらと積もっていく。
「こんなお喋りで時間を費やしている間に凍え死んでしまいました、ではシャレにも
ならんからな・・・それに、どうやら別の場所に飛ばされたらしいカイル達も探さね
ばなるまい・・・とりあえず人里を探そう」
ジューダスは立ち上がると、何かの決心を固めた人がするような、しっかりとした足
取りで歩み始めた。
陰一つない真っ白な雪原で、粉雪が彼の黒衣をはためかせる。まるで、そこだけが異
空間だ、とでも言いたいかのように・・・



―ヒトノオモイハ・・・ナニヨリモツヨイ・・・





To be continued…








~あとがき~
???  「今回のあとがきはなんと!」
???  「・・・」
???  「キャラの対談方式で行くわよ~!」
???  「・・・くだらん」
???  「さ~て、今回は、私、ハロルド=ベルセリオスと、ジューダスでお送り
するわよ♪」
ジューダス「・・・」
ハロルド 「? どうしたのよ、さっきから黙っちゃって?」
ジューダス「・・・僕は帰る。こんな事につきあっていられるほど暇ではないんで
な」
ハロルド 「ふ~ん、帰りたいなら帰れば?」
ジューダス「・・・お前が素直に帰してくれるなんて珍しいじゃないか」
ハロルド 「誰が素直に帰すなんて言ったの?私はただ、あんたが帰るって言うなら
HRH-2型(改造済み)で追い      かけさせて、ちょっとデータを採ろう
と思っているだけよ♪どんなデータが出るか楽しみじゃない?」(満面の     
 笑み)
ジューダス「・・・やはり対談でもするか・・」
ハロルド 「あら、残念ねぇ・・私としては、データ採る方が面白そうなんだけど」

ジューダス「・・・対談とは言っても一体何を話すんだ?」
ハロルド 「作者の『玲』の自己紹介の延長みたいなのをやっておけ、って言われた
んだけど」
ジューダス「・・・それで何故僕たちが呼び出されなくてはならないんだ?そんなの
は作者が勝手にやればいいだけの       話だろう?」
ハロルド 「あ、帰るの?(微笑)」
ジューダス「・・・あ、いや、その・・・・(焦)」
ハロルド 「さて、そろそろ始めないと、スペースが大変なことになるわよ」
ジューダス「? スペースならまだ余っているはずだが・・・」
ハロルド 「あんた、よく考えてみなさいよ。あとがきが本文より長くなっちゃった
りしたら・・・」
ジューダス「・・・無様だな・・仕方がない。始めるか」
ハロルド 「そうね♪それじゃあ早速『玲』はどんなやつかって言うと・・・」
ジューダス「どんな奴なんだ?」
ハロルド 「頭脳はニワトリ並みね☆」
ジューダス「・・・鶏?」
ハロルド 「例えば、何かしなくちゃいけないことがあったとするでしょ?そうした
ら、玲は、『3歩以内に忘れる』のよ」
ジューダス「・・・鶏でも3歩は覚えているんじゃなかったか?」
ハロルド 「まぁ、要するに、人間並みの頭脳じゃないって事だけは確かね」
ジューダス「・・・それで自己紹介になっているのか?」
ハロルド 「さぁ?とにかく次に行きましょ☆」
ジューダス「次の話題なんてあるのか?」
ハロルド 「いろいろあるのよ、え~っと・・・これなんていいかもしれないわね
♪」
ジューダス「? 何だ?」
ハロルド 「『何でこの暗~い小説ではTOD2の本当のあらすじと違った展開にし
ようとしているのか?』」
ジューダス(『暗い』をやけに強調したような気が・・・)
ハロルド 「何でかって言うと・・・」
ジューダス「おい、そんなことをばらしていいのか?確か、そこがこの話の核心だと
か言っていたような気がするのだが」
ハロルド 「じゃあ、言うのやめとく?」
ジューダス「・・・話の展開の邪魔にならない程度にしておけ」
ハロルド 「私は最初からそのつもりだったんだけど。まぁいっか。それで、何で
かって言うと、どうやら玲は、TOD2の話      でどうしても納得できない
事があったらしいのよね。それをどうにかしたくて書きたくなっちゃって、違った展
開      にしようとしてるってワケ」
ジューダス「・・・おい」
ハロルド 「どうかした?」
ジューダス「今、ついにあとがきが本文を越えようとしているぞ・・・」
ハロルド 「はじめの無駄話が多すぎたのよねぇ。あのとき素直に改造してればすぐ
に終わったのに」
ジューダス(改造だったのか・・・?)
ハロルド 「しょうがないから、あとは必要な事だけ言ってお開きにしましょ☆」
ジューダス「そうするか」
ハロルド 「この<紫闇の章>の感想、ぜひぜひ、書いてね~♪」
ジューダス「本文の感想だけでなく、できればあとがきの感想も書いてほしい。
『キャラを使ったあとがきに賛成か反対      か』と言うことと、もし賛成な
ら『次はどのキャラとどのキャラがいいか(2人1組で)』ということもできたら書
い      てくれ。TOD2以外のキャラも可だ」
ハロルド 「『小説感想掲示板に書くのはちょっと・・・』って言う人は、メールで
もOK~♪メールならできるだけ早く返      信をして、掲示板でもできるだ
け早く、返事を書くようにするわよ☆」
ジューダス「さて・・・言うことはこれくらいか?」
ハロルド 「そうね」
ジューダス「それなら僕は帰る」(席を立とうとする)
ハロルド 「あ、ちょっと待って!」
ジューダス「? まだ何か用でもあるのか?」
ハロルド 「あんた、そこにあったコーヒー飲んでたわよね?」
ジューダス「・・・飲んだが・・それがどうかしたか?(不吉な予感が・・・)」
ハロルド 「グフフ・・・やっぱり飲んでたのね?うん、わかった。行っていいわよ
♪」(何故か上機嫌)
ジューダス「・・・?(とりあえず異常はないようだが・・・)」
ハロルド 「どうしたの?帰るんじゃないの?」
ジューダス「・・・(疑)」
ハロルド 「何?そんなに実験してほしいの?それならそうと素直に言ってくれれば
いいのに」
ジューダス「あ、いや、別に何でもない(焦)」(歩き出そうとする)
ジューダス「! 体が動かない!?」
ハロルド 「やぁ~っと効いてきたのね☆ ふむふむ・・・ジューダスは薬に対する
耐性が強いのね・・・次からはこの薬よ      り、もっと強いのを使う必要が
あるわね(納得)」
ジューダス「貴様っ!」
ハロルド 「あんたは素直に実験なんてやらせてくれないと思ったからちょっと工夫
したのよ」
ジューダス「あのコーヒーに薬が入っていたのか!?くっ・・・僕としたことが・・
・」
ハロルド 「コーヒーには入ってないわよ☆ でもね、あんたは甘党だっていう情報
は入手済みだったから、そっちの砂       糖とかをちょ~っと細工したって
ワケ。さ~て、前からちょっと気になってたことだし(『蒼黒の追憶・下巻』参  
    照)データ採取、データ採取♪」(ジューダスを引きずっていく)
ジューダス「くそっ・・・一体何処へ連れていく気だ?」
ハロルド 「何処でもいいじゃない☆ ついでに改造もしようかしら?」
ジューダス「・・・」(青ざめる)


シャルティエ『その後、坊ちゃんの行方を知るものはいませんでした・・・』
ジューダス「シャル・・・(怒)」


つづく?

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