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ハロルドの野望【1】


……

僕は見てしまったんだ

見てはいけないものを
あれを見てしまったからには
僕はもう生きていられないだろう

さようなら、カイル…

そして…シャル……

【ハロルドの野望  ~狙われた男~】

あれは、寒い晩だった。
地上軍拠点で、明日のダイクロフト突入についての会議が終わり、皆床につく頃だった。
僕は、自分たちの部屋に戻ろうと、ラディスロウ内を多少急ぎ足で歩いていた。
その時だった。
僕はどこからか聞こえる、微かな音に気付いてしまった。

カタカタ、コトコト…

何かがぶつかり合っている音。
そして時々聞こえる、笑い声…
その音は、奥の部屋から聞こえている。

僕は息を呑み、その奥の部屋へと恐る恐る近づいていった。
―カイル達やソーディアンチームも、明日に備えて早く床についていた。
なので、辺りには自分の足音と微かな音しか聞こえない状態だった。

そんな雰囲気が、何故か気味悪く感じ、早めに歩いていく。
そして、やっとその部屋のドアの前に着いた時だった。
いきなり中の音が止み、静かなラディスロウ内が、更に静かになった。
僕は、静まり返った部屋の中をそっと覗く。
「っ!?」
そこには、薄気味悪い笑みを浮かべたハロルドと、フラスコに入った緑色と茶色が混じったような液体があった。
そしてその近くには、液体を口から噴出して死んでいるカエルが無残に転がっていた。
「あら?見ちゃったのね・・」
ハロルドは僕に気付いたようだった。
恐ろしい笑みを浮かべながら、立ち上がり、僕のほうへ近づいてくる。
「―――――っ!!」
僕は一目散に走り、自分たちの部屋へと戻ったわけだ。
幸い、僕はハロルドよりも足が速かった為、無事だった。

そして現在に至る。

僕は、先ほどの恐ろしい光景を目の当たりにし、目がギンギンに覚めて眠れなくなっていた。
そして、ハロルドから正体を確認されたかされなかったかという不安だけが、頭の中で渦巻いていた。
もし正体がばれていたら、即刻あの液体を飲まされ、実験台にされることだろう。
ハロルドの新薬の実験台=死。
生物になら誰にでもある、死。
僕は一度、死を体験した事がある。だから、あまり死は怖くなかったはずだ。
だが、ハロルドの新薬の犠牲者としての死だけは免れたかった。
暗い、地上軍拠点での夜。
梟が鳴き、風の音だけが窓の外から聞こえる。
時計をみると、深夜2時。
おそらく、日の出は6時過ぎのはずだ。
「はぁ・・・」
寝静まっている仲間達を見て、さらに不安が募る。
今ハロルドが来たって、誰も助けてくれる訳がないのだから…。
こうしていてもしょうがないと思い、少し寝てみようとベッドに横になる。

約20分経過…

しかし、眠気はいっこうに湧いてこない。
それどころか、ますます不安だけが湧き上がってくる。
(今、こうしている間もハロルドは新薬を開発しているのだろうか…)
そんな、考えたくない事しか思い浮かばない自分を叱咤したくなる。

そうこうしている時に、いきなり部屋のドアがノックされた。
「!?」
僕は不安と恐怖に駆られ、布団を頭から被った。
心臓の鼓動が、不安と恐怖で早まる。
そして、しばらくしてドアが何者かによって開けられた。
(もうだめだ…ハロルドは、この部屋にいる人物だと分かっている…。)
覚悟を決めるしかないのだろうか・・・
(あいつは天才なのだから、眼球運動などを確かめられてしまえば、寝てるか寝てるふりかなんて、容易に知られてしまう)

もう、覚悟するしかないだろうか…
エルレインに生き返されたときは、今すぐにでも投げ捨てたいと思っていたこの命…
どうしてこんなときに、その命が惜しくなってくるのか…
それは、今では守りたい人間がたくさんいるから…

だから、ここでハロルドに実験台にされるのだけは勘弁だった。
本当はそんな考えは浮かばず、ただ怖いだけだったのかもしれない;
そう考えているうちに、ハロルドらしき人物の足音が響いた。
きっと、寝ていない奴がいるかでもチェックしているのだろう。
そして、奴は僕の近くまでやってきた。

もうダメだ…!!


次回へ続く。

++++++++++
あとがき

さて、こんな緊張感(?)があるのは初めて書いてみました。
にしても意味不明な謎文章ですみません。
時計があるのかは知りません。
ただの趣味(?)なので、そこらへんご了承願えればと。
しかも背景描写が乏しい…
ジューダスの心情ばっか…
やはり私にはこれが限界のようです。
ですが、次も楽しみに待っていただけたら幸いです。
次にはパワーアップしてきたいと思います。
それでは…

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