幸運の低い男。【1】
これはいつかに起こった、ウソのようでホントのようででもやっぱウソっぽいお話・・・・。
「ぐふふふふふ・・・・。次のターゲットはコイツね・・・・。にょほほー♪」
もう夜遅く、宿屋の人(?)も寝静まっている・・・・はずのこの時間。
多分コイツだろう・・・・と予想のつく、常識を覆すような笑い声が響いた・・・・。
・・・・翌朝。
「おはよー!リアラ、ロニ、ナナリー、ハロルド!!」
超!のつく寝ぼすけ、カイルは宿屋の食堂につくなりそう言った。
・・・・が、
「・・・・あれ、ジューダスは?」
一人いつもならとっくに起きているはずの人物がいないことに気付き、首をかしげる。
「カイル、同じ部屋でしょ。・・・・いなかったの?」
みんなの色白聖女様、リアラが少し心配そうな顔をして言う。
(うーん、いたっけなぁ・・・・ジューダス。起きてると思って、あんま気にしてなかったんだよなぁ・・・・)
リアラに言われて、カイルは部屋を出るときのことを思い出す。
(そういえば、まだ寝てたような気がしなくも・・・・うーん)
ここまでいって、カイルの頭に通称・ふられマンの姿が浮かぶ。
(そうだ!!ロニに訊いてみよう)
・・・・というわけで、カイルはロニのもとへ行った。(でもすぐそば。っていうか、目の前)
「ねぇ、ロニ。ジューダスって、ちゃんと寝てた?」
カイルはロニに訊いた。
すると・・・・
「俺はヤローに興味はないね。まっ・・・・ジューダスが実は女だった~とかいうんなら話は別だけどな♪」
そう、即答された。
「要するに?」
カイルは呆れた顔で言った。
「知らねーよ。仮面でも洗ってんじゃねーの?」
「・・・・はぁ」
・・・・カイルはロニの女好きを改めて実感した。
(こうなったら自分で見に行こう。・・・・大丈夫かな、ジューダス。攫われてたりして・・・・)
だんだん心配になってきたカイルは、一度部屋に戻ることにした・・・・。
・・・・そのとき。
「・・・・うっ、頭が・・・・」
とよろめきながら、一人の少女がカイルたちの方へと歩いてきた。
「大丈夫ですか?この、ロニ=デュナミスが・・・・」
やっぱり、立ち上がった(?)のはロニ。
いつものこととはわかっていても、やはりため息がでる四人・・・・。
「・・・・はぁ。ロニ、あの子頭痛がってるんだよ?ナンパはよしな」
呆れて男女(命名・ロニ)ナナリーが、ロニに言った。
だがロニは、チッチッチッ、と指を振って言う。
「バカだな、ナナリー。こういうシチュエーションで手をさしのべずにいつさしのべるってんだ?」
「はぁ?シチュエーション?」
「そうだ。「うっ・・・・頭が痛い・・・・」頭をおさえうずくまる女の子。そこに・・・・「大丈夫ですか、お嬢さん。このロニ=デュナミスが席までつれていってさしあげましょう」とハンサムな紳士が手をさしのべる・・・・。「まぁ、なんてステキなお方・・・・」そして女の子は俺に一目惚れ!!あぁ、モテる男は辛いねぇ~♪」
一人妄想の世界に入っているロニ。
(救い様の無いヤツ・・・・)
そう思うナナリーだった。
「ねぇ、女の子のコトはいいの?なんかポカンとしてるよ?」
カイルが言った。
「ああ、そうだね。バカはほっといて、どうにかしてあげないと」
ナナリーはロニをチラッと見ると、少女をまじまじと見つめた。
(キレイな子・・・・。ロニじゃなくてもナンパしたくなるかもねぇ・・・・)
少女は黒髪で紫の瞳をしている。
それはなんとなくだれかを連想させるが、ナナリーはそこまで考えが巡らず、
キレイな子・・・・。
という第一印象で、思考がストップしていた。
「・・・・キミ、どうしたの?大丈夫?」
ナナリーがぼーっとしてる間に、カイルは少女に話しかけていた。
だが少女は・・・・
何を言っている?
という顔をして言う。
「・・・・?どうしたんだ?そんな他人行儀に。ハロルドに薬でも飲まされたか?」
「・・・・!?」
カイルたちは驚いた。
どうしてこの少女は自分たちのことを知っている?
「えーっと・・・・。キミはオレのコト、知ってるみたいだけど・・・・オレはキミのコト、知らないよ?どこかで会ったこと・・・・ある?」
うーん、とうなりながら、カイルは少女に尋ねた。
「やはり、薬を飲まされたのか?・・・・僕のことを、忘れたのか?いや・・・・いくらハロルドでもそこまでは・・・・」
「えと・・・・オレは薬なんて・・・・」
困り顔のカイル。
・・・・すると。
ぽんっ、と少女が手をうった。
「・・・・そうか。薬を飲まされたのは、もしかして僕?・・・・すまないがリアラ、鏡を貸してくれないか」
「え・・・・?いいけど・・・・」
突然呼ばれたことに驚きながらも、黙って手鏡をさしだすリアラ。
少女は鏡に映る自分をじっと見つめた。
「・・・・!」
鏡をみている内に、少女の顔はみるみる紅くなっていった。
「な・・・・!ハ、ハロルドはどこだ!!」
「・・・・ここよ?」
少女が叫ぶと、希代の天才科学者・ハロルド=ベルセリオスその人が、ナナリーの陰からひょっこりでてきた。
「お・・・・お前、僕を女にしたな!?」
混乱気味の少女に、ハロルドはけろりとした顔で、
「そうよ。なかなか可愛いわよねぇ」
と答えた。
「は・・・・早く元に戻せ!!」
「いやよ。せっかく薬飲ませたんだから、データ採っとかないと♪グフフ・・・・☆」
少女(?)に対し、ハロルドは不気味に笑う。
そこへ―――
「ね・・・・ねぇ、ハロルド?」
話がよく分からなくなってきたナナリーたちが、割り込んで(?)きた。
「つまり、この子は誰なんだい・・・・?」
するとやはりハロルドは、けろっとした顔でこう言った。
「決まってるじゃない。ジューダスよ」
「・・・・な、なにぃー――!?こ、この美女がジューダスだとぉッ!?」
それを聞いたロニが、突然大声をあげた。
「いや、似てないだろ全然。このカワイ子ちゃんのどこがストーカーまがいのむっつり仮面坊ちゃんなんだよ!?」
何気に関係の無いことを言ったせいか、ジューダスのこめかみがピクリと動いた。
「・・・・貴様。ストーカーまがいのむっつり仮面坊ちゃんというのは、誰のことだ・・・・?」
「・・・・げ、やっぱりジューダスなの?」
ロニは冷や汗をダラダラとたらしながら、ハロルドの後ろに隠れた。
「いや、頼むから許してジューダス!!ごめんなさい、すいませんッッ!!!」
・・・・プツン。
「・・・・許さんぞッ!そこに直れ!!」
遂にジューダスはキレた。
だが・・・・
「なっ・・・・剣が無い!ハロルド、お前僕の剣をどこにやった!!」
ジューダスの剣がなかった・・・・。
「女の子に剣は似合わなくってよ、ジューダス。グフフフフ☆」
「・・・・・・・」
ハロルドの言葉に、
なぜそこで笑う・・・・?
とか思いつつも、言えないジューダス。
もうどうでもいいらしい。
「・・・・あのさ。ハロルド、ジューダス。これからどうするんだい?」
またもや、二人の世界(?)にナナリーが首を突っ込んできた。
「だって、ジューダスは女の子になっちまったんだろ?いろいろ困るじゃないか」
「いろいろって・・・・?」
カイルが首をかしげる。
「ほら、女の子になったってことは、力も弱くなったってことだろ?前衛で戦わせるわけにはいかないよ」
「確かにそうね・・・・。慣れないうちは大変よ」
ナナリーに対し、リアラも納得する。
「じゃあよ、そしたらジューダスはどうするんだ?・・・・そりゃあ、俺とカイルよりは晶術使えるんだろうが、ナナリーみたいに弓とか使えるわけじゃねーだろ?」
「そうだよねぇ・・・・。ジューダスだけ戦わせないってわけにはいかないしねぇ・・・・」
そこにロニも口を挟み、ナナリーは腕を組んだ。
しばらく全員がうーん、とうなった。
そして・・・・。
「そっかぁ!ハロルドにさっさと直してもらえばいいんだよ!!」
カイルが嬉しそうな顔をして、ポンっと手を打った。
だが、話し合いに参加していないハロルドに・・・・
「・・・・ムリね。解毒薬作ってないのよ。それに、今から作っても、最低でも五日はかかるわね」
と、あっさりきっぱり言われた。
それを聞いた途端、ジューダスの動きが止まった。
・・・・まるでタイムストップでも使われたかのように。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(どうしたんだろう?)
気になったカイルは、ジューダスの顔を見ようとした。
カイルの反対側を向いたまま止まったジューダスの顔は、なかなか見えない。
回りこんだカイルは驚いた。
仮面をつけていないジューダスは、今にも泣き出しそうだったからだ。
・・・・とはいっても、もともと悲しそうな瞳が、更にせつなさを増しているだけなのだが。
「・・・・ジ、ジューダス?」
「・・・・」
話しかけてもジューダスは応えない。
・・・・よほどショックだったのだろう。
気付いたカイルは、そっとしておこう、ともといた場所に戻ろうとした。
そして振り向いた時、目の前で・・・・
「あら、そんなにショック?未来人てヤワねぇ」
ハロルドが興味深げな顔でジューダスの顔を覗き込んでいた。
(ヤワ!?っていうか、未来人関係ねぇだろ!!)
そのことには、ほんのちょっと存在を忘れられ気味なロニが、心の中でツッコミをいれてたりする。
「まぁいいわ。で、結局どうすんのコイツ?私はデータさえ採れりゃ治してあげなくも無いけどね。グフ・・・・グフフフフ☆」
お前だろ犯人!?責任取れよ!!めっちゃ他人事にしてんじゃねーよ!!
というのは置いといて、
なぜここで笑う!?
と思うロニ。
薄情者にも程があるだろう。
そこへ。
「そうね・・・・。神の卵、どーせわたし達が行くまで落ちてこないでしょうし、ジューダスが治るまでこの街にいましょう」
リアラが至って冷静な顔をして言った。
「それと、ロニ・・・・」
「は、はいッ!?」
「思ったことは口に出さなきゃ、立派な漢(オトコ)とはいえないわよ」
(・・・・俺、別にバルバトスみたいになろうとしてる訳じゃないんだけど。・・・・っつーか、なりたくもねぇ)
冷静な顔して、しかも聖女が漢(だから、オトコ)だなんて・・・・。
そう思うロニだった。
「じゃあ、決まりッ!!ジューダスが治るまで、この街にいよう」
カイルはリーダーらしく、「この街にいる」という決断を下した。
・・・・別にそこまで大事ではないのだが。
この後、魂が抜けた様になっているジューダスをなだめるだけで、一日はあっという間に過ぎてしまった。
・・・・解毒剤完成まで、後五日。
-本日の戦利品-
カイルは、「いいとことリーダー」の称号を得た。
ロニは、「男に手を出すふられマン」「心でツッコむふられマン」「漢になれないふられマン」の称号を得た。
リアラは、「冷聖女」「漢を説く者」の称号を得た。
ジューダスは、「女でもモテモテ」「カタマリダマシイ」の称号を得た。
ハロルドは、「じっけんまにあ」の称号を得た。
「やっぱオレ、リーダーの素質ある!?」
「いらねーよ、そんな称号!!」
「いい女は知的で落ち着いてなきゃ・・・・」
「・・・・僕が女・・・・」
「マニアはないでしょ!!仕事なんだから!!」
その日の夜・・・・。
「グフフ・・・・。上手くいったようね。私ってばやっぱ天才!?」
とか言いながら、グツグツと沸騰するあやしい鍋にあやしい笑い方をしながらあやしい液体を混ぜているあやしい人影が・・・・。
・・・・あやしい。
あとがき。
はじめまして、ふぁるくすです。
いつもここの小説を見て「おもしろいな~」と思っていたので、勢い余って投稿してしまいました。
まだまだ未熟者ですが、おもしろいと思ってくださった方がいたら、続きも見てやってください。
ではでは、これからよろしくお願いします。