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約束のピクニック【5】

約束のピクニック 5

作 神条


もう時間がない

別れの時まであとわずか・・・


私にとって昨夜ほど寝苦しい夜はありませんでした

今日のことを考えると なぜか身体の内から指先まで震えていたのです

そのとき外廊の方から話し声が聞こえてきました

梟の鳴く声に混じってかすかに人の声 それは祖父とクレスさんの声でした


私は祖父とクレスさんの会話を聞いてしまったのです

その話は 私にとっての全てのことを言っていたような気がしました


「光」 私に欠けていたもの

そして 光は闇に夜明けをもたらす

「闇」 掟が私を封じ込めている場所?

本当に他人信じることで私に 忍者に夜明けは来るのでしょうか

私はずっと考えました

・・・

そしてやっと分かったのです いえ 分からせてくれたのですね 「人の心」の偉大さを


今日で皆さんとはお別れです

だから最後に戦いのことだけでなく 私自信についてのことでお礼が言いたい

人間らしい感情を持たせてくれた人たちに・・・


― レアバード アルヴァニスタ上空 ―

アーチェ「す~ずちゃ~ん!

すず「・・・

アーチェ「す~ずちゃ~んってば!

すず「え? あ はい どうかしましたか?

アーチェ「それはこっちのセリフ~!
      忍者なのにボケ~っとしてると落ちちゃうよ

すず「だ 大丈夫です 落ちませんから

チェスター「そういうお前が落ちるなよ!

アーチェ「アンタの方こそ 浮かれて山に突っ込まないようにね~

チェスター「なんだとー!


すず「・・・

― あいつは馬鹿だけどいつも楽しそうだ ―

すず「アーチェさん・・・ いつも楽し・・・そう です・・・


クラ―ス「もうすぐベネツィア市だ そろそろ降下しよう

クレス「はい


― ベネツィア市 ―

ミント「確か食材屋さんは歩いて行けましたね?
    私 ピクニックで必要なお肉や野菜を買ってきます

クラース「わかった それなら噴水前で待ち合わせるとしよう
      あそこが最も分かりやすいだろうからな

ミント「はい それじゃあ行ってきます


チェスター「ク~レス!

クレス「ん?

チェスター「ん?じゃねぇ~よ 全くお前も気の利かない男だねぇ
       女の子一人に買い物させる気か?

クレス「え?

チェスター「やれやれ もういいから お前も買い物手伝いに行け!

クレス「わ わかったから そんなに押すなよ

アーチェ「か~ こりゃミントも苦労するよ うしゃしゃしゃ!


クラース「行ったか・・・ なかなか気が利くじゃないか チェスター

チェスター「あぁ な~んかもどかしくってな

アーチェ「全くよねぇ あ~あ クレスも鈍感じゃなきゃ結構いけてるのにねぇ

クラ―ス「人間全てが無欠ではないという見えた証拠だな

アーチェ「なに? クラースってどっか抜けてるの?

クラース「例え話だ お前はもう少し考えてから発言しろ もともと頭の良いハーフエルフだろう?

チェスター「良く聞いとけよ 『もともと』 だぞ

アーチェ「うっさい! あたしはこれでもちゃんと考えてるの!

すず「でも人は喋りながら考えることは難しいと言いますが・・・?

アーチェ「へ? なにそれ?

クラース「良く喋る人ほど考えることが少ない ということだ

アーチェ「要するに 『あたし』って言いたいわけね・・・


クレス「ミントー!

ミント「ク クレスさん どうしたのですか?

クレス「僕も買い物手伝うよ 食材重くなるだろうから

ミント「ありがとうございます


店主「いらっしゃい なにをお探しで?

ミント「あの 私たちピクニックに行きたいのですが バーベキューに必要な食材を探しています

店主「ピクニックか 何人分いるんだい?

ミント「えっと 6人です

店主「6人ね 結構重くなるけど そっちの剣士お兄さんも一緒かい?

クレス「はい

店主「なら大丈夫だな ・・・ふい~っと これ位で足りるかな?

ミント「はい おいくらですか?

店主「本当なら5000ガルドを超えてるけど 5000ぴったりで良いよ

ミント「よ よろしいのですか? おまけしていただいて・・・

店主「ま うちはサービス精神第一だからね

ミント「ありがとうございます これお金です

店主「ひい ふう みい・・・ はい! こちらこそありがとね

ミント「本当にありがとうございます

クレス「どうもありがとうございます

店主「あいよ~


― 噴水公園 ―

チェスター「おお 来た来た

クレス「お待たせ っと

クラース「6人分か 見た目かなり多いな

ミント「でもクレスさんが4人分持ってくれたので助かりました

クレス「お礼ならチェス・・・んぐ
チェスター(まさか俺のお陰 とか言うんじゃないだろうな?
       手伝ったのはお前なんだから その気でいればいいんだよ
クレス(わ わかった わかった

クレス「ど どうってことないよこれくらい は はは・・・

アーチェ「ぜんぜんダメじゃん?

チェスター「やれやれだぜ・・・

クラース「ともかく これで役者に小道具はそろったわけだ

すず「出発ですね? どこに向かうのですか?

クラース「ローンヴァレイの近くに小さな島がある そこなら海も見えるし誰もいない

クレス「いいですね そこにしましょう

すず「・・・

― どのような顔をして言えばいいのでしょう

  もう時間がない・・・


つづく

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