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黒百合に願う【4】

黒百合に願う 強敵の嘲笑

作 神条




 小助 「忍者達の気配がしない。

 すず 「ザン=フェムという人を追跡したのかもしれません。

 小助 「急ぐぞ。

警戒範囲なのに忍者達の気配がない。

この静けさが不気味だった。

 
 小助 「あれは。

あるところで忍者が倒れているのを発見した。

 小助 「おい、しっかりしろ!

息はあるが全身を強く打撲している。

ザン=フェムにやられたのだ。

 小助 「敵は近いかもな。

 すず 「行きましょう。

再び走り出す。

サクサクと落ち葉を踏む音が響く。

そして。

 小助 「ん、見ろ!

前方に見慣れない人影を確認した。



 ザン 「ふん、全く話にならんな。

 忍者 「はぁ、はぁ、我等の技が通じぬとは・・・。

 ザン 「だがこれだけの人数だ。まとめて洗脳してしまえば、多少は役立つ。

 忍者 「うぬぅ・・・。

 ザン 「とりあえず寝てもらおうか。新手が来た様だ。

ドゴッ!

忍者の腹部に強力な蹴りが炸裂した。

当然忍者は防御も出来ずに蹴りを受け、倒れた。

 小助 「貴様!

 ザン 「またか。お前達忍者は数だけは上等だな。

 小助 「・・・。

 すず 「あなたがダオスの残党、ザン=フェム。

 ザン 「ふふふ、数が多いだけ情報伝達も早いな。

 すず 「あなたはダオスの仇が誰なのか知っているのですか。

すずはザン=フェムの挑発的な態度を無視して問う。

 ザン 「知っているさ、俺は見てきたのだからな。ジャミルやイシュラントと戦う奴等を、ダオス様の傍らで。

 すず 「なぜ、最終決戦に参戦しなかったのですか。

 ザン 「ダオス様が8年前のこの時代に来たとき、俺は俺自身に能力を強化する改造を施している最中で眠っていたのだ。

 すず 「改造・・・。

 ザン 「大きな力を与える改造だったので、眠りから覚めたときにはダオス様はすでに亡くなられた後だった。

 すず 「・・・。

 ザン 「・・・さぁ、もう話は終わりにしよう。いい加減、仕掛けさせてもらう。

ザン=フェムは両足を肩幅に広げ身構えた。

 ザン 「ちなみに忍者を襲うのは、忍者の軍団を我が物にし、この地上に君臨するためだ。

 すず 「!

 ザン 「人間共が2度と魔科学を使用しないように、俺が貴様等を使って常に見張ってやる。感謝するが良い!

 小助 「おのれ、忍者は貴様の道具ではない!

 ザン 「ふふふ、道具だと? 勘違いされては困るな。

 小助 「なに。

 ザン 「誰も貴様等を道具として見てはいないぞ。そうだ、お前達は兵士だ。この俺に従う有能な戦士なのだ。

 小助 「なにが有能な戦士だ。戦士には戦士の誇りというものがある。洗脳されて誇りは持てん!

 ザン 「では誇りだけではどうにもならん強さというのを教えてやる!

 小助 「ほざくな!

小助は抜刀し飛び出した。

 ザン 「ふふふ、貴様は俺に仕える素質があるかな?

 小助 (狙うは急所!一撃必殺!

 すず 「小助さん!

 小助 (間合いに入った。死ね!

小助は真っ向から突進していった。

 ザン 「アイストーネード!!

ブォォォォォォォ!

 小助 「くあぁっ!

巻き起こる冷気の竜巻に小助は飲み込まれた。

 ザン 「正面から来るとは馬鹿な奴だ。


やがて竜巻は止むと、小助はその場に崩れた。

 小助 「う・・・。か、身体が動かな・・・い・・・・。

 ザン 「俺のアイストーネードは身体を凍て付かせる。貴様はしばらく動けん。

 すず 「小助さん! 大丈夫ですか!?

すずが駆け寄る。

 小助 「くっ・・・。すまん、私としたことが・・・感情に・・・振り回される・・・とは・・・。

 すず 「後は私が引き受けます。大丈夫です、いつかのような失態はしません。

 小助 「頼む。我等忍者の力を・・・奴に見せ付けて・・・やってくれ・・・。

小助は気を失った。

すずは小助を林道の脇に移動させて、ザン=フェムをキッと睨み付けた。

 ザン 「今度はお前の番か、娘。

すずは血桜を抜いた。

 ザン 「俺の大魔術で煙にしてくれよう!

 すず 「出来るものなら・・・。

ザン=フェムは魔術を放つ構えをとった。

その瞬間、すずはザン=フェムに向かって突進した。

 ザン 「俺に詠唱させないつもりだな。

 すず 「強力な魔術になると、魔力を増幅するのに時間が掛かるはず。

 ザン 「魔術師タイプの魔物だったらその手で倒せるが、俺には格闘というものがある!

ザン=フェムは向かってくるすずに対して左拳を繰り出した。

 ザン 「!?

拳はすずの腹部に命中したかと思われたが、それは残像だった。

 ザン 「小癪な、どこだ?

 すず 「後ろです。

 ザン 「ぬぅ!!

ザン=フェムは振り返ろうとしたが遅かった。

 すず 「忍法不知火!

逆手に持っていた血桜でザン=フェムの背中を斬り抜けた。

相手に隙を作らせて放った不知火の見事な一撃。

 ザン 「ぐわぁぁっ!

ブシュゥ、とザン=フェムの背中から血が吹き出る。

ザン=フェムはその場に跪いたが。

 ザン 「・・・ひ、光よ・・・俺に癒しを! キュアッ!!!

 すず 「なに、法術!?

ザン=フェムの身体が光に包まれ、血桜による傷がみるみる内に塞がっていった。

 すず 「法術も使えるのか・・・。

 ザン 「・・・この俺にあれだけのダメージ与えるとは。他の忍者とは何処か違うな、貴様。

傷が完全に治ると、ザン=フェムはにやりと笑った。

それは紛れもない強者に出会った、戦士の顔だった。



一方、

黒百合を届けるためにすずを追った四十丸は、森の中をさまよっていた。

 四十丸 「お姉ちゃんどこ行ったのかなぁ。こっちの方に行ったはずなんだけどなぁ。

黒百合を抱えて辺りを眺める。

 四十丸 「やっぱ里に戻ろうかな。お姉ちゃんが戻って来たら渡せば良いな。

カサカサ・・・ カサカサ・・・

 四十丸 「あん? なんだぁ?

すぐ近くの高い茂みが音を立てる。風ではない。

カサカサ・・・ カサカサ・・・

音はどんどん近づいてくる。

 四十丸 「な、なにかいるのか?

カサカサ・・・ カサカサ・・・

四十丸は無意識のうちに後退りを始めた。

そのとき。

 魔獣 「グォォォォォォォォ!!!

 四十丸 「ひぇぇぇぇぇぇ! ででででで出た~~~~~!

茂みから現れたのはいつかの魔獣だった。

四十丸は魔獣の雄叫びに勝るとも劣らない悲鳴をあげて、一目散に走り出した。


 四十丸 「なななんだよ、あいつ! 見たことの無い魔物だぁ!

ドンドンドンドンッ

 魔獣が四十丸の後を追ってきた。

 四十丸 「げへぇ! あいつ追いかけてくるぞ! だ、誰か~!



 すず 「はぁ、はぁ・・・。

 ザン 「どうした、得意の接近戦はもうしないのか?

ほとんど詠唱する必要の無い下級魔術の連発で、すずは距離を縮めることを封じられていた。

 ザン 「貴様等忍者は魔術に対して脆過ぎるな。

 すず 「くっ!

 ザン 「行くぞ、ファイアボール!

火の玉が次々とすずに遅いかかる。

 ザン 「ファイアボール!

 すず (このままではやられるのも時間の問題、仕掛けなければ!

ギャウン!!

火の玉がひとつすずに向かってくる。

 すず 「せやっ!

ガキィィン!!

血桜で火の玉を跳ね返した。

 ザン 「跳ね返した!?

 すず (今だ!

一気に距離を詰める。

 ザン 「無駄だ! ファイアボール!

ギャウン! ガン! ギン! ガァン!

次々に放たれる火の玉も、血桜で反射させてさばいて行った。

 ザン 「ちっ!

ザン=フェムは跳躍しながら詠唱した。

 ザン 「接近されては厄介だ、これで吹き飛ばす! ・・・エクスプロードォ!!!

カッ!! ズガァァァン!

ザン=フェムが小さな火の玉をすずのやや前方の地面に投げつけると、瞬時に光と爆炎が起こった。

大量の煙が上がり、木の葉がパチパチと燃え落ちる。

しかしザン=フェムの様子は敵を仕留めた物とは違った。

 ザン 「見切って回避するだけでなく、反撃して来るとは・・・!

ザン=フェムの肩から血が溢れ出す、肩に手裏剣が突き刺さっていた。

 ザン 「ヒール!

手裏剣を取払い法術で回復していると、煙の中からすずが出てきた。

 ザン 「調子に乗るなよ、本当の戦いはこれからだ!

 すず 「望むところです。

果たしてすずはザン=フェムを倒すことが出来るのだろうか。

そして、四十丸の運命は・・・。



続く。

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