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おまかせ!クラース探偵事務所第2弾【5】

題 『おまかせ!クラース探偵事務所 ~現れた宿敵~』 作 O.バークライ


最終章『裁きの夜』

「・・・チェスター?」

クレスはまだ辺りを見回しているはずの友の名を呼んだ。
だがその声はむなしく、ただ広いだけの天井裏に響くだけだった。

「本当にどこに行ったんだろう・・・とりあえずクラースさんのところに行こう。」


いなくなったチェスターの事を思い、クレスは一階の正面玄関まで走った。
その場所にはクラース一人と、多数の護衛がいた。

「クラースさん!チェスターが、どこかに行ってしまったんです!」

「な、何だと?チェスターがいない?!どうなってるんだ、くそっ!!」

実質、見張りのチェスターがいなくなったら天井裏には誰もいないことになる。
チェスターが見張りに付く前に一人で十分だと、言ったからだ。
そこを五右衛門に乗り込まれたら止められない。

「本当にどこに行ったんだ??」

クラースは頭を抱え込んだ。
そのころ・・・

「ここがデパス家・・・十分な家だわ・・・ここにはいっぱいお金があるんだろうな
・・・。」

屋根の上から一人、デパス家を見て独り言を言うものがいた。

「・・・そこまでだ。この家にはお前を入れさせねぇ・・・。
 25代目石川五右衛門、いや・・・アミィ・バークライト!!!!」

さっきまで屋根裏にいたチェスターはいつの間にか抜け出し、
音も無くその者の背後に忍び寄って叫んだ。
ただ一人、血のつながった肉親の名を・・・。

「な、何言ってるの?わ、私はただの泥ぼ・・・。」

「お前は・・・俺の妹だ・・・忘れたとは言わせねぇぞ・・・。」

「私が小さいころに逃げ出した人の事なんか知らない・・・
 それにこれは私が自分の意志で決め・・・。」

「ちがう!!お前が自分で決めた事ならここで俺をぶっ殺していく事も出来るはず
だ。
 でもそれをしないってことはお前が、貧乏な人を大勢助けるために、
 それなりの覚悟がはっきりと無いって事だ・・・。」

チェスターがその小柄な者に向かって言った。
屋根の上の者の声は明らかに男の声ではなかった。

「なぁ、もうこんな事やめようぜ・・・お前が貧乏な人の事を助けたいのは分かる・
・・。
 でもその考えが家の人間達によって教え込まれた事ならもうお前はそんな事から開
放されるべきだ。
 それと、貧乏なものを救うのが、お前の家計の決まりだって言うのも知ってる・・
・。」

「それは・・・そうよね。だってお兄ちゃんは継承の儀をしないで逃げたんだもの
ね!
 何で、お兄ちゃんは実力はあったのに・・・私より十分資質はあったのに・・・」


その言葉を聞いてチェスターは一瞬、驚いた顔をした。

「確かに・・・俺が逃げたのは事実だ。でも、俺は泥棒じゃなくっても人を救えると
思ったからだ!」

「そんなの所詮理想論よ。だって事実この辺に住んでる人達は、お金を借りたが最後

 もう普通の人として生きていけなくなってるでしょ?!」

「いや、もう貧乏な人が苦しむ必要はねぇ・・・。
 実は俺が勤めている探偵事務所で、ひでえ金の貸し方をしているやつらが、
 裏で悪い事をしているのを調べてたんだ。もうすぐここにも、他の金貸しどもの家
にも、
 大勢の警官がやってくる・・・。なぁ、もうこんな風に泥棒をすることはねぇんだ
よ。
 普通に、暮らしている女の子に戻ろうぜ、アミィ!!」

チェスターは長い間話をしていたが、突然大きな声をあげた。

「お兄ちゃんが・・・そこまで考えていたなんて・・・。
 ごめんね、お兄ちゃん・・・お兄ちゃんの事、勘違いしてた・・・。」

「良いんだ、アミィ・・・お前が普通の子に戻ってくれれば・・・。
 ・・・あ、そうだ。お兄ちゃんそろそろ戻らなくちゃいけないな。
 ここで待っててくれよ、すぐにもどる。」

そう言ってチェスターは、警官であふれ返りかけているデパス家へと向かった・・
・。





エピローグ

「クラースさん、結局は五右衛門を追い払ったってことで全部チェスターの手柄なん
ですか?」

「まぁ、そういうことになるな・・・。だが手柄ばかりが探偵に必要な事ではない。

 そんなことよりも大切な事があるだろう?」

「何の事ですかそれって・・・。」

すでにあの事件の日から一日が経過していた。

「すみませ~ん。」

外から元気な声が聞こえてきた。

「ん、客のようだな。チェスター、すぐに出てくれ!」

「りょうか~い。」

少し間の抜けた声で奥にいるチェスターが返事をした。
どたばたと廊下を玄関まで走っていく音がする。

「少々お待ちを~、って・・・アミィ??!!」

いきなり玄関のほうから叫び声が聞こえる。
クラースはクレスに熱く語っているため聞こえていない。

「何でお前が・・・。」

「何でって、家からなんだか追い出されちゃったから住む場所が無くって・・・
 お兄ちゃんしか頼りにする所が無くって・・・。
 だからそのクラースさんって人に私から頼むから中に入れて、お兄ちゃん。」

「ちょっと待て、ってもう中に入ってんのかよ!」

すたすたとアミィはチェスターの横を通って行く。
そしてクラースがクレスに熱弁を振るっている部屋の前に立った。

「すいません、少しお話があるのですが・・・。」

そう言って中に入ったアミィは10分ほどで出てきた。

「で、どうだったんだアミィ?」

「ふふふ・・・もうばっちり!ここに居候する事になっちゃった!」

満面の笑顔でアミィが言った。
チェスターはありえないと言う顔をしている。
「ここはあんまり経済状況は良くないはず・・・。」
と、チェスターはぶつぶつ言っていた。

「これからもよろしくね、お兄ちゃん!!」

その夜、ミラルドさんにこっぴどく叱られる、
クラースとチェスターがいたことは言うまでも無い・・・

あとがき

ふぅ、やっとこの小説も無事終わりました。
長かったような長くなかったような良く分からない状況です。
まぁみんな幸せになったんだからめでたしめでたし・・・かな?
次の作品も今書いているので楽しみにしていて下さい。
最初に考えていたよりもだいぶと長くなっちゃいましたね。
もう少し、短く内容を切れるように、考えられる人になりたいですね。
最後に、この小説を書くにあたっていろいろ苦労をかけた、
ルームの方々と祐介さん、ありがとうございました。



キャラクター設定

25代目石川五右衛門=アミィ・バークライト

クレスの妹であり、25代目の石川五右衛門である。
チェスターのような運動神経よりも頭のよさを中心にその実力を認められた。
実はチェスターもアミィも、拾い子であり12代目とは血のつながりは無い。
チェスターが家を出てとても悲しんだようである。
そして実力は二番目なので、石川五右衛門の名をついだ。
彼女のマーボーカレーは絶品で、本家石川をも凌ぐほどである。

アカビリ・モミルス警部

妻子持ちの人当たりが良い警部で、クラースともそれなりに仲がいい。
事件が解決しそうに無いとクラースを頼ってくる事も多々ある。
昔は刑事時代のクラースといっしょに現場を駆け回ったりもした仲だ。
過去には事件を解決しまくり、警察にはアカビリありと言われた敏腕刑事である。
現在は少し落ち着いた、生活でのんびりとしているようである。
ついでに言ったら家族構成は妻と、娘一人、息子二人の五人家族だ。

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