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チェスターの受難【1】

      チェスターの受難


 「ゴポッ!!」
扉のむこう側から奇妙な音が聞こえた。
扉のむこう…調理室から…
その場所に立って彼女―すずはある考えをめぐらせた。

 調理室→料理→今日の当番=……アーチェ……=××料理人!

「修行してこよう…」
すずはその場を去った。その頃アーチェは鍋を前にして悩んでいた。

「…ねぎ入れて、ニンジン入れて、チョコ入れて、ルーンボトル入れてぇ…」

クレスは聞いてしまった。すずの行動が気になり、「なんだ?」と近寄ったところ、後半だけを聞いてしまった。…といっても後半だけでヤバイ。

「…素振りしてこよう。」
クレスは剣を取りに上の階へあがったところ、ミントと会った。
「あ…ミント…下で料理してるのって…」
クレスは戸惑いつつも××料理人の名を口にした。
「…アーチェ…だよね…?」
「ええ…そうですけど…」
「早く手伝ってやってくれ…手遅れになる前に…」
「??」
クレスは謎の言葉を残してその場を立ち去った。手遅れに「なる前」に…?
もうすでに手遅れな気がしないでもない。その頃アーチェは…

「うーん…色が赤いなぁ…ルーンボトルのせい?うーん…」
と言いつつ両手に持ったホーリーボトルとダークボトルを交互に見比べている。
「どっちがいいかなぁ…」 などともほざいている。

「アーチェさん?」白い法衣を身につけた金髪の女性―ミントが入ってきた。
しかしその彼女の目に最初に飛び込んできたのは慌てふためく紅い髪の少女だった。
「あ!ミント―!!」
その少女は鍋の前で慌てていた。何事か?と鍋を覗き込み、ミントは絶句した。
「ダークボトル入れたら変な色になっちゃったよー…」
「………」
その鍋の中身は、深い深い紫色をしていた。
「…アーチェさん…私、具合が悪いので上で休んできます…」
「ほえ?…うわ、ホント顔色悪いよ。大丈夫?」
「ええ…すみません。」
…無理も無い。あんな物を見たら…

しばらくすると、クラースが入ってきた。ミントが調理室から出たのを目撃したため入ってきたらしい。あくまで『ミントの料理』をつまみ食いに来たのだ。
「お?カレーか?」
鍋の中の茶色の液体を見てクラースが聞いた。
「ううん。このアーチェ様特製スペシャルシチューだよv」
「アーチェ、すまないが私は調べ物が有るから夕食はいらない。」
アーチェの答えに対して速攻で言い返すと部屋へと消えていった。
「ちぇーミントの次はクラースもだめ、かぁ…ま、いいか。次はデザート!」

「…何やってんだ?」
「ここで、これ見て、何に見えんの?」
「××料理作りか?」
「ちっがーう!!デザート作りでしょうが!!」
チェスターとの微笑ましい(?)光景だ。そう。一瞬の…
彼女は××料理人の称号を持ってはいるものの、デザート『だけ』は上手だった。
「はは…わりぃわりぃ。あとどんぐらいだ?」
「もう少し!」
問いかけの返事になっていない返事がチェスターの耳に届いた。

「お待たせー!」
アーチェが運んできた料理とアーチェ、チェスター以外の四人の姿は無かった。
しかし、クレスとすずは修行だ、とチェスターが言っていたため、アーチェは心配しなかった。ミントとクラースは上にいる、とアーチェが言っていたため、チェスターも心配はしなかった。何事も無いかのようにチェスターの身に危機が迫っていた…
「じゃ、食うか。…いただきまーす。」
チェスターが彼にとってはカレーの『アーチェ様特製スペシャルシチュー』を口に運んだ。
次の瞬間だった。
『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぴおえひyじあkせtゃ!!!!』
宿屋中に後半聞きとる事すら不可能な痛烈な叫び声が響いた。
「チェスター…ごめん!」
「チェスターさん…すみません」
「チェスター…おまえの死は無駄にしないぞ!」
「チェスターさん…ご愁傷様です。合掌。」
それぞれが聞き取った叫び声に全てを悟り、チェスターの事を思った。

「なんでー!?」
現場ではアーチェが困惑していた。
「唐辛子がだめだったのー?それとも、チョコ?ルーンボトルぅー?いや、ダークボトルかなぁ…?でもどうしてー??」
「とうがら…し…カレーじゃ…なかった…の…か…?てか、ぜ…全部だめだ…ろ……」
チェスターは真っ白になり、静かに息をひきとった。


―後日談。


あれからチェスターはミントのレイズデッドでなんとか一命を取り留めた。
アーチェの料理の腕も多少なりは上手に…なってない。(笑)
だがしかし、アーチェの料理指導者にミントに加えてチェスターが加わった。
本人曰く、
「あの世界には二度と行きたくねぇからなぁ…マジで…」
だそうだ。それを語るあいつの姿は哀愁を漂わせ、あたりには全てを引きずり込むかのようなどんよりと重く、冷たい空気が流れていた。どうやら照れ隠しではなく本音のようだった。                        by クレス・アルベイン


あとがき。
どこにでもありそうなアーチェの料理をネタにしたチェスアー純愛物です。(?)
なんかくだらない上短いですが楽しんでいただければ幸いです。
人気があろうが無かろうが二作目は書くつもりです。よろしく。     飯

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