テイルズオブファンタジア【1】
トーティス村の復興も進み次第にクレスたちの心にも若干余裕が出てきた頃…
今はミントはクレスの家で、クレスとチェスターはチェスターの家で寝泊りをしている。
毎日同じ仕事を行う度にスピードも速まり今では1ヶ月に家1軒を立て直す勢いで作業を進めていた。
そして…今日もまた、いつもと変わらぬ日の光が村中に差し込もうとしていた。
「村の復興も進んできたし、そろそろ会いに行ってもいいと思うんだ。」
朝起きたばかりの寝ぼけ眼のクレスがおもむろに口を開いた。
「会いに行くって…誰にだよ?」
朝食のパンをかじり、まだ温かいスープを飲みながらチェスターが言う。
「決まってるじゃないか、アーチェだよ。覚えているだろ?」
喋るのと平行して着替えを終え、クレスも食事の席に着いた。
「ああ…あいつか…そうだな、大分落ち着いてきた頃だし…いいんじゃないか?」
顔を少しクレスから反らすようにチェスターは話す。おそらくは照れているのだろう。
クレスにもそれはわかっていたので、つい微笑してしまう。その時だった…
……バタン!
急に家のドアが開き外からミントが飛び込んできた。
「ク…クレスさん!チェスターさん!」
私服姿のミント、ずいぶん珍しい。金髪が眩しく額には少し汗をかいていた。
息切れしながらも声からは嬉しさが伺える、ここにも走って伝えに来たということはすぐにわかった。
「どうしたんだよミント?そんなに慌てて…」
別に慌てる様子もなく冷静を装うチェスター。しかしその冷静さは間も無く打ち破られることとなる。
「アーチェさんが…アーチェさんが来ました…!」
この言葉にクレスはパンをのどに詰まらせ、チェスターはスープが器官に入って咳き込んでしまった。
「ア…アーチェだって!?」
2人の言葉が重なる、そして一刻も早く外に出ようという気持ちも一緒だった。
高まる興奮を抑えて外に出る、そこにはかつて冒険を友にした仲間アーチェ・クラインの姿があった。
3人にしてみれば分かれたのは、約半年ほど前のことだったがアーチェから見れば違う。
別れてから実に100年以上もの時を過ごしてきたのだ。
しかし、目の前の彼女は3人の知っているアーチェと何1つ変わらない。
当たり前のことのように思えるこの再開の光景…考えてみると実に奇妙な感じがする。
「やっほ~。久しぶりだねぇ。みんな元気にしてた~?」
とても100年も経ったとは思えない…笑顔も、声も、全くそのままだった。
「はい…アーチェさんもその後お変わりなく…」
「僕らは元気だよ、そっちも元気そうで何よりだよ。」
「よう。お前も全く変わってねぇな…ま、変わってたら今頃ババアの年齢だけどな。」
ミントは相変わらず丁寧な口調だった、クレスも態度は変わっていない。
しかしチェスターはと言うと、相変わらず皮肉たっぷりで呟いた。
この言葉にアーチェが黙っている筈は無かった。
「な…何よ!誰が…ババアだって!?……ファイアボール!」
アーチェの指先から火球が飛び出す。勿論チェスターに一直線、そして見事に命中した。
「あ…熱ィ!バ…バカ…熱いって、火傷しちまうだろーが…!」
この2人の光景を見てミントとクレスは笑っている。
「相変わらずだね、あの2人。…邪魔しちゃ悪いから中へ入ろうか。」
「そうですね…本当に仲がいいんですね、羨ましいです…」
クレスとミントが家の中へ入っても相変わらず2人のやりとりは続いていた。
「……ったく、性格も変わってねえのな…そんなんじゃお前…嫁の貰い手も無いだろう。」
ズバリ核心を突いたチェスターにアーチェが真っ赤になって怒り出す。
「よ…余計なお世話よ…!何であんたがそんな事…大体…あんたはどうなのさ…!」
アーチェのこの問いにチェスターは速攻で答える。
「できるわけないだろ、そんな人…いねぇし、村の復興で忙しかったんだからな。」
ふ~ん…やっぱねぇ…という表情でアーチェはチェスターを見る。
「…っと…もうこんな時間か…そろそろ狩りに行く時間だな。」
チェスターは無理矢理…話を反らした、この話題は自分にとって不利だと感じたのだろう。
チェスターはいつもこのくらいの時間に狩りに行く。幸いなことに今まで狩りに失敗したことは無い。
流石手練と言うべきだろうか、獲物はまず1発で仕留めることが出来るようになっていた。
トントン…ガチャ…
そっとドアに近づき、チェスターはドアをノックする。
「そろそろ10時になるから狩りに行ってくるぜ。」
この言葉でクレスが立ち上がった。
「ああ…もうそんな時間か、僕も一緒に着いて行こうか?」
「あ…クレスは休んでていいぞ。今日はアーチェと一緒に行ってくるからよ。」
チェスターのセリフでアーチェはドキッとしてしまった。
「気をつけて行ってきて下さいね。あと、コレを…」
ミントはそう言うと自分で調合した薬草を、念のためにチェスターに手渡した。
「サンキュー、ミント。んじゃ行ってくる。」
チェスターはそう言うと2人を背に家を出た。
「…ってことで、ほら行くぞ。」
「…ってことで、じゃないわよ、何であたしも行かなきゃいけないのさ。」
「嫌なのか?」
チェスターがアーチェの顔を覗き込むように聞く。
「べ…別に…嫌じゃないけど…」
言いつつアーチェは箒にまたがる。
「そうか…それじゃさっさと行くぞ。ボサっとしてると昼飯の時間になっちまうからな。」
そういうとチェスターは南の森の方角へ走っていった。
「あっ!ちょ…ちょっと待ってよ~!」
慌ててアーチェもその後を追いかけていった。
2人は揃って同じ事を考えていた。(大物が取れるといいな)と。
15分ほど歩いた後、2人は南の森へ到着した。
森からは小鳥の声が囀り、日の光も木々の間に紛れ込むように差し込んでくる。
一方でこの森は凶暴な獣が多く、用心していないと大怪我をすることもあるそうだ。
「ふう…いつ来てもここは静かだな~。」
チェスターはう~ん、と背伸びをして体の筋を伸ばし、弓を構えて森の奥へと進んでいった。
アーチェもそれに続き、辺りを警戒しながらチェスターの後を追う。
「ん~…今日はいねぇなぁ…獲物…ひょっとして逃げちまったのか…?」
弓でトントンと肩を叩きながらチェスターは辺りを見回す。
「あんたなんかから逃げ出す獣なんかいるわけ無いじゃん。」
アーチェはハァ…とため息を漏らしつつチェスターの方を向いて言う。
「な…何だと…!こいつ…言いたい事言いやがっ…!」
……ガサ…………
不意にそこの茂みで何かが動いた。勿論これを見逃すわけがない。
チェスターは音がした方向に、弓を構え、勢いよく矢を放った。
特技「紅蓮」先が真っ赤に燃える矢で獲物を仕留める弓の技の1つだ。
一寸の狂いも無く命中、すぐに駆け寄ってみると体長1m程のイノシシを見事の仕留めていた。
「どうだ?俺だってなかなかやるだろ?」
白い歯を出してニッと笑うチェスターの顔はどこか得意気だった。
「へぇ…あんたにしてはなかなかやるじゃん。あたしだって…サンダーブレード!」
アーチェが魔法を唱えると体長40cm程のイノシシが3匹、コロンと転がった。
どうやらさっきのイノシシの子供らしい。3匹とも親と同じ場所から転がってきた。
「やったぁ!あたしも結構やるじゃん、大量大量―――!」
喜ぶアーチェを他所に、チェスターは難しい顔をしていた。
「妙だな…親が1匹しかいない何てこと普通無いのに…」
チェスターの不安は的中していた。彼の背後に忍ぶ影…それが今飛び出した。
「チェ…チェスター!危ない後ろ!」
アーチェの声を聞き後ろを振り向くすると体長が2mを越すイノシシが迫ってきていた。
「な…何!?」
ドガァァン……ダンッ!
相手の突進を腹に直撃しチェスターは吹っ飛ぶ、そして奥の大木に叩きつけられた。
チェスターの口元からは血が流れている。
「ち…チクショウ…油断しちまった…ゲホッ!相手のこの大きさ…ちょっとヤバイな…」
かろうじて立ってはいるものの、ひざはガクガク震えていた。
「だ…大丈夫!?チェスター!」
アーチェは箒から降りてチェスターのところへ駆け寄った。
「ああ…心配すんな…大丈夫だ…それよりあいつを倒す方法だが…」
アーチェはチェスターの話を黙って聞き、こくんと頷くと魔法の詠唱を開始した。
敵は猛スピードで突っ込んでくる、すんでのところでアーチェの魔法が発動した。
「イラプション!」
敵の足元から高熱のマグマが噴き出す。そして炎の中に敵を閉じ込めた。
「…今だ…雷よ…行っけぇぇ~!」
奥義「亢龍」自分の矢に雷を落としその矢を相手に向かって放つ。
チェスターがなんと1ヶ月で習得した奥義だ。
努力家の彼らしく努力は惜しまかったので飛躍的なスピードで習得することが出来た。
そしてその雷を鋭く纏った矢が敵に刺さり、炎に引火、凄まじい爆発を巻き起こす…
「…うわ!」 ズシャ…
「きゃあ!」 ドテ…
爆発は技を放った2人をも吹き飛ばす。やがて爆発が収まり、煙も晴れてきた。
「痛っ…オイ、アーチェ…大丈夫か?」
「うん…あたしは大丈夫…チェ…チェスター!あんた…さっきの傷…ひどくなってる…!」
アーチェが急いでチェスターの駆け寄り、顔色を伺う、青っぽくて息もかなり切れていた。
「心配すんなって…ミントからもらった薬草があるから平気だ…それにしても…凄ぇ威力だな…」
ゆっくりとチェスターは歩みだし、敵の姿を確認しようとした…が、敵の姿は見当たらなかった。
「…うっはぁ…木っ端微塵だよ…跡形も残ってないね…」
「本当に凄ぇな…まぁ今日はこの位にしてそろそろ帰ろうぜ。」
チェスターは立ち上がり先程仕留めた獲物を手に持った。
「そうだね、これ以上襲われたりしたら大変だもんね…」
アーチェはひょいっと箒にまたがると、自分でさっき仕留めた獲物を箒に積んだ。
-------20分後--------
南の森を出て20分が経過した時、アーチェは気になったことがあったのでチェスターに聞いてみた。
「ねぇ…そんな怪我したのって今日が初めてなんでしょ…?ひょっとして…あたしのせいかな?」
顔を伏せて不安げな表情をしながら恐る恐る尋ねてみる。
「まぁ…今日が初めてだけど…お前のせいじゃないぜ?
むしろお前がいなかったら助かりはしなかったさ、ありがとな。」
顔が少し赤くなっているのを自分で感じたためかチェスターは少しうつむき加減で話した。
顔を上げないほうが良かったのかもしれない…彼の顔は真っ青で、今にも倒れそうだったからだ。
そんな顔を隠すようにしてチェスターは元気に振舞う。
「うん…ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ…って…
…あんたが素直に礼を言うなんて珍しいじゃん。」
箒に乗って話すアーチェはチェスターから微妙に顔を反らしていた。
「お前だって…素直に礼を言ってるじゃんか…」
「あ…はは…何か今日は変だね…あたし達…」
2人とも村に着くまではお互いを直視できなかった。
…この2人にとって見れば相手の素直な一面を見れたいい機会だったのかもしれない。
あとがき
こんにちは、初めましてシュウと言います。
まず、この作品を読んで下さってありがとうございました。
この話はこれからはチェスアーがメインになっていくと思います。(思うって言うかそうなんです)
これからもこの話は続けていきますが僕も受験生なんで10日ごとに更新みたくなってしまいます。
しかし、これからも頑張りますのでよろしくお願いしますね。
今はミントはクレスの家で、クレスとチェスターはチェスターの家で寝泊りをしている。
毎日同じ仕事を行う度にスピードも速まり今では1ヶ月に家1軒を立て直す勢いで作業を進めていた。
そして…今日もまた、いつもと変わらぬ日の光が村中に差し込もうとしていた。
「村の復興も進んできたし、そろそろ会いに行ってもいいと思うんだ。」
朝起きたばかりの寝ぼけ眼のクレスがおもむろに口を開いた。
「会いに行くって…誰にだよ?」
朝食のパンをかじり、まだ温かいスープを飲みながらチェスターが言う。
「決まってるじゃないか、アーチェだよ。覚えているだろ?」
喋るのと平行して着替えを終え、クレスも食事の席に着いた。
「ああ…あいつか…そうだな、大分落ち着いてきた頃だし…いいんじゃないか?」
顔を少しクレスから反らすようにチェスターは話す。おそらくは照れているのだろう。
クレスにもそれはわかっていたので、つい微笑してしまう。その時だった…
……バタン!
急に家のドアが開き外からミントが飛び込んできた。
「ク…クレスさん!チェスターさん!」
私服姿のミント、ずいぶん珍しい。金髪が眩しく額には少し汗をかいていた。
息切れしながらも声からは嬉しさが伺える、ここにも走って伝えに来たということはすぐにわかった。
「どうしたんだよミント?そんなに慌てて…」
別に慌てる様子もなく冷静を装うチェスター。しかしその冷静さは間も無く打ち破られることとなる。
「アーチェさんが…アーチェさんが来ました…!」
この言葉にクレスはパンをのどに詰まらせ、チェスターはスープが器官に入って咳き込んでしまった。
「ア…アーチェだって!?」
2人の言葉が重なる、そして一刻も早く外に出ようという気持ちも一緒だった。
高まる興奮を抑えて外に出る、そこにはかつて冒険を友にした仲間アーチェ・クラインの姿があった。
3人にしてみれば分かれたのは、約半年ほど前のことだったがアーチェから見れば違う。
別れてから実に100年以上もの時を過ごしてきたのだ。
しかし、目の前の彼女は3人の知っているアーチェと何1つ変わらない。
当たり前のことのように思えるこの再開の光景…考えてみると実に奇妙な感じがする。
「やっほ~。久しぶりだねぇ。みんな元気にしてた~?」
とても100年も経ったとは思えない…笑顔も、声も、全くそのままだった。
「はい…アーチェさんもその後お変わりなく…」
「僕らは元気だよ、そっちも元気そうで何よりだよ。」
「よう。お前も全く変わってねぇな…ま、変わってたら今頃ババアの年齢だけどな。」
ミントは相変わらず丁寧な口調だった、クレスも態度は変わっていない。
しかしチェスターはと言うと、相変わらず皮肉たっぷりで呟いた。
この言葉にアーチェが黙っている筈は無かった。
「な…何よ!誰が…ババアだって!?……ファイアボール!」
アーチェの指先から火球が飛び出す。勿論チェスターに一直線、そして見事に命中した。
「あ…熱ィ!バ…バカ…熱いって、火傷しちまうだろーが…!」
この2人の光景を見てミントとクレスは笑っている。
「相変わらずだね、あの2人。…邪魔しちゃ悪いから中へ入ろうか。」
「そうですね…本当に仲がいいんですね、羨ましいです…」
クレスとミントが家の中へ入っても相変わらず2人のやりとりは続いていた。
「……ったく、性格も変わってねえのな…そんなんじゃお前…嫁の貰い手も無いだろう。」
ズバリ核心を突いたチェスターにアーチェが真っ赤になって怒り出す。
「よ…余計なお世話よ…!何であんたがそんな事…大体…あんたはどうなのさ…!」
アーチェのこの問いにチェスターは速攻で答える。
「できるわけないだろ、そんな人…いねぇし、村の復興で忙しかったんだからな。」
ふ~ん…やっぱねぇ…という表情でアーチェはチェスターを見る。
「…っと…もうこんな時間か…そろそろ狩りに行く時間だな。」
チェスターは無理矢理…話を反らした、この話題は自分にとって不利だと感じたのだろう。
チェスターはいつもこのくらいの時間に狩りに行く。幸いなことに今まで狩りに失敗したことは無い。
流石手練と言うべきだろうか、獲物はまず1発で仕留めることが出来るようになっていた。
トントン…ガチャ…
そっとドアに近づき、チェスターはドアをノックする。
「そろそろ10時になるから狩りに行ってくるぜ。」
この言葉でクレスが立ち上がった。
「ああ…もうそんな時間か、僕も一緒に着いて行こうか?」
「あ…クレスは休んでていいぞ。今日はアーチェと一緒に行ってくるからよ。」
チェスターのセリフでアーチェはドキッとしてしまった。
「気をつけて行ってきて下さいね。あと、コレを…」
ミントはそう言うと自分で調合した薬草を、念のためにチェスターに手渡した。
「サンキュー、ミント。んじゃ行ってくる。」
チェスターはそう言うと2人を背に家を出た。
「…ってことで、ほら行くぞ。」
「…ってことで、じゃないわよ、何であたしも行かなきゃいけないのさ。」
「嫌なのか?」
チェスターがアーチェの顔を覗き込むように聞く。
「べ…別に…嫌じゃないけど…」
言いつつアーチェは箒にまたがる。
「そうか…それじゃさっさと行くぞ。ボサっとしてると昼飯の時間になっちまうからな。」
そういうとチェスターは南の森の方角へ走っていった。
「あっ!ちょ…ちょっと待ってよ~!」
慌ててアーチェもその後を追いかけていった。
2人は揃って同じ事を考えていた。(大物が取れるといいな)と。
15分ほど歩いた後、2人は南の森へ到着した。
森からは小鳥の声が囀り、日の光も木々の間に紛れ込むように差し込んでくる。
一方でこの森は凶暴な獣が多く、用心していないと大怪我をすることもあるそうだ。
「ふう…いつ来てもここは静かだな~。」
チェスターはう~ん、と背伸びをして体の筋を伸ばし、弓を構えて森の奥へと進んでいった。
アーチェもそれに続き、辺りを警戒しながらチェスターの後を追う。
「ん~…今日はいねぇなぁ…獲物…ひょっとして逃げちまったのか…?」
弓でトントンと肩を叩きながらチェスターは辺りを見回す。
「あんたなんかから逃げ出す獣なんかいるわけ無いじゃん。」
アーチェはハァ…とため息を漏らしつつチェスターの方を向いて言う。
「な…何だと…!こいつ…言いたい事言いやがっ…!」
……ガサ…………
不意にそこの茂みで何かが動いた。勿論これを見逃すわけがない。
チェスターは音がした方向に、弓を構え、勢いよく矢を放った。
特技「紅蓮」先が真っ赤に燃える矢で獲物を仕留める弓の技の1つだ。
一寸の狂いも無く命中、すぐに駆け寄ってみると体長1m程のイノシシを見事の仕留めていた。
「どうだ?俺だってなかなかやるだろ?」
白い歯を出してニッと笑うチェスターの顔はどこか得意気だった。
「へぇ…あんたにしてはなかなかやるじゃん。あたしだって…サンダーブレード!」
アーチェが魔法を唱えると体長40cm程のイノシシが3匹、コロンと転がった。
どうやらさっきのイノシシの子供らしい。3匹とも親と同じ場所から転がってきた。
「やったぁ!あたしも結構やるじゃん、大量大量―――!」
喜ぶアーチェを他所に、チェスターは難しい顔をしていた。
「妙だな…親が1匹しかいない何てこと普通無いのに…」
チェスターの不安は的中していた。彼の背後に忍ぶ影…それが今飛び出した。
「チェ…チェスター!危ない後ろ!」
アーチェの声を聞き後ろを振り向くすると体長が2mを越すイノシシが迫ってきていた。
「な…何!?」
ドガァァン……ダンッ!
相手の突進を腹に直撃しチェスターは吹っ飛ぶ、そして奥の大木に叩きつけられた。
チェスターの口元からは血が流れている。
「ち…チクショウ…油断しちまった…ゲホッ!相手のこの大きさ…ちょっとヤバイな…」
かろうじて立ってはいるものの、ひざはガクガク震えていた。
「だ…大丈夫!?チェスター!」
アーチェは箒から降りてチェスターのところへ駆け寄った。
「ああ…心配すんな…大丈夫だ…それよりあいつを倒す方法だが…」
アーチェはチェスターの話を黙って聞き、こくんと頷くと魔法の詠唱を開始した。
敵は猛スピードで突っ込んでくる、すんでのところでアーチェの魔法が発動した。
「イラプション!」
敵の足元から高熱のマグマが噴き出す。そして炎の中に敵を閉じ込めた。
「…今だ…雷よ…行っけぇぇ~!」
奥義「亢龍」自分の矢に雷を落としその矢を相手に向かって放つ。
チェスターがなんと1ヶ月で習得した奥義だ。
努力家の彼らしく努力は惜しまかったので飛躍的なスピードで習得することが出来た。
そしてその雷を鋭く纏った矢が敵に刺さり、炎に引火、凄まじい爆発を巻き起こす…
「…うわ!」 ズシャ…
「きゃあ!」 ドテ…
爆発は技を放った2人をも吹き飛ばす。やがて爆発が収まり、煙も晴れてきた。
「痛っ…オイ、アーチェ…大丈夫か?」
「うん…あたしは大丈夫…チェ…チェスター!あんた…さっきの傷…ひどくなってる…!」
アーチェが急いでチェスターの駆け寄り、顔色を伺う、青っぽくて息もかなり切れていた。
「心配すんなって…ミントからもらった薬草があるから平気だ…それにしても…凄ぇ威力だな…」
ゆっくりとチェスターは歩みだし、敵の姿を確認しようとした…が、敵の姿は見当たらなかった。
「…うっはぁ…木っ端微塵だよ…跡形も残ってないね…」
「本当に凄ぇな…まぁ今日はこの位にしてそろそろ帰ろうぜ。」
チェスターは立ち上がり先程仕留めた獲物を手に持った。
「そうだね、これ以上襲われたりしたら大変だもんね…」
アーチェはひょいっと箒にまたがると、自分でさっき仕留めた獲物を箒に積んだ。
-------20分後--------
南の森を出て20分が経過した時、アーチェは気になったことがあったのでチェスターに聞いてみた。
「ねぇ…そんな怪我したのって今日が初めてなんでしょ…?ひょっとして…あたしのせいかな?」
顔を伏せて不安げな表情をしながら恐る恐る尋ねてみる。
「まぁ…今日が初めてだけど…お前のせいじゃないぜ?
むしろお前がいなかったら助かりはしなかったさ、ありがとな。」
顔が少し赤くなっているのを自分で感じたためかチェスターは少しうつむき加減で話した。
顔を上げないほうが良かったのかもしれない…彼の顔は真っ青で、今にも倒れそうだったからだ。
そんな顔を隠すようにしてチェスターは元気に振舞う。
「うん…ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ…って…
…あんたが素直に礼を言うなんて珍しいじゃん。」
箒に乗って話すアーチェはチェスターから微妙に顔を反らしていた。
「お前だって…素直に礼を言ってるじゃんか…」
「あ…はは…何か今日は変だね…あたし達…」
2人とも村に着くまではお互いを直視できなかった。
…この2人にとって見れば相手の素直な一面を見れたいい機会だったのかもしれない。
あとがき
こんにちは、初めましてシュウと言います。
まず、この作品を読んで下さってありがとうございました。
この話はこれからはチェスアーがメインになっていくと思います。(思うって言うかそうなんです)
これからもこの話は続けていきますが僕も受験生なんで10日ごとに更新みたくなってしまいます。
しかし、これからも頑張りますのでよろしくお願いしますね。