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テイルズオブファンタジア【2】

トーティスの村まで戻ってきたチェスターとアーチェ。
時計を確認すると丁度12時、そろそろ昼食の時間だ。
「オーイ!今帰ったぞ~!」

ガチャ…バタン…

チェスターがそう言うとクレスとミントが家の中から出てきた。
「おかえり、チェスター。……結構大物が取れたみたいだね。アーチェもお疲れ様。」
「おかえりなさい……チェスターさん…!怪我をされているじゃありませんか…!」
チェスターの腹部が赤く滲んでいたのでミントは目を留めた。
しっかりと包帯を巻いた筈なのだが、血がだんだん滲んできていた。
「ああ…そのことか…大丈夫だ。お前から貰った薬草があって助かったぜ。」
(…やっぱり…あたしが付いて行ったから…あたしのせいで…チェスターは…)
やりきれない思いがアーチェの頭をよぎる。彼女はここで1つの決心をしていた。
チェスターは笑っていたが、アーチェの顔には心を表すように暗い顔が浮かび上がっていた。
「私の…回復法術を唱えておきますね…ヒール!」

フワァァァ…

柔らかな光がチェスターを包み込む。
しかし、チェスターの傷はかなり深い、例えミントの法術でも治るのには1ヶ月はかかる傷だった。
そんな傷を抱えてチェスターは歩き回っていたのだから、その体力は尋常ではない。
「ふぅ…大分楽になった…サンキュ…ちょっと俺…横になってくるわ…」
チェスターはふら付く足を押さえ、顔を見せないように2階へ上がっていった。
顔を見られると自分の状態がバレてしまう、特にアーチェを不安がらせないように注意を祓っていた。

チェスターが2階に上がったのを確認した後、アーチェはクレスとミントにこう切り出した。
「今日の狩りでわかったの…あたし…もう1回魔法の修行しなおさないとダメみたい…」
アーチェのこの突然の言葉に2人は焦って聞き返した。
クレス&ミント「一体何があったんだよ(ですか)?」
「うん…それは…さっきのアイツの傷の話になるんだけど…」
重々しい口をそっと開き、事情を説明する…勿論、2階にいるチェスターには聞こえないように。
「そうだったんだ…チェスターの傷はそうやって…でも…それはアーチェのせいじゃないと思うよ?」
「そうですよ…傷もそんなに酷くないですし…アーチェさんが思いつめることはありません。」
2人は笑顔で話す、しかしアーチェはうつむいたまま返事はしなかった。
さっきと変わったところといえば表情に悔しさが表れている。
…だがうつむいているので2人にはそんなことがわかる筈もなかった。
「本当に…チェスターの傷は…大丈夫なの…?」
アーチェが恐る恐る問いかける、だがミントはすぐには答えなかった。いや…答えられなかったのだ。
チェスターの傷、常人では歩けないほどの傷だ。
もし、あの場にミントの薬草が無かったらどうなっていたかわからない。
場合によっては死ぬ可能性もあった…そこまで考えるとミントは胸が痛くなる。
頭の中から嫌な考えを消し去り、ミントは再び笑顔でこう答えた…
「大丈夫ですよ…応急処置も済ませてありますし…あとは安…静…に…っ……」
そこまで言うと、ミントは言葉を詰まらせ、顔が後悔の表情で一杯になった。
「お…応急処置…ってことは…やっぱりチェスターは…」
アーチェがそこまで言葉を言いかけた途端にクレスに言葉を挟まれる。
「大丈夫だってば!チェスターは…大丈夫だから…」
クレスの顔にも焦りの色が浮かんでいる。勿論、クレスもチェスターの傷の深さには気づいていた。
チェスターが無理をしているのを見て、自分も息苦しくなっていたのだ。
その時…アーチェは何かを思い出したようにポケットを探り、小さな袋を取り出した…
「これ…エルフの調合薬…人間には効かないかも知れないけど…あいつに飲ませてあげて…」
ミントは両手を差し出し、薬の入った袋を静かに受け取った。
そして…その後アーチェは無言で席を立ち、箒を持って外に出てそれにまたがった。
「あたし…もっと自分がしっかりしてから…もう1度…ここに来るね…」
クレスとミントはじっとアーチェの顔を見つめていた。 笑ってなんか別れることは出来なかった。
アーチェも今にも泣き出しそうな顔だ。しかし唇をかみ締め、じっと我慢する。
「や…やだなぁ、もう…そんな顔しないでよ…一生会えなくなる訳じゃないんだからさ…」
これ以上の沈黙は耐えかねたのかクレスが言葉を返した。
「アーチェ…君は…」そこまで言うとクレスは不意に口を塞ぐ。
「ゴメンね…勝手な事して…それじゃ…また会おうね…」
アーチェはそう言うと、寂しく見守る2人を背に、エルフの里の方角へ飛び去って行った。
「行ってしまいましたね…これで…良かったのでしょうか…」
悲しい、辛い表情のミント「良いわけない」…そう感じてる……
自分でもわかっているのに何故こんな言葉を出してしまったのか分からなかった。
「とにかく…チェスターが起きたら…すぐ伝えよう…」
「はい…分かりました…」
言葉には2人の不安が漠然と表れている、勿論、お互いそれを知っていた。
しかし、言葉に出したくは無かった…言うのが怖い…そんな気持ちで胸が一杯になったからだ。
そろそろ日も沈み始めてくる時間帯だった、眩しい太陽が2人を照らす。
いつもと変わらぬ日の入とは逆に2人の心はいつもより激しく揺れ動いていた。

日が沈みきり……夜空に星が輝く午後10時。
「ふあ~あ…よく眠れたぜ…」
何も知らずに起きて来たチェスターが大きなあくびをする…
クレスとミントは「おはよう…」と言いつつも不安を隠しきれず顔にそれが浮かび上がる。
「どうしたんだよ2人共…そんな顔して…気分でも悪いのか?」
2人は黙って座ったまま…手に持ったマグカップが震えてカタカタと音をたてる。
「本当に大丈夫か…?…そうだ…ところで…アーチェがいねぇな…どこ行ったんだ?」
最も聞きたくない言葉がついにチェスターから発せられた。
しかし、いつかはわかってしまう、それが早いか遅いかの違いだった。
自ずとチェスターの気持ちを考え、ミントが答え始める。
「アーチェさんは…エルフの里に…帰られました…」
この言葉にチェスターは度肝を抜かされそうになったが、冷静を装い、もう1度尋ねる。
「か…帰った…?そ…そんな…何でだよ…?」
ズキズキと傷が痛む…しかし今のチェスターにとってそんなことはどうでも良いことだった。
顔に焦りの色が浮かぶチェスター。この質問にはクレスが答えた。
「それは…」
ゆっくりと話し始めるクレス…言い終わってもチェスターには信じることは出来なかった。
「何だよ…そんなことか…そんなんで帰っちまうなんて…バカだなあいつ…」
後ろを向いて、顔を隠しながらチェスターが言い放つ。
これを聞いた2人は流石に怒った表情になる。
「チェ…チェスターさん…!それは…酷すぎます…!アーチェさんの気持ちも…」
「チェスター…!それは酷いよ…アーチェだって…君の事を…」
そこまで言うと2人は同時に言葉を止め、チェスターの顔に目をやった。
「バカなんだよ…あいつは…なんでも自分で背負い込んじまう…大バカ野郎なんだよ…」
チェスターの顔には2つの涙の道筋があった。 2人共言葉出すことは出来なかった…
そう、1番辛いのは誰よりもチェスターだったのだから…
…重い沈黙が流れる…ここでミントはさっきアーチェから貰った薬を出し、チェスターに手渡した。
「これは…アーチェさんから貰った調合薬です。きっと…いいえ、絶対効きますから飲んで下さい。」
こんな薬よりも…アーチェがそばにいてくれたほうが…絶対治る…チェスターはそう思っていた。
チェスターは早速薬を水で飲み込み、袖で涙をごしごしと拭いた。
「今日はもう…寝るぜ…疲れちまった…早く傷も治さないといけないしな…」
そういうとチェスターは2階へ上がり、再び布団の中へ潜り込んだ。
(やっと…やっと会えたのに…こんなのって無いだろ…ちくしょう…!)
涙が止まらない…今日、それを改めて身で知った。
アミィが殺された時…いや…それとは別に…もっと大切なものを失った気持ちが強い。
「チェスターさん…可愛そう過ぎます…泣いている所…初めて見ました…」
「ああ…僕もあそこまで泣いているチェスターの顔は初めて見たよ…」
友のことを思い浮かべ、クレスは自分が何も出来ない悔しさが募る。
「私の法術では…体の傷は治せますが…心の傷は治せません…」
その場にいた2人ですらショックは大きい。
だが、いきなりこの事実を叩きつけられたチェスターの心の痛みは想像も出来なかった。
「…今日は遅いから…もう寝よう…この話はまた明日3人でしよう…」
「はい…そうですね…でも、今日は…眠れそうにありません。」
不安げな顔つきでミントが言う。
「僕もだよ…勿論チェスターが1番だと思うけど…」
クレスはミントを家まで送り、チェスターと同じく布団に入った。
その日は色々と物事が重なって疲れたためか心配とは裏腹に眠りこけてしまった。

朝起きると衝撃的なものを目にするとは、この時クレスは思ってもいなかった。



~後書き~

テイルズオブファンタジアの小説の2章目完成です。
受験生なのにこんなことをしてて良いのだろうか…と思いますけど…(良くない
ま…まぁたまには息抜きもいいですよね。(息抜きしかしてないくせに何を言うか

まぁ…自己突っ込みはこの辺にして…
読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました。
今回は前回よりも少し短めです、よければこの作者目にアドバイスや感想をお聞かせくださいませ。
では次はいつ書けるかわかりませんが、これで失礼致します。


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