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テイルズオブファンタジア【4】


次の日…まだ日も昇らない午前3時、チェスターは宿屋を出発した。
「ふぁぁ…まだ眠いぜ…夜中の3時だもんな…いつもならまだ寝てる時間だってのに…」
大きなあくびをしながらもチェスターは、1歩1歩確実にエルフの里に向かって歩いて行った。
「…おまけに変な頭痛のせいでほとんど眠れなかったしよ…ったく散々だぜ…」
そうして歩いている内に目の前に大きな森が出現した。…が、木々のせいで奥が全然見えなかった。

「おいおい…ここをホントに通るのかよ…参ったぜ…」
チェスターはブツブツ言いつつもここを通るしかなかった。
エルフの里への道はここを通るしかなかったからだ。しかし、辺りへの警戒は怠らない。
暗い森の中を歩くことは危険だということをチェスターは十分に認識していたからだ。
「……どっちにしても…何も出ないにこした事はねぇな…」
森の中をしばらく歩いていくと、辺りに何者かの気配を感じた。
(く…何かいやがるな…来るなら来い…絶対に仕留めてやるぜ…!)
チェスターは背中の矢筒から矢を2,3本取り出すとそれを弓に掛けた。
全神経を集中させて辺りを伺う…そして背後からその影は姿を現した。

「グワァァァァー!!」

(な…何…?後ろだと…マズイ…!)
しかしチェスターは凄まじい反射神経でこれを避け、相手の爪がかすった程度で済んだのだった。
(相手はカンバラーベア1匹か…まぁ何とかなるだろう…)
チェスターがそう思った瞬間だった、相手背後から更に5匹ほどのカンバラーベアが現れたのだ。
…しかしチェスターはこれに全く動じず、それどころか笑みをこぼしていた。
「フン…一ヶ所に集まってくれりゃ…ワケねぇぜ!喰らえ…屠龍!」
チェスターの放った矢がビーム上に広がり敵を討つ、奥義「屠龍」が炸裂した。
「悪ィな…俺はこんなとこで手間取ってるわけには行かねーんだよ。」
カンバラーベア達はその場に倒れ込み、そして2度と動くことは無かった。
しばらく歩くと目の前に出口が広がっている。チェスターは急いで森の出口へと進んだ。

森を抜けた頃にはすでに空には青空が広がっていた。
今まで暗い森の中にいたチェスターを日の光が眩しく照らす。
チェスターにとっては眩しくてしょうがない、慣れるまでには大分時間がかかった。
「フゥ…何とかなったな…もうこんな面倒な事が無けりゃいいんだが…」
眠気と一向にやまない頭痛によってチェスターの足はふら付いていた。
「うぁ…ダメだ…一旦ここで仮眠を取るか…さすがにこのままぶっ通しで歩くのは厳しいぜ…」

そういうとチェスターは近くの草原で横になり、眠りこけてしまった。

----3時間後----

「ふぁぁ…よく眠れたな…よし!暗くなる前に一気に進んじまうか…!」
チェスターはバッグから肉を1つ取り出すと、それをかじりながら先へと進んでいった。
「しっかし…眠気は吹っ飛んだが…まだ頭が痛ェな…」
頭痛は一向に治まらない、それどころか眠る前よりも酷くなったような気がする。
(くそ…まだ先は長ぇんだ…さっさと行くぞ…)
チェスターは自分に言い聞かせながら再びエルフの里を目指した。

----更に3時間後----

大分歩き、再び空は暗くなり始めてきていた。
「はぁはぁ…何だ…そんなに疲れてるわけじゃねぇのに…くっ…」
チェスターの体には明らかに異変が進行していた。
体も熱湯のように熱く汗が大量に出る、頭痛も余計激しくなってきていたのだ。
「ちくしょう…どうなってんだよ…俺の体は…」
明らかにいつもの体の調子とは違う…それは自分が1番よくわかっていた。
「寝れば…治るさ…まだ時間も1日弱あるしな…今日はもう寝よう…」

----その頃のアーチェ----

里も静まり返った、夜遅く…まだポツポツと民家の明かりがついていた。
「そういえばアーチェ…お母さんがあげたエルフの薬はどうしたの?」
薬というのはアーチェがミントに渡したエルフの調合薬の事だ。
「え?ああ…あの薬なら、あげちゃったよ。飲んでもらうためにさ。」
その言葉を聞いて気のせいかルーチェの顔が青ざめる、彼女は冷静にもう1度問いかけた。
「あ…あげたって…誰にあげたの…?」
この質問をしたルーチェの声は震えていた、何か嫌な予感がしたのだ。
「えっと…そうそう、ほらこの間言ってたチェスターって奴によ。あいつ大怪我してたから…」

パンッ!!

アーチェの言葉が最後まで発せられない内に、乾いた音が家中に響き渡った。

「バカ!!…何てことしたのよ…あなたは……!!」

怒りながらルーチェの目には涙が溢れていた。

それをポカンと見ているアーチェ。何で叩かれたかもわからない様子だった。

「あの薬はね…人間には…猛毒なのよ…!」

かすれ声になっても搾り出すルーチェの声。アーチェはこの言葉を聞いてもすぐには信じれなかった。

「猛…毒…………!!」

やっと理解できた…自分がどんなことをしてしまったのか…

「お…お母さぁん…あ…あたし…あたし…」

アーチェの真紅の瞳から大粒の涙が零れ落ちる、次からどんどん溢れて止まらなかった。

嫌だ…チェスターが死んじゃうなんて…絶対に信じたくないことだった。
しかしそれが現実なのだ、そしてすでにタイムリミットは迫っていた。

「いい…?よく聞きなさい…チェスター君を助ける方法なら…1つだけあるわ…」

「ほ…本当なの?お母さん…?」

コク…とルーチェは頷く、しかし表情は絶望的なままだった。
「1つだけ…でもこれは確実じゃない上にとても危険なの…それでも…やるの…?」

アーチェの答えは決まっていた、まだ涙で塗れている目でルーチェに訴える。
「そう…わかったわ。じゃあよく聞いて…ここから東にある草原にレインボーリーフと言う
                薬草があるの。それを食べればどんな体の異常でも治せるのよ…」

その言葉を聞いたアーチェは心なしか少し安心し、
「な…何だ…それなら…」

「話は最後まで聞いて…それは伝説上の薬草なのよ…採りに行く人が助けに行く相手のことを凄く想っていなきゃダメなの…それに東の草原は毒蛇、ヘッジヴァイパーの巣…噛まれでもしたら数時間で死んでしまうわ…もし無事に辿り着いたとしても薬草はやっぱりただの伝説上の物かもしれない…本当に…それでも行くの…?」

成功する確率は0に等しい…それでもアーチェの答えは決まっていた。
「うん…あたし…行くよ…!」

「やっぱり…そう言うと思っていたわ…あなたの大好きなチェスター君のためだものね…」

ルーチェの言っていることはズバリ的を得ていた、しかし今は恥ずかしがっている場合じゃない。



自分の本当の気持ち…それを素直に表に出したい…あの時の気持ちは…自分に嘘を付いていたの…







相手が族長の息子だったから…いや…人間とエルフは結ばれない…寿命が違うもの…







だから私はリファネルさんと結婚の約束をした、同じハーフエルフ同士ならきっと…って思った。







でも、あたしはやっぱりチェスターが大好き。その想い…伝える前に終わるのは絶対嫌だ…!






「うん…!絶対…チェスターを助けてくるからね…!お母さん…!」

「明日行うはずだった結婚式のことは全部お母さんに任せておきなさい。…それよりも…タイムリミットは明日の日没までよ…!急がないと手遅れになるわ…!」

「わかった…じゃあお母さん…行ってきます…!」

アーチェはお母さんを不安にさせたくない一心で精一杯の笑顔で家を飛び出して行った。

(チェスター…絶対死なせなんかしないからね…あたしの想い伝える前に死んだら許さないから…!)

アーチェはチェスターへの熱い想いを胸に箒で東の草原まで飛んでいった。


(神様…どうか…アーチェと…チェスター君を救ってください…)

ルーチェは2人の無事をただただ神に祈るばかりであった…



~後書き~

えぇと…なんかシリアスな展開になってきたような気がします…
(皆様に「別に」と言われてしまえばそれまでなのですが)

何か読み返してみるとしょぼかったり…チェスターの心境って僕の作文力(?)じゃ力不足なんですね…

最後に今回も読んで下さった人達皆様有難うございました。

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