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天昇幻想~TOP 外伝~【1】


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第一章 夢

「俺は、これ以上人が死ぬのを見たくない...。」彼はつぶ
やいた。
少年は、主の間へ続く廊下で、力なく立ち尽くしていた。
ヴァルハラ平原制圧作戦は失敗、空軍部隊も90%魔科学砲で消
滅、という絶望的な自体だった。
いや、空軍部隊は魔科学砲のせいではない。
クレス.アルベインと名乗る剣士が、ペガサスに乗り込み、ほ
ぼ全滅させてしまった、というのが真実だ。
そして彼らの一行は、今彼の主...ダオスを打つべくこの城
に乗り込んできた。
彼は、さっきもつぶやいたように、見ず知らずの世界で殺戮を
望んではいなかった。
それなのに、彼は今、ダオスの間へ続く廊下の見張りをしてい
る。
それは一種の興味と、ともに託した約束があったからだ。
彼は一度魔界へ迷い込み、二人の少女に助けられた。
彼女たちとは無二の親友となり、彼女の友人たちとも交流を重
ねた。
親友たちはいつもこういっていた。
「人間の世界と魔界が対立することなく、共存する世界を作り
たい。」と。
彼らはどのような人間なのか、あって見極めてみたかった。
ひょっとしたら、ダオスを殺戮の道から救ってくれるのではな
いか、という希望すら見出していた。

「何たそがれてやがんだ、フォータ!ガラじゃないだろ、な!

「アレックス...」ダオス軍に入ってから、いつも面倒を見
てくれる、良き先輩である魔剣士の名だ。
言葉をどう返していいか判らず、ただ名前だけをつぶやいた。
フォータはしばらくしてまた、口を開いた。
「夢を...見たんだよ。
俺たちが苦労して手に入れた、大いなる実りを奪おうとしやが
った、9人の人間。
奴らは確かにこういった。
『お互いを犠牲にしあわないように、そして世界をひとつにす
るためにそれが必要だ、返してくれ』
もちろん俺たちだって命がけで手にした最後の希望だ、渡せる
わけがない。返してくれってのが気になるが...。
それで戦った。戦い始めたところで、夢は終わっちまった。
...目が覚めて、俺は理解した。あれは、俺たちがやってる
のはただの殺しだ。ってな。」
「へ~。おもしろい夢じゃないの。それで、お前はわかってい
ながらボーっとしてるってわけだな?」
「違うぜ、アレックス。おれは、クレスとか言う奴らに賭けて
みたい。
あいつらなら、世界樹ユグドラシル、そして俺達の星を救って
くれるかもしれないし、
どんなやつでも受け入れてくれるかもしれないだろ?」
「そうだな。俺も信じてみるぜ。おい、その夢に出てきた奴ら
に感謝しろよ?いつか会えるといいな。」
「ああ...。」フォータは力なく笑った

それが数時間前のことだった...。
俺たちは彼らにねじ伏せられていた。奴らは厳しく、強すぎた

「さあ、奥の扉の鍵を渡せ!」金髪の剣士...おそらく彼が
クレスだろう...が俺に剣を突きつけてきた。
終わったと思った。何もかも。だが、仲間の、彼女もまた金髪
だったが...。女性が彼を引きとめた。
「クレスさん、落ち着いてください。鍵を渡してはくれません
か...?」ヒーリングか何かの類の術をかけて、俺をまっす
ぐに見た。
「どうするんだ、フォータ?お前の好きにしな...。」アレ
ックスは微笑した。
俺は鍵を渡し、いった。
「これ、やるぜ。約束してくれ、ダオスさんに、殺戮の道は間
違ってる、それを教えてやってくれ。
俺たちは世界を滅ぼそうなんて考えちゃいない。でもよ、あん
たらがこのままダオスさんを倒したら、俺達の世界は滅びるん
だ。
...それを忘れないでほしいな。俺から詳しいことは言えな
いけどよ...。」
「あんたがフォータ?これ、ガールフレンドからの手紙だよ~
。」ピンクの髪の少女...ハーフエルフだとすぐわかった、
がそんなことを言って手紙を渡してきた。
「アーチェさんたら...。ごめんなさい。」
びびりながら俺は手紙を受け取った。すると、唐突に扉の向こ
うから声がした。
「お前の考えは、聞かせてもらった。しかし、私はこの選択が
間違っているとは思っていない。
お前はこれから世界をお前の目で見て、お前の選択が正しいか
どうか見極めるが良い。それが、お前に最善の道だ。」
その優しい声は、紛れもなくダオスのものだ。
俺は、その声にこたえることが出来なかった。そして、友の手
紙に目を通す。
―――すべてが終わったら、12正座の塔へ来て。そこで会いま
しょう。
コム・デュート
それだけ書かれていた。
「クレスさん、だっけか?終わったらよ、12正座の塔へ来てく
れ。」
「...わかった。もういくよ。」クレスは、そういって奥の
間へ走った。
俺は、そのまま誰につげるでもなく城を出た。
その横には、なぜかアレックスがいた。
「何でアレックスがくるんだよ?」
「言ったろ?大事な弟分に助言してくれた奴らを探してやろう
と思っただけさ。」俺は笑みをこぼして叫んだ。
「これからもよろしく頼むぜ!アレックス!」
続く

あとがき
始めまして、青龍王です。始めての小説です(滝汗)。
ファンタジアの外伝として書いています。
ギャクものではいっつも突っ込みかボケに回ってるダオスガー
ドにスポットを当ててみました。
ファンタジアの外伝ですが、後半では、アノ人たちも敵として
登場予定。
いつできるかわかりませんが...。ご感想お待ちしておりま
す。

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