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紅の記憶【2】

―失ったと思ってから、

もう離したくなんて なかったんだ






“ 紅の記憶 ”

―想いを紡ぐために―







リアはあたしが髪を束ねていたリボンを

ゆっくりとほどいた。




(アーチェ・・)

「?」



(私、アーチェにあこがれてたの。)

「え、そうだったの?」


(うん。)




リアが見せる仕草は、

思い出のままのものだった。



(アーチェがうらやましかったんだ・・・)


リアは、

アーチェの思い出を紡ぐように

今まで起こってきたことを

ぽつりぽつりと、

話してくれた・・










(アーチェは明るくて、元気いっぱいでさ)



ずっと探してた記憶だった。


(引っ込み思案な私も、いつかアーチェみたいに、)

(堂々と生きていきたいなって)




「うん」


(そう・・思ってたんだよ)


すると、リアもまた髪を結んでいたリボンをほどき、

手にのせて、

(・・・ほら)


アーチェに見せた。




それは、アーチェを意識したものであるように、

長さ、太さ、色、手触り


ほとんど違いがなかった。



(まねしてたの、アーチェは嫌がるかもしれないと思ったけど。)



「・・」

(ごめんね?)



「・・・・」



(・・・怒ってる?)




「うん」


(えぇっ、あっ、・・ご、ごめんね!)



・・リアが謝ってる。


「やだ」

(ほんとにごめんねっ・・悪いとはおもってたの!・・)


「・・やだ」


(アーチェがお母さんにもらった大事なものってことは、知ってたし・・)


(・・ぁ・・本当にごめんっ)





もう聞くことの出来ないと思ってた、



リアの心だった。



「・・・」


ぺこぺこ頭をさげて謝るのも

彼女らしさだった。



(ごめんっ、アーチェに嫌われるのはわかってた・・・けど・・)



(ごめんね・・?)





リア。




(でも、でも・・・)




・・リア。






リアがあたしの紅(あか)の瞳を

じっと見つめる。



あたしもリアの目に映る自分の姿を確認した。















 『私リアっていうの。あなたは?』

 「わたし?アーチェ・クライン!」

 『仲良くしてね?』

 「うん!」



 「“リア”ってさ綺麗な名前だね!」

 『ありがとアーチェ!』



 「もしもあたしがいなくなっても、忘れないでね。」

 『うん。わすれないよ!』







 「・・リア!!」

 『・・・・・』

 「どうしたの、しっかりして!・・なにがあったの!」

 『・・』

 「リア!・・起きてっ!リア!」

 (・・アーチェ・・?)

 「リア・・!?」

 (へへ・・あたし、しんじゃった。)

 「リア、なんで・・」

 (アーチェ、あたしのお願い聞いてくれる?)

 「な・・なに・・?」

 (私に、アーチェの体貸してほしいの。)

 「・・え・・」

 (お父さんとお母さんを・・・)

 「・・り・・、リア?」

 (・を・・・・・ろした・・許せ・・ない・・)

 「待って・・!リアはもう・・」

 (ごめんね、アーチェあたしがさきに、いくことになって)

 「リア、・・」

 (もしかしたら、また会えるかもしれないから)

 「・・いいよ、リア貸してあげる。」

 (・・ありがとう、アーチェ)

 「ちゃんと返してね・・?」

 (アーチェ・・・今度会えたら、ちゃんとお礼いうから・・!)

 「うん。」

 (・・・怖い?)

 「少しだけ・・。」




 (アーチェ、一人が怖くなってもあたしはそばにいるよ)











あたしは、

あの時から



(私ね、アーチェのことが)






もっともっと前から、



初めてあった時から









(ずっと)




今も。











(アーチェが大好きだったの・・・。)




―リアがだいすき
















リアはそういって

あたしの手を離し、

顔にてを当てると


声にならない 声で、何度もいった。

それを何度も


何度も


繰り返した。






あたしは彼女の手から零れ落ちた涙が

白い地面をぬらしていくのを見て、




視界がぐにゃりと歪むのを感じた。

それは、何かがあたしの瞳から溢れていくことを


あたしに知らせているようで、





とても苦しく、



まだ彼女を忘れられていなかったことを

痛感させられた。








―二本のリボンが


そっと地におちる。



それは吸収されるように


白く 消えた―







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