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デミテルは今日もダメだった【18】

第十八復讐教訓「夜中に甘いもの食べると体に良くないよ」


その日は、それはそれは綺麗な夜空だった。

月は三日月、そこから放たれし月光は、満月程ではなくとも、地表を妖しく照
らしていた。

そんな日の、とある屋敷の二階のベランダに、その男女はいた。二人で月を見
上げ、片手にはティーカップを携えながら。

「お誕生日おめでとうございます。リアお嬢様。」
「うん。ありがとう。」

その日、リア=スカーレットは七歳の誕生日を迎えていた。白いワンピースを
着て、長い髪を結んでいる。

つい先程まで、リアの誕生日会が行われていた。出席者は、父ランブレイと、
母ネリー、使用人デミテル。


そして、女の子の友達が五人程。


デミテルとリアが約束をしたあの夜、「他人に甘え、頼ること」という約束を
した日から、すでに半年が経っていた。

 その、約束の夜の次の日の朝食の席にて、ウインナーとピーマンのケチャップあえを目の当たりにした彼女は、一言こう言った。

「私・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ピーマン嫌い。」

その一言にスカーレット夫妻は驚愕した。今まで好き嫌いなどまったくない子
供と思っていたからだ。どうやら彼らの六歳の娘は親にばれないよう、いつも吐
きそうになりながらピーマンを食べていたらしい。

「・・・あー・・・えー・・・」

ランブレイは困惑した。好き嫌いは良くはない。だが、今まで彼女が自分達に
わがままを言ったことは滅多になかったし、なにより父ランブレイは「ピーマン嫌い」と言った娘がかわいくてしょうがなかった。

そして、次の一言が、娘に甘えて欲しくてたまらなかった男、ランブレイ=ス
カーレットのハートに火をつけた。

「お父さん・・・・・・・・・ピーマン・・・残していい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・しょうがないなー♪今回だけだぞぉ♪今日はお父さんがリアの嫌いなピーマ
ンを食べてあげよう♪」

するとリアは、今まで見せたことがない満円の笑みでこう言った。

「ありがとうお父さん♪」


これだああああああああああああああああああ!!これが私がずっと妄想し続け、
憧れ続けた娘とのコミュニケーション!!かわいいわがままを言う娘に、父であ
る私が「しょうがない奴だ」的なセリフを言う!こういうことを私はしたかった
んだああああああ!!

ランブレイは片手に握り拳を作り、感激のあまり感動の涙を流していた。母ネリーはその様子を呆れながら眺め、デミテルはウインナーに食らいつきながらその様子を苦笑しながら見ていた。

人は新しいことに挑戦するのはかなり勇気がいるものだ。だが、一度やることができればそうではない。その日からリアは好き嫌いを言ったり、オモチャをねだったり、
「わがままを言える子」になった。

やがて、屋敷に友達を呼ぶようにもなった。友達となった経緯を不明だが、と
りあえず「リアが困っているのを助けてくれた人」で成り立っているらしい。

「あの時にね・・・」

ベランダの柵に体をもたらせ、三日月を見上げながらリアは出し抜けに言った
。その声は今までと違い、はっきりと力強い口調だった。

「あの時、『誰かに甘えること、頼ること』を教えてくれなかったら、私、友
達なんてできなかった。私ね、今まで誰かに助けられそうになると、すぐその場
から逃げてたの。人に迷惑かけたくなくて。」

リアは、紅茶をクイっと飲んだ。夜風で、結ばれた長い髪が揺れた。

「でも私、言う通りにやってみたの。救いの手に甘えてみたの。そしたらね、
友達ができたの。ある子はお使いで買ってきたリンゴを道に落としちゃったのを
一緒に拾ってくれた子。ある子は、道で転んで膝を擦りむいた時にバンソウコウ
をくれた子、ある子は・・・」


・・・なんだかんだでおっちょこちょいなんだなこの子・・・


リアの話を聞いていて、十歳の少年デミテルは正直思った。

「デミテルさん?」
「なんですか?」
「デミテルさんも、前住んでたところじゃそんな風に友達作ってたの?」
「え・・・・・・」

友達などいなかった。いたのは、後ろ指を指し、『変な髪~』とからかってく
る奴らだけ。

「・・・いませんでした。」
「え?」
「あんな偉そうなこと言っといてアレなんですけど、友達なんて一人もいませ
んでした。いたのは、僕の髪を指さして笑う奴らだけでした。」
「そうなんだ・・・」

リアは、デミテルの赤く染まった前髪を見た。

「私は好きだなぁ・・・その髪・・・」
「・・・いいんですよ。気を使わなくて。ホントはおかしいとおもってるんで
しょう?」
「ううん。そんなことない。私はその髪好きだよ。ホントだよ。」

リアはにこやかに言い切った。デミテルはなんだか慣れない状況に赤面した。

「・・・ねぇ・・・」
「はい・・・?」

赤面し、リアから目を反らしていたデミテルは視線をリアに戻した。

デミテルはビックリした。彼女が今までにない、愛おしい目でこちらを見上げ
ていたからだ。


な、なんだ!?この、何か物欲しそうな目線は!?


デミテルはその視線にドキドキした。七歳の女の子の目線にドキドキする自分
の趣味を疑った。

「あの・・・」
「は、はい・・・」

かなりの間があった。デミテルはこの間がものすごく長く感じて、このまま地
球の寿命が来てしまうんじゃないかとさえ思う程だった。

「私・・・・・・」
「は、はひ・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・ケーキ食べたい。」
「・・・・・・は?」

 デミテルは口をあんぐり開けた。

「パーティーで食べたバースデーケーキってアレ、まだ残ってたよね?明日食
べようかって思ってたけど、やっぱり今食べたいの♪キッチンから持ってきてく
れない?使用人さん!」

デミテルは目をパチクリさせた。拍子抜けしたのと、何かを期待した自分に嫌
悪感と吐き気に襲われた。

「お嬢様・・・もう夜更けですし、夜中に甘い物は体によくありません。」
「やだ。」
「イヤイヤ。やだじゃなくて・・・」
「やだ。食べたい。ケーキ。イチゴのケーキ。」
「・・・・・・・・。」


・・・わがままを言わない子供のままの方がよかったな・・・


少年は、今更になってあの晩の約束を後悔した。

「・・・じゃあ小さいやつで我慢してくださいよ・・・」
「わぁい♪ありがと♪」
「はいはい。」

もしこのままいって、この子が超わがまま娘に育ったら、やっぱ僕のせいだよ
なぁ・・・

そんなことを思いながら、使用人の少年はキッチンへと向かっていった。


・・・でも

 以前よりずっと明るくなったな・・・


・・・・・・・・・・・・


また嫌な夢を見てしまった・・・ってこのセリフも何度目だか・・・


夜空に浮かぶ三日月を見上げながら、デミテルは目を覚ました。周りには崩れた家々が連なっている。


ハーメルの街跡。その、瓦礫の山と化した場所にデミテル達はいた。


デミテル達は水の精霊ウンディーネに出会う為、ユークリッド大陸を北上して
いた。途中、ユークリッド村などを経由して。

ウンディーネは浸食洞というところに住んでいるというのは、前回同様フトソンの情報
だった。かつて彼の祖父は、浸食洞で「新食堂」という名の定食屋を開いていた
らしい(当然客足はなく、三日で閉店したらしいが)。そこで彼の祖父はウンデ
ィーネに会ったらしい。デミテルは胡散臭い話だと正直思った。

浸食洞に行くには船がいる。船はベネツィアにある。ベネツィアに行くには・
・・

どうやっても、ハーメルを通らざるをえなかった。


 ※ユークリッド村を出てすぐの会話

『どうしても通らんといかんのか?』
『ハーメル通らないとベネツィアに行けないんだな。』

『「ベネツィアまでパッと行きますか?」的な選択肢はないのか?』
『とうとうデミテルさんまでもが世界観のぶち壊しにかかったんだな・・・』

『ねえねえ知ってたぁ!?デミテル様ぁ?テイルズの新作が出るんだよ・・・』
『ちょっとぉ!!これ以上世界観ぶち壊さないでよアンタらぁ!!』


そんな感じでハーメルに辿り着いたデミテル達だったが、着いた時にはすでに
日が傾いていた為、ここで野宿をせざるなくなってしまった。


潰れた家。崩れ、瓦礫となった屋根。死体はなかった。誰かが回収したのだろ
うか。

デミテルは、崩れて壁だけとなった家の残骸にもたれて座り、眠っていた。そ
の左手にリミィが、右手にはフトソンが眠っていた。

デミテルはゆっくりと立ち上がった。そして、自らが滅ぼした街を、ゆっくり
と見回した。


これは・・・・・・私がやったんだよな・・・


後悔はしていない。後悔などしてはいけない。それは、自らの敗北を意味する
。一体なにに敗北するのかわからないが、とにかくそれだけはしてはいけないの
だ。

今でもわからない。自分がこの街を滅ぼした理由が。スカーレット夫妻だけを
殺すことが私の使命だった。それだけが使命だったのに。それだけが、ダオス様
が導いてくれたことだったのに。

なぜ


 なぜ私は・・・


この第二の故郷を滅ぼしたのだ・・・


「まだ起きてたの。」

ふと、デミテルの肩から声がした。見れば、目を翼でこすりながら、ジャミル
がこちらを見上げていた。

「貴様こそまだ起きてたのか。インコは鳥目だから夜は何も見えないんじゃな
いのか?」
「・・・まぁはっきり言って、アンタのうっすらとした輪郭しか見えないわね
。あと、好きで起きたわけではないから。夜更かしはお肌の大敵・・・」
「鳥がお肌気にしてどうするんだ。どっちかっていうと、羽毛を気にしろ。毛
並びを気にしろ。あと筋肉・・・」
「なんで筋肉なのよ。」
「イヤ・・・肉が引き締まってた方が美味しいかと・・・」
「非常食であることを前提で話すな!!」

ジャミルは耳元でピーピー喚いた。デミテルはうるさそうに耳に指を突っ込ん
で防音した。

「・・・ところで、この街はアンタがやったのよね?」

一通り喚いたあと、月明かりに照らされた瓦礫の山々を見渡しながら、ジャミ
ルは言った。

「そうだ。私がやった。」
「ふーん。で?なんでやったわけ?ダオス様の命令で?」
「ん?・・・イヤ、特には・・・」

自らが誰かに尋ねたい問いをジャミルに言われ、デミテルは返答に困ってしま
った。その様子を、ジャミルは淡々と見つめていた。


ダオス様に操られるということ。それは、自分の意志を持ってるつもりでいて、持っ
ていないということ。おそらくコイツがこの街を滅ぼしたのは・・・


 ジャミルは知っていた。ダオスに操られることにより生じる作用について。


スカーレット夫妻を殺害してからダオス様になんの命令ももらえなかったこと
に対する八つ当たり。ただそれだけ。それだけなのよ。アンタがここを滅ぼした理
由は。

理由なんてない。操られることによって生じる破壊衝動に身を流しただけなの
よアンタは。

・・・・・・・・・。

・・・哀れな男・・・

「・・・アンタにとって、この街は何だったのよ?昔ここに住んでたんでしょ
?」

ジャミルの先程の質問に何とか答えようと、ずっと頭を捻っていたデミテルは
、急に変わった質問にまたしても戸惑った。

 デミテルはウーンと唸ったのち、こう答えた。

「・・・ただ住んでいただけだ。大して何かがあるわけではない。」
「そう・・・」
「・・・だが」

デミテルはゆっくりと、もと寝ていた場所に戻り、座り込んだ。

「あとにも先にも・・・・・・ここほど心が休まったところはない。大事な場
所ではあった・・・」
「へぇ・・・・・・・・・じゃあ、コイツらは?」

ジャミルはデミテルの横で眠りに更ける、白いデカブツと、小娘を見下ろした。

「は?」
「コイツらはアンタにとってなんなわけ?」
「・・・コイツらは」

デミテルは頭をボリボリとかいたあと、すやすやと眠るリミィとフトソンを見下ろしながら、平然と言い切った。

「ストーカー少女と図体がでかい食欲馬鹿。」
「・・・・・・あぁそう。」
「だが・・・」

デミテルは先程と同じように話を繋げた。

「・・・やはり迷惑以外の何者でもないな。まったく。」
「・・・・・・・・。」

ジャミルは質問をした自分が馬鹿らしくなった。

「・・・だが」
「まだ何かあるの?」
「・・・一緒にいて飽きない奴らでは・・・あるな・・・。」

デミテルはゆっくりとまぶたを閉じた。ジャミルはその寝顔をチラリと見たあ
と、同じくゆっくりとまぶたを閉じた。まだ残っていた、言いそびれてしまった
もう一つの質問を胸に。


・・・アタシはアンタにとってなんなのよ・・・


・・・・・・ってどーせ、『非常食』って即答するに決まってるか。あほらしい。

夜風が吹く中、デミテルはまた夢の中に沈んでいった・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・あの。」

道具屋『RAM』。薬や道具、マトックやロープも売っている、かなり品揃え
の良い店が、ハーメルにはあった。店の名の由来は、店主の名『リチャード=A
=マッキンタイア』の頭文字からとったらしい。

少年デミテルは、よくここにお使いを頼まれていた。ほとんど必要なものがな
んでも揃っているので、何かが足りなくなったらとりあえずここにこれば問題な
いからだ。

いつもは店主であるリチャードがカウンターに、その妻が店内を歩き、客に商
品の説明、及び店の名前についての解説をしていた。

だが、今日は違う。デミテルがロープ、ランブレイの研究に使う試験管、料理
に使うオタマを買いに来た時、カウンターにいたのは、一人の少年だった。

背はリアと変わらず、おそらく七、八歳だろう。まるで夜のような真っ黒い髪
、前髪は短いとも長いとも言い難い、いわゆる中間ぐらいの長さ。襟足とモミア
ゲは刈り上げられ、本当に田舎ならどこにでもいそうな頭だった。顔も特に特徴
はない。あえて言うなら、少々目が鋭く、切れ目な感じだった。

デミテルが買う物を持ってカウンターに向かうと、少年はどこかモジモジしな
がらデミテルから代金を受け取った。


なんだか妙な子供だな・・・


カウンターに背が届かないため、高い椅子に座りながら代金を計算する少年を
見つめながらデミテルは思った。

「あの・・・」

おつりを受け取った時、少年は唐突に話しかけてきた。顔を赤くしながら。

「なんですか?」

デミテルは使用人として働くうちに、誰が相手でも自然と敬語で話し掛けるよ
うになっていた。

「・・・お兄ちゃんて・・・アレ・・・スカーレットさん家の使用人だよね?」
「・・・そうですが・・・」
「あの・・・あの子・・・・・・・・・リアちゃん・・・」
「お嬢様がどうしましたか?」

デミテルは怪訝そうに首を傾げた。少年は不安げにあごの裏をボリボリかいた。

「こ、この前教会で・・・その・・・イスに足をひっかけて転んで、膝擦りむい
てたみたいだけど、だ、大丈夫だった?」
「ええ。師匠・・・ランブレイさんは『娘が出血したぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
ってヒステリック起こしてましたけど、たいしたケガじゃなかったです。」

この街には学校がない。子供達は皆、教会で牧師から勉強を教わっていた。

「・・・あの」

少年はうわずった声を発しながら、あるものを取り出した。

「コレ・・・消毒薬・・・売り物なんだけど・・・コレ使えば傷口に入るバイ
キン防げるよ・・・」

デミテルはどこか乳白色をした液体が入った小瓶を、そっと受け取った。

「ありがとうございます・・・いいんですか?売り物を勝手に・・・」
「ど、どうせ売れ残りだから・・・あ!ぼ、僕からだってことは伏せて渡して
ね!お願いだから!!」

少年は手をバタバタ左右に振りながらお願いした。デミテルは少年の考えてい
ることが、はっきりとわかった。

デミテルは試しにこう言ってみた。

「直接渡せば・・・」
「ダ、ダメだよ!!ぼ、僕別にあの子の友達でもなんでもないし!ただ教会で座る椅子が隣りなだけ・・・」

そう言い終えると、少年は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。デミテルは
フーとため息をつくと、少し笑いながら出口に歩いていった。扉を開くと、振り
向いてこう尋ねた。

「君の名前は?」
「あ・・・アーロス=A=マッキンタイア・・・」
「じゃあアーロス君。君からの贈り物だということはお嬢様には言わないでおきましょう・・・ただし、瓶に君の名前を書いておきますがね・・・」

アーロスが引き止める間もなく、デミテルは店を出ていった。ニヤニヤとしな
がら。

 七歳の恋する少年アーロスは、カウンターに突っ伏し、うなだれていたのだっ
た。


・・・青春だなぁ・・・でもやっぱり男の友達も必要だよなぁ・・・お嬢様には・・・


そんなことを考えながらデミテルは屋敷へと歩いて行った。


今の彼にとって、リア=スカーレットは『ただの雇い主のお嬢様』以外の何者でもなかったのだった。


つづく


超不定期連載!サラリーマン リド=キャスパールが行く!
第二仕事「戦争の理由」


前回のあらすじ
キャスパールと影田課長は、ダオス城に乗り込んだ!全ては注文を取る為に!!


ここはダオス城接客の間。ミッドガルズと戦争直前のここに、『モンスター派
遣雇用センター』の二人は来ていた。

キャスパールと影田課長の前には、あの魔王、ダオスが座っている。

あのダオスとスーツ姿の二人組が向かい合って座っているのだから、中々すご
い光景である。

「えーと、では、電話口で受けた注文の確認です。ドラコケンタウルス百五十
体、ゲイズハウンド三百体、他もろもろ・・・・・・あとシルバードラゴンを五十
体ですね。既に何匹かはこちらに輸送中です。」
「・・・そうか。早急に頼む。」
「課長~♪すごいッスねこの城♪内装とかこれどうなっちゃってんですかね?」

大物相手の契約にかしこまる課長をよそに、新米社員キャスパールはウキウキ
とはしゃいでいた。

「ユミス先輩と来たかったなぁ~ここぉ~♪」
「おい!お客様の前でどういう態度をしとるんだキャスパール!?給料しょっ
ぴくぞ!?」
「え~だって、課長言ったじゃないスか?『固くなりすぎるとお客様もお客様
の財布の紐も固くなっちゃうから、リラックスしとけ』って。」
「お前はそれリラックスしてんじゃなくて堕落しきってんだよバカ!つーかお
客様の前でそんなこと言うな!」
「ねぇお客さん?なんで戦争なんてするんスか?わざわざこんな大金はたいて
?戦争程無駄に金も命も失うもんはないッスよ?」

影田課長は顔面蒼白になった。大金をはたいてくれる客(しかもダオス)に向かって『なんでそんな金使ってまで戦争やるの?』なんて聞いていいわけがない。

影田課長は契約破棄を覚悟した。そして家にいる妻子のことを思った。


貴子・・・私はもうダメだ・・・こんな大口注文を逃して、私のクビが繋がる
わけがない。まだローンが三十年残ってるのに・・・長女の娘も大学受験控えてるっ
てのに・・・もうお父さんはダメだ・・・もうこの小説の題名を『影田吉男は今
日もダメだった』って感じにしちゃっていいくらいダメだ・・・・・・そういえ
ば最近加齢臭がするって娘が・・・しかも娘にギャル男の彼氏があぁ・・・

「お前は・・・」

どんどん顔色が蒼白から土気色に変貌していく課長をよそに、ダオスはキャス
パールの疑問に対応した。

「お前は・・・今まで喧嘩をしたことがあるか?」
「え?はい。」
「喧嘩というのは何かの仇を討ったり何かを護るためにするものだ・・・・・・
・・・私はその二つの理由を持ち合わせている。だから戦う・・・戦争をする・
・・」
「へぇ・・・でも、」

キャスパールはネクタイをいじりまわしながら言った。

「喧嘩っていうのは、基本サシでやりあうもんだと思うんだけどなぁ・・・他の生き物まで巻き込んでね・・・迷惑この上ないっスね♪」
「フ・・・そうだな・・・」

ダオスはほんの少しだけ微笑んだ。課長は土気色から蒼白に戻っていっていっ
た。

二人は城を出た。

「全く!お前の要らない発言のせいで私の脳細胞が不安で腐敗し始めるところ
だった!」
「毛根は元から腐敗してますけどね♪」
「二話連続で私の死んだ毛根の話をするなぁ!!あいつらはもう天寿を全うし
たんだよ!!力強く生き抜いたんだよぉ!まったく・・・これ以上何か不安なこ
とが起きたら、次は何か病気になりそ・・・」
「あ。そういえば城出る間際に、課長がトイレ行ってた時にケータイに電話き
たんですけど、ここに運ばれてくる予定だったシルバードラゴンを一体積んだ輸
送船が沈没したそうですよ。これって俺らの責任になるんスかねぇ?」

キャスパールはヘラヘラと言ったが、影田課長はまたしても顔面蒼白となって
いた。

 ・・・デミテルは知る由もないが、いずれこの新米サラリーマンがまたしてもデミテルに災難を振りかけることとなる。

続いて欲しいどこまでも

あとがき

第十六復讐教訓での質問、「リド=キャスパールは最近何してますか?」というtauyukiseさんの質問に上の文章で答えさせていただきました。

三十分で書きました。

まさかリド=キャスパールに関心を持ってくれる方がいるとは思いませんでした。

自分の記憶が正しければ、この男の名前は二秒で考えました。たぶん。

奴はこれからも気ままにサラリーマンやってくと思います。そして影田課長は近いうちストレスで過労死すると思います(大体なんで影田課長だけ名前が日本名なんだ・・・)。


話は変わりますが、オリジナルキャラを小説に出すのは勇気が要りますね。おもしろくなくなるんじゃないかなって不安になりながら今日も自分は執筆しております。
あ、でも道具屋『RAM』はゲームにホントにあります。店長もホントに名前が『リチャード=A=マッキンタイア』です。会うことがあったら挨拶してやって下さい(お前はリチャードの何なんだ)。

次回 第十九復讐教訓「御飯はやっぱりテーブル囲んで家族団らん」

コメント

おはよう、こんにちは、こんばんは
リドについて質問したtauyukiseです。
こんな内容を30分程度で考えられるなんてすごいですね。漫画家ではないですが漫画のネタがこのくらい早く思いつけばどんなに楽かと漫画家は思うでしょう。
しかし、最近シリアス系なネタが続いていると思いますねと、そんなことを思いながら小説を読んでいました。別に文句ではありませんけど。
オリキャラのでるテイルズ小説はほとんど読まない自分なんですけど、なぜか、デミテルだけは自然と読めちゃうんですよね。なんででしょうか?
ゲームのストーリどおりに進むと中盤あたりでしょうか、過去の。これからどのように話が進むか楽しみにしています。
最後に、気づいたらそろそろ復習教訓が第二十代に突入しちゃうじゃないですか。
まぁ、こんな感想をぐだぐだとかいたので、
長文乱文間違えた文章があるかもしれませんが、ここで失礼させていただきます。

今回はリミィが喋らず、静かな仕上がりでしたね。
ジャミルとデミテルの、大人のやりとりが
何だかよかったです。

そういえば自分は、オリキャラの出てくる二次創作は
許せない人間だったはず…
かつては二次創作自体「邪道だ」と言って読みませんでした。
それがいつしか二次創作を許せるようになり、
オリキャラの登場する小説を読むようになっている…
段々寛容になってきたと言いましょうか、
節操が無くなってきたと言いましょうか………
この小説も、気にせず読ませていただいてます。

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