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デミテルは今日もダメだった【22】

第二十二復讐教訓「相手が誰か忘れたときは 適当に相槌しとけば大丈夫」

「・・・空が青いぜ・・・ベイベー・・・」
「いきなり何意味不明なこと言ってるんだなアンタ?」
「うるさいな・・・いっぺん言ってみたかっただけだ・・・」

サンサンと照り付ける太陽の下、デミテルはブツブツと言った。

ここは大海原の真ん中。デミテル達一行は浸食洞を跡にし、ベネツィアに戻る
為の船に乗っていた。海鳥がデミテル達を大空から見下ろしながら飛んでいる。

デミテルは船の一番先のところでたたずんでいた。その横でフトソンが暇そう
に頭に一本だけ生えたクルクルした毛をいじっていた。

「それにしてもアレなんだな。結局どの精霊とも契約できなかったんだな。骨
折り損のくたびれ儲けもいいとこなんだな。」
「まぁな・・・まぁ、強力な呪文書が手に入ったのはなかなかラッキーではあ
るがな・・・私に使いこなせるかわからんが・・・」

デミテルは右手に『エクスプロードの書』、左手に『ダイダルウェーブの書』
を持ちながら言った。

フトソンは不思議そうにデミテルの手にある、相対した色合いの本を見つめた。

「こういうのって、エルフの血さえ引いてれば誰でも使えるわけじゃないんだ
な?」
「ああ。たいていのエルフ、ハーフエルフは人並みの鍛練さえすれば中級呪文
までは誰でも扱える・・・だが、」

デミテルはダイダルウェーブの書を開き、中を覗きながら言った。

「このレベルまで来ると・・・才能に左右される。」
「じゃあとっとと売っちゃった方がお得なんだな。」
「・・・ちょっと待て・・・私は才能に左右されるとは言ったが、私に才能が
ないとは言っとらんぞ?」
「あー大丈夫大丈夫。どうせ無いに決まってるんだ
な♪」
「・・・・・・。」

デミテルはフトソンの顔面にアイスニードルをぶち込んでやりたかったが、何
とか思いとどまった。

デミテルは何とか気を落ち着かせた。

「まぁアレだ・・・そんなことはさておき、これからの我々の行動についてだ
が・・・」
「デミテル様ぁ~♪」

後方から楽しげな声が聞こえたかと思うと、デミテルはハァっとため息をつい
た。

リミィが笑顔でこちらにとっとこ走って来ていた。見れば、右手に何かを握り
絞めている。

「何だリミィ?」
「見て見てぇ!変なの拾ったぁ!」
「またスケベ本じゃないだろうな・・・っというか、本当にそれはなんだ?」

デミテルはリミィが握り絞めている物体を眉を潜めながら見た。

それは太く、長かった。全体が真っ黒で、何かウニョッと動いていた。

「これはねぇ・・・」

リミィはもったいぶりながら、こう言い切った。

「ナメコ♪」
「・・・・・・。」
 「・・・・・・。」


ナメコ・・・ナメコってアレか・・・?みそ汁とかによく入ってる・・・アレ
って海にも生えるキノコなのか・・・・・・・・・・・・・・・って


「おいリミィ・・・」
「なぁにぃデミテル様ぁ?」
「それは・・・ナメコじゃなくてナマコだ・・・」
「えぇ!?違うよぉ!!ナメコだよぉ!正真正銘ナメコだよぉ!」
「ナメコがこんなとこに生えるか!っというか何で船の上にナマコが落ちとる
んだ!?海底に巣食う生き物だろうが!?」
「多分アレだよぉ・・・・・・家出したい年頃なんだよぉ・・・それか毎日の
ように繰り返される夫婦喧嘩に嫌気が・・・」
「ナマコの家庭問題なぞ聞いたことないわ!どういう想像力しとるんだお前は
!?」
 「・・・というか・・・ナマコを平然と鷲掴みするリミィもある意味すごいん
だな・・・」

ナマコをがっちり握り締めるリミィの拳を見ながら、フトソンは呟いた。ナマ
コは強く握り締められ過ぎてグッタリしていた。

「絶対ナメコだもぉん!」
「だからナマコだ!」
「二人ともそんなしょうもないことで喧嘩してどうするんだな・・・・・・こ
こは間をとってナムコで・・・」
「何の間だ!?それは販売元の会社名だろうが!?」
「そうだよダメだよフトソォン。きちんと『バンダイナムコゲームス』って呼ばな
いとぉ・・・」
「どうでもいいわそんな訂正!」

その時、デミテルの頭の上に何かがバサッと乗った。

 ジャミルはデミテルの頭の上でハァっとため息をついていた。

「アンタら一体何の話してんのよ・・・」
「黙れインコ。焼くぞ。」
「ちょっと!前にも聞いたわよそのセリフ!」
「うるさいんだなジャミル。煮込まれたいんだな?」
「煮られんのも焼かれんのもイヤよ!!」
「うるさいよぉジャミンコぉ。アレだよ・・・・・・・ほら・・・・・アレす
るよぉ?」
「アレするよってどれするよ!?」

そんな話をしているうちに、ナマコは着実に衰弱していくのであった。


―1時間後―


「ハァ・・・ハァ・・・では議論の結果をまとめるぞ・・・私は今日から『
ナメコじゃなくてナマコなんだよ委員会』の委員長で、リミィが『焼鳥のメニュ
ーのスナキモは美味しい店とそうでない店がハッキリ別れると思う人友の会』会
長で、フトソンが『変な着ぐるみを着た変態のオッサンは一見変態に見えるが思
った以上にピュアでガラスのようにもろいハートなんだよ連盟』の突撃隊長で、ジ
ャミルが『突き放してるつもりで実はそれが愛情表現なのよ!愛は地球を救う団
体』のツンデレ隊長ということで・・・・・・異論はないか?」
「とりあえず・・・しばらくは・・・そんな感じでいいと・・・思うんだな・
・・」
「でも・・・これで・・・安心・・・だねぇ・・・♪」
「そうね・・・これで安心・・・って何がよぉぉぉ!?」

危うく空気に飲まれそうになりながらも、ジャミルは何とか思いとどまった。

「なんで一時間もかけた息切れを起こすほどの白熱した議論を重ねた結果がこ
んなことになるのよ!?っていうかアタシの何!?ツンデレ隊長って何!?何の
隊の長なのよ!?」
「ツンデレであることは否定しないんだな・・・」

フトソンがボソッと言った。ジャミルが何か言いかけたその時・・・

・・・男が何故男か知っているか?それは戦うためさ。戦いの中に生き場所、
そして死に場所を求めてさ迷い、その中を生きていくのさ・・・

「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」

突如聞こえてきた、何とも言えない言葉にデミテル達は言葉を失った。

言葉を失ったのはデミテル達だけではない。船に乗る船員達もまた、突如聞こ
えてきた何とも言えない言葉に動きを止めた。

言葉はさらに続く。


男には負けられない戦いがある。己の全てをかけた戦いが。

では敗北したらどうするか?何度でも戦うに決まってるじゃないか!?男は皆
復讐者さ!


「デミテルさん・・・」
「なんだ。」

デミテルはアオスジを立てながらイライラと答えた。この何ともキザで、なぜ
だかストレスがたまってくる演説を聞いているうちに、彼の血圧は徐々に高まっ
ていた。とにかく何かイラッときて堪らない。

フトソンは無言で、甲板の隅に何個か置かれている、人一人ぐらい入るサイズの
樽を指差した。

指差した先の樽は、小刻みに震えていた。

「この声・・・あの中から聞こえてくるんだな・・・」
「そうか・・・では・・・」

デミテルが一差し指を唇にそっと当て、ブツブツ唱えているのをよそに、樽は
語り続けていた。段々とテンションが上がっていっている。


俺はかつてある戦いをし、そして敗北した。だが、俺は一度の敗北では堕ちた
りはしないのさ!いざ!復讐という名の聖戦を、今!ここで!!繰り広げようで
はないかぁ!?我が名は怒涛の復讐者、ジャ・・・

「アイスニードル!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!?」

樽の側面の至る所に氷の針がブスブスとつき刺さったのと同時に、中にいた男
は苦痛の悲鳴をあげながら飛び出した。

「うわぁい♪『ク〇ヒゲ危機一髪』みたぁい♪」
「イヤ・・・アレはハズレに剣を刺したら体が飛ぶけど、これはどこ刺したっ
て飛ぶわよ。」

リミィの頭に乗りながら、ジャミルは淡々と言った。


飛び出して来た男は人間ではなかった。人に近い形姿であったが、肌は灰色、
顔はまさに悪魔のような顔で、背中にはコウモリのような翼、骨格だけで出来た
ようなトゲトゲしい輪郭・・・

顔には傷、手には槍があった。

デミテルは眉をひそめた。どこかで見たような気がしないでもない。

男はふくらはぎに刺さった氷の針をバッと抜くと、甲板の上に叩きつけた。

「オイふざけんなぁ!人がせっかくかっこよく登場しようとしてんのに、なん
だよコレ!?なにこの仕打ち!?ぶち壊しにも程があるっつうの!!」

男はキッとデミテル達を睨みつけると、手の槍をデミテルにビッと向けた。船
の船員達は何事だとたむろっていた。

 「まぁいい・・・改めていくぜ!!こういうこともあろうかと不足の事態に備
えた台本は用意してんだ!!」
「台本・・・」

デミテルはボソリと呟いた。男はニヤリと笑った。

「フ・・・お前ら俺が誰かぐらいはわかるだろ?さあ!俺の名前を言ってみな
!?」

男は依然槍を向けながら、自信たっぷりに問い掛けた。

誰も、何も喋らない。デミテルは顎をポリポリかきながら唸り、フトソンは腕
を組みながらウンウン唸り、リミィもフトソンの真似をしてウンウン唸っていた
。ジャミルに至っては、ただボーっとしていた。

デミテルはかなり頭を捻って捻って捻り尽くしたあと、試しにこう言った。

「あー・・・もしかしてアレか?アレ・・・・・・その・・・・・・・・・・
・・六歳の時お隣に住んでたパチョレック君か?お前まだあのこと怒ってるのか?ア
レは私のせいじゃないと何度も言ってるだろう。アレはお前のお姉ちゃんの方か
ら私を押し倒してきて抵抗出来ずそのまま・・・」
「チゲーよボケェ!!誰だよパチョレック君って?どこのパチョレック君だ!
?つーかお前は過去にパチョレック君と何があったんだ!?パチョレック君のお
姉ちゃんと何があったんだぁ!?」
「違うよデミテル様ぁ。確かカルボナーラ三世とか何かそんな名前の人だよぉ。」
「何者だよカルボナーラ三世って。売れないお笑い芸人みたいじゃん・・・」
「カルボナーラ三世さんはアレだよぉ。昔リミィのお家の前に住んでてぇ、いっつも毎日どんな時だって《ピー♪》って叫んでる人だよぉ。」
「芸人どころかただの変質者じゃねーかぁ!?」

男は槍をブンブン振り回しながら叫んだ。二人はまたしてもウンウンと考え始
めた。

フトソンは三人の中で一番考えを巡らせていたが、やがてポンと太鼓判を押し
た。

「思い出したんだな!アンタ誰かと思ったら・・・」
「おお!ようやくわかる奴が!よし!俺様の名を一文字ずつ言ってみろ!」
「了解なんだな!ジャ」
「ジャ!?」
「ニ」
「ニ!?」
「吉男。」
「どこの吉男だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

男は憤怒のあまり床に槍をバシンと叩きつけた。

「ふざけんじゃーねよぉ!!ジャニ吉男って誰だぁ!?どこの誰だ何者だぁ!
?なんちゅうアンバランスなネーミングだぁ!?その名前つけた親の顔を見てみ
たいわぁぁぁ!!」
「ジャニ吉男君はアレなんだな。名付け親はジャニ吉男君のお父さんの友人で
、共に戦争を戦った戦友、影田さんがつけた名前で・・・」
「どこの影田さんだぁぁぁぁっ!?なんでこの世界観に影田さんなる人物が存
在すんだよ!?つーか結局ジャニ吉男君は何者なんだよ!?」
「メル友。」
「ありえねーだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

男は思いきりさっきまで自分が身を潜めていた樽を蹴り飛ばした。樽は孤を描
きながら海にバシャンと着水した。

「お前らはホント馬鹿だな!!ホント馬鹿だよ!大馬鹿野郎共だよ!もう目も
開けられないよ!」
「世の中の勝ち組にたいてい共通するものが何か知っているか?それは自ら馬
鹿になれる奴だ・・・」
「馬鹿にも限度があるんじゃボケコラカスぅ!!ジャニズだよジャニズ!ガー
ゴイル族のジャニズ!!『灰の翼』のリーダーでかつておまえらと海の上でドン
パチしたろうが・・・げほごほ!?」

ジャニズは叫び過ぎたせいか、思い切り咳込んでしまった。

一方デミテル達は未だに首を傾げ続けていた。会ったことがあるような気がし
ないでもないが、どうにもこうにも思い出せない。

「船の上でドンパチって・・・何かやったか?」
「デミテルさんあの人とドンパチしたんだな?」
「そうらしいが・・・というか、ドンパチってどういう意味だ?」
「きっとアレなんだな。禁断の愛的な・・・」
「どんなドンパチだ!?」

デミテルはフトソンの頭をバシンと叩いた。すると、ジャミルがデミテルの肩
の上でハァっとため息をついた。

「デミテル・・・あんた・・・あのガーゴイルと禁断のドンパチを・・・」
「まてまてまて!?禁断のドンパチってどのドンパチだ!?」
「リミィもわかんなぁい。どういう意味ぃ・・・?」
「リミィはまだ知らなくていいんだな・・・知ったら禁断の愛の世界が見え隠
れす・・・」
「見え隠れしねーよぉ!!おまえら完全に話がズレズレじゃねーかぁ!?」

ジャニズのイライラは頂点に達しかけていた。ここまで露骨に忘れられている
とは予想だにしなかったのだ。

ジャニズは決意した。例え世界観をぶち壊してでも自分の存在を知らしめねば
ならないと。

彼は思い切り槍を床に突き刺すと、深呼吸をし、叫んだ。

「俺は・・・俺様は第七復讐教訓から第八復讐教訓にかけて悪事を尽くし活躍
したあのジャニズだぁーッ!!」
「・・・誰かわかったかフトソン?」
「ううん。さっきからジャニ吉男君が脳随から離れなくてよくわかんないんだ
な・・・」
「もう吉男君はいいつってんだよ!!お前の頭の住人は吉男だけかぃ!?」
「吉男じゃない!ジャニ吉男君なんだな!!」
「どっちでもいいだろ!?どちらかというと吉男君の方が言いやすいだろ!?
吉男君もそれを望んでいるはずさ!」

ジャニズはだんだんと戦意を消失させていっていた。先程まで内に秘められて
いた燃えたぎる戦闘意欲は、会話を重ねれば重ねる程、鎮静化の一途を辿ってい
た。


チクショウふざけやがって・・・俺がここにたどり着くまでどれほどの苦労を
してきたと思っていやがる・・・

あの小娘のむせび泣きで眠らされ、海に落とされ、海原を漂い・・・

目を覚ませばそこは見たことのない浜辺。どうやら俺以外のガーゴイルは皆海
に沈んでいっちまったらしい・・・・・・

俺は浜辺を歩いた。照り付ける太陽の下どこまでも。

そして気付く。浜辺にしてはあまりにも長すぎる。規模が大きすぎる。そこは
砂漠だったんだ。

そこからはもう地獄だ。大量のバジリスクの集団に追い回され、そのバジリス
クの鱗を探してるっていうモリスンだかモリソンだかよくわからん人間にインデ
ィグネイションを連発され死にかけたり・・・


空を飛ぶ体力がなかったから、なんとか人間の船に密航し、アルヴァニスタ大
陸に着いたと思ったら・・・


※その時の情景。
『そこのモンスターさん?』
『あん?なんだテメー?手にオタマなんて持ちやがって。それにエプロンも・
・・』
『これは私の標準装備なんです♪いきなりで悪いんですけど、私の新技の実験
体になってくれません?あ。死なない程度にしますから♪』
『え・・・』
『どうも力加減がむつかしくて・・・』
『・・・お、おい?手の平から電気がほとばしってるぞ・・・?』
『はい。こういう技なんです・・・では・・・』
『え?ちょ?ま・・・』
『サンダーソードぉぉ!!』
『ギャアアアア!?』

あの時は死ぬかと思った・・・あのレレスだかリリスだかいう女・・・ホント人間か・・・?

だが、棚からボタモチとはこのこと。その女からアップルグミを貰いながら(まさかモンスター相手に回復道具出してくれるとは・・・)、
『前髪が一部赤くて、水色の長い髪したガキ引き連れた奴見なかったか?』
て尋ねたら

『ええ知ってますよ。私の財布を必死に探してくれた・・・とっても・・・と
ってもいい人・・・』

その時女の頬がちょっと赤くなってんのが、ちとばかしイラっときたが・・・


とにかく目撃情報を手に入れた俺は、様々な場所を回り、助言してもらいなが
ら、ついにこいつらの居場所を突き止めた。すべては奴らにやられた借りを返す
為に・・・


・・・そうだってのに目の前にいる奴らはなんだ?こっちが復讐の為に毎日頭
に浮かべていた奴らが、俺の事を一ミクロンとして覚えていない・・・しまいにゃカルボナーラ三世とか言い出しやがる・・・

あれ・・・なんでだろ・・・前が霞んで見えないや・・・


「・・・ねぇちょっと・・・」
「なんだジャミル?」


デミテルは未だとしてジャニズのことを思い出せずに苦悩し続けていた。フト
ソン、リミィも同様である。

ジャミルはスッと、翼をジャニズの方に向けた。

「アイツ・・・泣いてない?」
「え?」

ジャミルの言う通りだった。ジャニズはうつむき、目頭をギュッと抑えながら
、美しい雫を垂らしていた。

「・・・なぜ泣いとるんだ?」
「原因はどう考えてもアンタらでしょうが・・・」

ジャミルは淡々と述べた。すると、デミテルの足元のリミィが言った。

「ダメだよデミテル様ぁ。誰かを泣かしたらきちんと謝らないとぉ。」
「おいちょっとまて。なんで私が泣かしたことになってるんだ?」
「デミテルさん。きちんとした大人っていうのは、『ありがとう』と『ごめん
なさい』がなんの躊躇もなく言える奴のことだって、死んだじいちゃんが言って
たんだな。」
「だからなんで私一人のせいになっとるんだ!?こういうのはみんなで謝るも
んだろうが!?連帯責任だろうが!?」

デミテルは焦った。このままだと自分が代表であのコウモリ人間に謝らなくて
はならなくなる。そんな役目は御免こうむる。

デミテルは静かに涙を流すジャニズを見ていたが、やがてだしぬけに言った。

「・・・あー思い出したぞ。ジャニズってあのジャニズかぁ~そうかそうかぁ~・・
・!」
「・・・・・・!お、お前俺のこと思い出したのか!?」
「えーあー・・・・・・ああ。思い出した思い出した。私としたことがお前を
忘れるとはなぁ・・・」

デミテルのセリフは完全なる棒読みだった。とにかく話を合わせてしまおうと
考えたのだ。

ジャニズはまたしても涙を流し出した。しかしそれは悲しみの涙ではなく、喜
びの涙だった。

「うおおおお!ついに思い出してくれたか!そうだ!ジャニズさ!俺はあのジ
ャニズさ!!」
「そ、そうか・・・いやぁひ、久しぶりだなぁ・・・」
「デミテル様ぁ・・・」
「リミィお前少し黙っていろ。」

呼びかけてきたリミィをデミテルはあしらった。目の前の事態の収拾に必死だ
ったのだ。

デミテルの態度にリミィは頬を膨らませた。


 せっかくあのコウモリ人間さんが誰か思い出したのにぃ・・・


リミィの思いをよそに、デミテルは適当にそれっぽい話を続けていた。

デミテルはにこやかな作り笑いを続けている。

「いやぁしかしアレだなぁ。少し背が伸びたんじゃないかぁ?あ。もしかして
髪切った?」
「デミテルさん・・・あの人髪ないんだな・・・ところで僕、あの人が誰
か思い出し・・・」
「やかましい!今話し掛けるな!なんとか嘘をまかり通そうとしとるんだから
・・・」
「・・・・・・。」

フトソンもリミィ同様ジャニズが何者だったか思い出せていた。だが、デミテ
ルは聞こうともしない。

デミテルのほら吹きは続く。

「しかし最近どう?仕事は上手くやれているのか?最近はどこの食品会社も偽
造ばっかりしてるから怖いったらありゃしないな全く・・・はっはっは・・・」

デミテルは自分でも何を言っているかよくわからなくなっていった。

さらに話はエスカレートする。かなりおかしい方向へ。

「それにしても日本の政治は一体どこに向かうんだか。我々庶民から見れば、
給油活動がどうこうよりも、果たして将来年金が貰えるのか否か。これに尽きる
なまったく。おたく年金払ってる?私は定職についてないからなんとも・・・」
「・・・おい。」

しばらくずっと無言で話を聞き続けていたジャニズがボソリと尋ねた。

デミテルは身構えた。


いかん・・・嘘だとばれたか・・・


「お前よ・・・」
 「・・・・・・。」

ジャニズは顔を上げ、毅然とした態度で言った。

「・・・年金は払うべきだと思うよ俺は。」
「・・・は?」

いきなり生々しいことを言ってきたので、デミテルは拍子抜けした。

「確かにな、将来年金貰えるか否かあやうい状況ではある。でも、だからってそ
れを理由にして払わないなんて言いやがる若者はやっぱ間違ってる!国民の義務
なんだからよ!貰えるか貰えないかが問題じゃねぇ!!どんな形であれ義務は果
たすべきさ!」

しばらくの沈黙が起きた。かなり時間が経ったあと、デミテルが出し抜けに言
った。

「私も同意見だ。損得が問題ではない。一定の義務はすら果たせぬ奴に自由に
生きる資格などありはしない!」
「お前もそう思うか!俺達気が合いそうだな!」

二人は意気投合すると互いの手をガシリと掴んだ。

「ジャニズとやら。これから私と一緒に日本の未来について語り合おうではな
いか?酒を交えながら。」
「任せろ。今日は朝まで年金問題徹底生討論だ。」
「・・・・・・。」

沈黙するフトソン達をよそに、デミテルとジャニズは、不思議な信頼関係を結
びながら、食堂に向かっていった。船員達はモンスターであるジャニズに恐れお
ののいてはいたが、デミテルとがっちり手を結ぶ二人を見て、ほっといても大丈
夫そうだという結論に達した。

 船員達はそれぞれの持ち場へと戻っていった。


「・・・で?結局アイツは何者なのよ?」

食堂に入っていく二人の背中を眺めながら、ジャミルは静かに尋ねたのであっ
た。

リミィの手の中のナマコは、完全に生き絶えていた。軽く腐臭を放ちながら。

つづく


おはこんにちこんばんは。(tauyukiseさんの挨拶お借りしました)

tauyukiseさん、前回の質問に答えてくださってありがとうございました。これからもバランスよく話を作っていこうと思います。あなたが五十円玉を拾えることを心から願っています。


蛇足ですが、自分は昔ナメコとナマコの違いがわかりませんでした。テレビで海の生き物を映してて、ナマコが出てきて『これはナマコですね。』ってナレーションが言った時

「これナマコ!?これキノコ!?」

とか親に言ってました。

バカですね。単なるバカですね。なんでキノコが海底歩いてんだって話ですね。海底じゃなくとも歩かないって話ですよね。


恐ろしいことに、小学四年生の時のお話です。


次回  第二十三復讐教訓「人の恋路に首突っ込むのって 意味もなくなぜか楽しい」

コメント

おはこんにちこんばんは。
毎回毎回したくなくても何らかの手違いで同じ内容を連カキしているtauyukiseです。

まぁ、なんだかんだでハヤテのごとくの主人公の誕生日を祝ったり(にこにこなんたらで)、
炎髪灼眼のアニメをいっきみしたり、まいにちたのしくすごしています。

やっぱりメインは、ほのぼのした話がいいですね。しかし、デミテルは精霊からもらった中盤じゃ使えない(勇者一行様たちが)呪文を使えることができるのでしょうか?

ここで今までの話をまとめてみると、イフリート、ノーム、ウンディーネ、シルフは物語上しょうが無いとして、モーリア坑道にでも行くのでしょうか?まぁ読者側としては3話ぐらいひっぱって、そこでも飽きないような展開になるとは思うんですけど。個人的には、物語の進行が遅くなってもいいので、確実に戦争に交わらせてくれれば、と思っています。わがままばかりですみません。

では、また次の更新日まですごーく楽しみにしています。バイバイ。

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