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デミテルは今日もダメだった【41】

第四十一復讐教訓「世界の中心で愛を叫ぼうがなんだろうが
相手に聞こえなければ意味は無い」

 海から吹く潮風・・・

 照りつける太陽・・・

 いつか、シンシアと二人だけで船の旅をするんだ・・・

 「シンシアァァァァァァーーーッ!!!!きっとオレのものにするずぇぇ」
「じゃかーしぃ!」
 「ぶほお!?」

穏やかな波が揺れる、人気の少ない港。それもそのはず、この港はフレイラン
ドとの貿易を行うことだけを主な目的に作られた、小さな港だからだ。

デミテル達は依然クレス達を追っていた。そのクレス達が出会いを求める男、
エドワードを手中に入れる為だ。

デミテルは素っ気なく置かれた、フジツボがこびりついた木箱に腰掛けている。今、リミィと、そしてもう一人、少し前にパーティに(半場強引に)加わった女性が停泊している船に乗り込み、乗船代を安くして貰おうと交渉を行っているところだ。

彼はリラックスしながら海を眺めていたのだが、突如横に立って海を臨んでい
た船乗りが絶叫したので、びっくりして、反射的にラリアットをかましてしまった。

デミテルはラリアットをかまされて転倒した船乗りがヨロヨロ立ち上がるのを
見下げながら言った。

「いきなり技をかましてすまないとは思うが・・・突然横で絶叫など
されたらそらラリアットもするぞ・・・」
「しょうがないだろ!?俺はシンシアを愛してるんだから!!その思いを吐き
出さないと俺の恋焦がれるハートがオーバーヒートしちまうのさ!!」
「・・・誰だシンシアって。」

 デミテルは頭をボリボリ掻きながら、めんどくさそうに聞くだけ聞いた。船乗
りを親指をビッと突き上げ、白い歯を見せ付けるが如く笑うと、こう言い切った。

「親父の再婚相手の娘。俺の三つ上の。」
「・・・それって義理の姉では・・・」
「愛に義理も本命も関係ないさベイビー!!」
「・・・いやいや。それ以前にお姉さんである事実が問題なんだろうに・・・戸籍の
問題が・・・ってどうでもいいか。好きにしろ・・・」

リミィがこの場にいなくて良かったと、デミテルは心より思った。もしいたら
、また話に首を突っ込むに違いない。こんなむさ苦しい奴の恋愛白書に加担する
気などは、デミテルは全くを通り越して絶望的に皆無だった。

この場にいるのは船乗り、デミテル、そして・・・

「・・・・・・。」
「・・・おい。」
「フトソン・・・」
「・・・ふん。」

デミテルに背を向け、体操座りで座るフトソンは、振り向きもせず鼻を鳴らし
た。デミテルはハァーと溜め息をついた。

「まだ怒ってるのか?私がお前のことを忘れていたこと。いい加減に機嫌を直
せ馬鹿。」
「知らないんだな。もうデミテルさんとは一生口聞いてやんないんだな。」
「今この瞬間に口聞いとるだろうが・・・現在進行形で・・・」

フトソンが拗ねるのも無理が無いと思われた。


 ふざけんじゃないんだな。あれだけ、アーノルド=シュワル○ネッガーやラン
○ーも真っ青な位に体を張ったのに、 御礼は無い。存在を忘れる・・・もうやっ
てらんないんだな・・・

もう絶交なんだなこんな男。もう顔も合わせたくな・・・


「・・・しょうがない奴だなまったく。今日の昼飯のおかず一品くれてやろう。」
「デミテルさん。僕の主人は貴方以外に有り得ないんだな。」

そう言って、目をキラキラさせながら、デミテルの両手を掴みフトソンは言った。


あぁ・・・

馬鹿で良かった・・・


デミテルは心底呆れながらそう思った。

「ところで何くれるんだな?」
 「ニラ炒めでどうだ?」
「肉類がいいんだな。」
「めんどくさい奴だな・・・じゃあお前にジャミルくれてやるから、煮るも焼
くも炒めるも好きにするがいい。」
「了解なんだな。じゃあここはあえて生の踊り食いで・・・」
「・・・何勝手にアタシの所有権の売買をしてんのよアンタ達・・・
つーかインコを踊り食いするな!!」

どこかへと行っていたジャミルが、空からヒュウと降下してきた。いつものよ
うにデミテルの肩に乗る。

「言われた通り・・・ケホ・・・見てきてやったわよ。乗船者名簿。今日の午
前、アタシ達が森出た頃に、クレスどもはこの船乗ってフレイランドに行ってるわね。」
「そうか。ならば今日の夜はあのオリーブヴィレッジとか言う村に泊まり・・
・そこでエドワードに接触・・・ふふ。」

デミテルはニヤリと笑った。この分だとついに自分達は奴らとオリーブヴィレ
ッジを舞台に、熱い、憎しみと陰謀渦巻く復讐潭を・・・

「デミテル様ぁー♪ただいまぁー♪」

リミィの元気な幼声によって、デミテルの燃えし魂の炎は一段と小さくなった。この声で緊張感なるものが完全にぬけてしまった。

デミテルは楽しげにこっちにタタタと駆けてくるリミィをジトリと見ていた。


・・・私が本当にクレスどもの息の根を止める時になったら・・・

きっとこのガキは止めに入るに違いない・・・『かわいそう』などど言ってな・・・

その時私がこのガキの言葉に耳を傾けないようにせねば・・・良心を打ち捨て
てこそ真の悪人だ。

だが、そんな先のことよりも

問題は・・・

「ただいま戻りました!船代、安くして下さるそうです!」

そう言ってリミィの後ろから駆けて来るのは、リリスであった。


そう。問題はこの女だ。どう考えたってこの女は邪魔だ。きっと私がクレスど
もに止めをさそうとしたら『兄に代わってお仕置きです』とか訳のわからんこと
言って阻止にかかるだろう・・・

骨の髄まで善人に違いないこの女を仲間に置くのはやはりマズイ・・・腕っ節
の強さは素晴らしいが・・・

どうにかして追い出さねば!!

「・・・あのデミテルさん?」
「なんだフトソン?」
「何で僕の知らないうちに人が増えてるんだな?つーかこの人誰なんだな?ま
さかデミテルさんがイヤラシイ事目当てに口説いて・・・」
「なんでお前はすぐそういうイヤラシイ方向に話を持っていこうとするんだ。
違う。あとで説明してやる。」
「いや、でも、中々の美人さんなんだな。なんでエプロンしてるんだな?デミ
テルさんの趣味?」
「いい加減にしろ貴様は!?私はどちらかというとエプロンよりナース服とか
の方が・・・」
「どっちもいい加減にしろやぁ!?アンタ達の性癖なんててんで興味ないわよ!」

話の流れが明らかにおかしい方向に向かっていた為、ジャミルは話をぶった切
った。

デミテルはゴホンと咳ばらいした。

「ふむ。では・・・船に乗り込」
「お弁当タイムにしましょう。」
「え。」

デミテルの話を遮るようにしながら、リリスは笑顔で断言した。手には既に、
白いランチボックスがぶら下がっている。

デミテルはピクピクとあおすじを立てた。

「・・・そんなもの船乗ってる時食べればいいだろう・・・」
「でも今ちょうど十二時ですから♪やっぱりお昼はお昼に食べないと!
それに船だと揺れますよ。」
「いや別に・・・」
「うわぁーい♪リリスお姉ちゃんのお弁当だぁ♪」
「わーい♪なんだな♪」
「・・・貴様ら・・・」


・・・いや。待てよ・・・

これは上手くいけば・・・

五分後、港にお弁当は広げられた。

「それじゃいただきま・・・」
「待って下さい白饅頭さん。」
「・・・期待を裏切るようで悪いけど、僕の名前白饅頭じゃないんだな。僕の本名は・・・」
「この人はねぇ、フトソンていうんだよぉ!リミィがお名前つけたんだよぉ♪」
「・・・うん。僕フトソン。フトソンなんだな・・・うん・・・」

どさくさに紛れて本名を言ってやろうかというフトソンの策略は、一人の無垢
な少女の気遣いによって破滅した。


僕・・・一生フトソンなんだろうな・・・へへ・・・へへへ


「・・・それで何だ。リリス=エルロン。」

軽く白目を向いて己の未来に軽い絶望を抱きながら半笑いのフトソンに代わっ
て、デミテルが尋ねた。

リリスはコホンと咳ばらいした。

「『いただきます』は、みなさんで一斉に、手を合わせて言わないとダメです。
フンドシさん。」
「・・・『フンドシ』さんじゃなくて『フトソン』だから・・・っていうか、そんなことより・・・」

地べたに立ち、冷静にジャミルは訂正した。そして次に、自分の眼前にあるも
のを見下げた。あるのは

小皿に入ったピーナッツ。

ジャミルの必殺空中半回転真空回し蹴り鉤爪アタック(具体的にどんな蹴りを
したかは読者の想像に全てを託す)が、ピーナッツ皿を天高く蹴り飛ばした。

「な・ん・で、ランチボックスに色とりどりのお弁当をこしらえたにも関わらず、アタシの目の前に展開されている食物は茶色一色に完全統一されてんのよ!?アンタらどんだけアタシにピーナッツ食わせたいのよ!?お前らピーナッツでアタシが何かに進化するとでも思ってんのかぁ!?」

こぼれ落ちたピーナッツを足蹴にしながら、ジャミルは叫んだ。デミテルは散
乱したピーナッツを拾いあげながら、淡々と言った。

「・・・お前、前『三度の飯より落花生♪』とか言ってただろうが。」
「そんな無責任なこと言った覚え無いしこれから先も一度として言うつもりはねぇ!!
事実捏造してんじゃないわよ!?アンタどこの政治家!?」
「政治家なぞ、八割は嘘つきなんだから気にすることはない。」
「アタシが気にしてんのは政治家じゃなくて落花生だぁ!!」

その後、インコなどに無駄な食費をかけてたまるかと言うデミテルと、インコ
にも毎日を元気に生きることができる栄養をよこせと言うジャミルの口論が十分
程続いたが、結局今日も彼女はピーナッツということになった。

ジャミルは、デミテルに背を向け、体操座り(鳥っぽい体操座り)でシクシク
泣いていた。

 「・・・泣くな馬鹿・・・」
「うるさいわよ・・・ひぐっ・・・別に泣いて無いし・・・ひぐっ・・・」
「今は本当に食料が少ないんだ・・・我慢しろ・・・次買い物したら何か食わ
してやる・・・ピーナッツ以外で・・・」
「・・・約束よ。ピーナッツ以外よ。絶対よ・・・ひっぐ・・・」
「ああ。分かった分かった・・・さて。我々は食べるとするか。お弁当を。い
ただきますも先程済ましたことだし。」


さて・・・ここからが勝負だデミテル・・・

人をその場から追い出すというのは、簡単だ。要は傷付け、恥を晒せばいい。

今私の眼前にある、この女が作った弁当・・・


デミテルはニヤリとした。こういうどうでもよい時に限って、彼は悪人らしい
嫌な考えが回るのであった。


この弁当を徹底的にけなしてやれば、こんな女は簡単にその場から追いやれるわ!
許せリリス=エルロン。貴様に怨みはないが、この私の祟光なる復讐のロードにお前を傍らに置くことは断じて許されぬ!!


デミテルはおもむろに橋を取ると、弁当の中身を見回した。


・・・・・・。

・・・見栄えは素晴らしいなこの女の料理・・・とてもまずそうに見えん・・・
・・・軽く弁当箱が光り輝いてるようにすら見える・・・宝石箱的な・・・

いかんいかん!どうにかしてボロを見つけ、けなすのだ!お前なら出来るはず
だデミテル!自分に自信を持て!『成せば成る何事も』って、「バッ〇・トゥ・ザ・
フューチャー」の主人公も言ってただろうに!!


世界観を完全無視した喝を己に叩き込みながら、デミテルは適当にタマゴ焼き
を箸でつまみあげた。リリスは笑顔でこちらを見て様子を伺っている。

リミィも様子を伺っている。

ジャミルはデミテルの後ろでピーナッツを泣きながらポリポリ食べている。

フトソンは既におかずの三割を食べていた。

「って何でお前は私が一口目を食べる前に先に食っとるんだダアホ!?この流
れと空気はどう考えても私が一口目を食べて感想を述べるべき状況だろうがぁ!?」
「『空気を読まない』生き方って、ホントはカッコイイ生き方だと思うんだな
・・・あ。このおにぎりとっても美味しいんだなリリスさん。」
「貴様の価値観などどうだっていいわ・・・まったく・・・」

ここまで状況を盛り上げようとした自分の今までの思考を空しく思いながら、
デミテルはおもむろに口にタマゴ焼きを入れた。


・・・・・・・・・。

う・・・

旨いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?


デミテルは無言で絶句し、カミナリに撃たれたが如く脱力した。危うく本当に
叫んでしまうところであった。


何だこのタマゴ焼きは・・・ただのタマゴ焼きだぞ・・・それなのにこの究極的なフンワリ感、軽い半熟感、甘み、舌触り、人間の成せる技か!?いかん!『ミ〇ター味っ子』並のリアクションもとりかねん程のレベルだ!つーか何かタマゴ焼きが黄金の輝きさえ放ち始めているように感じられるのは気のせいか!?否!気のせいなどでは無い!!

この私とて十余年に渡り使用人として掃除洗濯料理をたしなみ、技術も舌も一
般の人間よりは上のはず。それなのにこの女は私の長い年月で得し料理センスを
遥かに凌駕する、まさに神!神の領域!クッキングマスター!!

くそう・・・ちくしょう・・・こんな素晴らしい味を表現出来る女を私は追
い出そうと奮起していたのか・・・なんと虚しい・・・なんと悲しき我が卑しき心!

無理だ。私には無理だ・・・こんな神の逸品にも勝るとも劣らない料理をけな
すなど・・・出来る訳が


デミテルが軽く感嘆の涙さえ流そうとした時、特別何の感想もなくバクバク食べていたフトソンが、さらりとこう言った。

「リリスさん料理物凄い上手なんだな。デミテルさんの二兆倍は上手いんだな♪」
「いえ。そんなことは・・・でも、ありがとうございます♪」
「・・・でも、このタマゴ焼きは・・・」
「あ、はい。それちょっと砂糖たくさん入れすぎちゃってて、ちょっと失敗し
たかも・・・」
「リミィはこれくらい甘い方が好きぃ♪」
「・・・・・・・・・え。」

 デミテルの思考が、一瞬完璧に停止した。と思った矢先、隣で

「シンシアァァァァァァ!!きっと俺のものにす」
「うるさい黙れぇボケがぁ!!」
「ギャース!?」

再び義理の姉への愛を叫ぼうとした船乗りの背中を竜巻旋風脚で蹴り飛ばしな
がら、デミテルは軽く泣きながら思った。


・・・やはり、甘いって素晴らしいな・・・うん・・・


・・・その二十分後


「デミテルさんちょっと待って下さい。何ですかそれは?」
「見てわからんか。練乳だ。残りの白飯にかけて食うんだ。デミテル練乳スペ
シャル。練乳は何にでも合うように製造されているんだ。貴様も覚えてお・・・」
「ダメです。」

言うが早いか、リリスはデミテルの手からマヨネーズ容器状の容器に入った練乳をバッとひったくってしまった。デミテルは憤慨した。

「おい!何をする!?そいつをこっちへ渡せ!それが無くなったら私もう死ぬしかないだろうが!?」
「そんな体に不健康なもの毎食食べてたんですか!?体にいい訳ないです!
これは没収します。」
「何だと貴様!?貴様にそんな権限あってたまるか!」
「デミテルさんの健康を思ってこそです!」
「いいんだよ私はハーフエルフだから!過度に糖分を摂取してもわずかコンマ
四秒足らずでタンパク質的なものに分解されるんだよ!だってハーフエルフだも
の!」
「適当な嘘つかないで下さい。」

リリスは淡々と、エプロンのポケットに練乳をしまってしまった。デミテルはワ
ナワナと怒りに震えた。

「・・・返せ。」
「ダメです。」
「返却しろ。」
「お断りします。」
「・・・返却期限が切れています。」
「本日は閉館いたしました♪」
「させるかぁ!夜間返却口を利用させていただく!!」

リリスのポケットに手を突っ込もうと躍起になるデミテル、それを取っ組み合
って防ぐリリスを遠くから眺めながら、フトソンは弁当箱を片付けていた。頭に
はジャミルが乗っかっている。

「・・・デミテルさんにあそこまで正面から意見言える人いなかったんだな。」
「失礼ね。アタシはいつも真っ正面から意見言ってるじゃない。」
「ジャミル。『人』って言ったんだな。」
「・・・へいへい。どうせアタシは『鳥』ですよ。」

ジャミルは軽くあおすじを立てて言った。

一方、デミテルは

「貴様ぁ!この私に意見しようなどとはいい度胸だ!このパーティにおいては
トップは私なんだよ!中心は私なんだよ!世界は私を中心にロールしているんだぁよ!!」
「中心でしょうがなんでしょうが、体に悪いと目に見えて分かるものを・・・あ。それと。」

ふと、リリスがおもむろにポケットに手を入れた。でてきたのは


お菓子袋。


デミテルはハッとして、自分のマントの懐に手を突っ込んだ。いつの間にか中
身をスラれている。

「こんなにたくさんのお菓子、お一人で食べるつもりなんですか?これじゃい
つ糖尿病になってもおかしくないです。食費軽減の為にみんなで分け合って食べ
ましょう。」

リリスは至極当たり前のことでも言うように、袋をプラプラさせて言った。

後にも先にも、デミテルに対してここまで『正しい意見』を言った人間はこの
女だけだろうと、ジャミルは遠目から見ながら思っていた。逆に、よくぞ今まで
あの男のわがままは筋が通っていたものだと呆れた。

とにもかくにも、これから先デミテルが何かしら暴走しても、あの女が止めて
くれるだろう。

「リミィちゃん、クッキー食べましょ。」
 「わぁい♪」
「あ・・・ちょ・・・そのクッキー一箱私が平らげるつもりだったのに・・・」
「み・ん・な・で・食・べ・ま・しょ・う♪」

クッキー箱を開封しながら、リリスはニッコリと言った。デミテルは腹いせに、横にいるリミィの髪の毛をグイグイ引っ張りながら(「痛い痛い痛いよぉ!」)ガックリと肩を落としていた。


彼が生活面で他人に指図されるのは、数十年ぶりである。


「シンシァ・・・」
「やかましいわぁ!そんなに愛を伝えたければ海じゃなく本人の前で叫べぇっ!!」
「無理だ。だって彼女は俺の脳内が住家だから。」
 「シンシアただの妄想の産物!?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「エドワード?その人なら、南東のオアシスに行ったと思うよ。」

 デミテルがリリスにクッキー以外のお菓子も催促していた頃(「頼むからマシ
ュマロも食べさせて下さい!」)、灼熱の太陽の下、時の英雄達はオリーブヴィ
レッジにてエドワードを探していた。

 全身から汗をダラダラ流す男にそれを尋ねた時(ダラダラ汗を流しているのは
英雄達も同じであったが)、上のような返答が返ってきた。

 クラースは帽子を脱いで、蒸れた頭をタオルで叩きながら言った。

 「ふむ・・・まだ追いつけるかもしれん・・・ご協力感謝する・・・」
 「外に出る時は・・・気をつけて・・・この砂漠には怪物・・・バジリスクが
・・・出るから・・・」
 「そう・・・ですか・・・ところで貴方は何故こんな暑さの中わざわざ外に出
てウロウロしているんですか・・・」
 「しょうがないでしょ・・・そういう役回りなんですから・・・私だって早く
家に返ってペ○シコーラが飲みたい・・・」
 「私はコ○コーラ派です・・・カロリーゼロの奴は味が薄くて余り好きでは無
いのですが・・・何分私も歳なので・・・」

 猛暑の中、ペ○シコーラ派とコ○コーラ派が対談しているのを余所に、その横
でやはり汗ダラダラのクレスが腕を組みながら言った。

 「『南東』のオアシスにエドワードさんが・・・・・・・・・・・・なんと!!」
 「・・・クレスさん何か言いました?」
 「え?いやミントその・・・『南東』なだけに『なんと』・・・」
 「・・・・・・初めてクレスのダジャレが役に立った気がする・・・ちょっと涼しくなったよ・・・ありがとクレス・・・」

 団扇で絶え間無く自分を扇ぎながら、アーチェが汗ダラダラで呟いた。それを
見たクレスは

 「・・・そんなずっと団扇動かして・・・まぁ『猛暑』だから、もうしょうが無いけどさ・・・」
 「・・・・・・。」
 「あの・・・『猛暑』なだけに『もうしょ』うが無い・・・みたいな・・・」
 「・・・・・・・・・。」

 吹き荒れる熱風が冷気に変わったようにさえ思う仲間達であった。

つづく

思うがままにあとがき
リリス=エルロンを入れたのは凶と出るか吉と出るか・・・


・・・・・・凶と出る気がする・・・

あと、暇だったら船乗りに会いに行ってやって下さい。今もシンシアの名を叫んでいる
と思います。過去編におります。


あぁ・・・全然話が進んでいないじゃないか・・・

次回 第四十二復讐教訓「人と話すときは相手の目を見て話すこと」

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