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デミテルは今日もダメだった【43】

 梅雨空はいつも曇ってる

人を憂鬱にさせる

雨は大地を潤すけれど

人の心は濁ってく

それでも僕らはこの季節を何度も何度も越えていく

どんなに不満を垂らそうと

どんなに憂鬱になろうと

それでも僕らがここにいるのは
やっぱりどこかで好きなんだろうな

この雨が

第四十三復讐教訓「ガキの頃の夢なんて 意味もなくパン屋さんかアンパンマン」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ。」
 「ってデーミ兄ちゃーん!?何勝手に人の机漁ってんのぉぉぉ!?」

 雨粒滴る屋根の下、アーガス=A=マッキンタイアは絶叫した。彼の前に、勝
手に机を漁り、一冊の革表紙のノートを両手で持ち読む、十四歳の少年の姿があった。

 デミテルは今日もいつものように買い物を頼まれていたのだが、店に入ると誰
もいなかった。そこで

 「待ってるのも暇だったから・・・暇潰しにお前の部屋で時間潰そうと思って
たんだけど・・・・・・くく・・・・・・くくく・・・こっちはなんだ?題名『
秋の空時々茜色・・・」
 「だから人のノート勝手に漁って読まないでよ!人の趣味を笑うな!」

 アーガスの部屋は二階にある。デミテルも勝手に人様の部屋に上がるのはいけ
ないとも思ったが


 ・・・アーガスなら別にいいか。別に。


 という理由で侵入したのであった。

 デミテルは何ともイタイ内容が羅列したアーガスの詩集を身をよじりながら読
んでいた。アーガスは恥ずかしさで心臓が水素爆発を起こしそうだ。

 「くかか・・・・・・こ、これ・・・お嬢様にも見せようかな・・・?」
「やーめーてーよぉー!?そんなことされたら恥ずかしさで
脳細胞が死滅しそうだよぉ!?」
「安心しろ。その程度で脳は死なない。せいぜい羞恥心で高いところから飛び
降りたい心情に駆られる程ど・・・・・・くくくく♪」
「もう読むのやーめーてーよぉぉ!?」

アーガスは急いでデミテルの手からノートを引ったくった。

 「人生にはねぇ!こうやって何かの思いを文章や絵に表現したい心情に駆られ
る時があるの!!」
「絵も描いてるのか?」
「それは・・・ってだーかーらぁ!机の中漁るなぁ!!兄ちゃんどんだけボクに
対して人権の理解を深めてないの!?ボクを権利ある人として見てないでしょずっと!?」

妄想が趣味の十一歳は、三つ上の少年の蛮行を止めるべく、必死に抗ったが、結局

「こ、これは・・・この絵は・・・・・・かーかかかかっ♪んだこの絵はぁ!?
目、目がデカすぎ・・・つーか人の顔しか書いてな・・・・・・イッーヒッヒッヒ♪」
「ボクはこれから上手くなるんだよ!長い年月をかけてこのピカソもビックリ
な奇作をやがては人に見せられるレベルに・・・」
「無理だ無理だぁ♪貴様は一生このミミズが這ったような線でできた絵を描き続・・・
つづ・・・あーっはっはっは♪」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・じゃあアーガス君は、将来は物語を書きたいんだ。」
「そーらしいです。まあ、あの文才と絵じゃまず無理でしょうけど。」

やわらかい雨がしとりしとりと屋根を打つ中、スカーレット家は夕食時であった。

長テーブルにはおかずが並ぶ。今日の主食は昨日作り置きしたカレーだ。

作ったのはデミテル。かつてはウインナーを黒く焦がしてしまっていた彼も、
今ではかなり料理は上達した。

ただ、人参の配分が意味も無く、イヤに多かったが。完全に切りすぎである。

こうなった原因は明々白々。

※昨日のキッチンにて
『うわぁ。デミテルさん包丁上手ぅ。』
『そうですか?まあ三年もやっていればこれくらいサラサラと・・・』
『あ!すごい!人参の皮こんなに長く剥けてる!カラーテープみたい!』
『そ、そうですかね?本気を出せばもっと長く、細く剥けますよ?よっ!』
『わぁ!すごいすごい!』
『そうですか?いやー参ったなぁ♪』


その調子で剥き続けた結果、十六本の人参の皮剥きを彼は達成した。


『・・・・・・ねえデミテル。』
『いや違うんです奥様・・・アレなんです・・・お嬢様は悪くないんです・・・
僕が調子に乗っただけなんです・・・人参の皮を剥くことで、僕は全ての頂点に立った。
そんな馬鹿な妄想に溺れたんです・・・』
『わかったわ・・・欲求不満だったのね・・・』
『イヤ全然違いますよ!?変な解釈しないでください!?』
『デミテルさん・・・欲求不満なんだ・・・』
『お嬢様も変に真に受けない!』
『デミテル。青少年の欲求は早急に発散しないとあとで大変だからな!』
『師匠!?ちょっと黙ってて下さい!?』

これからはスライサーで皮を剥くことを決めたデミテルであった。

「まぁ、思春期の子供なんてみんなそんなものだろう。」
「そうですかね・・・師匠は昔何になりたかったんですか?」
「ん?そんなの決まってるだろ。」

スプーンを皿の横に置き、ランブレイはこともなさ気にこう言った。

「リアのお父さんさ♪」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・ちなみにお嬢様は将来の夢ありますか?」
「いや・・・ちょ・・・デミテル・・・何かリアクション・・・」
「お母さんも聞きたいわ。」
「ネリー?ちょ・・・ネリー?」

目の前に存在する夫の存在を完全否定しながら、スカーレット夫人は笑顔で娘に尋ねた。

リアは頬をポリポリ掻いてしばらく考えた。そして

「私・・・アレ・・・」
「何ですか?」
「もしかしてお嫁さんだなんて言わないわよねリア?」
「へ!?お母さんどうしてわかっ・・・」


ズっバシャアアアアンっ!!


デミテルは何となく予想はしていたが、ランブレイの顔が思い切りテーブルの
上に叩き落とされた。カレーの皿に落ちなかったのは、スカーレット夫人が素早
く皿を手前に引いたからだ。

結果、ランブレイの額に思い切りサラダを食べる為のフォークが突き刺さった。
机がカレーで汚れずによかったと、デミテルは垂れた血で汚れていくテーブルを見ながら
安堵した。

ランブレイはそんなものはお構いなしの極みだった。

「お嫁さんんんん!?誰だああああ!?誰のお嫁さんになるつ、なるつもり・・・」
「師匠。そんな先の話今したってしょうがないですよ。」
「馬鹿!大事なのは未来じゃない!今だろうが!!」
「師匠。言ってることの矛盾点がありすぎてわけがわかりません。」
「あああああああああ!?いやああああああ!?」


・・・話数が進むごとに酷くなるなぁ・・・この人のキャラ・・・


奇声をあげて発狂寸前のランブレイを淡々と眺めながら、デミテルは口にカレ
ーを突っ込んでいた。その横で、リアは少々浮かない顔をしながら、スプーンに
乗った大量の人参を見ていた。別に彼女が人参がキライとかそういうのが原因な
わけではない。


「・・・・・・ホントは、あんまりハッキリしてないの。夢。」
「え?」

夜。リアの部屋に洗濯物を持ってきたデミテルに、リアはベットに腰掛けなが
ら、ボソリと言った。デミテルは洋服ダンスへの作業の手を止めた。

「『お嫁さん』っていうのは昔から漠然と、何となく思ったけど・・・・・・
でも今は・・・」
「まあ、今は女性の社会進出も目覚ましいですからね。って言っても、お嬢様
がベネツィアの貿易会社とかでバリバリのキャリアウーマンとかやってるのは想
像しがたいですが。」

デミテルはちょっとあたまの片隅で妄想してみた。キャリアウーマンの想像は
不可能だった。だからと言って、社長へのお茶くみなんてさせれば毎回ずっこけ
てお茶をひっくり返していそうである。なによりOL姿のこの娘は・・・

・・・OL姿か・・・

それはなかなか何かこう、そそる何かが・・・

・・・って何考えてんだ僕はぁぁぁ!?落ち着けぇ!そして鎮まれ我が心の思
春期よぉぉ!?


「デミテルさんは何?」
「べ、別に思春期じゃないですよ!?」
「いやそうじゃなくて。デミテルさんの夢。なに?」
「え?」


夢?夢か・・・考えたことないな・・・小さい頃は毎日生きることに大変だっ
たし・・・

この前寝てて変な夢なら見たけどなぁ・・・いや、どんな夢見たかなんてとて
も説明できないような、かなり淫乱な・・・いやそんなことはどーでもよくて・
・・


「・・・考えたことないですね。もう十四だっていうのに。将来に対してなん
にも考えてなかった。」
「あのアーガスくんでさえ考えてるのにね・・・」
「ええ。あのアーガスのアホでさえ考えているのに。」


・・・だが、アイツの場合は大人になる前にストーカー防止法違犯で取っ捕ま
りそうだけど。


「・・・将来のことは考えてませんけど・・・でも・・・」

デミテルはサッサッと畳まれた洗濯物をタンスに押し込み終えると、扉へと歩
き出した。

「できれば・・・もう少しこの家の子で・・・」
「え。なに?」
「・・・じゃなかった。この家の使用人でいたいですし。でも、お嬢様の夢の選択肢
の一つである『お嫁さん』が叶ったら、一緒には住めなくなりますね。」
「え!?あ・・・」

デミテルのサラリと言った言葉に、何故かリアは慌てた。


そうだった・・・デミテルさんと一緒にいられなく・・・


 そんなリアを無視し、デミテルは爽やかに続けた。その表情といったら、全く
何の懸念も無い清々しさだ。その笑顔に、リアは何だか、ちょっぴり腹がたった
気がした。

「お嬢様の結婚相手、どんな人でしょうね?まあ、あの師匠に『娘さんを下さ
い!』なんて言おうものなら、顔面にサンダーブレード叩き込まれて終わりだと
思いますが・・・」
「いや、あにゅ、あにょ・・・」

 リアは何と言葉を返せばいいわからず、モニョモニョした。自分が何を言いた
いのか、どうしたいのか、よくわからない。

とにかく、わかることは一つ。

この人に、他に意中の人がいるとは勘違いして欲しくはない。理由は、自分でもよくわからないけど。

「じゃあ、おやすみなさいませ。お嬢様・・・」
「あ、あの・・・」

十四の少年は、クレス=アルベイン並に脳みそが鈍かった。明らかにリアは何
か言いかけたのに、デミテルはとっとと部屋を出ていった。

窓の隙間を抜ける風音を聞きながしながら、デミテルは廊下を歩いていった。


しかし・・・将来か・・・

ホント・・・ちょっとは具体的に考えてみようかな・・・

というか・・・ホントに今まで僕は夢を持ったことなかったのか・・・?


デミテルは脳みそを絞り上げて、記憶を辿った。どんな馬鹿馬鹿しい夢でもい
い。何かしら憧れたものはなかっただろうか?

やがて、遥か幼少期の記憶が、霧の中から浮かぶように出始めた。顔も思い出
せ無い近所のおばさんの声が聞こえ始めた。


『デミくんは、大人になったら何になるの?』
『うんとね・・・


・・・カレーパン!』


・・・ってえええええ!?

カレーパン!?将来の夢僕カレーパン?カレーパ〇マンとかじゃなくてあくま
でベーシックなカレーパン!?

いや。百歩譲ったとしてもなんでカレーパンなんだ!?アンパンとかならまだ
なんかわからんことないけれども!いややっぱわかんないか!?

デミテルはもっと頭の中を絞ってみた。次は、父親の声だ。


『デミテルよぉ。オメーは将来なにになりたい?』
『キムチ!!』


何でだああ!?何でさっきから香辛料を多用した食品にこんなにも執着しとるんだ自分!?


『かっかっか!オメーならきっとなれるぜ!なんたってオレの息子だからな♪
いいキムチになれよ!』
『うん♪』


なんでこういう時だけ珍しく優しいんだクソオヤジがぁぁぁ!!ほぼ毎日息子
殴ってたくせになんでよりによってこんな時だけ父親の優しさの片鱗をかいま見せるんだ!?

デミテルはガックリと肩を落とした。どんな無茶な夢でも見れる幼少の時でさ
えこんな風では、これから先まともな夢を見れるだろうか。まぁ、『キムチ』も
十分無茶な夢だが。


まあいいか・・・

将来のことよりも今は・・・

今は・・・そう・・・

『今』を・・・噛み締めて生きてこう・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あの時、私は予期などしなかった。できるはずがなかった。

自分が

自分が

記憶のページが、バラバラと、一気にめくられた気がした。

何も見えなかった。だが、声は聞こえた。記憶の声が。

荘厳で、深く、哀しみと、憂いに満ちし、男の声が。

今夜はいい空だ。星が美しい。

私が怖いか。そうか。

違う?ならば何故震え、生唾を飲み込んだ?

・・・私の名か?ああ、答えてあげよう。罪深き者達の優しさに魅入られた、
悲しき少年よ。

私の名は・・・

ダオス・・・

                星に身を捧げる者

いち・・・

に・・・


さんっ!!

「ぷっは!!」
「目が覚めたかね?」

星瞬く夜空の下で、デミテルは砂漠の地面から飛び上がるように目覚めた。髪
と鼻先、顎から水滴がひたひたと落ちた。

デミテルの頭は上半身を起こした状態でパニックになった。今が夢の中なのか
現実なのかさえわからなくなった。

 が、次に聞こえた声で、彼は今が現実だと知った。

「落ち着きなさい。君は今混乱している。石化した人間の頭は、大半が眠りに
落ちた状態になる。目覚めた瞬間、夢と現実が頭の中でぐちゃぐちゃになるんだ。
さあ深呼吸だ・・・吸って・・・」

デミテルは言われるがままに深呼吸した。すると、恐ろしい程に頭の中がスッ
とし始めた。今まで彼は人生において深呼吸を重要視したことは一度としてなか
ったが、今初めてその重要性に気付いた。

男がデミテルの横に座り、デミテルの背中を支えていた。頭にターバンを巻き、
口元も巻いた布で隠している。目は深い緑色だった。

「間に合ってよかった。」

男は心から安堵した目でデミテルを見た。

「モンスターによる石化はパナシーアボトルで治療することは出来る。だが、
二十四時間以上石になっていると、細胞が根本から完全に無機物と化し・・・まぁ、
わかりやすく言えば、二十四時間以内にパナシーアボトルをかけないと、一生石になったままということだ。」

ボケーとしたデミテルの顔を見ながら、男は笑顔で言った。

デミテルの頭はゆっくりと、思考をし始めた。


とりあえずこの男は、私の指名手配を知らないようだ

あれ。そういえばアイツは・・・


「君の愛鳥に感謝しなさい。君のインコが大声あげて人を呼んでいなかったら、
私は君に気付きはしなかった。本当に君のインコは・・・」
「べ、別にそんな特別大きい声出してたわけじゃないわよ!」

男のターバンの裏から、愛すべき鳥、愛鳥ことジャミルが顔を出した。

「アタシは別にアンタが一生漬け物石にされてたってどーでもいいのよ。
でもアタシ一人じゃ・・・その・・・帰れないじゃない・・・」

彼女の小さい目元が、チラリと光ったのを、デミテルは見た。

自分が石から元に戻ったことに対する嬉し涙?

なわけないか。目に砂か埃かアメーバ的なものが入っただけだなどうせ。と、
デミテルは結論した。

「御礼を言うといい。こんな賢いインコは見たことがない。彼女は君の為に頑
張ってくれたよ・・・私に対して『もし治せなかったらアンタの顔とそのハゲ隠
しのターバンをズタズタに爪で引き裂いて様々な意味合いで表を歩けなくするわ
よ!!』なんて脅しかかる程にね・・・」
「あ・・・ちょ・・・」

ジャミルが止める間もなく男が一気に言い切ったので、ジャミルは恥ずかしさ
で頭の中が水素爆発を起こしたようだった。

デミテルはジッとジャミルを見つめると、サラっとこう言った。

「ありがとうジャミル・・・ところであなたは・・・」
「私?いやいい。名前は名乗らない。もう去るしね・・・助けられてよかった・・・」

男はゆっくりと立ち上がった。頭の上で、『ありがとう』の言葉に軽く酔いしれていたジャミルは急いで降り、デミテルの肩に移った。

歩き去ろうとした男の足を、デミテルは掴んだ。

「せめて名前を・・・」
「ふむ・・・『旅は見知らぬ人との一期一会』が私の座右の銘なんだが・・・
名も知らぬ者同士が助ける、助けられるの繰り返しが、旅の中で得られる恵みだ
とね。だが、君がそうも望むなら・・・ただし君は答えなくてもいいから。」

そう言うと、男はデミテルの足を払い、こう言った。

「私の名は・・・

エドワード=D=モリスン。さらばだ。名知らぬ旅人。」

デミテルの頭の中を、打ち上げ花火がバンバンとあがった。モリスンは、彼ら
を背に歩き出した。

花火の打ち上げが終わったのち、デミテルの頭の中が急激なフルドライブを開
始した。脳髄がオーバーヒートを起こしかねない程だ。


ええええええええええええええええええええええええ!?

エドワードぉ!?エドワード=D=モリスンつったか今ぁぁぁぁ!?なんでこ
んなとこいんだ!?エドワード=D=モリスンんンンンン!!つーかフルネーム
長すぎるだろエドワード=D=モリスンンンンン!!


「ちょ・・・落ち着きなさいよデミテル・・・冷や汗まみれよ・・・だいぶ息
荒いわよ・・・」
「だ、大丈夫です!全然大丈夫です!あのアレですから!肺が死にかけてるだ
けですから!」
「恐ろしい程に大丈夫には程遠いじゃないの・・・」
「もうね!アレだね!大丈夫過ぎて死にそうだね!」

興奮と焦躁で、デミテルは自分が何を言っているのかわけがわからなくなって
いた。まず、ジャミルに対して敬語になっていることがなにより恐ろしかった。


どうする!?どうするんだ私!?

今なら奴に背後から攻撃できる・・・私がこの砂漠に来たのは奴を手に入れる
為だ!それが今この瞬間に実行でき・・・!

だが・・・しかし・・・


デミテルはできなかった。どうしてもできなかった。

自分の人生を、一生石のままになったかもしれない人生を救ってくれた恩人を、
背後から攻撃する。それがどうしてもできないのだ。

「デミテル・・・」
「わかってる・・・貴様のことだ・・・言いたいことはわかっている・・・
『真の悪人なら」
「別にいいじゃないの。逃がしちゃっても。」
「え?」

予想外デス。というセリフがデミテルの口から出そうになった。
ジャミルはフンと、そっぽを向いた。

「アタシ聞いたのよ。アンタがパナシーアボトルかけられて、元に戻るまでの
数分間の間に。アタシが名前を名乗った時、アイツも名前名乗ってきた。アタシ
も頭ん中真っ白になったけど、すぐに聞いたわ。『この石になってる男の知り合
いに、頭に赤いハチマキ、ブロンドの髪、白銀鎧着た奴がいて、そいつを捜しに
来たんだけど、アナタ会わなかった?』て。アイツら、オリーヴヴィレッジにい
たみたいよ。この情報だけで十分でしよ・・・もう・・・」

ジャミルも同じだった。彼女もまた、命の恩人を背後から襲える度胸など、持
ち合わせていなかったのだ。

デミテルは視線をモリスンに戻した。意外とサッサと歩いている。

デミテルは、ハァとため息をついた。

「・・・そーだな。」

月が、今日も、砂を輝かせていた。

「・・・ところでジャミル。」
「なによ。」
「お前、小さい頃は何になりたかった?」
「えっ?パン屋さん・・・」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「ひゃーっひゃっひゃっひゃ!?」
「しまったぁぁぁ!?突拍子に聞いてきたからつい正直に言っちゃったぁぁあ!?
べ、別にいいじゃないのパン屋さんでもぉ!!世の中のガキの三割はパン屋さんて言うのよ!?いやホントにぃ!!」
「くく・・・くかか・・・お前・・・だってお前・・・別に『パン屋』でいいのにわざわざ
『さん』付けて『パン屋さん』にしおってからにこの女は・・・・・・
意外とかわいらしいんだなぁお前ぇ♪」
「うわああああああんっ!!」
つづく

思うがままにあとがき
約一か月ぶりの投稿です。待ってくれていた人はいるかなー?いないかなー?

ホントは、テストは先週終わったんです。だからホントは先週投稿するべきでした。

浮かれてたんですよ。テスト順位が学年で30位という最高記録を叩き出し
「おれすげーじゃーん♪」とか思いながら。

そんでもってその時ハリーポッターの6巻買いまして。
ほんとハリーはあれですね。罪作りですね。読み始めると止まらなくなるんですよ。
軽く中毒になります。たぶん自分の書く小説はハリポタに多少なりとも影響されていると思います。で、読み終わって

「いやーやっぱおもしれーよハリーポッター。すげーよJ・K・ローリング。
早く最終巻読みた・・・・ああああああああああああ。デミテル書いてねえええええええええええええ!!!」

そんな感じでしたからね。

でも、やっぱ読んどいてよかったとは思います。ハリーのおかげで、創作意欲がまた湧きました。ありがとうハリー。

・・・で。また次回予告は未定です。でも大丈夫。これからも一週間に一本のペースで
書けるよう、楽しくいきたいです

・・・・・・読んでくださってる方いらっしゃいますかー?


次回 第四十四復讐教訓「また未定」

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