リヒターの勘違い
寒い凍てつく風がアルタミラの町に吹き付けた。
この話は、アルタミラに来たエミル達が宿に泊まったと時に起きた事件だ。
「ええええええ……ちょっと、ゼロス待ってくださいよ」
アルタミラのフロントの前で大きな叫び声が聞こえた。
この大声を出したのは、エミル・キャスニエである。
彼の美しい緑の目からポロポロと涙が出ていたりするのだ。
「どうした」
「どうしたじゃあないですよ。なんで僕とマルタが相部屋な…なんですか!!」
自分の腕に握らされている鍵を持ちながら、大声でゼロスに詰め寄る。
ゼロスはエミルを横目で見た。
ゼロスは彼の耳元で話す。
「おいおい……いいか、これは俺がお前にやったチャンスだ。お前は喜ばないのか。お前の好きなマルタちゃんと部屋が一緒なんだぜ」
「それは……でも、マルタと一緒はちょっと常識的におかしいといいますか・・・なんといいますか…マルタも嫌がりますよ」
まじめに解説するゼロスにエミルが抗議する。
「おいおい辛気くさいことをいうなよ。今はマルタちゃんとの仲を深めることに専念すればいいんだよ……でひゃひゃひゃ……それに本人もまんざらじゃないみたいよ」
ゼロスは下品な笑みでエミルの横にいるマルタをさす。
マルタの方向をみると……。
「エミルと一緒にあんなことやこんなことを……。だったら、今日着る服はどうしようか。下着の色も勝負服にしないと…きゃあああ……今日の夜楽しみ♪」
すでに、マルタは自分の世界に入っていた。
エミルは重い溜息を吐く。
「あ……あはははは…はぁ…」
エミルは、自分の後ろにいるテネブラエに助けを求めようとする。
「……テネブラエ」
「エミル、どうかしましたか?」
「実は、今日の夜のことだけど…」
「それならご心配しないでください。私は今夜お二人の邪魔になりませんように、ゼロスの部屋にいっています。はい、ゆっくりとマルタ様とお楽しみください」
意地悪い笑みを浮かべるテネブラエにエミルはまた溜息をついた。
リーガルやしいながいないか、ホテルを見渡す。
彼らはいなかった。
ロイドの情報を集めるために今色々と情報収集をしていて朝の6時まで戻ってこないのだ。
「……本当にテネブラエ陰険だよね」
「エミル、失礼ですね……配慮ですよ配慮」
エミルはホテルのマットにガクと両手をついた。
「そういうわけだ、エミル。今日はゆっくりとマルタちゃんの側にな……でひゃひゃひゃ!!」
「そうです……エミル、犯罪者にならないでくださいね」
エミルは自分の足元を見ながら溜息をつく。
それを見たゼロスとテネブラエはクスクスと笑った。
「てめえら、一旦地獄にいくか」
二人の言葉に反応して、エミルはラタトスクモードに変わった。
すぐさま、自分の腰にある剣をゆっくりと引き抜き。
「ちょっと」
「エミル」
「御託は聞き飽きた。闇に飲まれろ、アイン・ソフ・アウル!!」
「「ぎゃあああああ」」
アルタミラの町に二つの悲鳴が鳴り響いた。
そのころ、リヒターもアルタミラのホテルにいた。
「おい、ここのホテルはあいているか?」
「はあ、たった今客がいなくなったのであいておりますが……」
リヒターの不機嫌そうな言葉にホテルマンはタジタジしていた。
まあ、たしかに彼の独特の雰囲気的では話しづらい。
「そうか、カギはもらうぞ」
リヒターはホテルマンからカギをもらった。
このとき、大きな事件に巻き込まれるとは思っていなかった。
「ちょっとマルタ」
リヒターが自分の部屋に向かおうとしたとき、エミルの声が自分の頭をよぎった。
(今の声はエミル……いや、情報ではエミル達がこんな所にいるはずはないが……)
と思ったが、
「エミルもうちょっと上にきて、あとじっとしててよ」
「でも…」
「男なら我慢する」
リヒターの後ろからエミル達の大声が聞こえた。
リヒターは半目になる。
(ふ…運のいいやつだ……今日の俺は疲れているからお前ら襲わない…運がよかったなエミル)
5分後
「エミル今度は反対ね」
「こ…こう」
「そうそう」
「エミルの肌きれいだね」
扉の向こうから聞こえてくるエミル達の声に、リヒターはなぜか壁に耳を立てていた。
(な……俺は一体何をしているんだ……)
リヒターは、自分にツッコミを入れた。
間違いなく、今の彼はストーカーだろう。
しかし、それをやめる気配はない。
「あ、そこは駄目」
「男なら我慢する」
「そんな…」
「今度は、ちょっと頭を右に動かす。そうそう」
(これはまさか……)
リヒターにある光景が過ぎった。
(馬鹿な…、あいつがあんなことができるはずは…待ってよ、あのマルタなら…)
さらに、彼の脳裏に不吉な光景が浮かぶ。
(どうにかしなければ……)
額から一滴雫が床に落ちる。
後ろにある短刀握り締めながら、今思った恐ろしい考えを否定しようとするが……。
「マルタ……ドサクサにまぎれて、どこ触っているの」
「……私たち結婚するから大丈夫」
「え…違うだろうマルタ答えになっていないよ」
「エミルは私の王子様だから」
「……」
エミルのしゃがれた声が聞こえた。
「エミルの髪はフサフサしているね」
「あ…うん」
マルタの楽しそうな声が聞こえる。
今の彼女はかなり機嫌がいいのだろう。
今までエミル達の会話を聞いたリヒターは……。
(誰か助けて、今にも僕はマルタに●●~されるよ)
と解釈したらしい。
リヒターの眉間に皺がよる。
(く……俺は一体どうすればいいんだ)
「マルタ……い、いた」
「エミルごめん。次はやさしくやるから」
「うん」
その会話を聞いた時、リヒターは……。
(ほらほら、さっさとするんだよ。ごめんなさい)
「く……」
思わず頭を抱えた。
かなり間違った方向に妄想しているが気にしないで置こう。
(俺は豚か? それとも人間か?)
使うところが微妙に違う台詞を彼は心の中でつぶやく。
彼は、一瞬その場に固まった。
両手に自分の武器を握りながら……。
「どう、うまいでしょう」
「うん。そうだね」
「結構指先が器用なんだから」
「あ、それで武器がそれなんだ」
マルタの装備はHPを見てから検索よろしく。
二人の仲のいい、談笑が聞こえた。
グサと何かが突き刺さる音がする。
「あのね……エミルこの際だからいっておきたい『死ねええマルタ!!』」
いきなり、リヒターが扉を突き破ってきた。
そこにいたのは……マルタに膝枕(耳かきをしてもらっているエミル)がいた。
もちろん、マルタも同様だ。
「リヒターさんこれはですね……ああ、でもどうしてここに現れて……」
「どうやら、エミル無事だったようだな。俺の思ったとおりの最悪な状態になっていなくて安心した」
「……それはどういう………ひぃ」
リヒターは血走った目でエミルを見ていた。
エミルも少しおびえている。
マルタの方に目線を移すとかなりおびえた。
もちろん、マルタから強烈な殺気を放たれたからだ。
しかも、かなりどす黒い。
「リヒター……私たちはね……これから、結婚の予行演習をしようと思ったのに……それをよくも」
「マ……マルタ」
「エミルは黙っていて、コイツを簀巻きにして、海に投げてくるから」
ものすごい殺気にエミルは黙って、首を立てに振るしかなかったと思いきや……。
「マルタに手を出すな」
「なぜ、俺のすることに理解できないんだエミル」
「うるせえ」
もう一人のラタトスクモードのエミルがリヒターにきりかかってきたのだ。
リヒターはなぜだとエミルを凝視する。
「エミル」
「うるせえ、今俺はこいつを」
「……エミル」
マルタの無言の圧力にエミルは剣を鞘に戻した。
「…っち、わかったぜ」
しぶしぶエミルはうなづく。
「いいのかお前一人で」
「ええ、私一人で十分よ」
その後、激しい音がアルタミラの宿に響いた。
「マルタ、はい」
「いた~、エミルやさしくしてよ」
「はいはい」
エミルがマルタの傷ついた肌を絆創膏や薬などで手当てをしていた。
「次から、一人で戦ったら駄目だよ」
「エミル……ありがとう」
エミルがそういった。
「あのね…先のことだけど」
「ああ、気にしていないからいいよ」
「……先の続きをしてもいい」
「……」
エミルは苦笑した。
一方
「待ってよ、お前をマルタちゃんの所にはいかせないぜ」
「っち……」
ゼロスとリヒターは夜中の5時過ぎまで戦っていた。
なぜなら、マルタがリヒターと戦っている時にゼロスもいたのだ。
もちろん、隠れて二人の話を聞いて「おお」と声を出していたり……。
ゼロスがマルタの方に加勢をしようとした時、マルタにリヒターと一緒に窓からつき落とされる。
それはまさに神業といってもよい技だった。
マルタは、ゼロスに手話でリヒターをよろしくと合図を送る。
「ああ、せっかくビデオにとろうと思ってのに……てめえのせいで台無しだぜ」
「く……エミル待っていろよ」
彼らの夜は長い。
たぶんまだまだ続くだろう……。
あるサイトで投稿した新作です。
あまり投稿していないので出しました。
こっちで小説を出すのは初めてです。